定期通販の「引き上げ率」とは
定義の違い・計算式と、
獲得単価ではなく「定期1件あたり」で決める理由
お試しや初回商品から、定期やアップセルに移ってくれた人の割合が「引き上げ率」です。
獲得単価がいちばん安い入口が、定期1件あたりでは最も高くつく。当社の事例では、その差が4倍以上ありました。
執筆:佐藤祐介(株式会社LIFRELL代表。業界歴15年、担当500社・300商材以上、数十商材の成果報酬型獲得を同時運用中) 最終更新:2026年10月12日
約6,700円
390円のお試し(引き上げ率60%)の定期1件あたり
約30,000円
100円のお試し(引き上げ率10%)の定期1件あたり
11%
ある週末に下がった引き上げ率。その日のうちに配分を戻した
約9割
購入後のメールを整えたあとの2回目継続(別の事例)
成果報酬型広告で「いくらまで払えるか」を決めるとき、引き上げ率は成果単価の上限を左右します。成果単価の決め方は 成果単価・承認率・上限件数の決め方 に書いています。この記事は、その計算の前提になる引き上げ率を1本に展開したものです。
※数字はLIFRELLが関わった案件で、事例として公開しているものだけを使っています。クライアント名・商品名は伏せています。引き上げ率の目安は、商材・入口の価格・配信面で大きく変わります。
引き上げ率とは
引き上げ率は、入口の商品を買った人のうち、定期コースや上位の商品に移ってくれた人の割合です。定期通販では、次の3つの場面で使われます。
購入完了ページのアップセル
お試しを買った直後の画面で、定期コースや複数個セットに切り替えてもらう。成果報酬型広告では、ここの率がいちばん大きく効く。
お試しから本商品への引き上げ
お試しが届いたあと、同梱物・メール・電話で本商品の定期を案内する。
定期の中での引き上げ
1個から2個へ、単品からセットへ。継続している人の購入額を上げる。
どの場面でも、考え方は同じです。入口でかかった獲得単価を、引き上げで回収できるか。入口をいくら安くしても、引き上げ率が低ければ、定期1件を作るのに高くつきます。
分母と分子で、引き上げ率は別の数字になる
「うちは引き上げ率40%」と言われても、そのままでは比べられません。何人のうち何人を数えたかで、数字が大きく変わるからです。

| 数え方 | 何が分かるか | 注意すること |
|---|---|---|
| 承諾した人 ÷ お試しを買った人 | 購入完了ページの文言・オファーの強さ | キャンセルが多いと、実際の定期は少ない |
| 承諾後キャンセルを除いた人 ÷ お試しを買った人 | 実際に定期として残った割合 | キャンセルの締め日をそろえないと週ごとに比べられない |
| 2回目が出荷された人 ÷ 初回が出荷された人 | 回収にいちばん近い数字 | 数字が出るまでに1か月ほどかかる。判断が遅れる |
社内・代理店・メディアで、定義を1つにそろえる
当社では、案件シートに「引き上げ率=何÷何」を書いてから運用を始めます。運用会社ごとに違う定義で報告されると、どの面が良いのかを比べられません。
一緒に出てくる言葉の整理
| 言葉 | 意味 | この記事での使い方 |
|---|---|---|
| 引き上げ率 | 入口の商品を買った人のうち、定期や上位の商品に移った人の割合 | 分母と分子を必ず書く |
| アップセル率 | 購入完了ページなどで、上位のコースやセットに切り替えた人の割合 | 引き上げ率とほぼ同じ意味で使われることが多い |
| 獲得単価(CPA) | お試し・初回の購入1件を取るのにかかった額 | 成果報酬型広告では、成果単価がそのまま獲得単価になる |
| 定期1件あたりの単価(CPO) | 定期の顧客1人を作るのにかかった額 | 獲得単価 ÷ 引き上げ率 |
| 2回目の転換率・継続率 | 2回目の商品を受け取った人の割合。3回目以降も同じように数える | 回収にいちばん近い数字 |
| LTV | 1人の顧客が、継続している間に払ってくれる額の合計 | 払える成果単価の上限を出す元になる |
事例:3つの入口を比べた結果
酵素サプリの通販メーカー(A社)では、お試しの価格を何度も変えていました。入口を安くすると獲得単価は下がります。ところが定期への引き上げ率も一緒に下がり、定期1件あたりのコストは跳ね上がっていました。クライアントがまとめた実績です。

ここから、目標を「獲得単価」から「定期1件あたりの単価と、その後の継続」に置き直し、媒体ごとに使う入口のオファーを決めました。当時の平均LTVは約16,000円。そこから逆算して、成果報酬の上限を8,000円に置いています。
全文は ダイエット商材10案件以上で固めた勝ちパターン7つ にあります。
引き上げをつくる4つの場所
引き上げ率は「購入完了ページの文言」だけで決まるわけではありません。当社の案件では、次の4つの場所を組み合わせて設計しています。
| 場所 | やること | 事例での数字・経緯 |
|---|---|---|
| 購入完了ページ | 伝わる文言に絞り、選択肢を減らす。オファーはLTVの高いものに限る | 酵素サプリのA社では、アップセルを作り直し、文言を絞り、オファーを2袋に限った |
| チャットBOT | 会話の流れの中で、定期やセットを案内する。決済までの秒数を短くする | 育毛剤D2Cでは、記事LP→BOTの導線でCVR16〜22%、アップセル率38%。BOTの起動から決済までを60秒から4秒に縮めた |
| 同梱物・メール | 届いた直後に、正しい使い方と続ける理由を伝える | 目元用コンシーラーでは、購入後のメールを4通で設計し直し、2回目の継続が約8割から約9割に |
| 電話 | 購入後のフォローや、定期の案内を電話で行う | 高単価のダイエットサプリでは、電話でのフォローと組み合わせて販売。美白美容液では、成果報酬型広告で獲得した人の継続率が、同時期に電話販売で獲得した人より約2割高かった |
どこで引き上げるかによって、測るべき数字も変わります。購入完了ページやBOTなら当日に分かりますが、同梱物や電話の効果は2回目の出荷まで分かりません。即日わかる数字と、1か月後にわかる数字を分けて追うのが基本です。BOTの設計は チャットボットコンサル のページに書いています。
引き上げ率を正しく測るための4つの準備
定期と都度の注文を分ける
目元用コンシーラーの事例では、継続率を出すときに都度買いの注文まで数えてしまい、実態より低く見えていました。いまは、定期と都度を分けた商品コードを最初に確認してから集計します。
計測を1本にそろえる
運用する会社が増えると、同じ1件を複数の会社が「自分の成果」として数えます。A社では計測ツールを1つにそろえ、各社がそのツールで発行したURLで入稿する決まりにしました。
入口ごとの目標を書面で渡す
A社では、目標の獲得単価をお試しと初回定期で分けて伝えていたのに、ある会社には正しく伝わらず、効率の悪い入口のまま配信が続いた月がありました。いまは入口ごとの目標を書面にし、全社に同じものを渡します。
キャンセルと与信の扱いを決める
承諾後のキャンセルや、後払いの与信が通らずに発送が止まった注文をどう数えるか。コンシーラーの事例では、3回目の継続だけが落ちた週の原因が、与信で止まった注文でした。
この4つが決まっていないと、引き上げ率が上がった・下がったという話が、数え方の違いなのか本当の変化なのか分かりません。
引き上げ率が下がるとき
引き上げ率は、商品が同じでも、どこから来た人かで変わります。当社の案件で、下がったときに見たのは次のところです。
配信面と訴求が入口とずれた
別の白髪ケアの案件では、アップセル率が13%から5%に落ちた大型記事メディアの配信を当日に止め、新しい訴求で12日後に再開しました。
入口の価格を下げすぎた
安いお試しほど「試すだけ」の人が増え、定期に移る割合が下がる。A社では100円のお試しで10%でした。
アップセルの文言とオファーが多すぎる
選択肢を増やすほど迷って離れる。A社では文言を絞り、オファーをLTVの高い2袋に限りました。
件数が急に増えた面の質
件数が跳ねた配信面ほど、口コミやLTVが悪いことがある。早い段階で質を確かめ、成果単価に反映します。
下がったら、まず「どの入口・どの面か」を分ける
全体の平均だけを見ると、良い面と悪い面が打ち消し合って原因が見えません。入口のオファー別・配信面別に分けて、どこで下がったかを先に特定します。
成果単価との関係:払える額は引き上げ率で決まる
成果報酬型広告で払える成果単価は、引き上げ率と継続率から逆算します。引き上げ率が上がれば、同じ利益で払える単価も上がり、メディアが動きやすくなります。
| 事例 | 引き上げ・継続の数字 | 成果単価の決め方 |
|---|---|---|
| 酵素サプリ(A社) | 390円のお試しで引き上げ率60%。平均LTVは約16,000円 | 成果報酬の上限を8,000円に置いた |
| 当社の案件(成果単価の段階設計) | アップセル率と継続率の改善 | 23,000円からアップセル率と連動して段階的に19,000円まで下げ、獲得数を落とさずに利益率を改善 |
単価の上げ方・下げ方は 成果単価・承認率・上限件数の決め方 に書いています。手数料を含めた回収の計算は ASP手数料の見方 で扱っています。
自社の数字で計算する手順
引き上げ率から払える成果単価を出す手順は、次の4ステップです。計算そのものは単純で、難しいのは前提の数字をそろえることです。
STEP 1
引き上げ率をそろえる
入口別・配信面別に、同じ定義で出す
STEP 2
定期1件あたりを出す
獲得単価 ÷ 引き上げ率
STEP 3
LTVから上限を出す
定期1件の平均LTVから、残したい利益を引く
STEP 4
単価と件数を決める
上限とメディアの動く水準の間で、段階的に
上のシートは、この記事の計算をそのまま入れたものです。無料診断 では、御社の価格・引き上げ率・継続率を入れた状態のシートと、36か月の収支見通しをお作りします。
計算の例:引き上げ率が10ポイント変わると、払える単価はどう動くか
ここからは、計算の流れを示すための例の数字です。実在の企業・商品の数字ではありません。お試しの獲得単価が同じでも、引き上げ率が変わると、定期1件あたりの単価と、その後に残る利益が大きく動きます。
| 項目 | 例A:引き上げ率50% | 例B:引き上げ率40% | 計算のしかた |
|---|---|---|---|
| お試しの獲得単価(成果単価) | 8,000円 | 8,000円 | 同じ条件にそろえる |
| 定期1件あたりの単価 | 16,000円 | 20,000円 | 獲得単価 ÷ 引き上げ率 |
| 定期1人の粗利の合計(例) | 30,000円 | 30,000円 | 2回目以降の価格 × 続く回数 × 粗利率 |
| 1人あたりに残る額 | 14,000円 | 10,000円 | 粗利の合計 − 定期1件あたりの単価 |
この例では、引き上げ率が10ポイント下がるだけで、1人あたりに残る額が4,000円減ります。逆に言えば、引き上げ率を10ポイント上げられれば、そのぶん成果単価を上げてメディアに強い条件を出せます。成果報酬型広告で「単価を上げるか、引き上げ率を上げるか」は、同じ計算の表と裏です。
例の数字を、御社の数字に置き換える
実際の計算では、2回目以降の価格、続く回数、粗利率、ASP手数料、後払いの与信で落ちる注文まで入れます。手数料の入れ方は ASP手数料の見方 に書いています。
引き上げたあと:2回目が続かなければ回収できない
引き上げ率が高くても、2回目以降が続かなければ回収できません。目元用コンシーラーの事例では、購入後のメールを4通で設計し直したあと、2回目の継続が約8割から約9割になりました。一方で、4回の定期が終わったあとの5回目では、継続が約4割まで下がっています。

もう一つ、媒体ごとの差もあります。大手通販の美容液の事例では、ポイントのつくメール配信型の媒体で、2回目に続いた人が1割にも届きませんでした。引き上げ率と2回目の継続は、媒体ごとに分けて見るのが基本です。
全文は 2回目の継続を約9割に(コンシーラー)、大手通販の美容液を月4,000件規模へ にあります。
引き上げ率について、よくある5つの思い込み
入口は安いほど得をする
獲得単価は下がっても、引き上げ率が下がれば定期1件あたりは高くなります。A社では100円のお試しが、定期1件あたり約30,000円でいちばん高くつきました。
全体の平均を見れば十分
平均では、良い面と悪い面が打ち消し合います。入口のオファー別・配信面別に分けて見ないと、どこを止めればいいか分かりません。
件数が伸びたら成功
件数が大きく伸びた週末に、引き上げ率が11%まで下がったことがあります。件数より先に、引き上げ率を確かめます。
引き上げ率が高ければ回収できる
引き上げても2回目以降が続かなければ回収できません。目元用コンシーラーの事例では、4回の定期が終わったあとの5回目で継続が約4割まで下がりました。
ほかの会社の数字と比べられる
分母と分子の定義が違えば、別の数字です。比べる前に、何を何で割ったかをそろえてください。
引き上げ率は、成果報酬型広告の「払える額」を決める数字です。件数の報告だけでなく、引き上げ率と2回目の継続を、入口別・配信面別に毎週見る仕組みをつくってください。
よくある質問
Q.引き上げ率の目安は何%ですか?
A.商材・入口の価格・配信面で大きく変わるので、一律の目安はありません。当社の事例では、同じ商材でも390円のお試しで60%、100円のお試しで10%でした。他社の数字と比べるときは、まず分母と分子の定義をそろえてください。
Q.引き上げ率とアップセル率は同じですか?
A.使われ方が近く、混ざって使われています。どちらも「入口から上位の購入に移った割合」です。大事なのは呼び方より、何を何で割ったかを案件シートに書いておくことです。
Q.入口は安いほうがいいですか?
A.獲得単価だけを見ると安い入口が有利に見えますが、引き上げ率が下がると定期1件あたりは高くなります。入口の価格は、定期1件あたりの単価とその後の継続で決めてください。
Q.引き上げ率は、どのくらいの頻度で見ればいいですか?
A.成果報酬型広告を動かしている間は、週ごとに入口別・配信面別で見ます。件数が急に伸びた週ほど確認が必要です。
Q.BOTにすると引き上げ率は上がりますか?
A.当社の育毛剤D2Cでは、記事LP→BOTの導線でアップセル率38%でした。ただし、BOTの起動から決済までが遅いと途中で離れる人が増えます。BOTを入れるときは、起動と決済までの秒数も一緒に見てください。
Q.成果報酬型広告の成果地点は、お試しの購入と定期への切り替えのどちらに置くべきですか?
A.案件によります。お試しの購入を成果地点にする場合は、入口ごとの目標単価を分けてメディアに伝え、引き上げ率を週ごとに共有します。どちらにするかは、案件シートの承認条件として最初に決めてください。
Q.2回目の継続が分かるまで待つべきですか?
A.2回目の数字は出るまで1か月ほどかかります。それまでは引き上げ率と承諾後のキャンセルで判断し、2回目の数字が出たら成果単価や上限件数を見直します。
御社の引き上げ率で、
払える成果単価を計算します。
入口の価格・引き上げ率・継続率から、定期1件あたりの単価と成果単価の上限を出し、回収シミュレーション(Excel)にしてお渡しします。無料です。
AUTHOR
佐藤祐介株式会社LIFRELL 代表取締役/アドアフィ専門・成果報酬型マーケター
オプト(全社MVP)、電通デジタルを経て、すららネットでマーケティング責任者としてBtoC事業を35倍に伸ばし上場に貢献。2018年にLIFRELLを設立。業界歴15年、担当500社以上・300商材以上。年間150億円規模のアドアフィ取扱に関わり、月15億円規模の広告費をマネジメント。医薬品・美容・健康食品・家電・デンタル・キッズのメーカー各社の事業側に外部CMOとして入り、数十商材の成果報酬型獲得を同時に運用。育毛剤D2Cでは0件から3か月で月30,000件、3年継続、大型メディア25社と取引。商材企画、オファー設計、LP・BOT、薬機法対応、メディアリクルーティング、計測・不正管理、在庫・与信・CRMまで、獲得の全工程を担当しています。本記事の内容は、クライアント名・メディア名・ASP名・商品名を伏せた上で、実際に起きた出来事だけを書いています。



