恋愛がうまくいかず、相手を求めすぎてしまったり、逆に相手に振り回されたり…そんな経験はありませんか? 公認心理師・大岳 龍昇さんは、かつて自分自身も「恋愛依存」のループから抜け出せなかった一人。
そこから回復したリアルな体験と、多くのクライアントを救ってきた知見をもとに、恋愛・婚活における“メンタルケア”の重要性を語ります。

公認心理師・大岳龍昇さん × 婚活パラダイス編集部 インタビュー対談

公認心理師
大岳カウンセリング.room代表
大岳龍昇さん
公認心理師の大岳龍昇(本名:纐纈岳洋)さんは、NLP心理療法を軸にうつ病や恋愛依存などへの支援を行うカウンセラーです。2010年に自身のカウンセリングルームを開設し、15年以上で1200人以上の相談を担当。年間400セッションをこなし、「自分自身が最良のセラピストになる」ことを重視した共感的なアプローチが特徴です。

インタビュー対談スタート
— まずは大岳さんのご経歴について教えていただきたいです。いろいろな仕事を経験された上で、公認心理師として活動されていると伺いました。

そうですね。大学卒業後はデパートの販売職や営業をやって、その後、中学校の教員になりました。
ただ、教員時代に激務や人間関係でメンタルをかなり崩してしまい、うつ状態で3年間休職していたんです。
— 教師は長時間労働や部活指導などで負荷が大きいとよく聞きますね。そこからカウンセリングの世界に飛び込んだのは、どういうきっかけだったんでしょうか?



休職中に、心療内科で心理カウンセリングを受けていました。病院でカウンセリングを受けてもなかなか良くならなかったのですが、縁あって受講したNLP(神経言語プログラミング)心理療法のセミナーで大きな変化を感じ、『 これ だ!! 』と思ったんです。
そこから心理療法のセッションを受けながらNLPの勉強を続け、心の構造を集中して学んでいくなかで、状態が劇的に良くなっていきました。
「自分もこれを仕事にしたい」と思い始め、実際に誘われた職場(ストレスケア研究所)で働きながら経験を積み、公認心理師の資格も取りました。
— 大岳さんの場合、大学の心理学部や大学院を経由していない分、人一倍努力が必要だったのでは?



そうですね。実務経験年数や試験対策など、やることは多かったです。
でも逆に、自分自身が「うつ」や「恋愛依存」を克服してきた経験が、クライアントさんへの理解にもつながっていると思います。
両親との関係と“恋愛依存”の連鎖
— ご自身が恋愛依存の状態に陥っていたこともあったとうかがいました。そこには「ご両親との関係」や「家庭環境」に根がある、と感じていらっしゃるんですよね?



はい。僕の場合、恋愛関係・人間関係がうまくいかなかった一番の根っこは『 父親と祖母の関係 』が大きかったと思います。
父は幼い頃に祖母が統合失調症で入院していまい、母親の愛情を知らずに育ってきたそうです。祖父は気性が荒く厳しい人で、 いわゆる“ 温かい愛情関係 ”というものを知らないまま大人になってしまったんですよね。
— なるほど。父親が子どもの頃から「愛情を求めて得られない」経験をしていると、その後の家族にも影響が出そうですね。



そうなんです。父は温かい愛情関係を知らずに育ったので、母親(僕の母)に対して強く依 存する傾向がありました。
『 子どもより俺を優先しろ! 』と。同時に、自分が満たされていない分、母が自分の思う通りに動かないとイライラ してパワハラ・モラハラ的な言動のオンパレードでした。
母は母で、常に父の機嫌をうかがってばかりで、結果として子ども達のことはどう しても二の次になってしまう…
— その状況で育つと、どういう影響が出るのでしょう?



一番大きかったのは「人の顔色をいつも気にするようになった」ことですね。
父の機嫌を損ねると家の空気が最悪になるので、必死で察知する癖がついたんです。
また、“自分は愛されていない”という思い込みが根づいて、極端に自己肯定感が下がる。
この状態で恋愛をしようとすると、相手に認めてもらわないと自分の価値がない、と錯覚してしまうんです。
— それが過剰な依存や執着につながりやすい……という連鎖ですね。



まさにそうです。僕は女性に対して『 愛情をちょうだい ちょうだい 』と追いかけすぎてしまう状態だったり、逆に一人では満たされないから複数の女性に分散して求めてしまうような行動をしてしまった時期もありました。
その根本にあるのは親子関係、特に父親が祖母からもらえなかった愛情飢餓トラウマ なんですよね。
父は離婚歴もありますし結婚生活もうまくいかず、ずっとその苦しみを抱えながら生きてきた。そして、僕はその父の愛情飢餓的な生き方を相続してしまっていました。自ら望んだわけではないですが…
— ご家族の代で続いてしまう“連鎖”を、どこかで断ち切らないといけないわけですね。



そうですね。僕の場合はうつ状態で休職せざるを得なくなった時に「もうこれは逃げられないな」と腹をくくりました。
まずは自分のトラウマをしっかりケアしようと。そのプロセスで、父親や母親を「許す」というより、自分の気持ちを“受け止める”ことに専念したんです。
結局、親を変えようとしてもうまくいかないけど、自分で自分を癒し、過去の思い込みを手放していけば、連鎖を断ち切ることはできるんだと実感しました。
カウンセリングの進め方と回復への道筋
— 現在は、うつや恋愛依存など“重め”の悩みを持った方も多く訪ねていらっしゃると聞きました。カウンセリングでは具体的にどんなことをされるのでしょうか?



一言でいうと『 自己否定感を生み出しているトラウマ(過去の未解消の感情) をケアする 』ですね。
たとえば、幼少期に『 親に気を遣って本音が出せなかった 』人であれば、その ときの恐怖や悲しみや絶望感が潜在意識にずっと残っている。
そこを丁寧に見つめて寄り添って
『 怖かったね 』
『 怖いって思うのは何もおかしくないよ 』
『 怖いって感じるのは当然だよ 』
『 だから、怖いって思っていい、感じていいよ 』
と受け止めていきます。
カウンセラーとクライアントさんとでいっしょに安心感をつくり、深い感情を受容するイメージで解放 していきます。
技法はNLPや他の心理療法も使いますが、基本はその方に合わ せて進める感じです。
— そうすると、親に過度に許しを求めるとか、あるいは相手に執着しすぎる状態が改善されていくのでしょうか?



そうです。自分で自分の感情を受け止められるようになると、相手の顔色をう かがいすぎずに済むし、
『 もうこれ以上我慢しなくてもいい 』
『 自分の本当の気持ちを大事にしたい 』
『 相手にもとめすぎず自分の足で立ちたい 』
という心理的安定が出てきます。
結果的にダメンズにはまらなくなるとか、モラハラに耐え続ける生活を乗り越えることができますね。
読者へのメッセージ
— 最後に、婚活や恋愛に悩む読者の方にメッセージをお願いできますか?



多くの方は「いい出会いが欲しい」「早く結婚したい」と焦ってしまうんですけど、実はまず自分のメンタルを整えることが大前提です。
どんなに条件のいい相手に出会っても、自己否定感が強いままだと「私はどうせ愛されない」と思い込んでしまったり、相手への過剰依存に陥ってしまうことが多いですから。
— 相手を求める前に、まず自分の過去や自分自身の気持ちをケアする必要がある、ということですね。



そうですね。もちろん、相手がいることで回復が進む場合もあります。
でも最終的には、【 自分で自分を認めていく 受け入れる 】プロセスがいちばん大切になります。
もし一人では難しいと思うなら、遠慮なく心理カウンセラー・セラピストという専門家の力を借 りてみてください。
そこから恋愛や婚活をスタートしても、ぜんぜん遅くはないですよ。
— 本日はありがとうございました。大岳さんの「 自分のトラウマを乗り越えてきた体験談 」は、婚活・恋愛で苦しんでいる読者にとって、大きな気づきをもたらしてくれそうです。



こちらこそ、ありがとうございました。
編集後記
- 代々続く“愛情不足”や“トラウマ”の連鎖を断ち切る
大岳さんのご家庭では、祖父母が厳しかったことで父親が無償の愛を知らずに育ち、それが母親への依存や家庭内でのモラハラとして表面化。その影響を受けた大岳さん自身も恋愛依存で苦しむことに。最終的に自分のトラウマを丁寧にケアし、連鎖を断ち切った体験が印象的です。 - 自己否定感をほどくためには、“親を変える”のではなく“自分を受け止める”
「あのとき、こうしてほしかったのに」という思いを親にぶつけても、必ずしも解決しないことが多いと大岳さんは言います。まずは自分が抱えてきた悲しみや恐怖を認め、癒してあげる。そこから初めて健全なパートナーシップを築けるようになるそうです。 - 婚活・恋愛をスムーズに進める“土台づくり”
婚活や恋愛の成否は、テクニックや条件だけでは測れません。自分を大切にできるかどうかが、大きなカギになります。もし恋愛や結婚で似た失敗を繰り返しているなら、一度カウンセリングなど専門的なサポートを検討してみるのも一つの手です。
婚活パラダイス編集部より
恋愛依存やモラハラ被害で苦しんでいる方も「家族からの連鎖」という視点で自分の過去をケアし、自己肯定感を高めることで大きく変われる——大岳さんの体験は、その可能性をはっきりと示してくれています。
心の傷と向き合うのは勇気が要る作業ですが、乗り越えた先にこそ理想のパートナーや幸せな暮らしが待っているのかもしれません。