均等配信設定でも広告インプレッション数が均等にならない理由 – Google AdWords & Yahoo!広告ガイド

監修者

佐藤 祐介
佐藤 祐介

株式会社LIFRELL代表取締役。大手代理店、株式会社オプト、電通デジタルの2社でアカウントプランナーを経験。その後、株式会社すららネットでインハウスマーケターとして事業の立ち上げからマザーズ上場水準まで事業を伸長させる。マーケティング戦略の立案からSEO/WEB広告/SNS/アフィリエイト等の施策で売上にコミット。

専門家

深瀬 正貴
深瀬 正貴

Yahoo株式会社 法人マーケソリューション出身。 鎌倉の海のそばでオフィスFHを運営。 リスティングやSEOをはじめとしたデジタルマーケティングで100社以上の売り上げ課題を解決。
最近の趣味はブームに乗っかったように見えてしまう「焚き火ごはん」。

目次

Analyst working with Business Analytics and Data Management System on computer, make a report with KPI and metrics connected to database. Corporate strategy for finance, operations, sales, marketing.

広告キャンペーンにおけるA/Bテストの有効性については多くのマーケターが注目しています。A/Bテストは、異なる広告バリエーションの効果を比較し、最も効果的なものを選ぶための強力なツールです。しかしながら、このテストを行う際、広告Aと広告Bが同じインプレッション数(表示回数)を受けることが極めて重要です。同等の条件でなければ、広告の効果を公平に評価することはできません。

多くのマーケターが直面する一つの問題は、広告のローテーション設定(広告の表示を最適化する設定)を均等に行ったにも関わらず、インプレッション数が均一でないことです。このような状況に直面した際、多くの方々は困惑し、時にはクライアントや上司からその理由を問われることがあります。

この問題の解決策は、「均等」という概念を正確に理解することにあります。均等配信設定を行ったとしても、広告のインプレッション数が常に同じになるとは限らないのです。これは、多くの要因に左右される可能性があるためです。

今回のコラムでは、なぜ均等配信設定を行っても広告のインプレッション数が必ずしも均等にならないのか、という点に焦点を当てて詳しく解説していきます。この理解を深めることで、A/Bテストの効果を最大限に引き出し、より効果的な広告戦略を立てることができるでしょう。

広告のローテーション設定

Google AdWordsやYahoo!プロモーション広告は、デジタル広告キャンペーンにおいて重要な役割を果たしています。これらのプラットフォームは、効果的な広告配信をサポートするために、さまざまな機能を提供しています。例えば、広告のローテーション設定は、キャンペーンごとに異なる広告をどのように表示するかを最適化するための機能の一つです。この設定により、同一広告グループ内の複数の広告を、特定の指標に基づいて優先的に、あるいは均等に配信することが可能となります。

デフォルトの設定では、Google AdWordsとYahoo!プロモーション広告は「最適化して配信」となっており、クリック率が高い広告が優先的に表示されます。一方で、コンバージョンを重視するアカウントでは、「コンバージョン重視で最適化」という設定を利用することもできます。また、A/Bテストを行いたい場合など、広告の効果をより細かく分析したい場合は「均等にローテーション(均等に配信)」の設定が有効です。

しかし、重要な点は、「均等」という言葉の意味合いです。多くのユーザーは、この設定が広告のインプレッション数を均等にする機能だと誤解しがちですが、実際はそうではありません。このコラムでは、広告が表示される仕組みを詳しく振り返りつつ、この誤解について解き明かし、実際の機能とその有効な利用方法について掘り下げていきたいと思います

オークションの発生と広告が表示されるまでの仕組み

デジタル広告の世界では、広告が表示されるためのプロセスを理解することが非常に重要です。特に、Google AdWordsやYahoo!プロモーション広告のようなプラットフォームでは、このプロセスの理解がキャンペーンの成功に直結します。では、広告が実際に表示されるためには、何が必要なのでしょうか?

まず基本となるのは、オークションに勝利することです。広告の「均等」配信でインプレッション数が異なる現象は、実はこのオークションシステムに深く関連しています。Google AdWordsのヘルプセクションにも詳細が記載されており、Yahoo!プロモーション広告も同様の仕組みを採用しています。

このオークションプロセスは以下のステップで構成されます:

ステップ①

ユーザーが検索を行ったとき、その検索に一致するキーワードを設定したすべての広告が検出されます。

ステップ②

次に、特定の条件を満たさない広告が除外されます。例えば、特定の国にターゲットを絞っている広告や、承認されていない広告などがこれに該当します。

ステップ③

残った広告の中から、広告ランクが一定の基準を満たすものだけが表示されることになります。この広告ランクは、入札額、広告の品質、表示オプション、その他のフォーマット要素の効果などに基づいて算出されます。

このプロセスを深く理解することは、広告配信の最適化において不可欠です。広告のインプレッション数が均等にならない理由を理解し、それを踏まえた上で、より効果的な広告戦略を立案することが可能となります。この記事では、広告がオークションによってどのように表示されるのか、その背景にあるメカニズムをより詳細に掘り下げて説明していきます

広告が表示される「オークションに参加する機会」の均等化

「均等」配信設定が意味するのは、広告が表示される「オークションに参加する機会」の均等化

デジタル広告の世界において、「均等」配信という用語は、実際に何を意味しているのでしょうか? これについては、広告が表示されるメカニズムを理解することが重要です。多くの方が、均等配信設定を行った際に、広告のインプレッション数(表示回数)が均等になると考えがちですが、実際のところは少し異なります。

実際に「均等」配信設定が意味するのは、広告が表示される「機会」の均等化です。ここで言う「機会」とは、オークションに参加する機会のことを指します。この点を踏まえると、均等配信設定を行っても、広告のインプレッション数が異なることが理解できます。

例を挙げて説明しましょう。もし広告Aと広告Bを無期限にローテーション(無期限で均等に配信)した場合、両者の広告ランク(広告の品質に基づく評価)に差があると、配信結果は異なるものになります。均等なオークション機会が与えられたとしても、広告ランクが低い広告Bは、結果的にインプレッション数が少なくなる傾向にあります。リスティング広告を考える際には、広告ランクが低いと、同じ入札単価でも掲載順位が低くなり、結果として表示回数が減少するというイメージを持つことができるでしょう。

このコラムでは、デジタル広告における「均等」配信設定の実際の意味と、その背景にあるオークションシステムについてさらに詳しく掘り下げていきます。この理解は、広告戦略を最適化し、実際のキャンペーンの成果を最大限に引き出すために不可欠です。

インプレッション数の均等とオークションシステムの影響

インプレッション数を均等にするという設定の導入は、オークションシステムに大きな影響を及ぼす可能性がある

デジタル広告の分野において、媒体側が提供する機能とそのバランスは非常に重要です。特に、インプレッション数を均等にするという設定の導入は、オークションシステムに大きな影響を及ぼす可能性があります。なぜなら、このような設定が導入されると、広告ランクが異なる広告のインプレッション数を無理に均等化する必要が出てくるからです。具体的には、広告ランクの高い広告と低い広告の表示回数を同じにするために、システムが不自然な調整を強いられることになります。

もし媒体システムがインプレッション数を均等にしようとする場合、広告ランクの低い広告は、より高いランクの広告より多くのオークション機会を必要とすることになります。これは、ユーザーにとって価値のある広告の表示機会を奪うことにも繋がり、結果的には広告の表示効率を損なうことになります。広告システムは、一定の金額を支払うことで任意の広告が確実に表示されるモデルではありません。そのため、質の低い広告のインプレッション数を不必要に増やすことなく、均等な機会を提供することが求められています。

このようなシステムは、オークションに勝利する広告が表示されるという原則に基づいています。これは、ユーザーにとって有益な広告が適切に表示されることを保証する公平なシステムです。この記事では、広告のインプレッション数を均等にするというアプローチがオークションシステムに与える影響について、さらに深く掘り下げて考察していきます。デジタル広告の効果を最大化するためには、これらの要素の理解が不可欠です。

まとめ

デジタル広告の世界では、均等配信設定にしても、必ずしも広告のインプレッション数が均等になるわけではない、ということが明らかになりました。この事実を理解することは、運用型広告を扱う私たちにとって非常に重要です。

広告の運用に携わる者として、すべての数値をコントロールし、理想的な広告配信を実現したいという願望は自然なことかもしれません。しかし、最も重要なのは、広告がどのように受け取られ、評価されているかを理解することです。均等に表示される美しい数字にこだわることよりも、ユーザーに受け入れられる広告を作ることに注力すべきです。ユーザーに受け入れられる広告は、間違いなくプロモーションの成果にも大きく影響します。

ユーザーファーストの姿勢を常に心掛けることが重要です。どんな広告を届けるにしても、真にユーザーの役に立つ広告を提供することが目標です。このコンセプトを念頭に置きながら、日々の運用を行うことで、より効果的な広告戦略を構築していくことができるでしょう。デジタル広告の運用者として、この認識を持ち続けながら、常に改善と精進を重ねていくことが求められます。