成功の秘訣: プロがKPIツリーを使う理由と効果的な構築手順

監修者

佐藤 祐介
佐藤 祐介

株式会社LIFRELL代表取締役。大手代理店、株式会社オプト、電通デジタルの2社でアカウントプランナーを経験。その後、株式会社すららネットでインハウスマーケターとして事業の立ち上げからマザーズ上場水準まで事業を伸長させる。マーケティング戦略の立案からSEO/WEB広告/SNS/アフィリエイト等の施策で売上にコミット。

専門家

深瀬 正貴
深瀬 正貴

Yahoo株式会社 法人マーケソリューション出身。 鎌倉の海のそばでオフィスFHを運営。 リスティングやSEOをはじめとしたデジタルマーケティングで100社以上の売り上げ課題を解決。
最近の趣味はブームに乗っかったように見えてしまう「焚き火ごはん」。

目次

本稿では、プロフェッショナルがなぜ絶えずKPIツリーを構築することに重きを置いているのか、そしてその構築手順について優しく説明します。多くの方が、「KPIツリーをどう作ればいいのか」「それは本当に必要なのか」など、疑問を持っていることでしょう。

KPIツリーというのは、組織の最終目標であるKGIを達成するために、どのような指標(KPI)が重要になってくるかを、樹木のように枝分かれさせて視覚的に示したツールです。このツールを用いることで、目標達成に向けての具体的な行動計画を立てやすくなり、成功したり、逆に成功しなかったりした理由を明確にすることができます。

さらに、これまでの取り組みがうまくいかなかった経験がある方や、どのようにして課題にアプローチしていけば良いのか迷っている方にとって、KPIツリーは非常に有効なツールです。なぜなら、このツールを使うことで、事業の健全な成長と持続可能性を実現するために必要な、効果的なPDCAサイクルを確立する手助けとなるからです。

このテキストでは、どのようにしてKPIツリーを効果的に作成し、それをどのように活用していけば良いのかについて、詳細にわたってご紹介します。実際の例や視覚的な図解を交えながら、この有益なツールの作成プロセスを丁寧に解説するので、ぜひこの機会にKPIツリーの作成に挑戦してみてください。それにより、目標達成のプロセスをより明確にし、事業の成功へと導く第一歩を踏み出すことができます。

KPIとKGIとは

KPIツリーは、組織の究極的な目標、すなわちKGI(重要目標達成指標)に到達するために不可欠な各要素、これをKPI(重要業績評価指標)と呼ぶものを、一目で理解しやすいロジックツリー、つまり樹形図によって視覚化する手法です。

このプロセスを開始する前に、KPIとKGIが具体的に何を意味するのかを再度、明確にしておくことが大切です。

KGIとは、組織が特定の期間内に達成を目指す最終目標を数値で示したものです。一方、KPIはそのKGIを達成するための途中経過を測る定量的な指標を指します。これらは、目標達成の進捗を計るためのもので、目標達成に向けた道筋を示す役割を持ちます。

例を挙げてみましょう。もし「ウェブサイトを通じて売上高××万円を達成する」という具体的な目標がある場合、その「売上高」という数字はKGIに該当します。その売上を構成する要素、つまり「問い合わせの数」「成約率」「1回の購入における平均金額」などがKPIとなります。この関係を数式で示せば、売上=「問い合わせの数」×「成約率」×「1回の購入における平均金額」となります。この式をツリー状に展開して可視化するのが、KPIツリーの作業です。

KPIツリーを用いることで、KGIに至るまでの具体的なステップを詳細に洗い出すことができ、それぞれのKPIに対してどのようなアクションを取るべきかがはっきりします。これにより、取り組むべき課題や集中すべきデータが明確になり、より効率的かつ効果的に目標に向かって取り組むことが可能になります。この方法を通じて、組織は戦略的に改善を加え、KGI達成へ向けた具体的な行動計画を立案し実行に移すことができるようになるわけです。

KPIツリーの作成を推奨する理由

プロフェッショナルたちは、事業の目標に向けた戦略を練る際、なぜ一様にKPIツリーの作成を推奨するのでしょうか。

その理由は、目標達成への道筋を明確にし、成功に導くための具体的な手段を見出すためです。

たとえば、あなたが「広告を通じて問い合わせを増やす」という目標を設定したとします。この目標に向けての戦略を検討する際、単に「問い合わせ数」を増やすという抽象的な目標だけでは、どのようにして目標を達成すれば良いか、また、現在の取り組みがどこでつまずいているのかを具体的に知ることは難しいでしょう。

そこで登場するのがKPIツリーです。このツールを利用して、「問い合わせ数」という結果がどのように形成されるのかを詳細に分析します。

問い合わせ数 = フォームアクセス数 × フォーム完成率 フォームアクセス数 = 広告ページ訪問者数 × フォーム遷移率 広告ページ訪問者数 = 広告表示回数 × クリック率

このように分解してみると、問い合わせ数を増やすための具体的なアプローチが4つ浮かび上がります。

  1. 広告の露出回数を増やす
  2. 広告のクリック率を向上させる
  3. フォームへの遷移率を改善する
  4. フォームの完成率を高める

こうした分析を行うことで、具体的にどの指標が改善を要しているのかが一目瞭然となり、それぞれの課題に対して最も適切な対策を講じることが可能になります。つまり、KPIツリーを作成することによって、目標達成に必要な要素をクリアにし、それぞれの要素をどのように改善していけばよいかの指針を得ることができるのです。

KPIツリーがなければ、取り組みは方向性を失い、何をしたら良いのか、なぜ現在の成果が得られないのかの原因分析もできずに、結果的に事業の目標達成が難しくなってしまいます。「何となく行った施策」や「結果の理由がわからない」という状態に陥りがちです。

そのため、事業の目標を効果的に達成し、事業を持続的に発展させるためには、戦略立案の初期段階でKPIツリーを作成することが非常に重要です。

KPIツリーを作成するメリットは、次のように多岐にわたります。

  • ボトルネックを迅速に特定できる
  • 具体的な施策のアイデアが出しやすくなる
  • 重要なKPIを網羅的に洗い出せる

このようにKPIツリーの作成は、目標達成に向けた明確な指針を提供し、効率的な改善策の策定を可能にします。それでは、これらのメリットについて、さらに詳しく見ていきましょう。

KPIツリーの導入による効果

KPIツリーの導入によって、事業の目標、すなわちKGIへの道のりにおける障害となるボトルネックを素早く見つけ出すことが可能になります。

例として、Web広告の効果によりサイト訪問者数は順調に増加したものの、期待したほどの問い合わせ数の増加には結びつかない状況を考えてみましょう。もしKPIツリーが事前に作成されていれば、この状況で「問い合わせフォームの入力完了率」が低いという事実を迅速に把握できるでしょう。これにより、問い合わせ数が増えない原因が「入力完了率の低さ」にあることが明らかになり、無関係な施策に時間を費やすことなく、問題の核心に迫る施策に集中することができます。

また、ボトルネックを見つけるためには、現状を正確に把握することが不可欠です。しかし、KPIツリーがなければ、どの指標が標準値を下回っているのか、または期待値に対してどの程度達成しているのかを把握することは困難です。KPIツリーを利用して指標を細かく分析し、それらを視覚化することで、事業の各段階で発生している問題点を正確に特定できるようになります。これにより、事業目標の達成に向けた施策の優先順位を正しく設定し、より効率的にPDCAサイクルを運用することが可能になります。

要するに、KPIツリーを用いることで、事業の成果を妨げるボトルネックを早期に発見し、その解消に向けた効果的なアクションプランを迅速に立案・実行することが可能となるのです。このようにKPIツリーは、事業の成功に不可欠なツールであり、その有効性を最大限に引き出すことが、目標達成への鍵となります。

KPIツリーの構築

KPIツリーの構築により、事業の指標を詳細に分けて考えることができるため、実行すべき具体的な行動計画が思い浮かびやすくなります。

例えば、先に挙げた「フォームの入力完了率」の低さが問題と識別された場合、その問題点に対処するためにフォームページ自体の改善策(例えば、EFO施策の適用)を考えることが可能になります。これは、「問い合わせ数」という一般的な目標に焦点を当てていただけでは、なかなかたどり着かない具体的な改善策です。

さらに、KPIツリーを細かく分析することで、今直面している課題に対してどのような行動を取るべきかがクリアになります。これは、各階層の指標が積み重なって最終目標の達成に繋がるためです。つまり、下位のKPIを一つ一つ改善していくことが、究極的な目標達成に直結するわけです。

このプロセスにより、現状における最も優先すべき施策が何かを明確にすることができます。例えば、フォームの改善、広告クリック率の向上、訪問者のエンゲージメント向上など、様々な改善点が洗い出され、それぞれに対する具体的な行動計画を立てることができるようになります。

このように、KPIツリーを通じて、事業の各段階で求められる具体的なアクションが見えてくると、目の前の課題に対してより戦略的かつ効果的に取り組むことができるようになります。この方法は、目標達成に向けての明確なガイドラインを提供し、事業成果を向上させる上で非常に有効な手段です。

目標達成のために必要なKPI

KPIツリーを用いることで、目標達成のために必要なKPIを体系的に整理し、視覚化することが可能となります。

これにより、チームメンバー全員が共有し、以下の点についての完全な洞察を得ることができます。

  • 目標達成に必要な主要なKPI
  • 各KPIを達成するための具体的な戦略や、更に細かいサブKPI

このプロセスを通じて、KPIの洗い出しが全面的に行われ、KPI間での重複があればそれも明らかになります。重複するKPIを抱えるということは、リソースの浪費を意味します。資金や人的資源が必要以上に分散してしまい、効率的な運用が妨げられるため、この点には特に注意が必要です。

もちろん、KGIを達成するための方程式は文章の形式で作成することも可能ですが、それをツリー形式で図解することで、視覚的に捉えることができます。この視覚化は、計画における抜け漏れや重複を発見しやすくします。ツリー形式であれば、必要に応じて新たな要素の追加や不要な要素の削除が容易に行えるため、計画の柔軟性が高まり、より精度の高いKPI設定が可能になります。

結局のところ、KPIツリーを構築することは、目標達成に向けての計画を明確にし、チーム全体での理解を深めることにつながります。この透明性と共有のプロセスが、資源の最適な配分と効率的な達成戦略の確立を可能にし、最終的には組織の目標実現を加速させることに貢献します。

KPIツリーの構築プロセス

KPIツリーの構築プロセスは、組織やプロジェクトの目標達成に向けた明確なロードマップを提供します。

ここでは、「Instagramを利用した集客によるアプリダウンロード数の増加」という具体的な目標達成に焦点を当てたKPIツリーの作成方法について、ステップバイステップで説明します。

完成したKPIツリーは、目標に到達するために必要な要素が一目でわかる構造となります。その作成プロセスは、大まかに以下のような流れになります。

KPIツリー作成のステップ

STEP①:KGIの明確化

最初に、プロジェクトや事業の最終的な目標であるKGI(重要目標達成指標)を設定します。この例では、目標は「Instagramを通じたアプリのダウンロード数の増加」となります。

STEP②:構成要素の洗い出し

次に、設定したKGIを構成する要素を、ゴールから逆算する形で洗い出します。これには、アプリダウンロード数に影響を及ぼす各種指標や活動が含まれます。

STEP③:定量化

洗い出した要素を定量化可能な指標に変換し、具体的な数値目標を設定します。このプロセスにより、目標達成のために必要な各要素が計算可能な形で明確になります。

STEP④:ロジックツリーの作成

最後に、これまでに定義したKGI、構成要素、定量化した指標を用いてロジックツリーを作成し、可視化します。これにより、目標達成に向けた全体像が一目で把握できるようになります。

詳細解説

  • KGIの設定
    • 目標を明確に定義することで、プロジェクト全体の方向性が決定されます。この例では、Instagramを介したアプリのダウンロード数を増やすことが目標です。
  • 構成要素の洗い出し
    • Instagramを通じた集客効果、広告のクリック率、アプリランディングページのコンバージョン率など、アプリダウンロード数に影響を与える要因を詳細に分析します。
  • 定量化
    • 各要素に対して具体的な数値目標を設定します。例えば、特定期間内のInstagram広告のクリック数や、ランディングページのコンバージョン率目標などです。
  • ロジックツリーの作成
    • 上記のステップを経て得られた情報をもとにロジックツリーを作成し、プロジェクトの全体像を視覚化します。これにより、チームメンバーは、目標達成のために重点を置くべきポイントを容易に理解できます。

このプロセスを通じて、KPIツリーは目標達成に必要なアクションの明確化、資源配分の最適化、そしてチーム内のコミュニケーションの促進に役立ちます。結果として、プロジェクトや事業の成功確率が高まることでしょう。

KGIの設定

最初のステップとして、KGI、つまり重要目標達成指標の設定から取り掛かります。

KPIツリーの構築においては、このKGIがスタート地点となり、ここから具体的な指標の洗い出しや施策の策定に進んでいきます。KGIが明確になっていないと、その後のプロセスを進めることができません。従って、目指すべき最終目標を確定することが極めて重要です。

この例では、具体的な目標として「アプリのダウンロード数の増加」をKGIとして設定します。この明確な目標設定が、後続のプロセスをスムーズに進める基盤となります。

KGIを成し遂げるために必要な要素

続いて、設定したKGIを成し遂げるためにはどのような要素が必要かを、ゴールから逆順に追っていく作業を行います。

このアプローチは、目標達成のプロセスを段階的に紐解いていくのに適しています。

たとえば、「アプリのダウンロード数を増やす」というゴールを掲げた場合、ユーザーが辿るべきパスは次のように展開されます。

  • 最終的な目標である「アプリのダウンロード(KGI)」
  • その一歩手前のステップとして「アプリストアへの遷移」
  • さらにその前に「プロフィールページへの遷移」
  • そして、その出発点となる「フィード投稿やストーリーズの閲覧」

このプロセスを逆順にたどることで、目標達成に至るまでの具体的なステップが明確になり、それぞれの段階で必要となる行動や要素を特定することができます。

要素の定量化と具体的なKPIの設定

洗い出した要素に対して次に行うのは、それらを定量化し、具体的なKPIを設定する作業です。

この段階では、目標達成のために各ステップでどのような数値を目指すべきかを明確にします。

例えば、今回の「アプリダウンロード数増加」というゴールに対しては、以下のように各段階を定量化していきます。

  • 最終目標である「アプリのダウンロード数」
  • その前段階である「アプリダウンロード率」、すなわちアプリダウンロードボタンのタップ率
  • アプリストアページの閲覧数
  • アプリストアへの遷移率、つまりアプリストアへのリンクタップ率
  • プロフィールページの閲覧数
  • プロフィールへの遷移率、即ちプロフィールタップ率
  • 投稿やストーリーズの閲覧数

定量化する際のポイントとしては、以下の二つを心掛けます。

  • 「SMART」原則に基づいたKPIの設定
    • 具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、関連性がある(Relevant)、時間的な制約がある(Time-bound)。
  • 数値目標が計算上成り立つように構築
    • 目標達成に向けた各要素の数値が連動しており、全体としてのゴール達成に寄与するようにします。

これらの指標を具体化し、定量化することで、目標達成に向けた各ステップが数値として明確になり、どのように進めれば良いかの計画が立てやすくなります。

「SMART」に基づいたKPIの設定

KPIの設定においては、それが明確な期間内で測定可能であることが必須です。

このため、一般的には「SMART」原則に基づいてKPIを策定することが推奨されます。

「SMART」とは、効果的な目標設定を支援するフレームワークであり、次の5つの要素の頭文字を組み合わせたものです。

  • 具体的(Specific): 目標は明確かつ具体的である必要があります。
  • 計測可能(Measurable): 進捗や達成度を計測できる形でなければなりません。
  • 達成可能(Achievable): 目標は現実的かつ実現可能であるべきです。
  • 関連性(Relevant): 目標は最終的なゴールと直接関連している必要があります。
  • 時間的制約(Time-bound): 明確な期限内に達成を目指すものでなければなりません。

これらの条件を満たすKPIを設定することで、そのKPIは適切なものと評価されます。例えば、「6か月以内に商談数を20%増加させる」というように、具体的な期間と目標値を定めることが重要です。

SMART原則に従って設定されたKPIは、数値で表現される定量的な指標となります。ただし、全ての要素を数値化することが困難な場合もありますが、それらをどのように数値化していくかについては、「KPIは定量化する必要がある」というセクションでさらに詳しく説明します。このアプローチにより、目標の達成度を明確に把握しやすくなり、より効率的に目標に向けて取り組むことが可能になります。

KPIツリーを構築する際の重要な考慮点

KPIツリーを構築する際の重要な考慮点の一つは、その構成要素が論理的に計算可能であるように設計することです。

アプリのダウンロード数を最終目標(KGI)とするシナリオを例に取ります。この目標に向けて、関連する指標が以下のように数式で表現される必要があります。

  • アプリダウンロード数
    • アプリストアの訪問者数にダウンロード率を乗じたもの。
  • アプリストアの訪問者数
    • プロフィールページの訪問者数にリンククリック率を乗じたもの。
  • プロフィールページの訪問者数
    • 各ソーシャルメディアチャネルからの遷移を考慮に入れた合計。これにはフィード、ストーリーズ、リールからのプロフィールへの遷移率をそれぞれ考慮に入れ、各メディアの閲覧数にこれらの遷移率を乗じて合算したものです。

これらの計算を進める上で、留意すべきポイントは、関連する各KPI間で単位が一致していることを確認することです。例えば、「アプリのダウンロード数」「アプリストアの訪問者数」「プロフィールページの訪問者数」といった指標は、すべて数値で計測され、関連する指標同士が数学的に意味を成すように整合性を持たせる必要があります。この一貫性が欠けていると、KPIツリー全体としての論理的な構成が成立せず、目標達成の戦略立案において正確な分析や判断を下すことが困難になります。

計算が成り立つようにKPIを設計することは、KPIツリーが目標達成への実行可能な道筋を示すための根幹をなす作業です。加えて、「ロジックツリーでの可視化」作業と並行してこれを行うことで、より効率的に、かつ直感的にプロセスを進めることが可能になります。

ロジックツリーを用いて視覚化

洗い出された要素と設定されたKPIを整理した後、それらをロジックツリーを用いて視覚化する作業が続きます。

ロジックツリーは、複雑な問題や目標を分解し、その構造を木のような形式で図示する方法です。この手法では、最上位に位置する「KGI」を出発点とし、そこから枝分かれする形で下位の要素、「KPI」を配置していきます。このプロセスを通じて、例えば「アプリのダウンロード率を高めるためには何を改善すべきか」「どのように投稿の閲覧数を増加させれば良いのか」といった問いに対して、直接的な施策や改善点を導き出すことが可能になります。

ロジックツリーの作成にあたっては、以下のようなツールを活用することが推奨されます。

  • マインドマップツール
    • 例えば「マインドマイスター」のようなツールは、テンプレートを基にしながら、施策毎にKPIを設定し、ツリー構造を効率良く作成できる機能を提供します。
  • 資料作成ツール
    • 「Figma」や「Canva」は、KPIの枠組みを描き出し、全体をまとめ上げる作業に適しています。
  • 数値管理ツール
    • 「Excel」や「Googleスプレッドシート」は、具体的な数値の管理と整理に必要で、計算式を組み込むことで、変動する数字を追跡しやすくします。

例えば、このプロセスを通じて作成されたKPIツリー例をマインドマイスターで作成することができます。ExcelやGoogleスプレッドシートを活用することで、関連する数値を効率的に管理し、必要に応じて素早く調整することが可能です。

このように、要素の洗い出しからKPIの設定、さらにロジックツリーによる視覚化に至るまで、各段階で適切なツールを用いることが、目標達成への道のりをより明確にし、具体的な施策へと落とし込む手助けとなります。

PIツリーの作成とその活用するポイント

KPIツリーの作成とその活用にあたり、その成功を左右するいくつかの重要なポイントがあります。

これらのポイントを把握し、適切に取り入れることで、効率的かつ効果的に目標達成に向けたプロセスを進めることが可能となります。

KPIツリーの作成・活用における主要ポイント

KPIツリーの作成・活用における主要ポイント

  • 全てのKPIを数値化する
    • KPIは、その性質上、数値によって測定可能である必要があります。これにより、進捗の追跡や目標達成度の評価が可能になります。
  • 「大枠の目標KPIツリー」と「具体的な施策に基づくKPIツリー」を区別する
    • 組織全体の大きな目標を達成するためのKPIツリー(親ツリー)と、個々の施策やプロジェクトに特化したKPIツリー(子ツリー)を明確に分けて考えることが重要です。これにより、各レベルでの目標とその達成のための行動が連携し、全体としての目標達成に効果的に寄与します。
  • 個別の部門や担当者のKPIツリーを孤立させず、全体の目標との連携を重視する
    • 個々の部門やプロジェクトチームで作成されるKPIツリーは、組織全体の目標達成に貢献するよう設計されるべきです。単独で見た場合の成果も大切ですが、それらがどのように全体のKGIに寄与しているかを常に視野に入れることが必要です。

これらのポイントを踏まえることで、KPIツリーはより有効なツールへと進化します。具体的には、目標設定の段階で数値化を意識し、大きな目標と小さな目標が整合性を持つように構築し、さらに、各部門や担当者の貢献が組織全体の目標達成にどのように影響するかを明確にすることが、KPIツリーの有効活用には欠かせません。このアプローチにより、目標達成への道のりが一層明確になり、組織全体として効率的に目標に向かって進むことができるようになります。

KPIの策定における指標の定量化

KPIの策定において、「この要素は定量化できないため、KPIとして設定するのが難しい」と考えがちな状況に遭遇することがしばしばあります。

このような思い込みにより、実際には重要な指標であるにも関わらず、それを見逃してしまい、KPIツリーの構築そのものが行えなくなるリスクが生じます。

しかし、一見定性的で数値化が難しいとされる要素であっても、適切に分析し、アプローチを変えれば、定量的な指標として取り込むことが可能なケースは少なくありません。

例として、私たちMOLTSが実際にマーケティング活動の中で遭遇した課題を挙げ、その解決策をご紹介します。

MOLTSは、デジタルマーケティングの分野でクライアントを支援する企業として、主に問い合わせフォームからの商談創出を行ってきました。しかし、将来的には紹介による新規顧客獲得の割合を高めていきたいと考えていました。ただ、「紹介を受ける」という行為は、直接的に私たちの手でコントロール可能な範囲を超えるため、その確率を数値化するのが一見難しい問題でした。

この課題に対するアプローチとして、私たちは以下のような方法を考え出しました。

「もし、私たちとビジネスをしているクライアントに、“もし知り合いで同じ悩みを持っている方がいたら、MOLTSを紹介していただけますか?”と尋ねた際に、肯定的な返答(Yes)を得られる割合を測定することにより、紹介を受ける確率を具体的な数値として捉えられるのではないか?」

この考えに基づき、私たちは長期間関わっているクライアントに向けて、この質問を含むアンケートを実施し、その結果を測定しました。

この方法により、直接的な「紹介数」ではなく、「肯定的な回答を得られる確率」を新たなKPIとして設定することができました。これにより、この確率を向上させるためにどのような施策を講じれば良いかについて具体的に考え、その効果を測定することが可能になりました。

この事例からわかるように、定量化が難しいと思われがちな要素でも、視点を変え、計測方法を工夫することで、有効なKPIに変えることが可能です。初めは定量化の方法に誤りがあるかもしれませんが、KPIツリーを適宜修正しながら試行錯誤を重ねていくことが肝要です。

組織の究極の目標達成に向けて

組織の究極の目標達成に向けてKPIツリーを構築する際には、全体的な目標を示す「親KPIツリー」と、それを支える各施策やアクションに対応する「子KPIツリー」に分けて考えるアプローチが非常に有効です。

この方法により、全体の目標達成のための指標をより詳細に、かつ実行可能なレベルまで細かく分解することが容易になります。

例として、Instagramを利用したマーケティング活動における「アプリダウンロード数増加」という最終目標を挙げた場合、「フォロワー数の増加」や「投稿の閲覧数増加」といった指標は、直接的には最終目標に結びつかないように見えるかもしれません。

しかし、これらの指標は、親KPIツリーである「アプリダウンロード数増加」を達成するために見るべきフィードやストーリーズの閲覧数という中間目標をサポートする重要な要素になり得ます。したがって、これらの指標を含む子KPIツリーを個別に設計し、それぞれに対する具体的な施策を計画することで、全体の目標に対する貢献度を高めることが可能になります。

このように、「親KPIツリー」で示される全体の目標と、「子KPIツリー」で示される具体的な施策やアクションが連携して機能することで、目標達成のための道筋が明確化され、各レベルでの具体的な改善点や取り組むべきアクションが見えてきます。この分離された構造を持つことで、全体としての目標達成に必要な細部の調整や施策の最適化がよりスムーズに、かつ効率的に行えるようになります。

「親KPIツリー」と「子KPIツリー」の相互作用

組織全体の目標達成に向けて、「親KPIツリー」と「子KPIツリー」がどのように相互に作用しているのかを組織全員が共有し、意識することが極めて重要です。

前述した通り、組織全体の最終目標(親)と各部門やプロジェクト(子)の目標がどのように繋がり、支え合っているのかを理解することは、目標達成への道をスムーズにします。具体例を挙げて、この概念をさらに掘り下げましょう。

例えば、組織の全体目標(親KGI)が「年間売上1億円」と設定されている状況を想定します。この目標を達成するためには、以下のような子KGIが関連しています。

  • 1件当たりの平均受注額: 100万円
  • 営業部門の目標(子KGI): 受注件数100件
  • マーケティング部門の目標(子KGI): 問い合わせ数250件

このケースで、マーケティング部門が自部門のKGI達成に集中し、商談に至る可能性が低い見込み客へのアプローチにも力を入れた結果、実際に問い合わせ数は目標を達成するかもしれません。しかし、それらの問い合わせの質が低く、営業部門の商談化率や受注率に悪影響を及ぼすことが考えられます。

その結果、営業部門の受注件数が目標に対して80件に留まり、結果として企業全体の売上目標も未達成に終わる恐れがあります。このように、一部門のKGI達成が、他部門や最終的な組織全体の目標に対して負の影響を及ぼす可能性があるのです。

従って、各部門が設定する目標(子KGI)を追求する際には、それが組織全体の最終目標(親KGI)にどのように貢献するかを考慮し、全体最適を目指すことが重要です。「自分たちの行動が全体の目標達成にどのように寄与しているか」を常に意識し、他の部門やプロジェクトとの協力や調整を図りながら、組織全体としての目標達成に貢献することが求められます。

戦略立案や事業の目標設定におけるKPIツリーの構築

戦略立案や事業の目標設定にあたり、KPIツリーの構築は非常に有効な手段です。

その理由は、KPIツリーがなければ、成功に必要なアクションや改善点、そして失敗の原因が明確にならないからです。KPIツリーによって、これらの要素を可視化し、明確にすることができます。

KPIツリーの構築手順

STEP①:KGIの明確化

目指すべき最終的な目標、つまりKGI(重要目標達成指標)を設定します。

STEP②:要素の洗い出し

KGIを達成するために必要な要素やステップを明確にします。

STEP③:定量化

各要素を具体的な数値で表現可能な形に定量化します。

STEP④:ロジックツリーでの可視化

定量化した要素をロジックツリーを用いて視覚化し、全体像を明確にします。

この手順を踏むことで、目標達成のための道のりがはっきりとし、必要なアクションが具体化します。

KPIツリー構築時の重要ポイント

  • KPIの数値化
    • KPIは、具体的な数値で測定できるようにする必要があります。これにより、目標の進捗状況を正確に把握できます。
  • 親子ツリーの区分け
    • 組織全体の目標を示す親KPIツリーと、具体的な施策や目標を示す子KPIツリーを区別し、それぞれで考慮すべきポイントを把握します。
  • 全体観の維持
    • 部門や個々の目標を設定する際にも、常に組織全体の目標との整合性を考慮し、全体の目標達成にどう貢献するかを意識します。

これらのポイントを踏まえた上でKPIツリーを構築することが、事業目標の効率的かつ効果的な達成に繋がります。まずは組織全体のKPIツリーから始め、それを基に部門や個人レベルでのKPIツリーを展開することで、各レベルでの目標達成が組織全体の目標達成に繋がるよう促進しましょう。

KPIツリーとは

KPIツリーとは、組織やプロジェクトの究極の目標、すなわちKGI(重要目標達成指標)を達成する過程において、必要となる各要素、つまりKPI(重要業績評価指標)を、樹形図の形式で視覚化するツールのことを指します。

このツールを用いることにより、目標達成に至るまでに必要な具体的なKPIが明確になり、それらのKPIをどのように達成していくか、どのような施策やアクションを計画・実行すべきかが具体化されます。

KPIツリーを構築

KPIツリーを構築する際には、目標達成への明確な道筋を描くために、以下に示す一連の手順を踏むことが推奨されます。

STEP①:KGIの設定

組織やプロジェクトの最終目標であるKGI(重要目標達成指標)を明確にします。この目標は、達成したい具体的な成果を示すべきです。

STEP②:構成要素の洗い出し

設定されたKGIを達成するために影響を与える要素や指標を、体系的に洗い出します。これらはKGI達成のために直接的、または間接的に寄与するKPI(重要業績評価指標)となります。

STEP③:定量化

洗い出された各要素を、測定可能な数値に変換します。このプロセスにより、各KPIが具体的かつ実現可能な目標となり、その進捗を追跡できるようになります。

STEP④:ロジックツリーによる可視化

定量化されたKPIをもとに、ロジックツリーを作成し、全体の構造を視覚的に表現します。これにより、KGI達成に向けた各KPIの相互関係や、施策の優先順位などが一目で理解できるようになります。

これらの手順を丁寧に実施することで、KPIツリーは効果的にKGI達成へと導く道筋となります。途中で見落としや誤りがあった場合でも、このプロセスを通じて、随時調整や改善を行うことが可能です。KPIツリーの正確かつ効果的な構築は、組織全体の目標達成に向けた明確な指針を提供します。