最新ITP対策ガイド:デジタルマーケティングの転換率追跡を再考

監修者

佐藤 祐介
佐藤 祐介

株式会社LIFRELL代表取締役。大手代理店、株式会社オプト、電通デジタルの2社でアカウントプランナーを経験。その後、株式会社すららネットでインハウスマーケターとして事業の立ち上げからマザーズ上場水準まで事業を伸長させる。マーケティング戦略の立案からSEO/WEB広告/SNS/アフィリエイト等の施策で売上にコミット。

専門家

深瀬 正貴
深瀬 正貴

Yahoo株式会社 法人マーケソリューション出身。 鎌倉の海のそばでオフィスFHを運営。 リスティングやSEOをはじめとしたデジタルマーケティングで100社以上の売り上げ課題を解決。
最近の趣味はブームに乗っかったように見えてしまう「焚き火ごはん」。

目次

デジタルマーケティングにおいて、転換率の計測は不可欠な要素です。しかし、最近の技術的な進歩に伴い、特にApple社のSafariブラウザを使用している場合、従来の手法での転換率の追跡が困難になってきています。ここで重要となるのが、Intelligent Tracking Prevention(ITP)への適応ですが、皆さんはこの変化にしっかりと対応できていますか?

最近のアップデートで、特にSafariを使用しているユーザーに対する転換率の計測が従来のAdWordsタグを用いては行えなくなっているという報告があります。安心していたものの、実際には使用しているタグが古く、期待通りに計測が行えていない可能性があるため、十分な注意が必要です。

この記事では、ITPの基本的な概念と、効果的な転換率の計測を確保するための対応策について詳しく説明していきます。

ITPとその影響

ITP、つまりIntelligent Tracking Preventionは、ユーザーのプライバシーを保護する目的で導入された技術で、特定のCookieを制限することで、個人データの追跡を阻止します。現在、この技術はApple社のブラウザであるSafariに実装されています。日本では、多くのユーザーがiPhoneを使用しており、この問題は無視できないものとなっています。

ITPの導入初期には、第三者のCookieのみが制限の対象でしたが、2019年に導入されたITP2.1からは、第一者のCookieも対象に含まれるようになりました。これにより、自社の広告活動に重大な影響を及ぼす可能性があり、迅速な対応が求められています。

スマートフォン配信の重要性

現在、ITPの影響はSafariユーザーに限定されています。しかし、日本市場ではスマートフォンの利用が主流であり、特にiPhoneのシェアが大きいため、スマートフォン向けの配信を主としている企業は、この変化に敏感になる必要があります。2020年1月の時点で、日本におけるiPhoneのシェアは約56.8%に上り、多くのユーザーがSafariを通じてインターネットにアクセスしています。

企業は、自社サイトへの流入デバイスを正確に把握し、モバイルやタブレットからのアクセスが多いかどうかを確認することが推奨されます。このためには、Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを活用することが有効です。

広告戦略におけるITPの重要性

リターゲティング広告の新たな課題

リターゲティング広告は、ユーザーの興味や過去のサイト訪問履歴に基づいて、特定の広告を再度表示する手法です。この戦略は主にCookieデータを利用しているため、ITPの導入により大きな挑戦に直面しています。特に、AppleのSafariブラウザでは、ITPの効果により、2020年2月の時点で追跡可能な期間が24時間に限定されてしまっています。この変更は、リターゲティング広告が長期間にわたって効果を発揮する可能性を大幅に制限し、結果として機会損失につながる恐れがあります。

転換率計測の困難さ

さらに、ITPの影響は転換率の計測にも及んでいます。Cookieを基にした追跡は、24時間以内でしか機能しないため、転換の計測がより困難になります。特に、一連の顧客旅程が複数のサイトにまたがる場合、Cookieを読み取ることができず、どのサイトからの流入であるかを正確に追跡することができません。これにより、クロスサイトトラッキングやクロスデバイストラッキングなどの分析が難しくなり、データに基づいた改善が行えなくなる可能性があります。

これらの課題を克服するためには、ITPに対応した新しいアプローチを取り入れることが不可欠です。Web広告の効果を最大化するためには、ITPの動向を常に監視し、適応する戦略を策定することが重要となります。

デジタル広告とITP対策の最適化

デジタルマーケティングの世界では、正確なデータ計測が成果を最大化する鍵です。しかし、Intelligent Tracking Prevention(ITP)のようなプライバシー保護技術が進化する中で、これまでの方法では計測が困難になってきました。そこで、ここでは各主要広告プラットフォームが提供するITP対策の方法について、具体的な対応策をご紹介します。

Google広告のためのITP対応策

Google広告のITP対応には、グローバルサイトタグとイベントスニペットタグの設定が推奨されます。これらのタグは、現在Googleからデフォルトで提供されており、新たに設定するユーザーや最近タグを更新したユーザーにとっては特に問題はないでしょう。しかし、過去にGoogle AdWordsを使用して設定したタグをそのまま利用している場合は、これらが最新のグローバルサイト・イベントスニペットタグに更新されているかを確認することが重要です。

Yahoo!広告の最新対応

Yahoo!広告においても、最新のタグ設定が対応策の鍵となります。2020年2月時点で、Yahoo!の管理画面から発行できる「リニューアル版」と「従来版」タグがありますが、「リニューアル版」のサイトジェネラルタグとコンバージョン測定補完機能タグの使用が推奨されます。サイトジェネラルタグはすべてのページに、コンバージョン測定補完機能タグはコンバージョンタグとセットで適用することで、効果的なITP対応が可能になります。設定の詳細は、Yahoo!の管理画面やヘルプセクションで確認できます。

その他の広告プラットフォームの対応

Facebook、Instagram、LINE、SmartNewsなどの他の主要広告プラットフォームについても、ITPへの対策が進行中です。これらのプラットフォームも、GoogleやYahoo!と同様に、最新のタグを使用することで可能な限りのITP対応が行えると考えられます。自社が使用しているタグが最新のものかどうかを確認し、必要に応じて更新することが重要です。

2020年2月現在、ITP2.3までアップデートされており、Criteo、A8、Adobeなどの一部のプラットフォームと計測ツールはこのバージョンに対応しています。一方で、Google、Yahoo!、Facebookなどの大手プラットフォームはまだ完全な対応を行っていないため、各プラットフォームのアップデートに注目し、対応策を適宜更新していく必要があります。ITPの進化に伴い、これはまさに継続的な努力が必要な分野であり、効果的なデジタル広告戦略を維持するためには、これらの変化に迅速に対応することが求められます。

ITP2.3の影響と対策の要約

Intelligent Tracking Prevention(ITP)2.3は、Appleによって導入されたユーザープライバシーを保護するためのトラッキング防止機能の最新バージョンです。この技術の主な目的は、オンライン上でのユーザー追跡を制限し、プライバシーを守ることにあります。ITP2.3によってもたらされる変更点は、デジタルマーケティング戦略において重要な意味を持ちます。

まず、ITP対応環境では、特定のサブドメインからのリファラー情報の取得が困難になります。これは、サイト間でユーザーを追跡する能力に影響を及ぼす可能性があります。また、ITP2.3では、従来のCookieに代わる手段として注目されていた「localStorage」も、第一者Cookieと同様に扱われ、その利用にも制限が加えられます。

重要な点として、AppleだけでなくGoogleも第三者Cookieの使用を段階的に廃止する方針を示しており、この動向は業界全体の標準となる可能性があります。その結果、デジタルマーケティングにおけるデータ計測と分析の方法に大きな変化が求められることになります。

対策としては、「CNAME対応」が有効です。これは、社内サーバー情報を書き換えることによって、ITPの制限下でも一部のツールや広告計測を可能にする方法です。しかし、現状では完璧なコンバージョン計測手法が存在しないため、顧客データをより詳細に分析し、データの欠損を最小限に抑えるための努力が求められます。

また、Googleが新しいコンバージョン計測方法を開発する可能性もあり、このような変更に対応するためには、常に最新の情報に敏感でいることが重要です。デジタルマーケティングの世界では、技術の進化に伴い戦略を柔軟に調整することが成功への鍵となります。