完全マスター: ダイナミック広告のフィードとタグ設計 – SKUと型番を効果的に活用する方法

監修者

佐藤 祐介
佐藤 祐介

株式会社LIFRELL代表取締役。大手代理店、株式会社オプト、電通デジタルの2社でアカウントプランナーを経験。その後、株式会社すららネットでインハウスマーケターとして事業の立ち上げからマザーズ上場水準まで事業を伸長させる。マーケティング戦略の立案からSEO/WEB広告/SNS/アフィリエイト等の施策で売上にコミット。

専門家

深瀬 正貴
深瀬 正貴

Yahoo株式会社 法人マーケソリューション出身。 鎌倉の海のそばでオフィスFHを運営。 リスティングやSEOをはじめとしたデジタルマーケティングで100社以上の売り上げ課題を解決。
最近の趣味はブームに乗っかったように見えてしまう「焚き火ごはん」。

目次

マーケティングの世界では、ダイナミック広告の運用において、タグやフィードの設計が重要な役割を果たします。特にアパレル系のECサイト運営者の皆さんにとって、この部分は時に難題に感じられるかもしれません。また商品データの扱い方、特に型番やSKU(Stock Keeping Unit)の使用に関して迷いや混乱が生じることは、決して珍しいことではありません。

では、ダイナミック広告のタグやフィードを設計する際に、どのように商品IDを選択・使用すべきなのでしょうか。

この記事では、その疑問に答えるべく、具体的な方法を解説していきます。

*SKUとは、小売りや物流の現場で使われる在庫管理の「最小の管理単位」を指します。例えば、あるTシャツが色のバリエーションで2パターン、サイズでS/M/Lの3パターンを持つ場合、これらの組み合わせは2×3で合計6つの異なるSKUとして管理されます。

タグやフィードの設計の重要性

Criteoのようなプラットフォームを使用してダイナミック広告を配信する際、フィードとタグの設計が極めて重要になってきます。ここでの「フィード」とは、商品データを含む情報源のことを指し、「タグ」はWebサイト上でユーザーの行動を計測するためのコードのことを言います。

ダイナミック広告の成功は、広告媒体の配信エンジンがどれだけ効率的に自動最適化を行えるかに大きく依存しています。この自動最適化プロセスは、ユーザーの行動や興味を正確に把握し、最も適切な広告をタイムリーに表示することを目的としています。そのためには、フィードに含まれる商品データと、ウェブサイトに設置されたタグを通じて収集されるユーザーの行動データが、精確であることが求められます。

設計の際には、フィード内の商品データとタグから収集される情報が連携して機能することが不可欠です。

フィードとタグのIDを一致させる必要性

ダイナミック広告の魅力の一つは、Webサイト上でユーザーが閲覧した商品を基に、リターゲティング広告を配信したり、関連性の高い商品をレコメンドする機能にあります。このプロセスでは、ユーザーの行動を把握し、それに基づいて最も適切な広告を提供することが目的です。

具体的には、ユーザーがウェブサイト上で何かしらのアクションを取った際に、訪問先のページに設置されたタグが動作し、ユーザーの行動データを広告媒体へと伝達します。例えば、あるユーザーが商品Aの詳細ページを閲覧した場合、この「商品詳細ページの閲覧」というイベント情報と「商品Aの閲覧」という具体的な商品情報が、タグを通じて伝えられます。ここで重要なのは、「商品情報」が商品IDとして伝達されることです。

広告配信の際、タグによって収集された商品IDに一致する商品をデータフィードから見つけ出し、ユーザーに対して表示されます。レコメンド機能でも、収集された商品IDを基に、同じカテゴリーに属する商品などを判断基準にして、表示する商品が選定されます。

ここで、もしタグで取得された商品IDがSKU単位で、フィードのIDが型番単位であった場合、フィードに適切な商品が存在しないと判断される可能性があります。これは、広告の効果を大幅に損なう要因となり得ます。

したがって、ダイナミック広告においては、タグで取得する商品IDとフィードに設定される商品IDが同じ体系であることが極めて重要です。この一致があることで、広告システムは正確なリターゲティングやレコメンドを実行することができ、結果としてユーザーエクスペリエンスの向上と広告効果の最大化につながるのです。

フィードを型番単位で作成するべきかどうかという問題

アパレル系のウェブサイトを運営する際、商品データの管理は非常に重要な要素です。ほとんどのアパレルサイトでは、商品マスタに型番(品番)とSKU(Stock Keeping Unit)の両方が含まれていることが一般的です。この二つのデータの扱い方は、サイトの構成やユーザーの購買プロセスに大きく関わってきます。

ウェブサイトの構成において、検索結果一覧やカテゴリページ、商品詳細ページでは主に型番の情報が使われます。これは、これらのページでは商品の基本的な情報が重視されるためです。しかし、ユーザーが商品をカートに追加する段階では、色やサイズなどの具体的な選択が行われ、ここで初めてSKUの情報が登場します。つまり、商品詳細ページを訪れるまでの段階では、SKUが確定されていないわけです。

前述したように、タグとフィードで商品IDの体系を統一することの重要性は既にご説明しました。この点に関して、一つの疑問が生じます。すなわち、検索結果一覧から商品詳細ページまでで取得可能なIDに合わせて、すべてのイベントで型番を商品IDとして使用し、フィードを型番単位で作成するべきかどうかという問題です。

これは、実際には非常に複雑な問題です。SKU単位で細かく商品データを持っているのに、これを広告表示に活用できないのは非常にもったいないことです。例えば、色やサイズごとのバリエーションを持つ商品を、その豊富な選択肢ごとにユーザーに示すことができない場合、商品の魅力を十分に伝える機会を失ってしまいます。

一部の広告媒体では、SKUと型番の両方を使用することが可能

SKUと型番の併用について考えるとき、それはデータフィードの設計における一つの重要な戦略です。具体的には、フィード内でユニークな識別子としてSKUを使用し、同時に別のカラムで型番の情報を保持するという方法を指します。

下記の例をご覧ください。

(表1)

(表2)

※フィード項目名は、実際には媒体によって異なります。こちらは一般化したものです。

表1に示されるようなフィードの設計では、SKUを主要な識別子としつつ、別のカラムで型番の情報も含めるというアプローチが採られています。この方法は、同じマスターデータを使用しながらも、商品データの精度と有用性を最大化することを目指しています。一方で、表2のように型番のみを基にフィードを作成すると、広告に活用できる商品データの範囲は狭まってしまうことがあります。

デジタル広告の配信においては、フィードのデータ設計が広告効果に大きな影響を及ぼします。多くの媒体では、表1に示されるようなフィードを用いることで、タグによって取得されるデータがSKUであれ型番であれ、どちらのIDに該当するのかを正確に判別し、それに基づいて適切な広告をマッチさせることが可能です。これは、フィードの柔軟性と適応性を高めることに寄与します。

実際のウェブサイトの運用においては、ユーザーがカートに商品を追加するまでのページ(例えば、商品詳細ページやカテゴリページなど)では型番を基にした情報をタグで取得することが一般的です。これに対して、カートに商品が追加された後、特にコンバージョン(購入)ページに至るプロセスでは、より具体的なSKU情報がタグによって取得されます。この違いを踏まえることで、フィードはどちらの情報にも対応することができ、結果として、ユーザーにとってより関連性の高い広告が配信されることになります。

SKUと型番の両方を使用するメリット

商品ID(SKU)と商品グループID(型番)を同時に使用することで、デジタルマーケティングにおいてはいくつかの重要なメリットが得られます。このアプローチは、広告の効果を最大限に引き出す上で非常に有効です。

・広告のバリエーションが増加する

SKU単位のフィードを作成することにより、実際の広告表示においてもSKU単位の画像や商品情報を使用することが可能になります。これは、サイズや色など、ユーザーの具体的なニーズに合った広告表示が可能になるということを意味しています。たとえば、同じ商品でも異なる色やサイズのバリエーションを持つ場合、それぞれのバリエーションに合わせた広告を表示することができるため、ユーザーの関心をより効果的に引き付けることが可能になります。

・タグとフィードの一致率を高い状態に保つ

検索結果一覧ページからコンバージョンページまで、ウェブサイト上のさまざまな階層で取得される商品IDをフィードと一致させることが可能になります。これにより、タグとフィード間の一致率を高めることができるため、広告のターゲティングがより精密になります。また、タグから得られるデータとフィードのデータが一致することで、広告の配信エンジンはより効率的に学習し、最適な広告を表示することができます。

タグとフィードの一致率が高いということは、学習効率の改善にもつながります。データの一致性が高まると、広告配信システムはより効率的に適切なユーザーに対して適切な広告を表示することができるようになります。

SKUと型番の両方を使用できる広告媒体

Criteo、Facebook、Google(GoogleショッピングやGoogleダイナミックリマーケティングを含む)は、SKUと型番を組み合わせて使用することが可能なプラットフォームです。これにより、マーケターや広告主は、商品の細かいバリエーションを細かくターゲットに合わせて広告配信する柔軟性を持つことができます。例えば、同じ商品でも異なる色やサイズのバリエーションを持つ場合、それぞれに特化した広告を展開することが可能になります。

一方で、RTB Houseなどの他の広告媒体では、SKUと型番の併用ができない場合があります。これは、広告の設計や運用において異なるアプローチを必要とすることを意味します。SKUのみ、または型番のみを使用することで、広告のターゲティングや表示の仕方が変わってくるため、異なる媒体間での広告キャンペーンの設計には特別な注意が必要です。

複数の媒体を通じて広告配信を行う際には、各媒体の仕様を正確に理解し、それに応じて広告フィードの設計を行うことが重要です。これにより、それぞれの媒体の強みを最大限に活用し、広告のパフォーマンスを最適化することが可能になります。

各イベントのタグで取得するIDは、FacebookとCriteoで推奨設定が異なる

Facebookにおいては、公式の推奨として、ユーザーがカートに商品を追加した時点以降のタグは、SKU(Stock Keeping Unit)の情報を取得するように勧めています。これは、カートに追加された商品の具体的なバリエーション(例えば、色やサイズ)を正確に把握し、それに基づいてより関連性の高い広告を配信するための方針です。SKUの使用は、顧客の具体的な選択や好みを理解することで、ターゲティングをより精密にし、広告の効果を高めることができるため、このような推奨がなされています。

一方で、Criteoでは、フィードに型番とSKUを同時に入れる場合、タグで取得するIDについては、すべてのイベントで型番を使用しても問題ありません。これは、Criteoのシステムが、カートに追加された商品がSKUであっても型番であっても、その情報を柔軟に処理し、学習やパフォーマンスに影響を与えないためです。Criteoのシステムは、型番を基にした広告配信が可能であり、これにより、広告のターゲティングとパフォーマンスが最適化されます。

設計の具体的方法

広告の設計について、具体的な方法を考えてみましょう。

特に、タグのイベント設定とフィードの構成が重要なポイントとなります。まず、タグのイベントを設置する予定の各ページで、どのような情報が取得できるのかを確認することが重要です。すなわち、そのページで型番のみが取得できるのか、それともSKUも取得できるのかを把握することです。

例)カートに商品が追加されるページ以降で、SKUが具体的に決定されるケース

ウェブサイト上の検索結果一覧、カテゴリページ、商品詳細ページでは型番の情報のみが利用可能であり、カートに商品が追加される段階から、型番に加えてSKUの情報も得られるようになるとします。このようなケースでは、以下のような設計が望ましいでしょう。

フィードの設計:

  • ユニークIDとしてSKUを用い、商品グループIDに型番を設定します。
  • 例)Facebookにおいては、左側の項目が実際のマスター項目名として設定されます。ここでは、「id」にSKUを設定し、「item_group_id」に型番を設定します。

タグの設計:

  • ウェブサイトのカートに商品が追加されるまでのページでは、タグで型番の情報を取得します。
  • カートに商品が追加された後のページでは、タグでSKUの情報を取得します。

まとめ

特にCriteo、Facebook、Googleなどのプラットフォームで広告を配信する際には、型番とSKUを併用することで、より効果的な最適化学習が行えるように設計することが推奨されます。型番とSKUを組み合わせることにより、広告配信システムはより多くのデータを利用して精密な広告ターゲティングが可能になり、結果として、より効果的な広告パフォーマンスが期待できます。

しかし、異なる広告媒体によっては、サポート範囲や推奨される設定に違いがあることが分かります。これは、各プラットフォームが持つ固有の特性や、データの扱い方に基づいているため、広告キャンペーンを設計する際には少々複雑に感じられるかもしれません。

したがって、タグとフィードを用いた広告配信を計画する際には、まず各媒体がどのようにデータを取り扱っているのかを再確認することが重要です。この理解に基づいて、それぞれのプラットフォームに最適化された広告設計を行うことで、広告のパフォーマンスを高めることが可能になります。

広告キャンペーンの成功は、適切なデータ設計とそれに基づく効果的な広告配信に大きく依存しています。タグとフィードの設計を適切に行うことで、より精度の高いターゲティングとパーソナライズされた広告体験を提供し、最終的にはより多くのユーザーの関心を引き、有意義なコンバージョンを促進することができるでしょう。デジタルマーケティングにおいては、これらの要素を適切に管理し、最適化することが、成功への鍵となります。