恋愛や結婚で悩む方の中には、「なぜかうまくいかない」「こんなはずじゃなかった」と感じる瞬間が多いかもしれません。実はそれ、知らず知らずのうちに身についてしまった“考え方のクセ”が原因のこともあるのです。
そこで今回は、認知行動療法(CBT)を専門に数多くのクライアントを支援してきたカウンセラー・岡村優希さんに、婚活や夫婦関係の悩みにも役立つ実践法を伺いました。
「自分を変えたい」「関係を好転させたい」と感じた時、心の整理術として取り入れてみてはいかがでしょうか。

認知行動療法専門カウンセラー・岡村優希さん × 婚活パラダイス編集部

認知行動療法専門カウンセラー
株式会社CBTメンタルサポート代表取締役
岡村優希さん
認知行動療法の専門家として、精神障害や不安症状に悩む方々をサポートし、ひきこもり相談や児童思春期のスクールカウンセリングでも活躍するのが、岡村優希さんです。

–本日はお忙しいところありがとうございます。まずは岡村さんのご経歴から伺えますか?

よろしくお願いいたします。私は大学院で心理学を学んだ後、心理相談室や心療内科クリニックなどでカウンセラーとして働いてきました。
最初は別の心理療法を実践していたのですが、現場に入ってから「認知行動療法(CBT)」を体系的に学び始めたんです。
当時は認知行動療法についてしっかり学べる機会が少なく、学会主催のセミナーや書籍の情報を頼りに、ほとんど独学で身につけました。
いまは認知行動療法の専門家を増やすためのセミナーや、カウンセリングルームの運営にも携わっています。
認知行動療法(CBT)とは何か?
— 認知行動療法を専門にされるようになったきっかけは?



もともと、心理療法全般に興味があったのですが、認知行動療法は「理論的で、説明がしやすい」という点がとても魅力でした。
たとえば、悩みやストレスの感じ方は人それぞれですよね。同じ出来事を経験しても、大きなストレスを感じる人もいれば、そうでもない人もいる。
その違いがどこから生まれているのかを“考え方の癖”や“行動のパターン”など、目に見える形で整理していくのが認知行動療法です。
理論や手順が比較的明確なので、再現性が高く、カウンセラー側からクライアントさんに説明しやすいし、クライアントさん自身も取り組みやすいのです。
効果は“自然治癒を邪魔しない”アプローチ
— 実際、ほかの心理療法と比べて効果が出やすいという印象はありますか?



「認知行動療法なら絶対すごく効く」というふうに、過剰に期待されがちなところがありますが、研究が進むにつれ、魔法のように劇的な効果が一気に出るわけではないことも分かってきました。
ただ「受けないよりは明らかに良い」「取り組み方が明確で分かりやすい」という強みがあるのは事実ですね。
私自身は、認知行動療法を「自然治癒力をサポートするもの」と捉えています。人間は本来、傷や心のダメージをじわじわ回復させる力を持っていますが、自分の思考・行動の癖が“かさぶたを無理やり剥がす”ように邪魔をしてしまい、結果的に回復が遅れることがあるんです。
そこを認知行動療法で見直し、回復をスムーズにする感じですね。
不安や対人関係の悩みに強い
–実際にどんなお悩みに効果的だと感じますか?



研究的にも言われているのは、不安障害やパニック症、強迫性障害など不安を伴う症状には特に効果が出やすいです。
対人関係においても、相手の言動を一面的に捉えて苦しんでいる場合などは、有効なアプローチになりやすいですね。
たとえば「親子関係がギクシャクしていて、親は自分を否定してばかりいる気がする」という方の場合、改めて「本当に嫌いなら関わろうとすらしないはずだ」「むしろ不器用な愛情表現かもしれない」といった別の見方に気づくことで、親の言動に対する過剰なネガティブ反応が減り、人間関係が改善することがあります。
恋愛や夫婦関係も同様で、「パートナーはこう考えているはず」「離婚するしかない」など一方向からしか見られなくなると、どんどん追い込まれてしまいがちです。
認知行動療法は、違う視点を取り戻すサポートをするのに適しています。
自分が選べる選択肢に気づくことが大事
— 恋愛や結婚、夫婦関係のトラブルなどにも対応できますか?



はい、もちろんです。認知行動療法は、環境(パートナーや家族など)と自分自身の相互作用を整理していくアプローチです。
客観的に分析すると「今までは夫に対してこんな受け止め方をしていた」「実は自分のこういう言動が夫の反応を引き出していた」といったパターンが見えてくる。
すると「必ずしも我慢するだけが解決策ではない」「ここまで我慢する必要はないのでは?」といった具合に、新たな選択肢に気づくことができます。
夫婦関係の悩みを抱えた方でも、一歩踏み出してみると「意外と相手も話を聞いてくれた」と分かる場合もありますし、「やっぱり別れるほうがベターだ」となることもある。
でも重要なのは「自分の意思で選べる」という状態になることなんです。カウンセラーが「こうしなさい」と指示するのではなく、あくまで一人ひとりが自然に見出せる道をサポートするイメージですね。
短期で効果を実感しやすいケースと時間がかかるケース
— 問題が解決するまでの期間はどれくらいが目安でしょうか?



これは人によって本当に差が大きいんです。たとえば「ジェットコースター恐怖」のように、「あの乗り物だけが怖い」という限定的な恐怖症は、乗る練習を段階的に行うことで意外と短期で改善します。
1日かけて繰り返し乗っているうちに慣れてしまい、「怖いけれど乗れる」というレベルになったりします。
一方で、長年にわたって蓄積した「考え方の癖」や「パートナーに対する根深い誤解」などは、数か月~1年かけて少しずつ気づきを重ねていくことになるでしょう。
重いトラウマが伴っている場合や、現在進行形でDVを受けているなど、環境が安全でない場合は、対処が難しい面もあるのは事実です。
ただ、それでも認知行動療法の考え方は「解決の糸口を見つける」うえでは有効だと思います。
専門家向けセミナーと今後の展開
— 岡村さんは一般向けではなく、専門家向けのセミナーを積極的にされているそうですね。



はい。私自身は、元々フランチャイズで認知行動療法を専門に行うカウンセリングルームを運営しておりました。今は直営店として広げたり、専門家に向けて講義をしたりしています。
認知行動療法は理論自体がかなり体系化されていますから、学ぶ環境があれば誰でもある程度までは身につけられる。ただし最終的にはクライアントさんとのコミュニケーション力やセンスがものを言う部分も大きいです。
そこを補うために、2~3日程度の集中セミナーとケース検討を繰り返すような形をとっています。
— 今後、どのように認知行動療法を広めていきたいですか?



心理カウンセリングというと、まだ「得体が知れない」「本当に効果があるの?」と不安を持つ方が多いのが現状です。
私は「カウンセリングを受けるとこんなふうに整理される」と可視化して、安心して利用してもらえる世界にしていきたいと思っています。
同時に、専門家(臨床心理士や公認心理師など)を増やす取り組みも続けたいです。まだまだ認知行動療法を実践できる方は少ないので、その教育と普及を進めたいですね。
個人的には私自身も、人付き合いがすごく苦手だった時期があり、「一歩踏み出す」ことの大切さを痛感してきました。
同じように悩む方が、認知行動療法を通じて「この一歩を踏み出しても大丈夫」と感じられるようになるといいな、と思います。
まとめ
認知行動療法(CBT)は、理論や手順が明確化されているぶん、客観的に「考え方や行動パターン」をつかみやすい心理療法。夫婦関係や親子関係のように相手がいる悩みでも、「環境と自分の思考の相互作用」を分析することで、自分にとって最適な選択肢に気づくサポートをしてくれます。
「つらいのは性格のせい」「今さら状況は変えられない」と思いつめている方でも、考え方の癖や行動を少しずつ修正することで、過剰なストレスを減らしていける可能性があります。恋愛や婚活、結婚生活などで一人で行き詰まっている方は、こうした専門家の力を借りるのも一つの手かもしれません。
婚活パラダイス編集部より
今回の取材を通じて、認知行動療法は「悩みの解消をサポートする科学的な方法」という印象を受けました。魔法のように瞬時に何かが変わるわけではないものの、誰もが本来持っている“自然回復力”を邪魔している“考え方の癖”や“行動パターン”を整えることで、スムーズに一歩を踏み出せるようになるのが大きな特長です。恋愛や夫婦関係の悩みにも応用できるので、気になった方はぜひ調べてみてください。
取材・文:婚活パラダイス編集部
協力:岡村優希さん(認知行動療法専門カウンセラー)