損失回避心理:プロスペクト理論の理解とマーケティング応用事例

監修者

佐藤 祐介
佐藤 祐介

株式会社LIFRELL代表取締役。大手代理店、株式会社オプト、電通デジタルの2社でアカウントプランナーを経験。その後、株式会社すららネットでインハウスマーケターとして事業の立ち上げからマザーズ上場水準まで事業を伸長させる。マーケティング戦略の立案からSEO/WEB広告/SNS/アフィリエイト等の施策で売上にコミット。

専門家

深瀬 正貴
深瀬 正貴

Yahoo株式会社 法人マーケソリューション出身。 鎌倉の海のそばでオフィスFHを運営。 リスティングやSEOをはじめとしたデジタルマーケティングで100社以上の売り上げ課題を解決。
最近の趣味はブームに乗っかったように見えてしまう「焚き火ごはん」。

目次

「広告を試しても効果が感じられない…」

「どの言葉がターゲットを引きつけるのか迷っている…」

マーケティングの役割を持ちながら、顧客の心理をつかむ方法がわからず、正確な戦略が立てられないと感じている方も多いのではないでしょうか?

この記事を読むことで、言葉の選び方やマーケティングのアプローチが変わる可能性が高まります。

プロスペクト理論とは?

プロスペクト理論は、経済学者ダニエル・カーネマンとアマーシュ・タヴェルスキーによって提唱された行動経済学の理論で、人々が意思決定をする際に損失に強く反応する心理的傾向を強調します。

この心理的な傾向は「損失回避」として知られ、以下の特徴があります。

  1. 損失は利得よりも大きく感じる: プロスペクト理論において、同じ金額の損失と利得がある場合、損失がより強烈に感じられます。
  2. 損失回避の優越性: 人々は損失を避けようとする傾向が強いため、同じ価値の利得と損失がある場合、損失を回避する選択をすることが一般的です。この傾向は、合理的な経済的計算とは異なり、感情やリスク回避に基づいています。
  3. 損失に反応する慎重さ: 損失回避の心理的傾向は、人々がリスクを避けるために慎重に行動する原因となります。リスクを冒すことよりも損失を避けることが優先され、保守的な選択肢が好まれることが多いです。
  4. 価値関数の非対称性: プロスペクト理論では、価値関数がS字型の曲線で表現され、損失と利得の評価が非対称的であることが示されます。損失による効用損失は、同じ金額の利得に比べて大きくなる傾向があります。

損失回避の心理的傾向は、消費者の意思決定や行動に大きな影響を与え、マーケティング戦略にも関連しています。企業は損失回避を考慮して価格戦略や広告キャンペーンを設計し、消費者が損失を最小限に抑えるような選択をする際に影響を与える方法を検討することが重要です。

損失回避の具体例

具体的な例を挙げて説明しましょう。

ある人が次の2つの選択肢を持っていると仮定しましょう。

選択肢1: 50%の確率で100万円を手に入れる。

選択肢2: 100%の確率で20万円を手に入れるが、ゲームを避けるためには一定の時間と労力をかける必要がある。

この状況において、理性的な選択であれば、選択肢1を選ぶことが最も合理的で、期待値が高い選択と言えます。なぜなら、50%の確率で100万円を得る期待値は50万円であり、それは20万円よりもはるかに多いからです。

しかし、損失回避の心理が働く場合、多くの人々は選択肢2を選ぶ可能性が高いです。なぜなら、選択肢1では100万円を失う可能性があるため、そのリスクを回避したいと感じるからです。また、選択肢2では確実に20万円を得ることができるため、損失を避けつつ確実な利益を得ることができるという安心感が影響します。

この例からもわかるように、損失回避の心理は人々の意思決定に大きな影響を与え、確率とリスクに対する感受性が意思決定に影響を及ぼします。

プロスペクト理論の核心

「プロスペクト理論」の核心である、人々の損失回避の傾向を一緒に探ってみましょう。

損失回避性とは、人々が「利益を求めるよりも損失を避けたい」と感じる心理的な特性を指します。損失のリスクを感じると、過度に慎重に行動するか、リスクに対して強い恐れを抱くことがあります。

前述の「100万円を手に入れるよりもゲームを避けて20万円を得る選択」のケースを考えると、この損失回避の特性が意思決定にどれだけ影響を与えるかが明らかです。

人々は損失に非常に敏感で、損失を回避しようとする傾向があります。

マーケティングの領域では、この損失回避性を理解し、適切に活用することが鍵となります。

フレーミング効果とは?

フレーミング効果は、情報や選択肢を提示する際に、その言葉や表現方法によって人々の意思決定や認識に影響を与える心理的な現象です。

同じ内容でも、異なる言葉やフレームで提示されると、人々の反応や判断が変わることがあります。

例えば、同じ割引情報を以下のように2つの異なるフレームで提示すると、反応が異なることがあります。

  1. 「この商品は20%割引中です。」
  2. 「この商品は定価から20%オフで購入できます。」

フレーミング効果によれば、1番の表現は割引が強調されており、人々はその商品を購入する可能性が高くなります。

一方で、2番の表現は「オフ」という言葉が使用され、元の価格からの割引が強調されています。この場合、人々は元の価格に注目し、割引にはあまり注意を払わないかもしれません。

フレーミング効果は、情報を提示する際に意図的に特定の視点や印象を強調することで、人々の意思決定に影響を与えるため、広告、マーケティング、政治的なメッセージ伝達などさまざまなコンテキストで活用されます。

フレーミング効果を理解し、適切なフレーミングを用いることは、メッセージの受け手に望ましい反応を促すために重要です。

マーケティングの中でのプロスペクト理論の活用法

マーケティングにおいて、消費者の心理や行動を理解し、戦略を立てることは至上の重要性を持ちます。その中でも、プロスペクト理論は消費者が損失回避の傾向を持つ心理を明らかにし、その特性を活かした以下2つのアプローチが可能です。

1. 「参照価格」という価格設定

参照価格は、消費者にとって価格を判断する基準となる価格です。これはプロスペクト理論において、損失回避の要因として非常に重要な役割を果たします。

以下の2つのケースで参照価格の活用が考えられます。

  1. アンカリング効果の活用: プロスペクト理論に基づくアンカリング効果は、消費者の価格判断において初めに提示された価格(アンカー価格)が、その後の価格判断に影響を与える現象です。マーケティング戦略として、高めのアンカー価格を最初に提示し、その後に実際の価格を提示することで、消費者はよりリーズナブルに感じ、購買意欲を高めることができます。
  2. 価格フレーミング: 価格を表現する際のフレーミングにプロスペクト理論の要素を取り入れることも有効です。たとえば、商品を「5000円で購入」ではなく、「2000円お得な5000円で購入」と表現することで、消費者は損失回避の心理から得を感じ、購買につなげやすくなります。

2.プロスペクト理論に沿った訴求のアイディア

プロスペクト理論に沿った訴求は、消費者の心理に訴えかけ、購買意欲を高めるためのアプローチです。

以下に、プロスペクト理論に基づいた訴求のアイディアを紹介します。

  1. 損失回避の言葉の活用: 広告やプロモーションで、損失回避に焦点を当てた言葉やフレーズを使用することが効果的です。例えば、「今すぐ購入しないと損をする!」や「お見逃し無く!」といったフレーズは、損失を避けるための行動を促します。
  2. リスク軽減の強調: 製品やサービスの安全性や信頼性を強調し、消費者がリスクを感じずに購買できる環境を提供します。これにより、消費者は損失を回避するために購買を選びます。
  3. 特典との比較: 製品やサービスの特典を、損失回避の観点

まとめ

プロスペクト理論を巧みに活用することで、顧客の心理に効果的にアプローチできます。

人々は利益を追求するよりも、損失を避けることに傾向があります。そのため、「プロスペクト理論」は、この感情を人々の行動選択に適用した理論と言えます。

プロスペクト理論を意識的に取り入れることで、営業やマーケティングの言葉選びや表現方法に新たな視点を持ち込むことができ、効果的なコミュニケーションを実現できるでしょう。

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