リスティング広告を始める際、「どれくらいの予算からスタートすべきか」「どれくらいの金額を使えばROIが得られるのか」など、コストに関する疑問を持つ方は多いでしょう。
リスティング広告には、「出稿必要額」の制約がなく、企業の予算に合わせて適切な出稿金額を設定できます。そして、最初に設定した額そのものがそのまま請求されるわけではなく、広告がクリックされる度に費用がかかります。
この記事では、リスティング広告の掲載をスタートするための予算の設定方法と、成功確率を高めるための要点について説明します。
リスティング広告の費用設定の仕組みとは?
リスティング広告は、「クリック課金型(CPC)」の形式で、ユーザーが広告をクリックした時のみ料金がかかります。そのため広告への関心がないユーザーからは、料金は発生しません。
クリックごとの単価はキーワードの選択によって変動します。
例えば、自動車や住宅金融などの高価格商品のキーワードはクリック単価が高い傾向があります。さらに特定のキーワードに関する広告枠の数は限られており、クリック単価はオークション方式で決定されます。
競争が激しいキーワードほど、クリック単価は上昇することが予想されます。
目標達成のための予算設定
リスティング広告において、明確な目的があるならば、以下の計算式を参考にしてみてください。
目標CPA × 目標CV数 = 必要な予算
目標CPAが10,000円、目標CV数が100件の場合、必要な予算は1,000,000円となります。
リスティング広告では、1クリックごとのコストや、日々の予算、月間の予算をダッシュボード上で容易に設定することが可能で、実際にクリックが行われた時だけ費用が発生します。
広告の目的を再確認し、適切な予算を設定しましょう。
広告予算設定、3つのポイント
1.広告成果が振るわないときの「撤退基準」
広告の最適化には「撤退基準」の設定が重要です。リスティング広告の目標は予算を使い切ることではなく、予算内で最高の成果を得ることです。
例)
- 予算: 300,000円
- 目標CPA: 10,000円
- 目標CV数: 30件
- 現状: 10日で予算の3分の1を使い、CVは2件、CPAは50,000円
このペースで続けると、予算を使い切っても目標の20%にしか届かないでしょう。
この場合、広告を一時停止することが検討すべきです。目標CPAに近づくのが難しいため、新しい戦略を考えることが賢明です。
リスティング広告はいつでも停止できるため、早めに「撤退基準」を設定し、それを超えた場合は戦略を再構築しましょう。
2.広告成果が期待以上の時の「増額基準」
リスティング広告が期待以上の成果を上げている場合、次に考えるべきは「増額のポイント」と「どの程度まで増やせるか」です。
成果が好調でも、予算制約で最大限の成果を出せないと競合に差をつけられるかもしれません。
競合の動向も予測が難しいため、チャンスを逃さないように、増額の条件を事前に明確にし、計画的にアプローチしましょう。
3.スタート時に過度な「予算設定」は避ける
予算設定において注意すべきポイントは、スタート時からの過度な予算設定です。
期待値が高くても、それに達しない場合、リスティング広告の効果を過小評価する可能性があり、最初の月で断念する必要もあります。
リスティング広告とはデータを分析し、改善を繰り返して効果を高める広告手法です。短期的な目標にとらわれず、2ヶ月や3ヶ月の長期的な視点で計画を立て、初月の予算を慎重に設定しましょう。
目標CPAの設定、3つの手順
リスティング広告の成果は予測が難しいため、データ収集が重要になってきます。時にはウェブサイトやフォームの最適化をするだけで、ユーザーエクスペリエンスが向上することもあります。
スタート時の予算設定に、時間を費やしすぎないようにするためにも、以下の3つの手順をもとに策定していきましょう。
1.一般的な相場を目安に策定する
リスティング広告のスタート時に、多くの企業は通常、20〜30万円の初月予算を設定し、また多くの広告代理店も月額30万円から運用を引き受けます。
月額30万円であれば、1日の予算はおおよそ1万円となります。この金額を考慮した上で、実現可能かどうかを検討しましょう。
業界やキーワードによる違いはありますが、一般的なリスティング広告のCVRは1〜2%程度を想定してください。CVR1%は、100人中1人がコンバージョンするレベルを示し、CVR2%は、100人中2人がコンバージョンするレベルを示します。
CPC(クリック単価)にはばらつきがありますが、最初のキャンペーンでは通常、100円程度で入札し、状況に応じて調整することが適切です。
1日の予算が1万円の場合、CPCが100円であれば、1日に100回のクリックが発生し、CVRが1〜2%ならば、少なくとも1つの成果が期待できます。
1日1万円、月間30万円の予算でスタートすることは、毎日の成果を生みながら運用を進める上で現実的だと考えられます。
2.クリック単価の相場から算出する
GoogleやYahoo!は、「考えているキーワード」と「上限のクリック単価」を用いて予想コストを算出するツールを提供していますので、このツールを有効活用しましょう。
算出された予想コストをそのまま予算として採用しても良いですし、先に述べた100回のクリックを目安に、クリック単価の相場から逆算して予算を設定しても良いでしょう。
少なくとも、目標CPAを超えない1日の予算を確保しましょう。
3.代理店に意見を求めて策定する
更に精緻な予算設定を目指す方は、広告の代理店にご相談されると良いでしょう。
リスティング広告専門の代理店は、業界別の予算やクリック単価の相場を知っています。
予算の確定に手間取っている場合、代理店への問い合わせが一つの方法となります。
実際に配信を開始すると、目標CPAでの獲得が可能かどうかが明らかとなります。
獲得が難しい場合、広告の設定やアピールポイント、競合商品の比較など、様々な角度からの見直しと改善策の検討が必要となります。
改善策の試験に要する予算を決め、目標CPAを達成できるかを再評価しましょう。
目標CPAを満たせる場合、どれだけのCVが得られるかを予測し、「目標CPA×目標CV数」で予算を固定します。
新たなリスティング広告の実践、3つの実例紹介
リスティング広告の予算に「正解」はありません。成果に応じて柔軟に予算を変動させられるからです。
次に、Lifrellが実際に手がけた3つの実例を紹介します。
実例1:予算に基づくリスティング広告の効果的な運用
このケースでは、最大30万円の予算を設定し、以下の2つのルールを厳密に守りました。
- 撤退の基準: CPA(コスト・パーアクション)が50,000円を超えた場合、広告を一時中断し、新戦略の検討を行うことにしました。
- 増加の基準: 広告の効果が上昇している場合、利益が上がる限り予算増加が可能です。初期の30万円を使い切り、その後追加予算を要求します。
広告を開始して1週間後、50,000円を使いながらも成果が出なかったため、ルールに従って広告を一時中断しました。データを分析した結果、申し込みフォームの特定のセクションでユーザーが離れていることが明らかになりました。
問題点を修正し、広告を再開すると、コンバージョン率が大幅に向上し、初期の30万円の予算を使い切りました。その後、追加の20万円を確保し、成果を拡大しました。
このケースでは、会社の許可された予算に基づいて予算上限を設定し、業界の標準やツールの見積もりに依存しない方法を採用しました。
実例2:3ヶ月のリスティング広告キャンペーン戦略
このケースでは、3ヶ月間のリスティング広告キャンペーンの計画を立案し、社内で共有しました。3ヶ月目に目標CPAを達成することを目指して、Google AdsとGoogle Analyticsを活用してビジョンを構築しました。
1ヶ月目では、高いCTRを記録し、クリック数は増加しましたが、予想外の検索クエリで広告が表示され、結果的に低いCVRと高いCPAが発生しました。 全社での議論の結果、2ヶ月目の目標を最初の1ヶ月目の目標に変更し、さらなる改善策を実行することになりました。 予め配信予想を社内で共有していたため、目標の変更もスムーズに進行しました。
このケースでは、Google Adsを使用して1ヶ月の予算を設定し、Google Analyticsを活用して3ヶ月先の配信ビジョンを策定しました。配信開始から1ヶ月は、目標CPAが達成できない場合も考慮し、余裕を持ってキャンペーンを開始しました。
事例3:管理画面の推奨をヒントに配信時を行いながら調整を行った例
このケースでは、サイトへのトラフィックを増やすことを主要な目標に、予算を100〜200万円確保し、広告キャンペーンを立ち上げました。
広告を開始した後、広告管理画面に表示される評価データを参考にして、幅広い調整を行いました。
広告キャンペーンの実行中に提供される自社向け評価データは、以前の評価ツールよりも高い正確性を備えており、計画通りに広告キャンペーンを進展させるのに役立ちました。
このケースでは、100〜200万円の予算を設定し、広告の実績に基づいて適切に予算を調整しました。
これらの事例は、初期の予算設定に多くの時間を費やすことなく、重要なポイントを設定し、広告キャンペーンの成果に応じて予算を柔軟に調整することを示しています。
市場調査や予測計算を行うことは重要ですが、実際の広告キャンペーンが開始されると、新たな事実が明らかになることもあります。予算設定には柔軟性があり、実際の成果に基づいて適宜修正できることに注意が必要です。
効果的にリスティング広告の費用を制限する4つのステップ
リスティング広告は調整の幅が広く、その活用次第で広告のコストを効率よく運用することができます。
STEP 1.除外したいキーワードを明確にする
広告を出稿する前に、予め想定される不要なキーワードを除外しておくことが賢明です。
たとえば、化粧品の会社が新しい顧客の獲得を目指しているのに、「自社製品名 ログイン/退会」といった既存の顧客が利用するであろう検索フレーズで広告を出稿し、彼らを有料広告に再度誘導するシチュエーションや、「自社名 年収/求人/説明会」という、求職者が使うであろう検索フレーズで広告が表示される場合が考えられます。
ターゲットとして狙うのは新しい顧客ですので、予め既存の顧客や求職者が利用しそうなキーワードをピックアップし、それらを除外しておくことで、広告の支出を効果的にコントロールすることが期待できます。
STEP 2.キーワードのマッチングを検討する
リスティング広告には異なる4つのマッチタイプが存在し、選択するマッチタイプによって、配信される検索クエリの範囲が大きく変わります。
「完全一致」というマッチタイプは、指定したキーワードとユーザーの検索フレーズが全く同じ場合のみ広告を表示するもので、これを重点的に採用することで、広告の支出の効果的な管理が可能となります。
STEP 3. 広告の質を向上させる
リスティング広告の表示順序は「広告ランク」で決まります。
高い広告ランクを持つと、貴社の広告がトップに表示されやすくなり、CPCの緩和や広告のコスト削減が期待できます。
広告ランクは次の式で計算されます。
※「広告ランク」は管理画面で直接確認することはできません。
広告ランク=上限クリック単価× 広告の質 + 広告表示のオプション + 広告の形式
つまり、上限クリック単価をどれだけ上げても、初めから広告の質が低い場合、表示される可能性が低く、結果としてROIが低くなるリスクがあります。
広告の質は推定クリック率や広告とランディングページの関連性などで決定されるので、広告文やタイトルがユーザーの関心を引くものになっているか、そしてランディングページの内容がユーザーの要求に応えるものかを定期的にチェックし、最適化していく必要があります。
STEP 4. ターゲットを絞り込む
リスティング広告はキーワードへの入札だけでなく、地域や時間帯、デバイス、年齢、性別など、様々な条件で配信を調整できます。
例えば、B2Bのサービスを提供している場合、選んだキーワードによっては、週の中で、特に平日や営業時間中にパフォーマンスの差が出ることがあります。
配信の時間、地域、年齢などを考慮し、パフォーマンスが低い場面での配信を制限することで、広告の効果を最大化することができます。
予算が合致しない際の検討事項
配信をスタートしてみると、計画していた予算に合致しない場面も発生します。以下のポイントを参照し、改善策を進めてみてください。
予算が計画を超えそうな場面
1.キーワードの優先順位を明確にする
可能性を秘めた全てのキーワードを対象にすると、計画予算を超過することがあるかもしれません。
そうした場合、リスティング広告の目的を再確認し、もっとも効果が期待できるキーワードに絞り込むことが肝心です。
安定した効率で拡大を考えていきましょう。
2. 社内の各施策との効率を見比べ、予算の移動を考慮する
これは全社の調整事項としては一段と複雑かもしれませんが、企業全体の収益を向上させるために、社内で実施している様々な施策の中から、リスティング広告への予算シフトができるものを見つけ、増額を検討するのも一策です。
計画よりも予算をセーブできそうな場面
1.キーワードのマッチタイプの再検討
以前の図を参照しつつ、マッチタイプを部分一致の方向にシフトすることで、広範な広告配信が可能となり、予算を伸ばすことが可能です。
2. 新しいアプローチでキーワードを洗い出す
現行のキーワードで予算がある程度、これまで対象としていなかったキーワードに対する出稿を考慮しましょう。キーワードの選定を増やすことで、予算を伸ばせます。
GoogleやYahoo!の管理画面では、出稿先のURLを利用してキーワードの候補を提供してくれます。
3. 上限クリック単価を調整する
上限クリック単価を増加させることで、表示回数が増え、予算をより使い切る可能性が生まれます。上限クリック単価を少しずつ上げ、ツールで試算を再確認しましょう。
4. 代理店活用の考察
上限クリック単価を高めると、表示の機会が増え、更なる予算使用が見込めます。上限クリック単価を段階的に調整し、ツールでの再試算を試みてみてください。
代理店利用と自社での運用の利点・欠点
こちらまでの情報を受けて、リスティング広告の予算に関しては、ある程度固まってきたかと思います。
次に、広告予算をどのように管理するのか、選択肢を検討していきましょう。
外部の代理店に管理を委ねる際、当然ですが手数料の支払いが発生します。
自社で専門家を採用する方法と比較し、迅速な目的達成への最善策を考えましょう。
代理店管理と自社運用の比較
代理店利用のメリット
- 最新のアップデートを伝えてくれる
- 社内の専門家の雇用が不必要
- 初回の設定や継続的な監視を委託できる
- 同業他社の例を教えてもらえる
代理店利用のデメリット
- 料金がかかる
- 企業内にノウハウが蓄積されない
- 自社の業界知識を理解してもらうための時間が必要
- 多くのクライアントを持つため、迅速な対応が難しい場合もある
自社運用のメリット
- 手数料がかからない
- 社内に知識が蓄積される
- 少ない予算の戦略も簡単に実行できる
- 迅速な運用が可能
自社運用のデメリット
- 常駐スタッフが必要
- 人件費が発生する
- 業務の移行が複雑
- 問題解決のための相談先が限られる
自社内のスタッフを広告の専門家として育成するにせよ外部からスキルを持った人材を採用するにせよ、いずれにしてもコストは発生します。
新しく雇用したスタッフが企業の期待に応えることができる保証もありません。
したがって、代理店の料金を支払うことを考慮しつつ、必要な期間だけ専門家に委ねる選択も考慮に入れるべきです。
内部での管理が可能であればそれに越したことはありませんが、初めは代理店との協力を通じて、基本的な業務手順や分析方法を学ぶことをおすすめします。
広告の管理を内部で行うことは、代理店との協力後でも遅くはありません。
広告代理店の料金体系
広告代理店の料金体系は主に3つのカテゴリーに分けられます。
手数料率型では、実際の広告の支出の15〜20%をサービス料として取るケースが多いようです。
特徴 | 手数料率型 | 定額型 | 成果報酬型 |
---|---|---|---|
料金計算方法 | クライアントの広告予算に応じて、売上の一定割合(通常は広告費の一部)を手数料として請求。 | クライアントとの契約で、月額または年間の固定金額を支払う。 | クライアントは広告の実際の成果に対して支払う。成果はクリック、リード、販売など、予め定義されたアクションに基づく。 |
利点 | 広告予算に比例して手数料が変動し、予算を調整できる。 | 予算が固定されているため、予算のコントロールが容易。 | 成果に対して支払いを行うため、ROIの向上が期待できる。 |
課題 | クライアントが広告費を増やすと、手数料も増加するため、高予算の場合にコストがかかることがある。 | 成果が上がらない場合でも料金が一定であるため、リスクがある。 | 成果が得られない場合、料金が発生しないため、代理店の収益が不安定になることがある。 |
適用事例 | 大手広告主や広告予算が変動するクライアント向け。 | 中小企業や予算が一定のクライアント向け。 | ウェブ広告やアフィリエイトマーケティング向け。 |
【実践編】今更聞けない!Google広告の「予算」はどの広告に対して使われている?
複数の広告を管理している会社で 特に陥りがちな罠について説明いたします。
Google 広告の予算とは何の単位で管理されているのでしょうか?
Google 広告の予算管理をしたことがあっても、実はその予算が何に対しての予算かが分かっていないという方が結構多いのです。
結論から言うと、Google広告の予算は「アカウント」で入金され、「キャンペーン」単位で管理されています。
Google広告は、キャンペーン、広告グループ、およびキーワードなどの要素から構成されます。
キャンペーンは、広告の配信対象や広告予算を管理するための上位のコンテナのことを指しています。
広告予算はキャンペーン全体の広告費の最大限度を定めるもので、通常、日単位または月単位で設定されます。
また、キャンペーン内の広告グループや、広告グループ内のキーワードごとに入札額を設定し、広告配信の詳細な制御を行うこともできます。
ただ、注意しなければならないのは「予算はキャンペーン単位で管理されている」と言う点です。
例えば15万円の広告予算があるとします。
その上で以下の運用をします。
・キャンペーン1
└広告グループ1
└キーワード1
└広告グループ2
└キーワード1
・キャンペーン2
└広告グループ1
└キーワード1
この場合、15万円全部キャンペーン1に使ってしまうと、キャンペーン2に回す費用がなくなってしまいます。
そのため設定はまず
キャンペーン1に10万円
キャンペーン2に5万円
としましょう。
その上で、キャンペーン1の広告グループ1と2で5万円ずつ分配することになります。
予算の入金管理はアカウント単位で行うため、キャンペーンの運用担当が違う場合は予算の取り合いになってしまうリスクがあります。担当者同士で連携をしっかり取るように注意してください。
以前あったのは、期間限定の広告をキャンペーンで配信し、その広告の予算も使い終わって配信が終了したためそのままにしていました。
その後、別のキャンペーンを作成して配信したのですが、その際に入金した分が止められていなかった前の広告の配信にまで回ってしまっていたのです。
こういったことに陥りがちなので、予算の管理をする場合は、現在いくつキャンペーンがあって、どれが有効になっているかという点に注意するようにしましょう。
まとめ
これまでにも強調してきた通り、リスティング広告の予算には厳格な決まりは存在しません。まずは配信を開始することが非常に重要です。
実際に配信を開始しない限り、理論や計画だけではなく、実務経験も得ることは難しいです。
実際の配信を行いながら、データを収集し、広告キャンペーンの品質を向上させることを目指しましょう。