フィールドセールスの全て: インサイドセールスとの違いと効果的な連携戦略

監修者

佐藤 祐介
佐藤 祐介

株式会社LIFRELL代表取締役。大手代理店、株式会社オプト、電通デジタルの2社でアカウントプランナーを経験。その後、株式会社すららネットでインハウスマーケターとして事業の立ち上げからマザーズ上場水準まで事業を伸長させる。マーケティング戦略の立案からSEO/WEB広告/SNS/アフィリエイト等の施策で売上にコミット。

専門家

深瀬 正貴
深瀬 正貴

Yahoo株式会社 法人マーケソリューション出身。 鎌倉の海のそばでオフィスFHを運営。 リスティングやSEOをはじめとしたデジタルマーケティングで100社以上の売り上げ課題を解決。
最近の趣味はブームに乗っかったように見えてしまう「焚き火ごはん」。

目次

現代の商環境は、顧客の選択基準の進化と共に、パンデミックの広がりによっても、大幅な変革を迫られています。このような時代の変化に伴い、企業と消費者との間の関わり方も新たな段階へと移行しているのが現状です。

この変化の中で、特に注目を集めているのが「インサイドセールス」という手法です。これは、従来のフィールドセールスとは異なり、Webベースの会議システムなどを駆使して、物理的な距離を越えた営業を実現する方法です。このアプローチは、営業のプロセスを効率化し、リモートワークが常態化する中での新しい働き方を提案しています。

では、このような背景のもと、従来型のフィールドセールスはもはや時代遅れで、重視されるべきではないのでしょうか?それとも、改めてその価値を見直し、現代のビジネス環境における役割を探求するべきなのでしょうか?

本稿では、フィールドセールスの本質について改めて考察し、インサイドセールスとの根本的な違いを明らかにすると共に、パンデミックがもたらす影響下でのフィールドセールスの立ち位置と、将来に向けてのフィールドセールスの展望について、やさしい視点から探ります。

訪問型営業(フィールドセールス)の概要

訪問型営業、一般にフィールドセールスとして知られるこの手法は、直接顧客や潜在的な顧客のもとを訪れ、対面で製品やサービスに関する情報を提供し、商談を推進し、最終的には契約締結に至るプロセスを指します。

この伝統的な営業アプローチに対して、インサイドセールスという手法が存在します。この「内勤型営業」は、対面ではなく、電話や電子メール、ダイレクトメール(DM)などを駆使して潜在顧客との関係構築を図るものです。

インサイドセールスとテレフォンアポイントメントの相違点

インサイドセールスにおいては、主に電話を使ったコミュニケーションが行われます。この点で、インサイドセールスはしばしばテレフォンアポイントメント(テレアポ)と同一視されがちですが、実際には両者には明確な違いが存在します。

テレアポは、電話を通じて商談の機会を設けることを第一の目的とし、その成果はアポイントメントの数によって測られます。ここでは、量の確保が重視され、質よりも多くのアポイントメントを取得することが目標とされます。

一方で、インサイドセールスは、単に商談の機会を増やすことも大切ですが、それ以上に潜在顧客との関係構築に重点を置きます。ヒアリングによる情報収集や、継続的なコミュニケーションを通じて顧客との信頼関係を深め、最終的な受注に結びつけることを目指します。

さらに、テレアポが電話やメールといった限られたコミュニケーション手段に依存するのに対し、インサイドセールスではこれらに加えてDMやチャット、オンライン営業ツールなど、より多様な手段を活用して潜在顧客と接触します。このような広範なアプローチによって、インサイドセールスはより複雑で深みのある顧客関係の構築を目指しています。

パンデミック時代における訪問型営業の必要性

新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、訪問型営業の実施に大きな変革をもたらしました。特に2021年5月時点で、従来のように展示会やセミナーなどの対面イベントを開催することが難しい状況にあります。また、訪問営業における感染リスクの懸念から、顧客によっては対面での商談を避ける傾向も強まっています。

このような状況の中で、インサイドセールスが重要性を増していることは明白です。

インサイドセールスを通じた商談の実現率

2020年5月に株式会社インターパークによって行われた調査によると、インサイドセールスを採用している企業の約60%が、この手法を用いて商談に至ったことを報告しています。このデータは、インサイドセールスがただ見込み客とのアポイントを取るだけではなく、新型コロナウイルスの影響を受けて制約されるフィールドセールスの代替として、実際の商談や成約に至るまでの役割を果たしていることを示しています。

この事実が示すように、訪問型営業がこれまで担ってきた役割の一部がインサイドセールスに移行している現状があります。それにもかかわらず、訪問型営業が完全に不要になったわけではありません。

訪問型営業の成約率向上への貢献

インターパークの調査によれば、オンラインでの商談を経て訪問型営業へと引き継がれるケースでは、その成約率が向上していることが示されました。その成約率は、調査に参加した営業職の約80%で向上していると報告されています。これは、対面でのやり取りが顧客に与える信頼感や親近感、コミュニケーションの円滑化が大きな要因として考えられます。オンライン商談では、直接顔を合わせることで得られるこれらの利点が欠けることがあるため、訪問型営業の価値は依然として高いと言えるでしょう。

新型コロナウイルスの影響下において、インサイドセールスのみに焦点を当てるのではなく、インサイドセールスと訪問型営業の両方を効果的に組み合わせることで、営業活動の成果を最大化できることが示されています。

「パンデミックによりインサイドセールスに注力すべき」との考えが一般的ですが、訪問型営業独自の顧客との深いつながりや信頼構築の機会を提供する価値は、依然として重要です。そのため、どの段階でインサイドセールスを活用し、どの段階で訪問型営業に切り替えるかを慎重に検討し、両者のバランスを取ることが成功への鍵となります。

訪問営業とオンライン営業の成約率の差異

パンデミックの影響で、従来の訪問営業が難しくなった現在、オンラインでの商談が一般的になりつつあります。これにより、「オンライン営業では成果が出にくいのではないか」という懸念が生まれがちです。しかし、Hubspotの2021年2月の調査によると、リモート営業を導入した企業の成約率は42.2%に対し、導入していない企業では39.1%と、成約率に大きな差は見られません。

オンライン商談には、移動にかかる時間やコストを削減できる、オンラインでの資料共有が容易であるといった利点があります。さらに、訪問機会の減少による顧客との接触頻度の低下を補うためには、メールを利用するなどの工夫も有効です。ここで重要なのは、メールを適切に活用し、顧客に価値を提供する内容を送ることです。新製品の案内や季節の挨拶、イベントのお知らせなど、メールを通じて顧客との関係を維持、強化する機会は多く存在します。

企業の成長戦略における営業手法の選択

企業が継続的な成長を達成するためには、売上の向上が不可欠です。これは、インサイドセールスであろうとフィールドセールスであろうと、その重要性に変わりはありません。

フィールドセールスとインサイドセールス、どちらの手法がより効果的かという議論よりも、自社の限られたリソースを考慮した上で、どちらの手法を選択し、どのように活用するかが重要であるという点を強調したいと思います。

そのうえで、フィールドセールスとインサイドセールス、どちらに焦点を当てるべきかは、一概には言えない問題です。

すべてのビジネスモデルや業界でインサイドセールスの導入が成功につながるわけではないからです。自社の製品やサービスの性質、ターゲット顧客の特性に応じて、両者の役割を適切に配分し、それぞれの連携を強化することが、営業効率を高める鍵となります。

たとえば、自動車や不動産のような高価格帯の製品を扱う場合、顧客は購入前に製品を直接確認したり、営業担当者と直接相談したいというニーズが強い傾向にあります。このような状況では、フィールドセールスの役割が特に重要になります。

フィールドセールスとインサイドセールスのシナジー

フィールドセールスとインサイドセールスがどのように連携すべきか、その具体的な方法を掘り下げてみましょう。営業活動をより効果的に行うためには、各営業手法のメリットを活かした連携が必要です。

一般的には、リード獲得や顧客との初期の関係構築など、営業プロセスの初期段階をインサイドセールスが担当し、商談の進展や成約を目指す段階をフィールドセールスが引き継ぐという分業が効果的です。

多くの企業では、営業プロセス全体を十分に理解していないことがあります。インサイドセールスとフィールドセールスが効率的に連携するには、まず自社でどの程度のリードが生まれているかを把握し、それぞれの営業手法がどのような役割を果たし、全体のビジネス目標達成にどのように貢献するかを明確にする必要があります。

実際には、全てのリードに対して直接営業活動を行うことは、リソースの制限から非現実的です。その結果、購入意欲の高いリードにのみ対面営業を行い、それ以外の潜在顧客は十分なフォローを受けられずに見過ごされがちです。

この問題を解決するために、インサイドセールスの遠隔営業手法を利用して潜在顧客を育成し、購入意欲を高めた段階でフィールドセールスによる直接の営業活動に移行するという流れを確立することが、成功への鍵となります。このように、インサイドセールスとフィールドセールスを適切に連携させることで、営業効率の最大化と、より多くの成約を実現することが可能になります。

インサイドセールスとの効果的な連携戦略

企業の営業チームが直面している主要な課題の一つは、如何にして営業活動を効率化し、同時にリードの機会損失を最小限に抑えるかです。インサイドセールスとフィールドセールスの連携は、この二つの目標を達成するための鍵となります。実際の例を挙げて説明すると、もっと理解しやすくなるかもしれません。例えば、あるSaaS企業が年間平均で1,000万円のクライアント収益を目指している場合、その成果は以下のように変化する可能性があります。

  • フィールドセールスだけで見込み客100名にアプローチした場合の10%の成約率で、成約10社、売上1億円。
  • インサイドセールスとフィールドセールスが連携し、同じ見込み客に対して30%の成約率を達成した場合、成約30社、売上3億円。

この例からわかるように、インサイドセールスとの連携によりフィールドセールスは、より購入意欲の高いリード、つまり「すぐに購入可能な顧客」に集中できるようになります。インサイドセールスが顧客との初期コミュニケーションを通じて収集した情報を共有することで、フィールドセールスは顧客のニーズを事前に把握し、商談をより有意義なものにすることができ、結果的に成約率の向上と売上の増加が期待できます。

ただし、インサイドセールスの導入やフィールドセールスとの連携がすべての企業にとって即座に必要というわけではありません。特に月間のリード数が少ない場合、インサイドセールスの活用による効果は限定的です。また、月間で獲得される「すぐに購入可能な顧客」の割合や、連携による売上の増加見込みなど、さまざまな要因を考慮する必要があります。

営業チームが把握すべきインサイドセールスとの協業ポイント

ここでは、マーケティングやインサイドセールスなど、企業の売上に直結する部門の担当者が理解しておくべき、フィールドセールスへのアプローチポイントを明らかにします。

リード情報の収集と共有の重要性

インサイドセールスからフィールドセールスへのスムーズなリードの引き渡しを成功させるためには、顧客との過去のやりとりや、顧客の具体的な期待値などの情報の共有が不可欠です。この共有がない場合、フィールドセールスが顧客の期待と異なるアプローチをしてしまい、商談の機会を逃す可能性があります。

特にBANT(予算、権限、ニーズ、タイミング)の情報は、どの部門がどの情報を収集し、どのように共有するかを明確にする必要があります。例えば、価格帯が比較的低い製品では、インサイドセールスが電話で直接情報を収集することが可能ですが、高価格帯の製品の場合は、フィールドセールスが直接関与することが一般的です。

インサイドセールスへのフィードバックの必要性

フィールドセールスは、インサイドセールスから引き継がれたリードが成約に至ったか、または失注したかをインサイドセールスにフィードバックすることが重要です。このフィードバックには、成功したケースや失敗したケースの詳細、顧客からの反応や要望など、貴重な情報が含まれています。これらの情報は、インサイドセールスがより効果的なリード生成やフォローアップを行うための基盤となります。

適切なツールの選定と活用

インサイドセールスとフィールドセールスの連携を支援するためには、SFA(Sales Force Automation)やMA(Marketing Automation)などのツールの導入が効果的です。これらのツールは、顧客情報の管理、営業活動の進捗の追跡、効率的なコミュニケーションの促進など、営業プロセスの最適化をサポートします。

しかし、これらのツールの導入には費用がかかりますし、適切に活用するためには運用コストも考慮する必要があります。そのため、自社のニーズや予算に合わせて、最適なツールを慎重に選定することが重要です。

結論|インサイドセールスとフィールドセールスの協働による営業力の向上

この記事では、フィールドセールスの基本から、インサイドセールスとの連携に関する実践的なアドバイスに至るまでを解説しました。

新型コロナウイルスの影響により、従来の営業方法に変化が求められている今、インサイドセールスとフィールドセールスの適切な連携は、企業の売上向上に不可欠です。しかし、この連携は一方的なものではなく、相互の理解と情報共有、適切なツールの活用が必要です。

リード情報の共有、インサイドセールスからの適切なフィードバックの受け入れ、そして正しいツールの選定と活用により、営業チームはそのポテンシャルを最大限に引き出し、企業の成長を加速させることができます。