Google広告の動的リマーケティング完全ガイド:基本から始める効果的な戦略

監修者

佐藤 祐介
佐藤 祐介

株式会社LIFRELL代表取締役。大手代理店、株式会社オプト、電通デジタルの2社でアカウントプランナーを経験。その後、株式会社すららネットでインハウスマーケターとして事業の立ち上げからマザーズ上場水準まで事業を伸長させる。マーケティング戦略の立案からSEO/WEB広告/SNS/アフィリエイト等の施策で売上にコミット。

専門家

深瀬 正貴
深瀬 正貴

Yahoo株式会社 法人マーケソリューション出身。 鎌倉の海のそばでオフィスFHを運営。 リスティングやSEOをはじめとしたデジタルマーケティングで100社以上の売り上げ課題を解決。
最近の趣味はブームに乗っかったように見えてしまう「焚き火ごはん」。

目次

ショッピングモールを楽しむ際、様々な店舗を巡るうちに、ふと見つけた気になる洋服のお店をどこで見たのか思い出せなくなることがありませんか?このような状況は、オンラインでの買い物においても同様で、多くのECサイトを往復していると、時間が経つにつれて最初に目をつけた商品のことをすっかり忘れてしまい、結局は別の商品を渋々購入することになることがしばしばあります。商品を提供する側としては、顧客に商品に興味を持ってもらえたものの、その後忘れ去られてしまうというのは非常に残念なことです。

そこで注目したいのが、「動的リマーケティング」の活用です。この技術は、ユーザーが以前に閲覧した商品を再び目にする機会を提供し、その興味を再燃させることを可能にします。特にGoogle広告を通じた動的リマーケティングの仕組みは、その効果的な展開方法として多くのマーケターに利用されています。

今日は、ユーザーが以前に閲覧した商品をうまく取り戻し、再びその魅力に気づかせることができるGoogle広告の動的リマーケティングの具体的なメカニズムと、その導入方法について、より詳しくお伝えします。この情報を活用して、販売促進の効果を最大化させることができるでしょう。

Loei, Thailand – May 10, 2017: Hand holding samsung s8 with mobile application for Google on the screen

動的リマーケティングの活用

商品の種類が豊富にある場合、それぞれに興味を示したユーザーへの個別対応は一層困難になることが予想されます。この点で、動的リマーケティングの活用は大きなメリットをもたらします。ユーザーが以前訪れた商品ページなどの行動履歴を基に、自動的に商品情報を組み合わせたクリエイティブを生成し、ディスプレイ広告として表示することが可能になるのです。広告の配信先としては、YouTubeやGmailなどのGoogle提供サービスのみならず、食べログやlivedoorといった大手サイトも含む広範囲のGoogle AdSenseを活用するサイトが対象となります。

動的リマーケティングでは、「タグ」というユーザーの行動を追跡する仕組みと、「商品フィード」と呼ばれる商品情報のデータベースを用いて、ターゲティングや広告のクリエイティブを個々のユーザーに合わせて自動調整することができます。クリエイティブは商品フィードに登録された情報を基にして表示され、通常、複数の商品を一つの広告内に掲載し、それぞれの商品画像をクリックすることでユーザーを該当する商品の詳細ページへと導くことができます。

特に、職種が多岐にわたる求人サイトや商品ラインナップが豊富なECサイトなど、ターゲットや展示したいクリエイティブが商品ごとに異なるサービスにおいて、動的リマーケティングは格別に有効です。オーディエンスリストを細かく分類しなくても、自動でユーザーの関心にマッチした商品を選んで表示することができるため、コストパフォーマンスを維持しながらも、売上の向上を見込むことが可能になります。動的リマーケティングのしくみ

動的リマーケティングのしくみ

動的リマーケティングは、広告主のサイトに設置されたタグを通じて収集されるユーザーの行動データと、商品フィードに含まれる詳細な商品情報を巧みに組み合わせることで機能します。このプロセスにより、どのユーザーに対してどの商品を表示することがその人の興味を引く可能性が高いかを精密に判断し、それに基づいて広告を効果的に配信することが可能になります。

例えば、あるユーザーがサイトでシャンプーの商品ページを見ているものの、最終的に購入に至らずにサイトを離れてしまった場合を考えてみましょう。そのサイトに動的リマーケティングのタグが設置されていれば、ユーザーが閲覧した商品のIDや価格などの情報が収集されます。そして、これらの行動履歴データを基に、ユーザーが購入を検討していた商品や関連商品を広告として再び提示することで、購入へと結びつける可能性を高めるのです。

このように、動的リマーケティングはユーザーの過去の行動を重要な手がかりとして利用し、彼らが興味を持ちそうな商品を効率的に提示することで、興味の再燃や購入への動機づけを促します。その結果、広告主はより関連性の高い広告配信を行い、効果的なマーケティング活動を展開することができるのです。

動的リマーケティングの始め方

動的リマーケティングを効果的に始めるためには、以下の3つの基本的なステップを完了させる必要があります。

  1. タグを設置する
  2. 商品フィードをアップロードする
  3. 広告管理画面で配信設定を行う

タグの設置、商品フィードのアップロード、そして広告管理画面での配信設定の実施です。

1. タグを設置する

動的リマーケティングキャンペーンを展開するにあたり、Google広告タグをウェブサイトに設置することが必須となります。このタグは主に「Google タグ」と「イベントスニペットタグ」の二つの部分から成り立っています。

Googleタグとイベントスニペットタグの組み合わせにより、ユーザーがサイト内で閲覧した商品やサービスのID、カートに追加した商品やその金額など、ユーザーの行動に関する詳細な情報が収集されます。この収集されたデータは、リマーケティングの配信戦略において極めて重要な役割を果たし、Googleタグと連携して、ユーザーのサイト内での行動をより深く理解し、その情報を基にリマーケティングの広告を最適化し配信することが可能となります。

これらの手順を適切に実行することで、動的リマーケティングのキャンペーンはより効果的にユーザーにリーチし、最終的な購入行動に繋がる可能性を高めることができます。

Google Ads管理画面

①管理画面の右上の「ツールと設定」より「オーディエンスマネージャ」をクリックします。

② 左タブから「データソース」を選択し、Google広告タグの「タグを設定」を選択します。

③ リマーケティング欄で「お客様のウェブサイトでユーザーが行った特定の操作に関するデータを収集してパーソナライズド広告を表示します。」を選択すると、サイト内のユーザーの行動履歴を識別するのに必要なイベントスニペットが利用可能になります。

業種の欄で該当の業種を選択したら「保存して次へ」をクリック

④タグの管理状況に合わせてタグの設定方法を選びます。今回は例として「タグを自分で追加する」を選択します。

⑤Google タグとイベントスニペットタグが表示されます。タグをコピペで取得したら、ウェブサイトに設置します。

Google タグは、ウェブサイトの各ページの<head></head>タグの間に設置します。Google タグは広告アカウントごとに1つだけ設置すれば良いので、すでに設置済みの場合は追加設置は不要です。イベントスニペットは、Google タグの直後の<head></head>タグ間に設置します。

また、イベントスニペット内の値は、一部ソースの書き換えが必要です。

イベントスニペットは、ユーザーの行動を識別する「イベント名」と商品情報を識別する「アイテムパラメータ」があります。

イベント名

商品ページであれば [view_item] 、購入完了ページであれば [purchase] など、ページの種別に応じてイベント名を出し分けます。これにより、ユーザーがサイト内でどんなページに訪れたのかを識別できるようになります。

アイテムパラメータ

商品に関する情報を設定します。商品ページでは表示されている商品について、カートページや購入完了ページではカートに含まれる商品についてのデータを渡すことで、ユーザーがどの商品を閲覧/購入したのかを識別できるようにします。

使用可能なパラメータは、「1.タグを準備する」の手順③で選択した業種によって異なります。詳しくは、下記のヘルプをご参考ください。

パラメータルールは、広告表示の粒度や、サイト階層のデータ構造も踏まえて決める必要があります。広告運用者、ウェブサイトを管理するシステム担当者も交えて議論するとスムーズです。

2. 商品フィードのアップロード

動的リマーケティングキャンペーンを成功させるための次の重要なステップは、商品フィードのアップロードになります。

このプロセスは、従来の広告キャンペーンとは一線を画しており、広告クリエイティブを個別に提出する必要がなく、代わりに商品フィードの詳細に基づいて広告が自動的に作成されます。

小売業者はMerchant Centerを利用

特に小売業者の場合、Google Merchant Centerを活用して商品情報を登録し、その後Google広告との連携を行うことで、効率的に広告配信を開始できます。このプロセスを通じて、小売業者は自社の商品をより広範囲にわたる潜在顧客に紹介するチャンスを得られます。

また、小売業以外の業種においても、フィードの形式は業種によって異なります。例えば、旅行業界では「目的地名」、不動産業界では「物件タイプ」といった特有の属性がフィードに用意されています。これにより、各業種に最適化された広告配信が可能になります。

業種に応じた適切なフィードを作成する

以下の手順に従います。

  • Google広告ヘルプから自分の業種のテンプレートをダウンロードする
  • テンプレートに沿って商品フィードを作成する

まず、Google広告ヘルプから該当する業種のテンプレートをダウンロードし、そのテンプレートに基づいて商品フィードを作成します。対応しているファイル形式は多岐にわたり、.csv、.tsv、.xls、.xlsx、Googleスプレッドシート、そしてHTTP、HTTPS、FTP、SFTPが利用可能です。

テンプレートには任意項目も含まれていますが、可能な限り多くの情報を提供することが推奨されます。なぜなら、Googleへ提供する商品情報が豊富であればあるほど、機械学習による精度の高い広告配信が実現するからです。管理画面より商品フィードをアップロードする

管理画面より商品フィードをアップロードする

商品フィードを用意できたら、管理画面から商品フィードをアップロードします。

①管理画面上部の「ツールと設定」から「ビジネスデータ」を選択します。

②「+」ボタンをクリックして「動的広告フィード」を選び、業種を選択します。

③フィード名を登録し、ファイル形式を選択して商品フィードをアップロードします。これで商品フィードのアップロードは完了です。

アップロード後、商品フィードの内容の審査が行われるので、不承認やエラーがないかを後日確認しましょう。

商品フィードの更新

商品フィードをアップロードした後は、情報の定期的な更新が非常に重要です。広告表示中の価格とウェブサイト上の価格に矛盾があると、ユーザーの信頼を損ねることになりかねません。理想的には、商品フィードを常に最新の状態に保つことが望ましいです。Merchant Centerでは、30日以上更新されていない商品フィードは期限切れとみなされ、広告から除外されるため、定期的な更新が必須となります。加えて、在庫や価格の変動も頻繁に発生するため、できれば毎日の更新が推奨されています。

しかし、毎日の更新が難しい場合や、一日に何度も更新が必要な状況の場合は、サイトを自動的にクローリングして金額や在庫情報を更新する機能の利用を検討すると良いでしょう。このような機能を利用することで、商品情報を常に最新の状態に保ち、ユーザーに最適なショッピング体験を提供することが可能になります。

3. 広告管理画面で配信設定を行う

商品フィードの設定が終わったら、キャンペーンを作成し動的リマーケティングの配信設定を進めていきましょう。

キャンペーンの作成まずは、キャンペーンを作成します。

①管理画面より「新しいキャンペーンを作成」をクリック

②キャンペーンの目標とコンバージョン目標を運用指標に合わせて任意で選択して「続行」をクリック

③キャンペーンタイプで「ディスプレイ」を選択して「続行」をクリック

④プロモーション対象のウェブサイトとキャンペーン名を入力して「続行」をクリック

⑤配信地域・ユーザーの言語など、配信したい内容を画面の項目に沿って設定後、「その他の設定」の中にある「動的広告」をクリック

⑥「パーソナライズド広告向けの動的広告のフィードを使用する」にチェックを入れます。

⑦チェックを入れると追加の設定項目「データフィード」が表示されますので、先ほどアップロードした商品フィードをプルダウンリストから選択します。

選択後、さらに追加で表示される「商品フィルタ」を設定します。基本的には「フィルタなし」を設定します。広告掲載したくない商品が含まれている場合は「フィルタ適用」を選択して、配信対象にするデータの条件を設定します。

⑧キャンペーンの1日の予算と入札戦略を設定し、「次へ」をクリック

⑨ターゲット設定で、「ユーザーがお客様のビジネスを利用した方法」からリマーケティングリストを選択し「完了」をクリックでキャンペーンの設定完了です。

※初期設定ではターゲット設定はキャンペーン設定に含まれますが、キャンペーン作成後は広告グループで設定します

広告設定

Merchant Centerへ商品情報を登録した後、一部の方々は、これで広告のクリエイティブ作成の必要がないと考えるかもしれません。しかし、動的リマーケティングキャンペーンにおいては、少なくとも一つのデフォルト広告を準備しておくことが必須です。この準備は、商品データを利用しての広告配信が何らかの理由で行えなくなった際に、引き続き広告配信を可能とするための安全策として機能します。

このデフォルト広告は、動的リマーケティングキャンペーン全体の効果を支えるバックアップとしての役割を果たします。たとえば、商品データに一時的な問題が生じたり、特定の商品に関する情報が更新中であるなど、予期せぬ状況が発生した場合でも、このデフォルト広告があれば、キャンペーンの継続性を保ちながら、ターゲットとなるオーディエンスに対して連続的にアプローチすることが可能になります。

したがって、Merchant Centerへの商品情報登録が完了した後も、動的リマーケティングの成功をさらに確実なものにするためには、少なくとも一つのデフォルト広告の準備をお忘れなく。この一手間が、万が一の時にも広告の連続性を保ち、キャンペーンの全体的な効果を損なわないようにするための鍵となります。

では、ここからは広告の設定方法を紹介します。

ターゲット設定までを完了すると以下の広告作成画面が表示されます。

⑩レスポンシブディスプレイ広告の最終ページURL・広告見出しなど各種入力項目を作成して「次へ」をクリック

⑪確認画面でエラーや間違いがないことを確認したら「キャンペーンを公開」をクリックして設定完了です。広告と商品フィードの審査が完了次第、広告配信が開始されます。まとめ

まとめ

動的リマーケティングは、特にショッピング広告を活用している小売業の広告主にとって、導入が比較的容易であることから強く推奨される戦略です。このアプローチは、既にショッピング広告のフレームワークを利用している企業にとって、追加の大幅な準備作業を必要とせず、スムーズに適用可能です。

一方で、小売業以外の分野では、動的リマーケティングを導入する際の障壁がやや高いと感じられるかもしれません。タグの設定や商品フィードの準備など、通常のディスプレイ広告と比較して、より複雑な設計や準備が必要になるため、導入をためらっている事業者も少なくないでしょう。

しかし、この戦略の本質的な価値は、特に多岐にわたる商品やサービスを提供している業界において、ユーザー一人ひとりにカスタマイズされた広告を表示し、個別にアプローチできる能力にあります。このパーソナライズされたアプローチは、ユーザーにとって大きな利益をもたらし、業種を問わず魅力的なマーケティング施策としての価値を持ちます。

さらに、商品フィードを基にした広告戦略は、Google広告に限らず、多様な広告媒体で利用可能です。これは、使用される商品フィードが媒体によっては細部の属性に違いは見られるものの、Googleのフィードで要求される属性と多くの共通点を持っているためです。この広い互換性は、広告主が最初に試みるプラットフォームとしてGoogle広告を選ぶ大きな理由の一つとなり、広告戦略の柔軟性と展開の幅を広げることを可能にします。

このように、動的リマーケティングはその導入の容易さ、パーソナライズされたアプローチの効果、そして広告展開の多様性を通じて、多くの業種にとって有益なマーケティング手法であり、特に商品フィードを活用することで、広告主にとっての可能性を大きく広げることができます。