2017年の夏にお伝えした内容を再度触れさせていただきますが、Google Chrome(以下、Google Chrome)が展開する広告表示の取り組みについての更新があります。具体的には、Better Ads Standardsに準拠していないウェブサイト上での広告表示を、2018年よりGoogle Chromeでは制限する方針が、米国時間の2018年2月15日から施行されることが、改めて公表されました。この動きは、ユーザー体験を向上させることを目的としており、不快な広告からユーザーを守り、より快適なウェブ閲覧環境を提供するためのものです。Google Chromeは、この新たな施策を通じて、インターネットの健全な広告エコシステムの構築に貢献することを目指しています。
Google Chrome による広告ブロック機能についてのおさらい
以前の記事で触れた内容を簡潔におさらいさせていただきます。
GoogleやFacebook、そしてインタラクティブ広告業界の重要な組織であるIAB(The Interactive Advertising Bureau)などが参加している、Coalition for Better Adsという団体が中心となって実施した調査に基づき、オンライン上での広告体験を向上させるための基準が設けられました。この調査は、ユーザーがどのような広告を好ましくないと感じるかを明らかにし、それに基づいて「Better Ads Standards」と称される、受け入れ可能な広告のガイドラインを定義しました。
この基準に従わない、つまりユーザー体験を損なうと判断される種類の広告は、Google Chromeによって自動的にブロックされる機能が導入されることになりました。この措置は、オンライン広告がユーザーにとってより受け入れやすい形で提供されることを促進し、全体的なウェブの体験を改善することを目指しています。このような取り組みにより、Google Chromeは利用者にとってより快適なブラウジング環境を実現するための重要な一歩を踏み出しています。
Better Ads Standards に準拠しない広告タイプとは
Better Ads Standardsに準拠しない、つまり広告体験を著しく損なう可能性がある広告タイプについては、特に注意が必要です。これらの広告は、ユーザーにとって不快であり、結果としてブロックの対象となり得ます。
もし現在、これらの基準に適合しない広告タイプを使用している場合は、ユーザー体験を向上させるためにも、可能な限り速やかに他の広告形式への転換を検討することが推奨されます。これは、広告が効果的にその目的を果たすためには、受け手にとって受容可能な形である必要があるためです。広告体験を改善することは、長期的に見て、ウェブサイトの訪問者との関係を強化し、信頼を築く上で非常に重要です。したがって、Better Ads Standardsに沿った広告タイプへの変更は、サイト運営者にとって賢明な選択と言えるでしょう。
Better Ads Standards に準拠しない広告が設置されたサイトにおける、Google Chrome の挙動は?
Better Ads Standardsに準拠していない広告を掲載しているウェブサイトに対して、Google Chromeがどのように対応するかについては、Chromiumの公式ブログで詳しく解説されています。ここでは、そのプロセスを簡潔にご紹介します。
Google Chromeはサイト上の広告がBetter Ads Standardsに準拠しているかをチェックします。
準拠していない場合、広告を配信するためのJavaScriptや画像などのネットワークリクエストが特定され、広告関連のURLパターンリストと照合されます。このリストに一致するリクエストが発見された場合、Google Chromeはそのネットワークからのリクエストをブロックし、結果としてページ上に広告が表示されなくなります。
重要な点として、広告のフィルタリングは広告ネットワークレベルで行われるため、もし特定の広告ネットワークにおいて一つでもBetter Ads Standardsに準拠していない広告タイプが設置されている場合、そのネットワークの他の広告もすべてブロックされる可能性があります。これは、ある種の連帯責任とも言える状況です。
サイト上の広告はネットワークレベルでフィルタリングされる
広告ブロックに至るまで、実際にどのような仕組みが働くかの大まかな流れを次に示します。
- Google Chrome 側で Better Ads Standards に準拠しているかどうか確認される
- 準拠していない場合は、JavaScriptや画像などによるネットワークリクエスト(広告枠から発せられる広告素材の送受信など)と、広告関連のURLパターンリストと照合される
- URLパターンリストに一致した場合、そのネットワークからのリクエストをChromeがブロックし、ページに広告が表示されなくなる
補足情報として、広告ブロックの基になるURLパターン一覧には、EasyListという広く利用されているリストが使用されており、これにはAdSenseやDoubleClickのような多くの広告パターンが含まれています。このリストは、Yahoo!ディスプレイアドネットワークやCriteo、さらにはAmazonアソシエイトのウィジェットバナーなど、幅広い広告プラットフォームをカバーしています。
Google Chrome が広告をブロックした場合の表示
Google Chromeによる広告のブロックが行われた場合、ユーザーにはポップアップブロッカーが作動した際と同様の通知が表示されます。また、ユーザーは設定を変更することで、ブロックされた広告の表示を許可することも可能です。この機能はユーザーにより良いブラウジング体験を提供するためのものであり、不適切な広告からユーザーを守るための一環と言えます。
サイトが Better Ads Standards に準拠しているかどうかを知る方法は?
お手持ちのウェブサイトが「Better Ads Standards」に準拠しているかどうかを知る方法として、Google サーチコンソールを利用することができます。これは、Googleが提供するツールで、サイトの検索パフォーマンスを監視し、サイトがGoogleの検索結果でどのように表示されるかを管理するためのものです。
以前の記事で既に触れていますが、もしまだこの機能を使って自サイトをチェックしたことがない方は、この機会に試してみることを強くお勧めします。Google サーチコンソールでは、サイトがユーザーにとってより良い体験を提供するための重要な指標を提供し、Better Ads Standardsに準拠しているかどうかを確認することができます。このステップを踏むことで、もし準拠していない広告があれば、それを早期に特定し、対処することが可能になります。サイトの健全性を保ち、訪問者にとって快適なブラウジング環境を維持するためには、このようなツールの活用が非常に有効です。
日本では審査が審査が保留されている状態
Google Chromeによる広告ブロック機能は、2018年2月15日から導入されましたが、当初は主に北米と西欧地域のウェブサイトがその対象となっています。このため、日本国内のウェブサイトには直接の影響はありませんが、北米や西欧のウェブサイトを閲覧する際には、この広告ブロック機能が作動することがあります。
さらに、Google サーチコンソールを用いても、日本では現在のところ「Better Ads Standards」に準拠しているかの審査が保留されている状態です。これは、日本のウェブサイトが突如として広告表示が停止されることはないという安心感を提供しています。しかし、将来的に日本のサイトもこの審査の対象となる可能性があるため、安心してばかりもいられません。
この背景から、サーチコンソールでのステータスやメッセージは定期的にチェックすることが推奨されます。審査が始まる前に、自サイトの広告が「Better Ads Standards」に準拠しているかどうかを予め確認し、必要な調整をしておくことは、今後もユーザーにとって良質なコンテンツを提供し続けるために非常に重要です。このような準備をすることで、いざという時に迅速に対応することができ、ユーザー体験を損ねることなく運営を続けることができます。
まとめ
もう一度強調させていただきますが、現在日本のウェブサイトにおいて広告ブロック機能が動作していないからといって、安心するのは時期尚早です。Better Ads Standardsが特定した、ユーザー体験に悪影響を及ぼす広告タイプが既に明らかにされていることを考えると、これらの基準が日本でのウェブサイトにも適用されるようになった際に備えて、早めの対策を講じることが賢明だと思われます。
ウェブサイトを訪れる人々が快適に過ごせる環境を提供しつつ、広告収入を得る方法を模索することは、長期的な視点で見ればウェブサイト運営者にとって非常に重要な課題です。このバランスを取ることは簡単ではありませんが、ユーザーの立場に立って考え、先見の明を持って対応策を考えることで、将来にわたってウェブサイトが持続可能な収益モデルを確立できるようになります。ですので、今からでも、広告の質を見直し、ユーザー体験を損なわないような広告設計を心がけることが推奨されます。