私たちは日々、さまざまな商品やサービスを選ぶ際に、自然と比較して選択することが多いです。この過程で、競合他社のポジショニングや彼らが採用している戦略を理解することは、極めて有益な行為と言えるでしょう。
特に検索広告の場合、キーワードを入力してすぐに結果を見ることができるため、競合の広告戦略を直接確認することが可能です。しかし、FacebookやInstagramのようなソーシャルメディアプラットフォームで広告を見つけようとすると、物事は少し複雑になります。自分のフィードに特定の広告が表示されるのをただ待つだけでは、非常に非効率で時間もかかります。
こうした状況で大変役立つのが、Meta社によって提供されている「広告ライブラリ」という素晴らしいツールです。このツールの第一の目的は、広告の透明性を向上させることにありますが、それに加えて、私たちマーケティング担当者にとっては、競合の広告内容を詳細に調査する上で非常に価値のあるリソースとなります。広告のビジュアルから動画、さらにはリンク先まで、他社がどのような広告を出稿しているのかを総合的に把握することができるのです。
本稿では、FacebookやInstagramでの広告競合調査に特に役立つ「広告ライブラリ」の使い方や、その便利な機能について、もう少し掘り下げてご紹介したいと思います。この情報を活用することで、皆さんのマーケティング戦略の精度を一層高めることができるでしょう。
広告ライブラリとは
Metaが提供する広告ライブラリは、Facebook、Instagram、Messenger、およびAudience Networkといったプラットフォームで公開されている全ての広告を、キーワードや広告主の名称を用いて検索することが可能な非常に便利なツールです。
このツールを利用することで、広告のビジュアルや動画といったコンテンツを、実際に公開されている形で閲覧することができるようになります。さらに、広告がどのようなリンク先に誘導しているのか、どのプラットフォームで配信されているかといった詳細情報も手に入れることができます。
広告ライブラリの設立目的は、広告の配信に関する透明性を確保し、ユーザーに対してより詳細な情報を提供することにあります。このため、ツール内で閲覧できる広告は、原則として現在配信中のものに限られます。
しかし、特定のカテゴリーの広告については、この原則から例外が設けられています。具体的には、社会的な問題、選挙、または政治に関連する広告の場合、現在配信されていない広告であっても閲覧することが可能です。これは、選挙介入を防ぎ、政治的な透明性を確保するために、Metaが特に重要視しているためです。
また、広告ライブラリを利用するためには、Facebookアカウントを持っている必要はありません。一般のユーザーでもアクセスが可能で、広告の内容を自由に確認できます。ただし、成人向けコンテンツに関しては、Facebookアカウントでのログインが必要となります。このシステムにより、Metaはユーザーの安全性を確保しつつ、広告内容の透明性を高めています。
広告ライブラリの使い方
ここでは、スイーツに関する広告を確認するケースを例に挙げながら、広告ライブラリの使い方を紹介します。
広告を検索する方法
まずは、広告を検索する方法を解説します。
ステップ①広告ライブラリのトップページにアクセスします。
ステップ②国を選択します。広告が掲載されている国を絞り込みできます。
ステップ③「広告カテゴリ」を選択します。
デフォルトでは【すべての広告】が選択されています。変更したい場合は次より選択できます。
- すべての広告
- 社会問題、選挙または政治関連
今回はスイーツの広告を検索したいので【すべての広告】を選択しましょう。
ステップ④検索窓に検索したいキーワードまたは広告主の名前を入力してEnterボタンを押すと、検索キーワードに関連する広告があった場合は、掲載開始月の順に広告が一覧表示されます。
画像引用元:Meta広告ライブラリでの「スイーツ」の検索結果
検索方法は4つあり、引用符(” ”)を使うと、より意図通りの検索結果を出しやすくなります。
検索方法 | 入力例 | 検索結果 |
一つの単語で検索 | スイーツ | その単語に関連する広告 |
---|---|---|
複数の単語で検索 | メアリー スイーツ チョコレート | すべての単語に関連する広告 |
完全一致 | “メアリーはスイーツが好き” | “ “内と完全一致する単語が含まれた広告 |
複数の完全一致 | “メアリーはスイーツが好き”“チョコレート” | すべての“ “内の単語と完全一致する単語が含まれた広告 |
広告の包括的な情報のアクセス方法
広告ライブラリを活用することで、広告の包括的な情報にアクセスすることが可能です。ここでは、どのようにしてこれらの詳細を見ることができるのか、具体的な手順をご紹介します。
まず、広告ライブラリでは以下のような広範囲にわたる情報を確認することができます
- 広告が最初に掲載された日付
- 広告クリエイティブ、つまりバナーや動画などの視覚的要素
- その広告がどのプラットフォーム(Facebook、Instagram、Messenger、Audience Networkなど)で配信されているか
- 広告がユーザーを導くリンク先
- FacebookやInstagramにおける広告主のアカウント情報(アカウントIDやフォロワー数など)
特に社会的な問題、選挙、政治に関連する広告の場合は、さらに詳細な指標も提供されます。これには以下が含まれます。
- 広告が現在も掲載されているかどうか
- インプレッション数、つまり広告が表示された回数
- 広告に使われた予算の総額
- 広告がターゲットとしたユーザーの属性(年齢や性別など)
- 広告が表示された具体的な場所
広告ライブラリの主目的は、広告内容の透明性を保つことにありますので、広告の品質や評価に関する情報は提供されていません。しかしながら、どの広告が利用者や広告主にとって価値があるかを把握することは、ビジネスの成長やプラットフォームの品質向上に寄与すると筆者は考えます。そのため、広告の品質、エンゲージメント率、コンバージョン率などの指標が平均以上の広告を識別できる機能があれば、さらに有益であると提案しています。
掲載開始日・プラットフォーム・クリエイティブ・リンク先
具体的な情報の確認方法については、検索結果画面を通じて、次の情報を得ることができます。
検索結果画面から、下記4つの情報を確認できます。
- 広告が掲載された日付
- 広告が配信されているプラットフォーム
- 広告クリエイティブ(バナーや動画など)
- 広告のリンク先
広告のリンク先に関しては、「Learn More」ボタンをクリックすることで、広告がユーザーを導こうとしている実際のページを確認できます。ただし、これは広告が設定している実際のCTA(Call To Action、行動喚起)とは異なる場合がある点に注意が必要です。このように、広告ライブラリを利用することで、マーケティング戦略を練る上で貴重な洞察を得ることができるのです。
アカウント情報
ここでは、Facebook、Instagramのアカウント情報の確認方法を紹介します。
検索結果画面で「広告の詳細を見る」をクリックすると、Facebook・Instagramのアカウント情報(アカウントID、フォロワー数)を確認できます。
また、「広告を見る」をクリックすることで広告主が出稿しているすべての広告を見ることもできます。
広告ライブラリの有用な機能
広告ライブラリのさらに有用な機能、特に競合分析に活用できる機能に焦点を当ててご紹介したいと思います。
競合他社の配信先を把握できる「プラットフォーム」
広告ライブラリを使えば、競合他社がどの配信面で広告を打っているのかを具体的に把握することが可能です。
例えば、ある競合企業がInstagramを中心に広告配信を行っていることが分かれば、それは自社のターゲット顧客がInstagramと相性が良い可能性があるという仮説を立てるための出発点になります。反対に、意図的に競合が手を出していない配信面に目を向けることも、新たな顧客層を開拓する戦略として有効です。いずれにせよ、どのプラットフォームに注力しているかを知ることは、緻密なマーケティング戦略を練る上で非常に重要な情報となります。
検索結果の絞り込むことができる「フィルター」
広告ライブラリでは検索結果をより具体的なニーズに合わせて絞り込むことができるフィルター機能が提供されています。
この機能を使うことで、以下のような6つの異なる条件を設定して検索を行うことが可能です
- 広告が使用している言語
- 広告主の特定
- 広告が配信されているプラットフォーム
- 広告に使われているメディアタイプ(例:画像や動画など)
- 広告のオンラインステータス(現在配信中かどうか)
- 特定の期間におけるインプレッション数
フィルターをかける手順を説明します。
検索結果一覧画面の右上にある【フィルター】ボタンをクリックでフィルター機能を表示します。
各項目の抽出条件は下記の表をご確認ください。
フィルターの項目 | 抽出条件 |
言語 | ・すべての言語 ・各国の言語 |
---|---|
広告主 | ・すべての広告主 ・検索した語句に該当する広告主一覧 |
プラットフォーム | ・すべてのプラットフォーム ・Messenger ・Audience Network |
メディアタイプ | ・すべてのメディアタイプ ・画像 ・ミーム(テキスト内に検索した語句を含む広告) ・画像とミーム ・動画 ・画像または動画なし |
オンラインのステータス | ・アクティブ・非アクティブ ・アクティブな広告 ・アクティブでない広告 |
日付別インプレッション | 開始日・終了日をそれぞれ選択 |
たとえば、Instagram広告のみ確認したい場合は、プラットフォームで「Instagram」を選択します。広告フォーマットごとに見たい場合は「メディアタイプ」を使いましょう。
また、検索した内容を保存する機能もあります。特定の条件で他社の広告を継続してウォッチしたい場合は、保存機能を使うのもおすすめです。
検索結果一覧画面の右上にある【検索を保存】ボタンをクリックすると保存できます。
まとめ
広告ライブラリは、本質的に「広告の透明性」を高めることを目的として開発されました。このツールを使用する際の主な意図は、単純な模倣を越え、広告主自身の魅力をより効果的に伝えることにあります。広告の公開状況を参照することで、ユーザーにとっての利益を増大させることが可能になります。これは、ユーザーがより関連性の高い情報と接触し、価値あるコンテンツを体験できるようにするためです。
さらにこの点を進めると、広告を出稿する側にとっても、自分たちがどのような広告を展開しているかが透明化されるため、マーケティング戦略を精緻に練り上げる機会を提供します。この透明性は、競合との差別化を図る上で重要な要素となり得ます。
したがって、「広告ライブラリ」の利用に際しては、単に他者のアイデアを真似ることに留まらず、ユーザーにとって有益で魅力的な広告体験を提供することを目指すべきです。このようにして、ユーザーの満足度を高めることは、広告主のブランド価値を向上させることに直結します。広告ライブラリを戦略的に活用し、ユーザーにとって価値あるコンテンツを創造することで、最終的には互いにとって有益な結果を生み出すことができるでしょう。