Google 広告のポートフォリオ入札戦略:自動入札のメリットと効果的な設定ガイド

監修者

佐藤 祐介
佐藤 祐介

株式会社LIFRELL代表取締役。大手代理店、株式会社オプト、電通デジタルの2社でアカウントプランナーを経験。その後、株式会社すららネットでインハウスマーケターとして事業の立ち上げからマザーズ上場水準まで事業を伸長させる。マーケティング戦略の立案からSEO/WEB広告/SNS/アフィリエイト等の施策で売上にコミット。

専門家

深瀬 正貴
深瀬 正貴

Yahoo株式会社 法人マーケソリューション出身。 鎌倉の海のそばでオフィスFHを運営。 リスティングやSEOをはじめとしたデジタルマーケティングで100社以上の売り上げ課題を解決。
最近の趣味はブームに乗っかったように見えてしまう「焚き火ごはん」。

目次

自動入札システムは、デジタル広告に革命をもたらすツールです。このシステムは機械学習を駆使して、ユーザーのデバイス、性別、年齢などの属性からサイト内行動に至るまでを総合的に分析し、オークションごとに最適な入札価格を自動で調整してくれます。これにより、手動入札では不可能だった高精度な調整が可能になり、大幅な時間削減が実現します。

しかし、このシステムを導入すると、キャンペーンの数が多くなり、管理が煩雑になるという課題も存在します。多くのマーケティング担当者がこの点について言及しており、解決策を模索しています。

こうした状況において、特に役立つのがGoogle 広告の「ポートフォリオ入札戦略」という機能です。この機能を使えば、複数のキャンペーンを一元管理し、それぞれの入札戦略を効率的に調整することが可能になります。今日はこの「ポートフォリオ入札戦略」に焦点を当て、その具体的な利用方法とメリットについて、わかりやすく解説していきたいと思います。

注目すべき機能「ポートフォリオ入札戦略」

ポートフォリオ入札戦略を採用することで、得られる主なメリットは二つあります。

1. 入札戦略の管理がしやすくなる

デジタル広告の管理において、特にキャンペーン数が多いアカウントは、一つひとつのキャンペーンに個別の入札戦略を設定して運用すると、非常に手間がかかり、時間も多く必要とされることが一般的です。このような場合、各キャンペーンの細かな調整を行うことが煩雑になり、効率的な管理が難しくなることがあります。それぞれのキャンペーンに目を通し、適切な入札額を設定し続ける作業は、特に多くのキャンペーンを抱えるアカウントでは大きな負担になり得ます。

しかし、ポートフォリオ入札戦略を採用することで、これらの課題を大幅に軽減することが可能になります。この戦略では、複数のキャンペーンを一つのポートフォリオにまとめて管理することができます。具体的には、ポートフォリオに含まれるすべてのキャンペーンに対して、一度の操作で入札戦略の変更を行うことができるのです。これにより、個々のキャンペーンに対する時間をかけた微調整の必要が減少し、全体の管理が格段に簡単になります。

さらに、ポートフォリオ入札戦略を使用すると、機械学習を活用した最適化が容易になるというメリットもあります。このシステムでは、キャンペーン全体の目標達成に向けて自動で調整が行われます。これにより、必要なデータが迅速に蓄積され、機械学習のアルゴリズムがより効果的に機能するようになります。結果として、全体的なパフォーマンスの最適化に大きく貢献し、より高い効率と成果を実現することが可能になるのです。

これらの点を考慮すると、ポートフォリオ入札戦略は、特にキャンペーン数が多いアカウントでの広告運用において非常に有効なツールと言えます。この戦略を適切に活用することで、広告管理の効率を大幅に向上させることができ、最終的にはより良い広告成果をもたらすことにつながります。

2.入札戦略の変更によるパフォーマンスへの影響度を効率良く比較できる

デジタル広告の世界では、特定の入札戦略の効果を評価することが非常に重要です。たとえば、「目標コンバージョン単価(tCPA)」の設定金額を変更した際の影響や、「目標コンバージョン単価」から「目標費用対効果(tROAS)」への入札戦略の変更によって生じるパフォーマンスの変化を把握することは、広告運用において非常に重要です。通常、これらの変更による影響を評価するためには、変更前後のデータをキャンペーンごとに収集し、それらを集計・比較する作業が必要となります。これは、特に複数のキャンペーンを運用している場合には、かなりの手間と時間を要する作業です。時間と労力を大幅に節約できるため、他の重要な業務に集中することが可能となります。

このように、ポートフォリオ入札戦略は、広告運用の効率化とパフォーマンスの最適化に大きく貢献するツールとして非常に有効です。

ポートフォリオ入札戦略で利用可能な入札戦略の一覧

ポートフォリオ入札戦略で利用可能な入札戦略は以下のとおりです。

入札戦略の種類内容
クリック数の最大化選択した予算の範囲内で、最大限のクリック獲得
目標インプレッション シェアGoogle 検索結果ページの最上部、上部、または任意の場所に広告が表示されるように、自動的に入札単価を調整
目標コンバージョン単価(tCPA)平均コンバージョン単価を目標値に抑えつつ、コンバージョン獲得の最大化を目指す
目標広告費用対効果(tROAS)広告費用対効果(ROAS)の目標達成を目指しながら、コンバージョン値の最大化を目指す
コンバージョン数の最大化選択した予算全体を使おうとしながら、最大限のコンバージョン数を獲得
コンバージョン値の最大化選択した予算を過不足なく使用し、最大限のコンバージョン値を獲得

また、「コンバージョン数の最大化」と「コンバージョン値の最大化」は、2020年3月から使用可能となっています。これですべての自動入札戦略がポートフォリオ入札戦略で利用できるようになりました。

ポートフォリオ入札戦略が適用可能なキャンペーンタイプ

デジタル広告を運用する際に、ポートフォリオ入札戦略を活用することは非常に効果的ですが、その使用にはいくつかの制限があることを理解することが重要です。具体的には、ポートフォリオ入札戦略が適用可能なキャンペーンタイプには限りがあります。この戦略を利用できるのは、Google 広告の中で特に検索キャンペーン、ディスプレイキャンペーン、そしてショッピングキャンペーンに限定されています。この点は、ポートフォリオ入札戦略の利用を検討している広告運用者にとって、特に注意が必要な部分です。

広告運用者は、これらの制限と可能性を理解し、自身のキャンペーンの目的や種類に最適なポートフォリオ入札戦略を選択することが重要です。正しく戦略を選択し適用することで、広告運用の効率化と最適化を図り、より高い成果を達成することができるでしょう。ポートフォリオ入札戦略の適切な活用は、デジタル広告の成功において重要な鍵となります。

キャンペーンタイプ適用可否
検索
ディスプレイ
ショッピング
ファインド不可
動画不可
アプリ不可
スマート不可
P-MAX不可
ホテル不可

ポートフォリオ入札戦略の設定方法

ポートフォリオ入札戦略の設定方法には、実は二つの異なるアプローチが存在します。これらの方法を理解し、状況に応じて適切な方法を選択することが、効率的で効果的な広告運用につながります。以下では、それぞれの設定方法について詳しくご紹介します。

※例として、設定する入札戦略は「目標コンバージョン単価」にて手順を説明します。

共有ライブラリでポートフォリオを作成する

ここでは、共有ライブラリからポートフォリオを作成する方法を解説します。

手順①

「ツールと設定」をクリック

手順②

「入札戦略」を選択

手順③

「+」ボタンをクリック

なお、各ポートフォリオのステータスの確認や管理も、この画面で行えます。

手順④

展開されたプルダウン内から、任意の入札戦略をクリック

手順⑤

ポートフォリオ入札戦略の名前を設定

入札戦略の種類や目標値がわかるように名前を設定すると、管理がしやすいです。

手順⑥

オーナーを選択

基本的には、作成中のポートフォリオ入札戦略を適用させたいキャンペーンがあるアカウントのみをオーナーに選択します。詳しくは次の章で解説します。

手順⑦

設定するキャンペーンを選択

手順⑧

目標値を設定

入札戦略によっては目標値を設定しないものもあります。

手順⑨

「保存」をクリックで設定完了

キャンペーン設定でポートフォリオを作成する

キャンペーンの設定画面からポートフォリオを作成する方法をご紹介します。

手順①

編集するキャンペーンをクリック

手順②

画面左側から「設定」を選択し、「単価設定」をクリックしてプルダウンを開く

手順③

「入札戦略を変更」を選択

手順④

「または、入札戦略を直接選択します」を選択

手順⑤

「ポートフォリオ戦略を使用する」を選択

手順⑥

「新しいポートフォリオ戦略を作成する」を選択し、名前を設定

手順⑦

目標値を設定

手順⑧

「保存」をクリックで設定完了

キャンペーン設定から作成した場合、オーナー選択ができませんが、自動でキャンペーンが存在する広告アカウントがオーナーになります。

オーナーの選択が重要

ポートフォリオ入札戦略を作成する際には、オーナーの選択が重要な決定ポイントとなります。オーナーは、「My Client Center(MCC)」か、個別の「広告アカウント」のどちらかを選択することができます。それぞれの選択には異なる利点と注意点が存在します。

MCCをオーナーとして選択する場合、MCCに属する複数の広告アカウント間でポートフォリオ入札戦略を共有し、横断的に利用することが可能になります。これは、多くのアカウントを一元管理する必要がある場合、特に便利です。例えば、広告代理店が様々なクライアントの広告キャンペーンを管理する際に、同じ戦略を複数のアカウントに適用することが容易になります。しかし、この方法には慎重さも必要です。誤って異なるアカウントにポートフォリオを適用してしまったり、意図せず入札戦略を変更してしまうリスクがあります。特に、異なるクライアントのアカウント間で間違って同じポートフォリオ戦略を適用してしまうといった事故のリスクがあり、注意が必要です。

一方で、個々の広告アカウントをオーナーとして選択する方法は、より安全で特定のアカウントに特化した戦略を適用するのに適しています。特に広告代理店の場合、異なるクライアント間での誤った適用を避けるために、各アカウントを個別に管理することが推奨されます。これにより、各クライアントに最適化された戦略を確実に適用でき、誤操作のリスクを最小限に抑えることができます。

しかし、同一クライアントが複数のアカウントを持っている場合や、インハウスで複数のアカウントを効率的に運用したい場合は、MCCをオーナーとして選択することが有効です。この方法により、同一クライアントの複数アカウントにわたって、一貫したポートフォリオ入札戦略を効率的に適用することができます。また、複数のアカウントを一括で管理することにより、工数を削減し、広告運用の効率化を図ることが可能になります。

要するに、ポートフォリオ入札戦略のオーナー選択は、運用するアカウントの特性や管理する環境に応じて慎重に行う必要があります。各ケースに適した選択をすることで、広告キャンペーンの効率と成果を最大限に高めることができるでしょう。

広告グループごとに目標値を個別に設定することが可能

ポートフォリオ入札戦略は、その主な適用範囲がキャンペーンレベルであるという点が一般的に知られています。しかし、実際にはこの戦略の中で、広告グループごとに目標値を個別に設定することが可能です。これは、特定の広告グループに特化した調整を行いたい場合に非常に便利な機能です。たとえば、ある特定の製品やサービスに焦点を当てた広告グループの配信を強化したり、逆に他のグループの配信を抑制したい場合などに、この機能を活用することができます。

この個別の目標値設定は、マーケティング戦略の細かな調整を可能にし、特定の広告グループにおけるパフォーマンスを最適化するための強力なツールとなります。キャンペーン全体の目標とは別に、個々の広告グループに注目して、より精密な戦略を展開することができるわけです。

ただし、ポートフォリオ入札戦略にはいくつか注意点もあります。特に、上限入札単価や下限入札単価といった設定は、キャンペーン単位での適用に限られる点に注意が必要です。これは、キャンペーン全体の入札価格の範囲を設定する際に重要な要素となりますが、広告グループレベルではこのような上限や下限の設定は行えません。そのため、キャンペーン全体の予算管理や入札戦略の設定には、これらの制限を考慮する必要があります。

広告運用者としては、これらの違いを理解し、ポートフォリオ入札戦略を最大限に活用するために、適切なレベルでの設定を行うことが重要です。

広告グループ単位で目標値を設定する方法は以下です。

手順①

該当の広告グループの設定画面から「単位設定」をクリック

手順②

任意の値を設定

手順③

保存をクリック

上限入札単価と下限入札単価の設定について

ポートフォリオ入札戦略を活用する際、特に有効な機能の一つが、上限入札単価と下限入札単価の設定です。

ポートフォリオ入札戦略を使用した場合、上限入札単価・下限入札単価を設定することが可能です。ただし、全ての入札戦略で設定できるわけではないのでご注意ください。入札戦略ごとの上限入札単価・下限入札単価の設定可否は下記表を参照ください。

入札戦略の種類上限入札単価・下限入札単価の設定可否
クリック数の最大化上限入札単価のみ可
目標インプレッション シェア上限入札単価のみ可
目標コンバージョン単価(tCPA)
目標広告費用対効果(tROAS)
コンバージョン数の最大化不可
コンバージョン値の最大化不可

上限入札単価や下限入札単価は、以下の方法で設定できます。