iOS14.5のアップデートによるFacebook広告のターゲット設定変更

監修者

佐藤 祐介
佐藤 祐介

株式会社LIFRELL代表取締役。大手代理店、株式会社オプト、電通デジタルの2社でアカウントプランナーを経験。その後、株式会社すららネットでインハウスマーケターとして事業の立ち上げからマザーズ上場水準まで事業を伸長させる。マーケティング戦略の立案からSEO/WEB広告/SNS/アフィリエイト等の施策で売上にコミット。

専門家

深瀬 正貴
深瀬 正貴

Yahoo株式会社 法人マーケソリューション出身。 鎌倉の海のそばでオフィスFHを運営。 リスティングやSEOをはじめとしたデジタルマーケティングで100社以上の売り上げ課題を解決。
最近の趣味はブームに乗っかったように見えてしまう「焚き火ごはん」。

目次

「Facebook」は、国内でも多くの人に利用されているSNSの一つです。現在、多くの人が自社の商品やサービスに関する広告をFacebookで配信していますが、iOS14.5のアップデートによる影響について理解している人はまだ少ないかもしれません。

実際、iOSのアップデートが広告業界に大きな変化をもたらし、特に広告担当者はこれらの変化について把握しておくべきことがいくつかあります。この記事では、iOS14.5のアップデートによって変わったターゲット設定やその実際の影響について詳しく説明します。具体的にどのような変更があったのか、そしてこれからどのように対応すべきかについて知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。

iOS14.5のアップデートの中身

iOS14.5へのアップデートによって、いくつかの重要な変更が行われました。それらの変更について詳しく見ていきましょう。

1. IDFAの取得に制限

まず最初に、iOS14.5のアップデートで注目すべき変更点の一つは、IDFA(Identifier for Advertisers)の取得に対する制限です。IDFAは、Appleが各端末にランダムな識別子を割り当てるもので、これまで広告主やマーケッターにとって重要なユーザーのトラッキング手法でした。

以前は、Webマーケティングやアプリ内でのコンバージョン計測などでIDFAが活用されており、ユーザーの行動を追跡するのに役立っていました。しかし、iOS14.5からはIDFAの取得に関して厳格な制限が設けられ、ユーザーの同意が必要になりました。

IDFAは、個別の端末やアプリを横断してユーザーの情報を収集し、高い精度でユーザーを特定できるため、プライバシー保護の観点から個人情報とみなされることが増えました。iOS14.5の初期設定では、IDFAの取得がデフォルトで無効になっており、ユーザーの情報収集が以前よりも難しくなっています。

1-1. Safari以外のブラウザでITPが有効に

次に、iOS14.5のアップデートにおける重要な変更点の一つは、Safari以外のブラウザでのIntelligent Tracking Prevention(ITP)の有効化です。ITPは、ユーザーのプライバシー保護を目的とした機能で、異なるウェブサイト間でのクッキーの使用を制限するものです。

これまでは、ITPは主にSafariブラウザのユーザーに影響を及ぼしていましたが、国内でSafariを使用するユーザーは18.6%と非常に多いため、ITPの影響はかなり大きかったのです。しかし、iOS14.5からはSafari以外のブラウザ、例えばGoogle ChromeやYahoo! JapanでもITPが有効になり、リターゲティング広告のデリバリーが難しくなりました。また、ITPの有効化はアプリ内のブラウザ、例えばTwitterやFacebookなどにも影響を及ぼします。

1-2. ITPの機能にリダイレクトトラッキング対策が追加

最後に、iOS14.5のアップデートにおいて重要な変更点の一つとして、Intelligent Tracking Prevention(ITP)の機能にリダイレクトトラッキング対策が追加されたことを挙げます。リダイレクトトラッキングは、ユーザーがあるサイトから別のサイトに移動する際、リダイレクトを利用して1st Party Cookieをドロップし、トラッキングを行う手法です。

この手法は、ユーザーが気付かない程度にミリ秒単位でリダイレクトが行われるため、以前はユーザーのデータ収集やトラッキングに広く利用されていました。しかし、iOSのアップデートにより、以前は可能であったデータ収集やユーザーの追跡が制限されました。リダイレクトトラッキングの制限は、Appleがユーザーの個人情報保護に対する強い姿勢を持っていることを示しています。

2. iOS14.5に”よるFacebook広告のターゲティング精度への影響

iOS14.5のアップデートがFacebook広告のターゲティング精度にもたらす変化には、以下の3つの重要な点があります。これらの変化により、Facebook広告の配信における新たな課題が生じています。

・ユーザーデータの収集が困難になる

まず第一に、iOS14.5以降、AppTrackingTransparency(ATT)が有効になっているユーザーからのデータ収集が困難になります。ATTはAppleが導入した規制で、ユーザーに対してデータ収集の許可を要求するものです。具体的には、iOS14.5をアップデートした際や新しいアプリをダウンロードする際に、ユーザーに対して許可を求める必要があります。

ATTが有効なユーザーからは、Facebook(Instagramを含む)が収集できるデータが減少し、特にリターゲティング広告において成果が低下する可能性が高まります。ユーザーデータの収集が難しくなることは、広告主にとって大きな課題となっています。

2-1. 成果判断が困難になる

次に、iOS14.5のアップデートにより、Facebook広告の成果判断が難しくなる点が挙げられます。なぜなら、ユーザーの68%以上がトラッキングを拒否する傾向にあるからです。これは、ユーザーが広告に対してプライバシーを重視しており、トラッキングを防ぐためにATTを有効にしていることを示しています。

トラッキングを拒否された場合、広告主はユーザーの行動を正確に追跡できず、広告のターゲティングへの影響が大きくなります。例えば、トラッキングを拒否したユーザーが広告をクリックしても、その後の行動を追うことが難しくなります。

2-2. 興味関心・類似ターゲティングの配信が難しくなる

さらに、iOS14.5の変更により、興味関心や類似ターゲティングなど、オーディエンスターゲティングの配信も難しくなります。これは、Cookieの有効期限が短縮されたり、IDFAのオプトイン化が行われたためです。

これにより、属性情報や行動履歴の収集が制限され、オーディエンスターゲティングの精度が低下します。また、オーディエンスリストの保持時間も24時間に短縮され、同じユーザーに広告を繰り返し配信するリスクが高まります。同じ広告を何度も表示することは、ユーザーに不快感を与え、企業やブランドの評判に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。

3.【広告代理店の実感】iOS14.5がもたらすFacebook広告のターゲティングへの影響

広告代理店の立場から見た際、iOS14.5によるFacebook広告のターゲティングに対する影響は、ターゲティングの精度に悪影響を及ぼす可能性があることを日常的に感じています。しかし、この変化にはユーザーの行動変化やコロナウイルスの影響など、外部要因も関与しており、単純にiOSのアップデートだけが原因とは言えません。

具体的に言えば、iOS14.5のアップデートにより、ユーザーのデータ収集が制限され、広告のターゲティング精度に課題が生じています。広告主としては、以前よりも正確なユーザー情報を取得しにくくなり、これが広告の成果に影響を及ぼす可能性があることを認識しています。

しかし、広告業界では常に外部環境の変化に対応しなければならないため、iOSのアップデートだけが広告配信の成果低下の原因ではないことも考慮すべきです。ユーザーの行動や嗜好は変化し、特にコロナウイルスの影響下では消費行動にも変動が生じています。

広告代理店としての役割は、単に状況を悲観的に受け止めるだけでなく、変化に対応し、効果的な対策を講じることです。ターゲティングの調整やクリエイティブの最適化、新たなプラットフォームの活用など、多くのアプローチが考えられます。また、データ分析を通じて広告戦略を改善することも非常に重要です。

つまり、広告業界は常に変化し続ける環境であり、iOS14.5の影響を受けつつも、柔軟かつ創造的な対策を講じることが成功への鍵となります。このような状況で、広告代理店は変化を恐れず、新たなチャンスを見出し、広告主の期待に応える役割を果たしています。

4. iOS14.5によるFacebook広告利用時の対策

iOSのアップデートが実施されたことで、Facebookの利用者として対策が必要なポイントが4つあります。それぞれの対策について詳しく説明し、今後の行動に役立てましょう。

4-1. コンバージョンAPIの導入

コンバージョンAPIは、Cookieを使用しない広告計測と最適化を可能にするMeta社によるツールです。このAPIを利用することで、広告主は自社のサーバーからMeta社の広告サーバーにイベントデータを直接送信できます。これにより、ユーザーデータの収集が難しい状況で、より正確な広告計測が実現します。

ただし、コンバージョンAPIの導入にはエンジニアの専門知識が必要であり、法的な調整も必要です。データの送信に関するプライバシーについても検討が必要です。したがって、専門知識を持つエンジニアのサポートを受けながら、早急に行動に移すことが重要です。

4-2. クリエイティブの工夫

個人情報の保護の観点から、リターゲティング広告などの従来の広告手法が難しくなったため、クリエイティブな工夫が求められます。バナー広告やキャッチコピーに工夫を凝らすことで、広告の成果を維持しましょう。

クリエイティブを制作する際には、情報の過不足を適切に調整することが重要です。特に、情報を整理し、ユーザーにとって価値のある情報を伝えるためのヒエラルキーを設定することが効果的です。また、動画広告の場合、ストーリー性を持たせてユーザーの興味を引き続けるように工夫しましょう。

4-3. 合算イベント測定の利用

Meta社の公式サイトによれば、合算イベント測定はiOS 14.5以降のデバイスの利用者向けに設計されたプロトコルで、ウェブイベントとアプリイベントの測定を可能にします。この測定方法は、ドメインおよびモバイルアプリで合算イベント測定のレポートを生成し、最適なコンバージョンイベントを設定および優先順位付けできるようにします。

優先イベントを設定することで、測定可能なイベント数が制限されることに注意が必要です。ユーザーがオプトアウトした場合、優先して収集するイベントを設定することが肝要です。

合算イベント測定を活用するには、ドメイン認証の完了とビジネスマネージャでの権限保持が必要です。これにより、iOS 14.5以降のユーザーに対するイベント測定が可能になり、コンバージョンの最適化に貢献します。

引用:Metaの合算イベント測定について|Metaビジネスヘルプセンター

4-4. 広告以外の施策の検討

Webマーケティングには広告以外にも多くの施策が存在します。例えば、SEO対策、SNS運用、メールマーケティング、コンテンツマーケティングなどがあります。中長期的な視点からユーザー獲得を考える場合、オーガニック検索からのトラフィックやSNSの活用が効果的かもしれません。

また、これらの施策は自社で実施できるため、広告に比べてコスト効率が高いと言えます。リターゲティング広告の効果が限定的である場合、早めに広告以外のマーケティング手法を検討することが重要です。

広告以外の施策を組み合わせることで、より効果的なマーケティング戦略を展開し、ビジネスの成長に寄与するでしょう。

5. iOS14.5によるFacebook広告のターゲティング以外の変化

iOS14.5のアップデートにより、Facebook広告の変化は単にターゲティングに限らず、他にも重要な変更点が存在します。これらの変化について詳しく説明し、広告主やマーケターにとってどのような影響を及ぼすかを考察します。

5-1. レポートに制約が生まれた

iOS14.5以降、広告のレポートに制約が生じています。以前は広告の表示回数(インプレッション)やインストール数など、さまざまなデータをプラットフォームごとに詳細に確認することができました。しかし、新しいアップデートにより、配信とアクションの内訳の閲覧が制限され、特にインストール数に注目します。

インストール数は「その他」という一括のカテゴリにまとめられるため、以前のようにプラットフォームごとにデータを詳細に分析することが難しくなりました。この変化は、広告主が広告キャンペーンの効果を従来通り詳細に把握するのに制約を生じさせています。

5-2. 広告作成に制限がかかった

また、iOS14以降を利用しているユーザーに対する広告作成にも制約がかかりました。以前のキャンペーンをそのまま継続する際でも、新規のiOS14用のアプリインストールキャンペーンを作成する必要があります。これは、iOS14以降のユーザーに対して広告を表示し、新たなユーザーを獲得するためのキャンペーンです。

新規のiOS用アプリインストールキャンペーンは、既存のキャンペーンを複製して設定を「オン」に切り替え、新たに作成するプロセスを経ます。この変更により、広告主やマーケターはiOS14以降のユーザーに対する広告戦略を新たに計画し、運用する必要が生じました。

これらの変更は、Facebook広告キャンペーンの効果測定や戦略策定に影響を与える可能性があります。マーケティングチームはこれらの変化に適切に対応し、広告戦略を最適化する方法を模索する必要があるでしょう。

6. まとめ

今回のiOSのアップデートについて、具体的な変更点とその広告への影響について詳しく考察してきました。このアップデートは広告業界にとって非常に大きな影響を及ぼしており、広告主やマーケターにとっては注意が必要な変更点となっています。

特にFacebook広告においては、ユーザーデータの収集が困難になり、それが成果の停滞や成果の判断の難しさにつながっています。さらに、リターゲティング広告だけでなく、興味関心や類似ターゲティングの配信も難しくなっていることから、広告戦略の見直しが必要です。

ただし、この広告への影響はCookieやIDFAの変更だけに起因するものではなく、外的要因も影響していることに留意すべきです。したがって、単純に広告の効果低下をiOSのアップデートだけに帰すのではなく、様々な手法を駆使して成果を上げる試みが求められます。

具体的には、コンバージョンAPIの導入やクリエイティブの工夫など、新たなアプローチを採用することが必要です。今後もCookieやIDFAなどのプライバシー保護に関する対策はますます強化されることが予想されるため、広告業界はこれらの動向に敏感に対応し、最適な広告配信を実現するために努力を続けるべきでしょう。

最終的に、ユーザーのプライバシー保護と広告主のニーズの両立が求められる中で、広告業界は新たな展望を探求し、進化を遂げることで成功を収めることができるでしょう。今後の展開に引き続き注目し、柔軟かつ創造的なアプローチで広告業界の未来を切り拓いていくことが大切です。