【広告運用マスターガイド】ROAS解説:基本から計算法、効果最適化テクニックまで

監修者

佐藤 祐介
佐藤 祐介

株式会社LIFRELL代表取締役。大手代理店、株式会社オプト、電通デジタルの2社でアカウントプランナーを経験。その後、株式会社すららネットでインハウスマーケターとして事業の立ち上げからマザーズ上場水準まで事業を伸長させる。マーケティング戦略の立案からSEO/WEB広告/SNS/アフィリエイト等の施策で売上にコミット。

専門家

深瀬 正貴
深瀬 正貴

Yahoo株式会社 法人マーケソリューション出身。 鎌倉の海のそばでオフィスFHを運営。 リスティングやSEOをはじめとしたデジタルマーケティングで100社以上の売り上げ課題を解決。
最近の趣味はブームに乗っかったように見えてしまう「焚き火ごはん」。

目次

広告運用の世界において、ROAS(Return on Ad Spend)は、不可欠な指標として知られています。広告の成果を評価する際に欠かせないこの指標について、その意味や計算方法が明確でないという方も少なくないでしょう。そこで、この記事では、ROASを理解し、効果的に活用するための詳細なガイドを提供します。ROASの計算式から、それを使って広告効果をどのように評価し、改善するかという点に至るまで、わかりやすく解説していきます。また、ROASと密接に関連する他の指標や、効果測定におけるROASの適用方法についても触れます。この記事を通じて、ROASという用語の全容を深く理解し、広告運用においてより良い成果を得るための一助となることを願っています。

広告費用対効果指標「ROAS」とは何か

「ROAS」は「Return On Advertising Spend」の略称であり、この指標は広告投資の効果を測定するために用いられます。これは広告によって生じた売上と投じた広告費を比較し、その効率を数値化するものです。特に広告の効果を検証し、予算の配分や戦略を策定する際に役立ちます。そのため、ROASを理解し適切に活用することは、効果的な広告運用において重要です。まずは、このROASをどのように計算するか、その基本的な計算式と目安について学んでいきましょう。

ROASの計算方法

ROASの計算には、売上を広告費で割り、100を乗じた式「売上÷広告費×100(%)」を使用します。例えば、100万円の広告費を使って150万円の売上が得られた場合、ROASは以下のように計算されます。

  • 150万円÷100万円×100(%) = 150%

この計算結果から、広告の効果がどの程度あったかを判断できます。ROASの数値が高いほど、広告効果は大きいと言えるでしょう。しかし、もしROASが低い場合は、広告のクリエイティブ、配信の方法、ターゲティングといった要素を見直す必要があります。定期的にROASを計算し、適切な改善を行うことが成功への鍵となります。

ROASの理想的な目安

ROASを運用する際、100%以上を目安に設定することが一般的です。この数値が100%未満の場合、広告の改善が必要とされます。ただし、具体的な目安は企業や業種によって異なり、また、赤字にならないための最低限のROASを算出し、そこから具体的な目標値を設定する方法もあります。そのため、自社の状況に合わせたROASの目安を設定し、適切な広告戦略を立てることが大切です。後ほど、このROASの目標設定に関する具体的な方法についても詳しく解説します。

ROASと類似の指標とその違い

ROASは、広告の投資対効果を評価する重要な指標ですが、広告やマーケティングにおいては、ROASに似た他の用語も頻繁に使われます。これらの指標には、特にCPA(Cost Per Acquisition)ROI(Return On Investment)が含まれます。これらの指標はROASとよく似ていますが、それぞれに独自の意味合いがあります。それらの意味や相違点をしっかり理解し、適切に使い分けることがマーケティング戦略の成功につながります。

ROASとCPAの比較

CPAは「Cost Per Acquisition」の略称で、これはコンバージョン(CV)1件あたりにかかった広告費用を意味します。CPAの計算方法は「広告費用÷CV数」となります。例えば、100万円の広告費用で50件のコンバージョンを達成した場合、CPAは以下のように算出されます。

  • 100万円÷50件 = 2万円

これは、1件のコンバージョンを獲得するために2万円の広告費がかかったことを示しています。ROASが広告費に対する売上の割合を表すのに対し、CPAは低い数値ほど効率的な広告配信を意味します。

ROASとROIの関係

ROIは「Return On Investment」の略で、これは投資に対する利益の割合を示します。この指標は、広告によって生じた利益が広告費に対してどれだけあるかを評価するために用います。ROIの計算式は「利益÷広告費×100(%)」です。例えば、200万円の広告費で300万円の利益を得た場合、ROIは以下のように算出されます。

  • 300万円÷200万円 = 150%

これは、投資した広告費に対して150%の利益があったことを意味します。ROIが100%以上であれば、その広告は利益を生み出していると言えます。ROASが主に売上の割合に注目するのに対し、ROIは広告運用において全体的な利益を重視する点で異なります。

ROASの活用で得られる広告運用上の利点

ROAS(Return on Advertising Spend)を広告運用における主要な指標として活用することには、数多くのメリットがあります。最も顕著な利点は、広告によって生じる売上を具体的な数字として把握できることです。この数値を基に、広告戦略の策定や調整が可能になります。例えば、特定のウェブページやプラットフォームへの広告出稿が効果的であれば、そこに更なる予算を割り当てることができます。また、期待する成果が得られていない広告に対しては、内容の見直しや戦略の変更を行うこともできます。これには、広告のビジュアルや文言の改善、ターゲット層の再定義など、さまざまな方法があります。このように、ROASを指標とすることで、広告運用の効率化と最適化を図ることが可能となります。

ROASによる広告運用のデメリット

一方で、ROASを広告運用の主要な指標として使用する際には、いくつかの注意点も存在します。ROASは売上の面では有効な指標ですが、広告による実際の利益を反映していないことがその最大のデメリットです。たとえROASが高い数値を示していても、それが実際の利益増加につながっていない可能性もあります。このため、ROASの数値を広告運用の唯一の基準とすることは避けるべきです。広告における費用対効果をより総合的に評価するためには、ROI(Return On Investment)のような、利益に焦点を当てた指標を併用することが推奨されます。ROIを用いることで、広告が実際にどれだけの利益をもたらしているのかをより正確に評価することができるようになります。

ROASの活用が適している企業の特徴

広告運用において、ROAS(Return on Advertising Spend)を活用することが特に有効なのは、異なる価値のコンバージョンを持つ業種や企業です。例えば、商品やサービスの単価が様々な場合、ROASは広告の効果を測る上で役立つ指標になります。これに対して、CPA(Cost Per Acquisition)は、単一のコンバージョンにかかる平均的な広告費用を算出するために使用されますが、商品ごとの価値が大きく異なる場合、CPAのみでは十分な効果測定が難しいです。たとえば、異なる単価の商品があり、それぞれについてCPAを以下のように算出した場合を考えます。

  • 単価20万円の商品:CPA 10万円
  • 単価60万円の商品:CPA 20万円

この場合、CPAが低い商品の方が効果的に見えるかもしれませんが、実際には高単価の商品の方が1コンバージョンあたりの価値が高いです。したがって、広告の投資対効果を正確に評価するためには、売上と広告費から算出されるROASを使用することが適切です。特に、多様な商品を扱うECサイトなどでは、ROASの活用が推奨されます。

ROASが適していない企業の特徴

逆に、ROASの活用があまり適していない企業としては、単一の商品やサービスを扱っている企業が挙げられます。特に、キャンペーンやセールを頻繁に行わないような場合、売上の変動が少ないため、ROASを用いると有益な情報が得られにくい可能性があります。時期による売上の変動が少ない企業では、ROASではなくCPAを使用することが望ましいです。さらに、広告の目的が資料請求や問い合わせといった、直接的な売上に結びつかないアクションの場合も、CPAの方が適切な指標となります。このような場合、広告の成果を売上ではなくコンバージョンの数で評価するCPAの利用が推奨されます。

効果的なROASの設定と利用方法

ROAS(Return on Advertising Spend)を用いて広告の効果測定を行うには、いくつかの重要なステップがあります。特に、利益が出る最低限のラインを示す「下限ROAS」と、企業の目標とする「目標ROAS」を設定することが重要です。これらの数値を定めることで、広告運用の効率と効果を適切に評価できます。

例として、10万円で売れる商品の原価率が50%である場合を考えてみましょう。この場合、商品1点あたりの利益は5万円となります。もし広告費によって5万円のコストが発生すると、その商品が売れたとしても利益はゼロになってしまいます。したがって、利益を残すためには、少なくともROAS200%を下限とする必要があります。

さらに、特定の利益目標を達成したい場合には、目標ROASの設定が必要です。たとえば、4万円の利益を残したい場合、広告費は最大で1万円までとなります。この条件でROASを計算すると、「10万円÷1万円×100(%)」の式に基づき、目標ROASは1,000%となります。このように、下限ROASと目標ROASを明確にすることで、広告投資の効率性を高め、具体的な目標達成を目指すことができます。このプロセスは、広告運用における効果的な意思決定のための重要な手段となります。

ROAS向上のための効果的な手法

ROAS(Return on Advertising Spend)の改善を目指す場合、以下のような様々なアプローチを考慮することが重要です。

  • リピート率の向上
  • コンバージョン率(CVR)の最適化
  • 広告のターゲティングと効果の検証
  • 顧客単価の増加
  • 広告費用の削減

これらの各方法について、どのようにROASの向上に寄与するかを詳しく解説していきます。

リピート率の改善

ROASを向上させるためには、リピート顧客を増やすことが効果的です。これにより、同じ広告費でより多くの売上を生み出すことが可能になります。リピート率を向上させるには、単に商品の品質を高めるだけでなく、ブランドの魅力を高める戦略が必要です。例えば、ユニークなブランドコンセプトの設定や、ストーリーテリングを通じた顧客との関係構築が有効です。これらの施策により、顧客が繰り返し購入するように促すことができます。

コンバージョン率の最適化

CVR(Conversion Rate)は、サイト訪問者が実際に購入や問い合わせなどの目標行動を行った割合を指します。CVRが高い場合、訪問者が少なくても高い成果を得られていることを意味します。したがって、CVRの最適化はROASの改善に直結します。具体的な改善策としては、ウェブサイトのユーザー体験の向上、効果的なランディングページの設計、適切なCTA(Call to Action)の配置などが挙げられます。

ターゲティングと効果検証の重要性

広告の効果が低い場合、ターゲティングが適切でない可能性があります。適切なターゲットユーザーを特定し、彼らに焦点を当てた広告配信を行うことが重要です。ターゲット設定を見直し、新たなターゲティング戦略を試した後は、その効果を定期的に検証し、必要に応じて改善を行うことが大切です。

顧客単価の増加

売上を増やすためには、顧客一人当たりの平均購入額、すなわち顧客単価を増加させることも有効です。コンバージョンの件数が同じであれば、顧客単価が高いほど全体の売上は増加します。価格戦略の見直し、クロスセルやアップセルの促進などがこの目的に役立ちます。

広告費用の効率化

最後に、改善策として考えられるのが広告費用の削減です。広告費用を抑えつつ効果を最大化することで、ROASの向上を図ることができます。特定の広告チャンネルやメディアが期待した成果を生まない場合、そこにかける広告費を削減し、より効果的な媒体に予算を振り分けることが重要です。全体的な広告戦略の見直しと、予算配分の最適化を通じて、広告投資の効率を高めることができます。

ROASとその重要性のまとめ

この記事を通して、広告運用におけるROAS(Return on Advertising Spend)の重要性について理解を深めることができたでしょうか。ROASは、広告によって生み出される売上を広告費用と比較し、その効果をパーセンテージで表す指標です。具体的には、「売上÷広告費×100(%)」の計算式で求めることができます。この指標を活用することで、どの広告が効果的であるかを判断し、結果に基づいて予算配分やマーケティング戦略を計画することが可能になります。

さらに、ROASと同様に重要な他の指標として、ROI(Return On Investment)やCPA(Cost Per Acquisition)などがあります。これらの指標も広告やマーケティングの成果を測定する上で重要ですが、その意味や使い方には異なる点があります。したがって、これらの指標を正しく理解し、適切に使い分けることが、効果的な広告運用には不可欠です。ROASだけでなく、ROIやCPAなどの他の指標の意味と使用法もしっかりと把握しておくことが、成功への道を開く鍵となるでしょう。