完全ガイド:リスティング広告の運用フロー、課題、そして代理店と自社運用の比較分析

監修者

佐藤 祐介
佐藤 祐介

株式会社LIFRELL代表取締役。大手代理店、株式会社オプト、電通デジタルの2社でアカウントプランナーを経験。その後、株式会社すららネットでインハウスマーケターとして事業の立ち上げからマザーズ上場水準まで事業を伸長させる。マーケティング戦略の立案からSEO/WEB広告/SNS/アフィリエイト等の施策で売上にコミット。

専門家

深瀬 正貴
深瀬 正貴

Yahoo株式会社 法人マーケソリューション出身。 鎌倉の海のそばでオフィスFHを運営。 リスティングやSEOをはじめとしたデジタルマーケティングで100社以上の売り上げ課題を解決。
最近の趣味はブームに乗っかったように見えてしまう「焚き火ごはん」。

目次

Content marketing for modish online business and e-commerce marketing strategy

リスティング広告の世界は多様で、様々な方法とアプローチが存在します。皆様の中には、これからリスティング広告の運用を始めようと考えている方、あるいは代理店に委託するかどうかを検討している方、またはすでに代理店に委託しているが、自社での運用に切り替えようかと考えている方がいるかもしれません。

この記事では、リスティング広告の具体的な運用方法については触れずに、より広範囲に渡る視点を提供しようと思います。リスティング広告の運用における一般的な流れ、運用中に直面しやすい課題、そして広告の運用体制に関して、それぞれの体制が持つ利点と欠点を詳しく解説していきます。この種の内容は他ではなかなか見かけないもので、リスティング広告に関わる皆様にとって新たな視点を提供することでしょう。

リスティング広告の基礎:検索連動型広告とその機能

リスティング広告、特に検索連動型広告について解説します。この広告の形式は、ユーザーが検索エンジンで特定のキーワードを入力すると、それに関連する広告が検索結果の上部または下部に表示されるというものです。例として下記の画像に緑色の枠で示された部分が、検索連動型広告にあたります。

※画像出典:Google

この種の広告は、ユーザーの検索意図や関心に基づいて表示されるため、ディスプレイ広告よりも購買意欲の高い顧客層にリーチする可能性があります。ディスプレイ広告とは、ウェブサイトの記事やコンテンツに沿って、ページ内に配置される広告のことを指します。検索連動型広告の主要なプラットフォームには、Google広告Yahoo!広告などがあります。

リスティング広告運用の全体的な業務フロー

次に、リスティング広告の運用における全体的な業務フローについて、以下の図で簡潔に説明します。この図は、リスティング広告を効率的に運用するためのステップを視覚的に示したものです。

リスティング広告運用初心者が直面する一般的な問題点

リスティング広告の運用をこれから始める方々は、特に初めての場合、さまざまな疑問や困難に直面することがあります。ここでは、そのような初心者が遭遇しやすい一般的な課題についてお話しします

一つ目の課題は、リスティング広告に関連する基本的な用語の理解です。この分野の専門用語は初心者にとって少し難解に感じられることがあります。次に、どのようにしてコンバージョン(目標達成)を達成するかについての不明点が挙げられます。また、Web広告における成功の鍵は、売れる商品の開発にありますが、この点についてもしばしば問題が生じます。場合によっては、商品自体が市場で受け入れられるものかどうかに気づいていないこともあります

これらの問題は多岐にわたり、どこから手を付けてよいか戸惑うかもしれません。はっきり言って、ツールの導入だけではこれらの課題を解決することは難しいです。もし、売れる商品が開発できていない場合は、Web広告の戦略を考える前に、まずは市場での受け入れ可能性を確認するために営業活動を行うことが重要です。

リスティング広告の基本用語やコンバージョン獲得の方法についての理解が不足している場合は、『いちばんやさしい[新版]リスティング広告の教本 人気講師が教える自動化で利益を生むネット広告』や『現役LPO会社社長から学ぶ コンバージョンを獲る ランディングページ』などの入門書を読むことで、基礎知識を身につけることができます。しかし、Google広告やYahoo!広告の具体的な設定方法や運用方法についての不明点がある場合は、専門のツールの活用で解決が可能です(もちろん、商品が市場で受け入れられる状態であることが前提です)。

さらに、リスティング広告の運用にすでにある程度慣れている方向けにも、運用体制ごとによくある課題を紹介します。これにより、貴社でも当てはまる点が見つかるかもしれません。

【運用体制による差異】
リスティング広告の運用における共通課題と特有の問題点

リスティング広告の運用には、運用体制に応じて異なる課題が存在します。ここでは、主に2つの運用体制、代理店運用(代理店委託・副業委託)と自社運用(インハウス運用)の場合において、それぞれの課題を探っていきます

代理店運用(代理店委託)での一般的な課題

代理店にリスティング広告の運用を委託する場合、いくつかの明確なメリットがあります。例えば、代理店に広告運用の業務を委ねることで、社内のリソースを他の業務に充てることができる点が最大の利点です。また、専門知識を持った代理店を選べば、WebマーケティングやWeb広告の分野で、自社では持ち得ないノウハウを利用できます。信頼できる代理店との連携は、ビジネス成長のための強力なサポートとなり得ます

しかし、代理店運用では以下のような課題がしばしば発生します。

成果の観点・気づいたら即座にクリエイティブ調整・キーワード調整をしたいが依頼から変更完了までに時間がかかる
・好きなタイミングでレポートを見たいものの、レポートの共有が遅い
・代理店側のスタンスが受け身であり、代理店から良い提案をもらえない
・代理店から広告アカウントを共有されないため運用がブラックボックス化
・代理店が自社の事業や顧客を理解できていないため、意図と異なる運用が発生してしまう
・代理店側の担当者がよく変わるため、ゼロから信頼関係の構築と業界情報を共有の必要がある
・代理店に依頼していると、頻繁に予算超過している。あるいは予算消化できていない
コストの観点・サービス品質にふさわしくない、代理店の手数料を削減したい
・広告費が上がるタイミングでサービスレベルは変わらないのに手数料だけ上がる
ナレッジの観点・事業上、広告は重要なチャネルのため、自社に広告ノウハウを蓄積したい

これらの課題を踏まえ、一部の企業は代理店を変更することもありますが、これが根本的な解決になるとは限りません。これらの課題の背景には、代理店側の事情があります。多くの広告代理店では現在、デジタル分野に精通した人材が不足しています。この問題は、Web広告を依頼する企業側だけでなく、代理店側にも存在します。また、多くのWeb広告代理店のビジネスモデルは「広告費に基づく手数料(業界平均は約20%)」となっています。このビジネスモデルにおいては、広告費が比較的少ないクライアントに対しては、工数を最小限に抑え、利益を維持するような対応が取られがちです。その結果、広告費が大きいクライアントにはより多くのサポートが提供されます。自社が大規模な広告予算を持つクライアントであれば、代理店からの手厚いサポートを期待できますが、そうでない場合は限られたサポートしか受けられない可能性があります

こうした状況が存在するため、Web広告代理店の選択を何度も変更する企業が現れています。実際の調査結果を参照してみてください。

代理店の変更が根本的な解決に至らない場合、企業は他の手段を模索することがあります。例えば、自社だけで対応を試みたり、ツールやサポート会社の助けを借りて内製化を図ったり、場合によってはリスティング広告の運用自体を中止することもあります

広告媒体を利用した自社運用(インハウス運用)の課題

続いて、自社で広告媒体を利用してリスティング広告を運用する場合の課題について見ていきましょう。この運用体制でも、様々な課題が生じます。これらの課題は、私たちShirofuneがお客様から実際に聞いた声に基づいています。

広告運用経験のない方・広告媒体が複雑で使いづらい。本当に効果的に活用できているか不安
・ノウハウがないため、運用の改善案を考えることができない
・Yahoo!広告を始めたいが、Google広告よりも複雑で手をつけられていない
・低予算のため代理店には依頼できないが、自社運用でも成果を出したい
広告運用経験のある方・他業務と兼務しているため時間が足りない。もっとスピーディーに運用したい
・複数の広告媒体をまたぐ運用が面倒くさい
・経験者から未経験者に引き継ぎしたいが、広告媒体の運用の場合、複雑のため引き継ぎが難しい
・Yahoo!広告の自動運用ツールが使いづらい、精度も低い
・広告媒体やキャンペーンごとの予算管理の手間を減らしたい
・CRMデータを活用し、受注に貢献する広告を特定し、適切な広告投資をしたい

リスティング広告の運用体制について

このセクションでは、リスティング広告の運用体制と、それに伴う役割分担の典型的なパターンについて詳しく解説します。リスティング広告の運用は、その体制によって大きく異なり、各企業の状況に応じて最適な方法が選ばれます。

代理店運用(代理店委託)時の体制について

まずは代理店を利用したリスティング広告の運用体制に焦点を当てます。この運用形態では、広告主と広告代理店の役割分担が重要です。ここでは、一般的に見られる広告主と代理店の役割分担について、図を用いて詳しく紹介します。

代理店に依頼する業務は、企業や契約内容によって異なりますが、多くの場合、代理店は広告の設定や運用、レポーティングなどを担当します。さらに、クリエイティブの制作を代理店に委ねることもあります。

自社運用(インハウス運用)時の体制について

次に、広告媒体を利用した自社運用の体制について説明します。こちらは、全ての運用業務が自社内で行われる体制です。

自社運用の場合、広告の設定、管理、最適化、クリエイティブの制作など、リスティング広告に関連するすべての業務が社内のチームまたは個人によって担当されます。この体制の特徴は、直接的なコントロールと迅速な対応が可能な点です。以下の図では、自社運用時の典型的な役割分担を示しています。

以上のセクションでは、代理店運用と自社運用、それぞれの運用体制の概要と役割分担を示しました。これらの情報を参考に、貴社のリスティング広告運用に最適な体制を選択していただければ幸いです。

自社運用(インハウス運用)と代理店運用の比較:
メリットとデメリット

リスティング広告を運用する際、自社で行うか代理店に委託するかは重要な選択です。このセクションでは、自社運用と代理店運用、そして副業委託を含む3つの異なる運用方法のメリットとデメリットを比較してみましょう。

  • 代理店委託(支払い方針:広告費用に基づく手数料)
  • 副業委託(支払い方針:月額固定費用、例えば40万円)
  • 自社運用

以下の図には、これらの運用方法のメリットとデメリットが示されています。

各運用方法は独自の強みと制限があり、どの運用形態が最適かは、貴社の具体的な状況やニーズによって異なります。◯・△・×で示される評価は、前提条件によって変化する可能性があるため、これらの情報を参考程度に考えていただくと良いでしょう

この比較を通じて、リスティング広告の運用において最も効果的で効率的な方法を選択する際の一助となれば幸いです。各運用形態の特徴を理解し、貴社の目的やリソースに最も適合する選択をすることが重要です。