ECサイト運営は、近年のデジタル化や、コロナ禍で加速したオンラインショッピングの波に乗り、多くの企業や個人が取り組むビジネスの一つとなっています。
しかし、単にオンラインショップを開設するだけでは成功は難しく、成功のためにはどのような業務内容があるのか、どれくらいのコストがかかるのか、そしてどのようなスキルが必要なのかを知ることが不可欠です。
この記事では、ECサイト運営の主な仕事内容から、運営にかかるコスト、必要とされるスキルまでを詳しく解説していきます。
ECサイト運営とは?
ECサイトとは「イー・コマース(電子商取引)」の略で、インターネットを利用した商売を指します。
具体的には、商品を売るサイトのことを指します。ネットショップとECサイトは同じ意味で使われることが多いです。
ECサイト運営業務は大きく「フロント業務」と「バックエンド業務」の2種類に分けられます。
フロントエンド業務:購入される前の業務
フロント業務は、ECサイトの集客のためのマーケティング活動を中心とした業務のことを指します。
具体的には、商品の企画、仕入れや製造、サイト制作や更新、プロモーションなどが含まれます。
ユーザーから見える部分が主にフロント業務となります。
ECサイトは、開設しただけで自然と顧客が集まるわけではないため、広告やSNSなどを活用してユーザーに知ってもらう必要があります。
バックエンド業務:購入された後の業務
バックエンド業務は、ECサイトの運営を支える事務処理が中心の業務です。
具体的には、受注処理、出荷・配送、アフターフォロー、在庫管理などが含まれます。
顧客の目に直接見えない部分が主にバックエンド業務となります。
バックエンド業務でのトラブルは、ユーザーの満足度を下げる原因となるため、特に注意が必要です。
ECサイト運営のおもな仕事内容
ECサイト運営に関する仕事内容を解説します。
仕事内容①:商品企画
商品企画はECサイトの運営業務の中で、最も重要な業務です。
市場ニーズや顧客の意見、トレンド、季節を考慮して、顧客に刺さる商品を開発します。
単に商品を開発するだけでなく利益率や原価率も考慮しながら、半年〜1年間の売り上げや利益などを考えてビジネスプランを立てます。
仕事内容②:商品の製造・仕入れ
仕入れ業務では、販売予測や在庫回転率に基づいた仕入れ・製造を行うことが重要です。
人気商品やSNSでバズった商品は生産が間に合わずに、機会損失を生んでしまう可能性があります。
複数の仕入れ先を確保しておく、また、迅速な発注ができる体制を整えることが重要です。
仕事内容③:ECサイトの制作・管理
ECサイト制作・管理では、ユーザーにとって使いやすく、自社の商品に合ったデザインのECサイトを制作することが重要です。
デザインに凝りすぎず、あくまでもユーザビリティを重視することが必要です。
また、新商品の追加や新しい機能の追加、季節ごとのページの追加など、定期的にECサイトを更新して、より良い購入体験を提供することも大切です。
仕事内容④:Webマーケティング(集客・宣伝)
Webマーケティングは、インターネットを利用して商品やサービスを宣伝・販売するための手法や戦略を指します。
以下は、Webマーケティングの主要な手法についての詳細です。
Web広告運用
Web広告は、インターネット上での広告活動を指し、以下の3つの主要な広告の種類があります。
種類 | 詳細 |
リスティング広告 | 検索エンジンの検索結果ページに表示される広告。ユーザーが入力したキーワードに関連する広告が表示されるため、効果的な集客が期待できます。 |
アフィリエイト広告 | 他のウェブサイトやブログなどのメディアを通じて商品やサービスを紹介し、その紹介から成果が上がった場合に報酬を得る広告手法。費用対効果が高い傾向にあります。 |
ディスプレイ広告 | ウェブサイトやアプリ内に表示されるバナー広告や動画広告などのビジュアルな広告。ブランドの認知度向上や商品の紹介などに効果的です。 |
SEO対策(検索エンジン最適化)
SEO対策は、ウェブサイトが検索エンジンの検索結果ページで上位に表示されるようにするための最適化手法を指します。
キーワード選定、コンテンツの質の向上、内部・外部リンクの最適化などが主な活動内容となります。
SNSアカウント運用
SNSアカウント運用は、企業やブランドがSNSを活用して情報発信やコミュニケーションを行うための手法を指します。
フォロワーの増加、エンゲージメントの向上、広告運用などが主な活動内容となります。
仕事内容⑤:受注処理
受注処理は、購入された商品に関する業務を指します。
この業務の流れは、まず「購入者に注文状況のお知らせメールをする」ことから始まり、「在庫の準備(引き当て)」を行い、最終的に「出荷指示」を出すという手順です。
この時点でのキャンセル対応や、入金に関する問い合わせも含まれます。
事務処理は非常に重要で、ここでのミスは「商品が届かない」といったトラブルを引き起こす可能性があるため、正確かつ迅速に行う必要があります。
自動化やシステムの導入によってミスを減少させることが推奨されています。
仕事内容⑥:在庫管理
在庫管理は、商品の仕入れに関連する業務です。
在庫が多すぎるとコストがかかり、少なすぎると在庫切れのリスクが高まるため、適切な在庫量を維持することが重要です。
売れる時期に適切な在庫を確保することや、在庫切れが起きないように調整することが必要です。
また、リアルタイムでの在庫管理ができるシステムを導入することで、「在庫があるのに購入できなかった」といったトラブルを防ぐことができます。
仕事内容⑦:梱包・出荷
商品の出荷作業では、商品を倉庫から取り出すことを「ピッキング」と呼びます。
ピッキングが完了したら、商品を梱包し、伝票を貼り付けて配送会社に引き渡します。
この一連の流れを出荷作業と呼びます。
梱包に関しては、商品が破損しないようにクッション材などを使用して梱包することは基本ですが、梱包用の箱がデザイン性に富んでいたり、手書きのメッセージが添付されていると、顧客の印象が向上します。
出荷作業はデジタル化することが難しい工程ですが、商品の内容と同じくらい重要であり、他の企業との差別化を図る要素となります。
仕事内容⑧:アフターサポート
商品の出荷後も、購入者へのフォローアップが必要です。
アフターサポートとして、商品に問題がなかったかの確認、レビュー投稿の依頼、次回使用可能なクーポンの提供などが一般的な内容となります。
また、商品やサービスに何らかの問題が発生した場合、迅速かつ誠実に対応することが求められます。
アフターサポートを適切に行うことで、リピート顧客を増やすことができ、店舗の信頼性を向上させることができます。
ECサイトの構築・運営にかかるコスト、必要な人数
ここでは、ECサイトの構築や運営にかかるコストや人数等、具体的に解説していきます。
ECサイト構築にかかるコスト(初期費用)
初期コストの種類 | 初期コスト |
ドメイン取得費用 | 年間1,000円〜5,000円 |
サーバー費用 | 年間10,000円〜100,000円 |
デザイン費用 | 0円〜数百万円 |
ショッピングカートシステム導入費用 | 0円〜数十万円 |
決済手段導入費用 | 0円〜数十万円 |
その他の初期費用 | 0円〜数十万円 |
ECサイト運営にかかるコスト(維持費用)
運営コストの種類 | 運営コスト |
サーバー費用 | 年間数万円〜数十万円 |
ドメイン更新費用 | 年間1,000円〜5,000円 |
SSL証明書更新費用 | 年間数千円〜数万円 |
ショッピングカートシステム維持費用 | 月額数千円〜数万円 |
決済手数料 | 売上の3%〜5% |
広告費 | 月額数万円〜数百万円 |
外部ツール利用費 | 月額数百円〜数万円 |
人件費 | 月額数十万円〜数百万円 |
その他の維持費用 | 月額数千円〜数万円 |
ECサイト運営に必要な人数
ビジネスのコアスタッフの推奨される役割と責任は以下の通りです。これら3人のスタッフは、それぞれの役割を理解し、データを適切に処理する能力が必要です。
役割 | 業務内容 |
ストアリーダー | ストアの管理計画、進行のモニタリング、全体的な運営に責任を持つ |
コンテンツスペシャリスト | SNSを中心にコンテンツの制作、クリエイティブな作業、広告の運用を担当。 |
運用スペシャリスト | オペレーションとカスタマーサポートを担当。 |
基本的には、最初は個人で全てのタスクを経験し、自分の能力とリソースを理解した上で、業務委託を求めることが推奨されます。
また、ツールや外部サービスの利用や業務委託については、利益が維持されるか、または増加する場合のみを推奨しています。
運営時には、損益分岐点をしっかりと理解し、それを基に決定を下すことで、運営の失敗を避けることができます。
業務を外注するメリットとデメリット
業務を外注するメリット
・自社にノウハウがなくても売上を上げる可能性が上がる
ECサイトの運営には専門的な知識が必要な業務が多いです。
例えば、商品バナーの制作や商品名の命名などは、作成方法によってアクセスやCVRに大きな影響を与えます。
運営代行サービスを利用することで、ECサイト運営のノウハウがなくても、専門的な運営が可能になります。
・ECサイトチームを作るための採用や育成にかかる時間的・金銭的コストの削減
売上が一定規模に達するまで、1人で企画から商品の仕入れや登録などが可能です。
しかし、売上規模が一定以上になると人手が不足し、この時採用するか外注するかの選択が必要です。
ECサイト運営経験者の採用は難しい場合が多く、経験のない人を採用して育成するのにも時間がかかります。
運営代行サービスを利用することで、これらの時間やコストを大幅に削減できます。
業務を外注するデメリット
・ノウハウが自社にたまりにくい
ECサイト運営を外部に委託すると、細かいノウハウが社内に蓄積されにくくなります。
どのように運営代行が行われているかを常に確認することは理想的ですが、日常業務に追われる中で難しい場合があります。
・将来的に外注から自社運用へ切り替える際はさまざまな困難がある
運営代行から自社運用に切り替える際、売上規模が大きくなるほど、切り替えのハードルが高くなります。
段階的な移行ができる企業は少なく、切り替えを行う場合、体制の整備や多くの時間やコストがかかることを想定する必要があります。
ECサイト運営に必要とされる5つのスキル
以下は、ECサイト運営に必要とされる5つの主要なスキルについての詳細です。
スキル①:集客に必要なWebマーケティングスキル
ECでの売上を増加させるための販促は、SEO、SNS、Web広告の3つのWebマーケティング施策に集約されます。
アクセス数、転換率、客単価のKPIをマーケティング施策で改善することが重要です。
スキル②:売れる商品を考える商品企画スキル
EC運営者は新しい商品の開発や仕入れ商品を企画する能力が求められます。
「お客様がいま何を求めているのか」を研究し、「今後どんな需要が出てくるのか」を予測することが必要です。
スキル③:使いやすいサイトを制作するクリエイティブスキル
ECサイトのデザインと使いやすさは、顧客にとって心地よいUI/UXを提供することが求められます。
商品画像や商品ページのクリエイティブを設計・改善するスキルが重要です。
スキル④:顧客の声に応えるカスタマーサポートスキル
ECサイトでは顧客対応が中心にあり、店舗運営をする上で非常に重要です。
オンライン上での「接客」から、検品・配送・アフターフォローまでの対応が必要です。
スキル⑤:運営の方向性を決める分析・改善スキル
IT・情報システムの知見があると、EC運営に非常に役立ちます。
外部サービスとのシステム連携やデザインのリニューアルなど、システム周りの対応を理解することが重要です。
ECサイト運営術が学べる本
人気の書籍からECサイト運営ノウハウを学習することができます。
EC担当者の実務と知識がこれ1冊でしっかり分かる教科書
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ECサイト運営を成功させるために重要なこと
ECサイトを運営する際には、多くの業務や注意点が存在します。以下に、その主要なポイントをまとめてみました。
長期的な視点で判断する
ECサイトは短期的な成功よりも、長期的な視点での運営が求められます。
短期的な利益を追求するだけでは、持続的な成長は難しいでしょう。
長期的な視点での運営を心掛けることで、顧客の信頼を築き、リピート購入を促進することができます。
また、市場の変動やトレンドの変化にも柔軟に対応することが可能となります。
「情報収集と行動を常におこなう
ECサイト運営においては、市場の動向や顧客のニーズ、最新の技術やトレンドなど、常に変化する情報をキャッチアップし続ける必要があります。
情報収集とそれに基づく迅速な行動は、競合他社との差別化や新しい市場の開拓、顧客満足度の向上など、ビジネスの成功を左右する要因となります。
「訪問者数」と「成約率」を増やして売上を伸ばす
ECサイトの売上を伸ばすためには、訪問者数を増やす集客活動と、訪問者を購入者に変える成約率の向上の両方が不可欠です。
訪問者の数が多くても成約率が低ければ売上は伸びません。逆に、成約率が高くても訪問者数が少なければ、十分な売上は期待できません。
両方のバランスを以下に取るかが重要となります。
まとめ
ECサイト運営は、商品の企画からカスタマーサポート、マーケティング活動まで多岐にわたる業務が含まれます。
運営を始めるにあたっては、初期費用や維持費用をしっかりと把握し、適切な予算計画を立てることが重要です。
また、成功を収めるためには、Webマーケティングスキルや商品企画スキルなど、多様なスキルを身につける必要があります。
ECサイト運営は決して簡単なビジネスではありませんが、適切な知識とスキルを持ち、継続的な努力を重ねることで、大きな成功を手にすることができるでしょう。