カスタマーサクセス入門|メリットと成功への5ステップ解説

監修者

佐藤 祐介
佐藤 祐介

株式会社LIFRELL代表取締役。大手代理店、株式会社オプト、電通デジタルの2社でアカウントプランナーを経験。その後、株式会社すららネットでインハウスマーケターとして事業の立ち上げからマザーズ上場水準まで事業を伸長させる。マーケティング戦略の立案からSEO/WEB広告/SNS/アフィリエイト等の施策で売上にコミット。

専門家

深瀬 正貴
深瀬 正貴

Yahoo株式会社 法人マーケソリューション出身。 鎌倉の海のそばでオフィスFHを運営。 リスティングやSEOをはじめとしたデジタルマーケティングで100社以上の売り上げ課題を解決。
最近の趣味はブームに乗っかったように見えてしまう「焚き火ごはん」。

目次

このテキストは、ビジネス界でのカスタマーサクセスの役割、その利点、そして実践における具体的な手順について、読者に親しみやすく解説することを目的としています。ここでは、カスタマーサクセスの概念を明確にし、その導入に至るまでの段階を、易しい言葉で、より詳細に展開してみましょう。

ビジネスにおいて、顧客の成功を最優先事項とするカスタマーサクセスのアプローチは、自社製品やサービスの価値を最大限に引き出し、それを通じて顧客との長期的な関係を築くために非常に重要です。この理念は、顧客それぞれの成功が自社の成長と密接に関連しているという信念に基づいています。

特に、SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)定額制サービスモデルが普及した現代において、顧客をいかにして長期間にわたりサービスの利用者として維持できるかが、ビジネスの成功を左右するキーとなります。これは、一度の購入だけでなく、継続的な利用が収益に直結するためです。

カスタマーサクセスを実践することで、顧客は自身のニーズに応えるポジティブな体験を得られ、これが顧客満足度の向上、サービスの解約率の低下、さらなる購入機会の創出、顧客生涯価値(LTV)の増大につながります。これにより、企業は顧客との関係を深め、持続可能なビジネスモデルを構築することが可能になります。

しかし、このアプローチを成功させるためには、顧客ごとの特性やニーズに応じて、適切なコミュニケーション手法を選択し、効果的な戦略を実行する必要があります。また、カスタマーサクセスプログラムを適切に立ち上げ、管理することが、その成果を最大化する上で欠かせません。

本稿では、カスタマーサクセスの基本から、その実現に必要な手順について、実用的なアドバイスとともに紹介していきます。このプロセスにおけるポイントや、導入時の注意すべき点、成功を収めるためのヒントについても、具体的な事例を交えながら解説しますので、末尾までご覧いただければと思います。この知識を武器に、皆さんのビジネスにカスタマーサクセスの理念を根付かせ、さらなる成長を遂げていただければ幸いです。

カスタマーサクセスの意義とその実践

カスタマーサクセスの意義とその実践について、初めにご紹介したように、企業が提供するサービスを利用しているお客様を、その取り組みを通じて成功へと導くことを目的としたサポート体制のことを指します。

カスタマーサクセスの意義とその実践について、初めにご紹介したように、企業が提供するサービスを利用しているお客様を、その取り組みを通じて成功へと導くことを目的としたサポート体制のことを指します。

例を挙げてみましょう。マーケティングオートメーション(MA)ツールを提供する企業が、カスタマーサクセスの一環として、顧客のデータ移行サポートや、データ分析の方法、運用体制の構築などを手厚くサポートします。このような支援により、お客様はMAツールを駆使して、見込み客の効率的な抽出から、商談の増加、受注の拡大、そして売上の向上につなげることが可能になるわけです。

このような取り組みは、特にビジネス向け(BtoB)のソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)を提供する企業において一般的です。こうした企業では、サービスの利用料金にカスタマーサクセス活動の費用を含めている場合がしばしば見受けられます。

カスタマーサクセスの根本には、お客様が提供されたサービスを長期間にわたって利用し続けることで遭遇するかもしれない課題を的確に解決し、顧客が望む成功を実現することがあります。これによってサービスの継続利用が促され、顧客生涯価値(LTV)の最大化が図られるのです。言い換えれば、カスタマーサクセスは顧客の成功が自社の成功へ直結するという考え方に基づいています。これこそが、カスタマーサクセスが担う最も重要な役割であると言えるでしょう。

カスタマーサクセスの活動の具体的な内容

カスタマーサクセスの活動の具体的な内容についてお話ししましょう。

お客様をその成功へと導くにあたり、具体的にはどのようなアプローチを取るべきなのでしょうか?

カスタマーサクセスチームは、顧客をサポートする過程で、顧客層を「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」という3つのレベルに分けて考えます。これは、各顧客が抱える問題やニーズに応じて、最も効果的なサポートを提供するためです。カスタマーサクセスの主な目的は、顧客の生涯価値(LTV)を高めることにあります。そのためには、顧客一人ひとりの状況を理解し、そのニーズに合わせたコミュニケーションを取ることが重要になります。

具体的なサポートの内容については、次のように分類することができます。また、これに加えて、すべての顧客層を対象とした「コミュニティタッチ」という形のサポートもあります。

コミュニティタッチの概要:

  • 顧客同士が交流し、お互いの課題を解決し合う支援方法です。
  • このアプローチは、顧客セグメントに関係なく行われます。

【具体的な例】

  • 顧客間で情報交換や相談が行える会員制のオンラインコミュニティを設立する。

すべての顧客に対して、1対1での個別のサポートを提供することは、人的資源の観点からもコストの観点からも、実現が難しいことがあります。そこで、顧客のニーズや特性に応じた対応策を講じることにより、企業のリソースをより効率的に利用し、顧客に対して価値あるサポートを提供することが可能になります。このようにして、カスタマーサクセスは顧客の成功を支援すると共に、企業の成長と発展に貢献するのです。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの役割

カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、類似しているようでいて、その役割と目的においてはっきりとした違いがあります。

ここで、その違いをもう少し詳細に、そして分かりやすく解説してみましょう。

カスタマーサクセスは、企業側からの積極的な取り組みを意味します。このアプローチでは、顧客が自社のサービスや製品を最大限活用し、それを通じて目指す成果や成功を得られるようにサポートします。その主な目的は、顧客の成功体験を実現させることにあり、この成功を量る指標には、アップセルやクロスセルの率、継続利用の確率、そして顧客生涯価値(LTV)が含まれます。

一方で、カスタマーサポートは、顧客からの具体的な問い合わせや問題に対応することを目的としています。この関わりは受動的な性質を持ち、顧客が直面している問題を解決することが主な役割です。顧客サポートの成果は、対応した件数や顧客満足度によって評価されることが多いです。

カスタマーサクセスの場合、顧客の目標達成や課題解決に向けて能動的に動き、例えば製品の使い方をレクチャーする、特定の目標に沿った使用法をアドバイスする、あるいは顧客専任の担当を配置してコンサルティングを行うなど、顧客と一緒に成功への道を歩む姿勢が特徴です。

これに対して、カスタマーサポートは、既に生じた問題や疑問に対して回答や解決策を提供することで、顧客の不安や不満を解消します。つまり、カスタマーサポートは「問題への対応」が中心であり、カスタマーサクセスは「顧客の成功の実現」を目指します。

顧客がサービス利用中に不満や疑問を感じたとしても、その都度カスタマーサポートに連絡を取るわけではありません。ここでカスタマーサクセスが重要な役割を担うのです。顧客が抱える可能性のある問題や疑問を事前に予測し、適切なサポートや情報を提供することで、そもそも問題が生じることを防ぎ、顧客満足度の向上に繋がるのです。

要するに、カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、顧客と企業との関係をより強固なものにするための、補完的かつ必要不可欠な役割を持っています。カスタマーサクセスが顧客の事前の成功を促進する一方で、カスタマーサポートは既に生じた問題に対処し、顧客の信頼を維持する役割を果たすのです。

「本当に自分の会社に必要なのか?」

私たちはカスタマーサクセスについてお話してきましたが、その導入を検討する上で、「本当に自分の会社に必要なのか?」と迷っている方も多いかもしれません。

ここでは、カスタマーサクセスがなぜ現代のビジネスシーンで高い関心を集めているのか、そして、それを取り入れることでどのような利点が得られるのかについて、もう少し詳しくお伝えします。

カスタマーサクセスの概念は、顧客がサービスや製品を通じて目指す成功を実現するためのサポートを提供することにあります。この取り組みは、ただ単に顧客からの問い合わせに応えるだけではなく、顧客の目標達成を企業側から積極的にサポートすることを意味します。これにより、顧客は自社の提供するサービスや製品をより深く理解し、最大限に活用することが可能になります。

カスタマーサクセスを導入する最大のメリットは、顧客満足度の向上にあります。顧客が抱える潜在的な問題を先回りして解決したり、顧客のビジネスが成功するためのサポートを行うことで、顧客との信頼関係を深めることができます。これは、長期的な顧客関係の構築に不可欠であり、顧客のロイヤルティ向上にもつながります。

さらに、カスタマーサクセスは、顧客の利用状況やニーズを深く理解することを可能にします。これにより、アップセルやクロスセルの機会を見出しやすくなり、売上の増加に貢献します。また、顧客がサービスや製品に満足していれば、彼らからのポジティブなフィードバックや口コミが拡散されることで、新規顧客の獲得にも繋がります

顧客生涯価値(LTV)の向上も見逃せないポイントです。カスタマーサクセスによって顧客満足度を高め、顧客との関係を長期にわたって維持することができれば、顧客一人ひとりからの収益貢献度を向上させることが可能です。これは、企業の持続可能な成長にとって重要な要素です。

最後に、カスタマーサクセスの取り組みは、企業文化にも良い影響を与えます。顧客中心の思考が浸透することで、社内の各部署が顧客の成功をサポートするために協力し合い、より一層のチームワークを育むことができます。

これらのメリットを踏まえると、カスタマーサクセスは単なる流行り言葉ではなく、顧客満足度を高め、企業の長期的な成功に貢献する重要な戦略であることがわかります。そのため、カスタマーサクセスの導入を検討する際は、これらの利点を念頭に置いて、自社のビジネスモデルや顧客のニーズに合った形での実装を考えることが重要です。

カスタマーサクセスを取り入れることの最大の利点

カスタマーサクセスを取り入れることの最大の利点は、解約率、すなわちチャーンレートを効果的に下げることにあります。

顧客がサービスに対して不満を持ち始めると、その不満が解消されなければ解約に至るケースが少なくありません。ここでカスタマーサクセスの役割が重要になります。カスタマーサクセスによって、顧客のサービス利用を促進し、発生しうる問題を事前に解決することができれば、顧客が不満を感じる機会を大幅に減少させることが可能です。

この積極的な介入により、顧客がサービスから得られる価値を最大限に感じることができるようになります。つまり、顧客がサービスを継続して利用することで目指す成果を達成できるようになると、自然とサービスへの満足度が高まり、長期間にわたって利用を続けるインセンティブが生まれます。これは、顧客生涯価値(LTV)の向上へと直結します。

顧客が自身の目的や目標を達成できるようサポートすることは、単にチャーンレートの低減だけに留まらず、顧客との関係を強化し、その結果として企業の収益性の向上に貢献します。カスタマーサクセスを実践することで、顧客満足度の向上はもちろん、企業の持続可能な成長にも繋がるのです。このように、カスタマーサクセスは、顧客と企業双方にとって多大なメリットをもたらす重要な戦略と言えるでしょう。

適切な追加サービスや製品を推奨

カスタマーサクセスの取り組みを通じて、お客様の成功体験を実現する過程で、適切な追加サービスや製品を推奨することがあります。

このアプローチは、顧客のニーズに基づいたサービスや製品の積極的な提案を意味し、その結果としてアップセルやクロスセルの機会が自然と生まれます。

このプロセスでは、お客様にとって本当に価値のあるサービスや製品を提案することに焦点を当てています。これにより、提案が強引な販売活動とは異なり、お客様の成功に直結する適切な解決策として捉えられるため、お客様からの受け入れも良くなります。お客様が自身の目標や課題を達成するために役立つと確信しているサービスや製品であれば、提案はより自然に、そして歓迎されやすくなります。

結果的に、カスタマーサクセスを通じたこのような取り組みは、顧客一人ひとりの価値を高めることに貢献します。つまり、お客様が企業から提供されるサービスや製品を通じてより大きな成果を得られるようになるため、顧客生涯価値(LTV)の向上が見込まれるのです。これは、顧客満足度を高めるだけでなく、企業の収益性向上にも大きく貢献する重要な要素です。

顧客との積極的なコミュニケーション

カスタマーサクセスの取り組みにおいて顧客との積極的なコミュニケーションは、サービス利用中に遭遇する一般的な問題点や、高い生涯価値(LTV)を持つ顧客群の特性を理解する貴重な機会を提供します。

このような洞察は、マーケティングやインサイドセールスのチームと共有することで、企業が市場へのアプローチをより洗練させ、効果的な戦略を展開するための基盤となります。

特に、高LTVを持つ顧客の特徴やニーズを事前に識別できることは、企業がリソースを最も価値の高い顧客セグメントに集中させることを可能にします。この情報を活用することで、潜在的な高価値顧客へのアプローチ方法を最適化し、これらの顧客を引き付け、維持するための戦略を練ることができるのです。

結果として、このプロセスは高LTV顧客の獲得数の増加や受注率の向上に直接貢献します。新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の価値を最大化するための施策も、こうした深い理解に基づいて計画されます。これにより、企業はより持続可能な成長を達成し、長期的な顧客関係を築くことができるようになります。

カスタマーサクセスによる顧客とのコミュニケーションは、単に現在の問題を解決するだけではなく、企業が将来にわたって顧客と成功を共有するための基盤を構築することを意味します。このように、顧客の深い理解を通じて、マーケティングやセールスの努力がよりターゲットを絞ったものとなり、企業全体の成果に貢献するのです。

重要な注意点

カスタマーサクセスを自社に取り入れる際、成功させるためには幾つかの重要な注意点を把握しておくことが不可欠です。

これらのポイントを事前に理解し、適切に準備することで、カスタマーサクセスの導入が自社にとって適切かどうかを判断するのにも役立ちます。

まず第一に、カスタマーサクセスを導入するためには、明確な戦略を策定する必要があります。これは、ただ単にカスタマーサポートの機能を拡張する以上のことを意味し、顧客が成功を達成するためにどのようなサポートが必要かを総合的に計画することを含みます。

次に、顧客のセグメンテーションの重要性です。全ての顧客が同じニーズや期待を持っているわけではないため、異なる顧客群に対して最適なサポートを提供するためには、顧客を適切に分類し、各セグメントに合わせたアプローチを用意することが必要です。

また、カスタマーサクセスを効果的に運用するためには、専門のチームや部門の設置を含む組織体制の構築も考慮する必要があります。顧客との関係を深め、長期的な成功を共に追求するためには、組織内でカスタマーサクセスをサポートする体制を整えることが欠かせません。

さらに、カスタマーサクセスの導入と運用には費用がかかります。これには、人員の採用や研修、専用のツールやシステムの導入など、様々な投資が必要になることがあります。したがって、導入にあたっては、予算計画を慎重に立てることが求められます。

これらの注意点を理解し、適切に対応することで、カスタマーサクセスの導入は企業にとって大きな価値をもたらす可能性があります。企業はこれらのポイントを踏まえ、自社の状況に合わせたカスタマーサクセスの導入計画を慎重に策定することが成功への鍵となるでしょう。

ただ顧客とのコミュニケーションを積極的に行うだけでは不十分

カスタマーサクセスの成功には、ただ顧客とのコミュニケーションを積極的に行うだけでは不十分です。

顧客との関わり方には戦略的な思考が必要であり、特にどの顧客セグメントにどのような方法でアプローチするかを明確に定めることが重要です。

たとえば、まずは企業の月次経常収益(MRR)を詳細に分析し、生涯価値(LTV)が特に高い顧客群を特定します。そして、その顧客群に対してどのようなコミュニケーションを取るべきかを計画するのです。

この過程では、以下のような具体的な戦略を練ることが推奨されます:

  • 顧客のチャネル、属性、セグメントに応じた人員配置を行います。これには、顧客が最も利用するコミュニケーションチャネルや、顧客の業界、製品使用状況などの特性を考慮に入れることが含まれます。
  • それぞれの配置に対して、達成すべき具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定します。このKPIは、顧客満足度の向上、チャーンレートの低下、アップセルやクロスセルの機会の増加など、カスタマーサクセスの目的に直結するものであるべきです。
  • 最後に、設定したKPIを達成するための具体的なアクションプランを策定します。これには、顧客への教育プログラムの提供、問題解決のための迅速な対応、顧客の成功ストーリーの共有など、多岐にわたる施策が考えられます。

このように、カスタマーサクセスを導入する際には、戦略的な計画と具体的な実行プランの両方が不可欠です。これにより、顧客の成功を支援することで、企業自身の成長と顧客満足度の向上を実現することができるでしょう。

顧客の適切なセグメンテーション

カスタマーサクセス戦略を効率的かつ効果的に運用するためには、顧客の適切なセグメンテーションが極めて重要です。

ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチといった異なる顧客群に対応するためのアプローチやコミュニケーション戦略は、顧客の特性とニーズに基づいてカスタマイズされる必要があります。

カスタマーサクセスの戦略や計画を策定する上で、まず行うべきは、顧客をそれぞれの特性やニーズに応じて分類することです。これを行わないと、適切なサポート体制の構築はおろか、必要な人員数の推定や、採用戦略の立案が困難になります。さらに、サービス提供に伴う費用見積もりや予算計画も、顧客のセグメンテーションなしには正確に行うことができません

したがって、カスタマーサクセスを導入し、その効果を最大化するためには、顧客セグメンテーションを行うことが先決です。顧客群を明確に分けることで、各セグメントに最適化されたサポートプランを立てることが可能になり、それに基づいて人員配置や予算の計画を進めることができるのです。このように、顧客のセグメンテーションはカスタマーサクセス戦略を立て、実行する上で不可欠なステップと言えるでしょう。

組織構造の見直しや新たな体制の構築

カスタマーサクセスを成功裏に実施するためには、組織構造の見直しや新たな体制の構築が欠かせません。

どのタイプの人材をどのように配置し、さらに必要な採用をどう進めるかは、カスタマーサクセス戦略の中核を成す要素です。

カスタマーサクセスチームの構成モデルには主に以下の4つが挙げられます。

  • オールラウンダー型:このモデルは、セールス、オンボーディング、サポート、顧客維持、アップセルやクロスセルまで、カスタマーサクセスに関わるあらゆる業務を担う人員で構成されています。主に規模が小さな企業で採用されることが多いです。
  • スペシャリスト型:オンボーディング、テックサポート、セールスなど、カスタマーサクセスの各分野に特化したチームを持つモデルです。各メンバーが専門性を生かし、顧客に対して最も効果的なサポートを提供することができます。
  • セールス指向型:この組織モデルは、営業チームとの密接な連携に重点を置いています。顧客への効果的な販売戦略や、適切なアップセル、クロスセルの機会を見つけ出すことに注力します。
  • パートナーシップ型:顧客とのパートナーシップを深め、一緒に成長していくことを目指す組織モデルです。顧客のニーズや課題を深く理解し、適切な提案やサポートを行うことで、長期的な関係を築きます。

組織モデルを選択した後は、カスタマーサクセスに必要な役割を明確にし、適切な人員を配置することが重要です。役割には、カスタマーサクセス部門の指導者であるチーフカスタマーオフィサー(CCO)カスタマーサクセスマネージャー(CSM)、顧客の課題に対応するコンサルタント、テックタッチによる自己解決サポートの提供、業務の効率化を図るイネーブルメントなどがあります。

さらに、カスタマーサクセスチームが効果を最大化するためには、他の部門との連携が非常に重要です。各部門間でのスムーズな情報共有や協力体制を構築することで、顧客への一貫した価値提供が可能になります。事前に各部門との連携方法を計画し、実行に移すことが、カスタマーサクセス戦略の成功には不可欠です。

投資を伴うコスト要素

カスタマーサクセス戦略を展開するにあたり、投資を伴ういくつかのコスト要素が存在します。

これらの費用は、カスタマーサクセスの効果的な実行に不可欠であり、以下のように分類されます。

  • 人件費: カスタマーサクセスチームのメンバーに支払う給与や、部門運営のための固定費などが含まれます。チームのスキルセットやサイズによって変動します。
  • デジタルツールおよびシステムの導入費用: 業務の効率化、データ分析、顧客とのコミュニケーションを円滑にするためのデジタルツールやシステムに関する費用が必要です。これにはCRMシステム、データ分析ツール、自動化ソフトウェアなどが含まれます。
  • プログラム実施費: カスタマーサクセスプログラムを通じて実施される各種イベントや活動にかかる費用です。これには、セミナーやワークショップ、ユーザーコミュニティの運営、マーケティングキャンペーンの実施などがあります。

これらのコストを見積もり、企業が目指す顧客生涯価値(LTV)の向上とのバランスを取りながら、実現可能なカスタマーサクセス戦略を策定することが重要です。特に予算が限られている企業の場合、すべての顧客に対して高いレベルの個別対応(ハイタッチ)を提供することは難しい場合があります。そのような状況では、デジタルツールを利用した自動化されたサポート(テックタッチ)を主軸に据えるなど、コスト効率の良いアプローチを選択することが望まれます。

カスタマーサクセスの取り組みにかかる費用は、その投資が企業にとって長期的な価値をもたらすかどうかを慎重に評価することにより、最適な戦略を見極めることができるでしょう。予算の範囲内で最大限の効果を発揮するためには、資源を効率的に配分し、戦略的に活動を進めることが肝要です。

カスタマーサクセスの導入が考慮されるべき企業のタイプ

カスタマーサクセスの導入が考慮されるべき企業のタイプについて、もしあなたが自社がカスタマーサクセスを取り入れるべきかどうかを悩んでいるなら、以下の点に注目すると良いでしょう。

まず、SaaS(Software as a Service)や定額制サービスモデルを展開している企業、特にビジネス向け(BtoB)のサービスを提供している企業は、カスタマーサクセスの導入によって大きな恩恵を受けることができます。これらのビジネスモデルでは、顧客が継続してサービスを利用し続けることが収益の維持や成長に直結するためです。

また、自社の提供するサービスや製品から得られる顧客生涯価値(LTV)を高めたい企業にとっても、カスタマーサクセスは非常に有効です。顧客の成功を支援することで、長期的な関係を築き、より高い価値を提供することが可能になります。

加えて、既存の顧客からのアップセルやクロスセル、リピート利用を増やしたいと考えている企業もカスタマーサクセスの恩恵を受けやすいです。顧客と深い関係を築くことで、新たなニーズを発掘し、適切なタイミングで提案を行うことが可能になります。

最後に、新規リードの獲得が難しくなり、成長の頭打ちを感じている企業も、カスタマーサクセスを通じて新たな商機を見つけることができるでしょう。既存の顧客基盤を有効活用し、彼らを通じて新たなリードを獲得する方法や、顧客の成功を共有することで、間接的に新規顧客を引きつけることが可能です。

これらの条件の一つでも当てはまる場合、カスタマーサクセスの導入はあなたの企業にとって有益な戦略となり得るでしょう。カスタマーサクセスを通じて、顧客との関係を深め、持続的な成長を実現するための基盤を築くことが可能になります。

カスタマーサクセスの導入に成功し、顕著な成果を上げた一例

カスタマーサクセスの導入に成功し、顕著な成果を上げた一例を紐解いてみましょう。

Webサービスを提供する企業B社は、チャーンレートを抑制し、同時に顧客生涯価値(LTV)を最大化することを目指しました。この目標達成のために、B社は以下の取り組みを実施しました。

初めに、B社は顧客ごとに最適なコミュニケーションとアプローチの計画を立てるため、重要業績評価指標(KPI)を定義しました。さらに、顧客とのコミュニケーションフローを見直し、業務プロセスにおける営業とカスタマーサクセスの接続部分を改善しました。

その具体的なアプローチとして、営業からカスタマーサクセスへの引継ぎをスムーズにするため、顧客情報を記載する「引継ぎシート」を作成。このシートには、顧客の課題、目標、以前の商談内容などが記入され、これを用いることで、カスタマーサクセスチームが引継ぎを受ける際に、顧客についての深い理解を持つことができるようになりました。

さらに、顧客との最初のキックオフミーティングを必須とし、この会議での議論をもとに「サクセス定義」を設定しました。顧客ごとにカスタマイズされたサポートフローを計画し、これを顧客と共有することで、一貫したサポートと目標達成への道筋を明確にしました。

契約更新の5~3ヶ月前には、既に達成されたサクセス定義に基づき、次期目標の設定とそれを達成するためのフローを再構築。これにより、顧客の更新時の解約を防ぐと同時に、アップセルやクロスセルの機会を創出しました。

B社のカスタマーサクセスチームは、この一連の取り組みを通じて、チャーンレートを20%削減し、アップセル/クロスセルの機会を月に最低30件創出する成果を上げました。また、チーム全体のKPIを追うことで、顧客のニーズを最優先する文化を確立し、組織全体が顧客中心のアプローチをとるようになりました。

この事例からは、カスタマーサクセス導入において、顧客との密接な関係構築と、目標に沿った具体的なアクションプランの重要性が浮き彫りになります。また、チームとしての結束と共有目標に基づく取り組みが、顧客満足度の向上だけでなく、企業の成長にも貢献することを示しています。

効果的な導入プロセス

カスタマーサクセスの導入を検討している際には、効果的な導入プロセスを理解し計画的に進めることが重要です。

社内リソースのみで実施可能か、あるいは外部の専門知識を借りるべきかの判断も、このプロセスを踏まえた上で行うことになります。

以下、カスタマーサクセスを導入するための段階をご紹介します。

1. 目的の明確化

カスタマーサクセスを導入する最初のステップは、目的を明確に定義することです。何を達成したいのか、カスタマーサクセスを通じてどのような価値を顧客に提供したいのかを具体的に決定します。これは全ての計画と活動の基礎となります。

2. KPIとKGIの設定

次に、目的達成のためのキーパフォーマンスインディケーター(KPI)とキーゴールインディケーター(KGI)を設定します。これらは、カスタマーサクセスの活動が目的に向かって進行しているかを測るための指標です。

3. 顧客のステージに合わせたアプローチの明確化

顧客一人ひとりが異なるステージにいることを理解し、それぞれに合ったアプローチ方法を計画します。オンボーディング、成長、維持など、顧客のライフサイクルに応じた戦略を立てます。

4. 組織体制の決定

カスタマーサクセスの実施にあたり、社内での組織体制をどのように構築するかを決めます。必要な役割、チームのサイズ、内部または外部からのリソースの確保などを考慮に入れます。

5. マネジメントとPDCAサイクルの実施

導入したカスタマーサクセス活動を継続的に管理し、計画→実行→評価→改善のPDCAサイクルを回していきます。これにより、カスタマーサクセスの取り組みを常に最適化し、より高い成果を目指します。

カスタマーサクセスの導入とは、顧客と共に成長し続けるための戦略的な取り組みです。このプロセスを通じて、企業は顧客満足度の向上、顧客生涯価値の最大化、そして結果的に自社の成長と発展を実現することができるでしょう。事前に計画をしっかりと立て、ステップごとに丁寧に取り組むことが、カスタマーサクセス導入の成功への鍵となります。

カスタマーサクセスの最初の重要なステップ

カスタマーサクセスの取り組みを始めるにあたり、その目標とするべき点を明確に定義することが最初の重要なステップです。

カスタマーサクセスの活動範囲は非常に広く、具体的な目標が設定されていなければ、どのような施策を講じれば良いのか、どうすれば成功と呼べるのかを見失ってしまう恐れがあります。そうなると、取り組み全体の方向性がぶれ、期待する成果を上げることが難しくなります。このような状況を避けるためにも、はじめにカスタマーサクセスの導入目的をはっきりさせることが不可欠です。

例えば、現在の顧客生涯価値(LTV)や顧客離脱率(チャーンレート)などの指標を見直し、自社が直面している課題を特定します。もしLTVの向上が求められている場合、「LTVの最大化」を目標に掲げることが適切でしょう。

明確な目標を設定した後は、それを達成するための具体的な戦略とアクションプランを策定します。このプロセスを通じて、カスタマーサクセスの取り組みが具体化し、実行に移す準備が整います。目的を明確にすることで、カスタマーサクセスの活動がより焦点を絞られ、効率的かつ効果的に顧客の成功をサポートする方向へと進むことが可能になるのです。

成功を測定し、進捗を追跡する具体的な目標と指標を設定することが不可欠

カスタマーサクセスの取り組みにおいて、成功を測定し、進捗を追跡するためには、具体的な目標と指標を設定することが不可欠です。

これを実現するために、キーゴールインディケーター(KGI)キーパフォーマンスインディケーター(KPI)の定義が重要となります。

以下に、一般的なカスタマーサクセスの目標に基づいたKGIとKPIの設定例を示します。

目標: 顧客離脱率(チャーンレート)の削減

  • KGI: 顧客全体の保持率の向上
  • KPI:
    • 顧客離脱率の低下
    • 新規顧客のオンボーディング完了率の向上

目標: 顧客生涯価値(LTV)の最大化

  • KGI: 純保持率の向上および収益増加率
  • KPI:
    • 顧客生涯価値(LTV)の増加
    • アップセルおよびクロスセルの成功率の向上

これらのKPIやKGIを定めた後、実際にこれらのデータを効率的に収集し分析するためのシステムの構築が必要になります。手動での追跡は時間がかかり、誤差が生じやすいため、専用のカスタマーサクセス管理ツールの導入が推奨されます。これらのツールを使用することで、リアルタイムでのパフォーマンス追跡が可能になり、必要に応じて迅速に戦略を調整することができます。

KGIとKPIの設定を通じて、カスタマーサクセスの取り組みが目標達成に向けて適切に進んでいるかを定量的に把握し、さらには、改善のための具体的な行動計画を策定するための基盤が築かれます。このプロセスを適切に管理することで、カスタマーサクセスの取り組みが効果的に機能し、企業全体の成長に貢献することが期待できるでしょう。

顧客毎に異なるニーズに対応するためのセグメント分けとアプローチ

カスタマーサクセス戦略の有効性を高めるためには、顧客毎に異なるニーズに対応するためのセグメント分けと、それに応じたアプローチの策定が必要です。

このプロセスでは、まず顧客の属性や契約規模を基にして、彼らをハイタッチロータッチテックタッチのカテゴリーに分類し、各カテゴリーに合わせたサポートを計画します。

ここで、顧客がカスタマーサクセスのライフサイクルのどのステージにいるかを特定し、ステージに応じて最適な施策を提供することが重要です。具体的なステージは次の通りです。

  • オンボーディング: 新たに契約した顧客がサービスをスムーズに取り入れ、早期に価値を感じられるよう支援します。
  • アダプション: 顧客がサービスの使用を日常的に行い、その利用を定着させる段階です。
  • ライブ: サービスの積極的な活用を促し、アップセルやクロスセルの機会を探ります。
  • リニューアル: 契約の更新やサービスの再購入を促進します。

各セグメントごとのステージに応じたアプローチ例は以下のとおりです。

ハイタッチ

  • オンボーディング: 直接ミーティング、操作説明会、カスタマイズされた勉強会、業務設計支援など。
  • アダプション/ライブ: 実際の業務に沿ったレクチャー、課題のヒアリング、改善コンサルティング、現場の視察など。
  • リニューアル: 成果の確認と評価、次期戦略の立案や新たな目標設定の支援など。

ロータッチ

  • オンボーディング: グループでの操作説明会、オンライン研修、セミナー、トレーニングプログラムの提供など。
  • アダプション/ライブ: 座談会や交流会の開催、顧客の状況に応じた電話フォローなど。
  • リニューアル: 年次ビジネスレビュー、電話を通じた振り返りミーティングなど。

テックタッチ

  • オンボーディング: 動画マニュアルやチュートリアルの提供、ステップメールの配信、初期設定ガイドの配布など。
  • アダプション/ライブ: 活用方法や重要な知識の共有を目的としたステップメールの配信、AIチャットボットによる即時サポートなど。
  • リニューアル: 契約更新のリマインダーメールの送信など。

このように、顧客のステージとセグメントに合わせて体系的にアプローチを計画し、実施することで、カスタマーサクセスの取り組みを最大限に活かし、顧客満足度の向上とビジネス成果の向上を目指します。

次なるステップ

顧客との接触点をどのように設定するか決めた後、次なるステップは、実施に向けた組織体制の整備です。

顧客へのアプローチ方法に基づき、求められる人員の規模や種類が見えてきます。

以前にも触れた通り、カスタマーサクセスの運営には様々な組織モデルがあります。自社のビジネス目標や顧客の特性、サービスの性質を踏まえ、どのモデルが最も適切かを選択することが肝心です。選択したモデルに応じて、必要な役職や人材を確定させます。

このプロセスでは、チーフカスタマーオフィサー(CCO)やカスタマーサクセスマネージャー(CSM)など、カスタマーサクセス活動を牽引するキーパーソンの役割を明確に定義します。これらの役割に最適な人材を内部から選出するか、または外部から新たに採用する必要があるかを判断します。

CCOは、カスタマーサクセスの方針を経営層に提案し、部門全体の戦略を定める重要な役割を担います。CSMは、具体的な顧客対応やチーム管理を行い、カスタマーサクセスの日々の運営を支えます。これらのポジションに加え、顧客の成功を支援するために必要な他の専門職の配置も検討する必要があります。

組織体制を決定する過程で、各役割の責務や必要とされるスキル、人材の確保方法について、詳細な計画を立てることが重要です。これにより、カスタマーサクセスの取り組みがスムーズに進行し、顧客満足度の向上とビジネス成果の達成につながる組織体制を築くことができるでしょう。

計画した施策が目標に沿って進行しているかを管理し、必要に応じて改善

カスタマーサクセスの取り組みを実行に移した後は、計画した施策が目標に沿って進行しているかを管理し、必要に応じて改善を図ることが重要です。

これを効果的に行うためには、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを適切に回していく必要があります。

カスタマーサクセスチームのマネジメントを担当する人々、特にカスタマーサクセスマネージャー(CSM)は、設定されたKPIを達成するために何が足りないのか、どのようなアクションが必要かを常に把握しておく必要があります。その情報を基に、施策の修正や人員の再配置、コミュニケーション戦略の見直しなど、効果的な対策を講じていきます

また、カスタマーサクセスの取り組みを一貫して行うためのガイドラインとしてプレイブックの作成が有効です。プレイブックは、カスタマーサクセス活動の標準作業手順書のようなもので、どのスタッフがいつ何を行うべきかを具体的に定めます。これにより、チーム全体の対応が統一され、顧客へのサービス品質が安定します。

プレイブックを活用することで、日々の業務の中で生じるさまざまな状況に対しても迅速かつ適切な対応が可能になり、組織全体の効率が向上します。さらに、定期的にプレイブックの内容を見直し、実際の業務経験に基づいて改善を加えていくことで、カスタマーサクセスの取り組みを進化させることができます。

このように、適切なマネジメントPDCAサイクルの実施を通じて、カスタマーサクセスの取り組みは継続的に改善され、より高い成果を生み出すことが期待できます。また、プレイブックの活用により、チームの一貫性と効率性が高まり、最終的には顧客満足度の向上につながるでしょう。

カスタマーサクセスの取り組みを成功に導くためには

カスタマーサクセスの取り組みを成功に導くためには、顧客が直面しているニーズや問題点に対して深い理解を持つことが不可欠です。

この深い理解を構築する上で、CRM(Customer Relationship Management)ツールの活用が非常に有効です。

効果的なカスタマーサクセス戦略を立案するために、以下のような方法で顧客データを分析することが推奨されます。

  • 顧客がサービスを解約した理由を、チャーン履歴やコミュニケーションログと照らし合わせて特定します。このデータ分析を通じて、解約の主な原因を明らかにします。
  • 解約理由を分類し、それに基づいて必要なサポートやコミュニケーションのアプローチを設計します。顧客が直面する問題のタイプごとに、どのようなサポートが最適かを検討します。
  • 生涯価値(LTV)が特に高い顧客セグメントを識別し、それらの顧客にどのような価値を提供できるかを考えます。
  • アップセルやクロスセルの機会が豊富で、売上への貢献度が高い顧客群を明確にし、これらの顧客のLTVをさらに向上させる戦略を立てます。

ただ、「顧客にはこのような問題があるだろう」という推測に基づいて戦略を立てるのではなく、実際のデータと顧客からのフィードバックに基づいて戦略を設計することが重要です。なぜ顧客が解約を決断したのか、どのような特性を持つ顧客が高いLTVを持つのかを具体的に分析し、それに基づいてカスタマーサクセスの取り組みを策定します。

顧客の詳細な分析を行い、その結果を基にカスタマーサクセスのアプローチやコミュニケーション方法を設計することで、顧客満足度の向上、チャーン率の低下、LTVの最大化を実現できるでしょう。

カスタマーサクセスの基本、そして具体的なステップについて

この記事では、カスタマーサクセスの基本から、その導入における利点や留意点、そして実施する際の具体的なステップについて詳細に説明しました。

カスタマーサクセス導入の主なメリットは、次の4点に集約されます。

  1. チャーンレートの削減: 顧客が持続的にサービスを利用することで、長期的な顧客関係を構築できます。
  2. アップセルおよびクロスセルの機会の創出: 顧客のニーズに応じた追加サービスや製品の提案により、売上の向上を図れます。
  3. 高LTV顧客の特性と課題の共有: 顧客データの分析により、高い価値を提供できる顧客群の特性とその課題を明らかにできます。
  4. サービス改善と新規開発への寄与: 顧客フィードバックを直接製品開発やサービス改善に活用することができます。

カスタマーサクセスを導入するべき企業は、主に次の条件に当てはまる場合です。

  • SaaSやサブスクリプションモデルのサービスを提供している企業(特にBtoB)
  • 顧客生涯価値(LTV)の向上を目指す企業
  • アップセル、クロスセル、リピート購入の機会を積極的に追求したい企業
  • 新規顧客獲得の伸び悩みを感じており、既存顧客からのさらなる売上創出を目指す企業

カスタマーサクセスの導入プロセスは、以下のステップで構成されます。

  1. 目標の明確化: カスタマーサクセスの目的と目指す成果を定義します。
  2. KPIとKGIの設定: 目標達成を測定するための具体的な指標を決定します。
  3. 顧客ステージに応じたアプローチの策定: 顧客のライフサイクルに合わせた対応策を計画します。
  4. 組織構造の設計: 効果的なカスタマーサクセス運営のためのチーム構成と役割分担を決定します。
  5. マネジメントとPDCAの実施: 施策の実行と改善のためのサイクルを確立します。

これらのステップを踏まえ、カスタマーサクセスの導入と運営を適切に行うことで、企業は顧客満足度の向上、顧客保持率の向上、そして最終的には売上の増加を実現することができるでしょう。カスタマーサクセスは、顧客とともに成長し続けるための重要な戦略となります。

カスタマーサクセスという用語についてよくある疑問に対する答え

カスタマーサクセスという用語についてよくある疑問に対する答えは、カスタマーサクセスが「顧客の目標達成をサポートし、それによって自社の製品やサービスを成功させるための取り組み」を指すことです。

この取り組みは、顧客の成功が直接的に自社の成長に結びつくという考え方に基づいています。

このコンセプトは特に、ビジネス向け(BtoB)のソフトウェアアズアサービス(SaaS)モデルを提供する企業において重要視されています。こうした企業では、顧客が自社の提供するサービスを最大限に活用し、その結果として期待した成果を達成することが、サービスの継続利用や拡大に直接的につながります

サブスクリプションモデルやソフトウェアアズアサービス(SaaS)の普及

カスタマーサクセスが現代のビジネスシーンで大きな注目を集めるようになったのは、サブスクリプションモデルやソフトウェアアズアサービス(SaaS)のようなビジネス形態が普及したからです。

これらのモデルでは、顧客がサービスを継続的に利用し続けることで、企業の収益が生み出されます。顧客が長期間にわたってサービスを利用し続けることが、企業の利益に直結するため、「顧客をどのようにして継続的な利用者にするか」が非常に重要な課題となります。

この課題に対応するため、カスタマーサクセスは顧客がサービスを最大限活用し、その結果として目指す成功を達成できるよう支援する取り組みとして重要性を増しています。このような背景から、カスタマーサクセスは多くの企業で必要不可欠な戦略とみなされ、その価値と役割が注目されるようになったのです。

カスタマーサクセスの効果的な立ち上げには、計画的なアプローチが必要

以下の段階を踏むことで、カスタマーサクセスの取り組みを成功に導くことができます。

  1. 目標の設定: カスタマーサクセスの取り組みを始める前に、達成したい具体的な目標を定めます。これには、顧客満足度の向上、チャーンレートの削減、アップセルやクロスセルによる収益増加などが含まれるかもしれません。
  2. KPIとKGIの定義: 目標達成を測定するための指標を設定します。キーパフォーマンスインディケーター(KPI)とキーゴールインディケーター(KGI)は、プロジェクトの成功を定量的に評価するために不可欠です。
  3. 顧客セグメントに基づいたアプローチの策定: 顧客のニーズとステージを理解し、それに応じたカスタマイズされたサポート戦略を計画します。顧客を細分化し、各セグメントに合わせたコミュニケーションと支援を提供します。
  4. 組織体制の構築: カスタマーサクセスの活動を支える組織構造を確立します。これには、チームの役割と責任を明確にするとともに、必要なスキルを持つ人材を配置することが含まれます。
  5. マネジメントとPDCAサイクルの適用: 設定したKPIとKGIをもとに、カスタマーサクセスの活動を管理し、定期的に成果を評価します。また、PDCAサイクル(計画-実行-評価-改善)を回し、継続的な改善を行います。

これらのステップを踏みながらも、十分な経験や専門知識が社内にない場合は、外部の専門家やカスタマーサクセスに精通したコンサルティングファームに支援を求めることが賢明です。外部パートナーを活用することで、カスタマーサクセスの導入を効率的かつ効果的に進めることができるでしょう。