ビジネスの継続的な成長と成功は、新しい顧客層を開拓することに大きく依存しています。今日の競争の激しい市場では、特にEコマース、BtoC(ビジネス・トゥ・カスタマー)サービス、さらにはBtoB(ビジネス・トゥ・ビジネス)領域において、新規顧客を獲得することは経営戦略上極めて重要です。
この文脈において、多くの企業が利用しているFacebook広告(現在は一部で「Meta広告」とも呼ばれていますが、本稿では便宜上「Facebook広告」と呼称します)は、その有効性を強く認識しているでしょう。Facebook広告は、広範なユーザーベースと高度なターゲティング機能を兼ね備えており、新しい顧客を引き付けるための強力なツールとなっています。特に注目すべき機能が「類似オーディエンス(Lookalike Audiences)」です。
この記事では、Facebook広告を用いて新しいユーザー層に効果的にアプローチするための方法として、「類似オーディエンス」の活用に焦点を当てます。まず、「類似オーディエンス」の基本的な仕組みを詳しく解説し、その後、どのようにして「類似オーディエンス」を作成し、最大限に活用するかについて具体的なガイダンスを提供します。
Facebook広告における類似オーディエンスについて
Facebook広告における「類似オーディエンス」という機能は、マーケティング戦略において大変重要な役割を果たします。この機能を用いることで、広告主は既存の顧客と似た興味や関心、行動特性を持つ新たなユーザーにリーチすることが可能になります。これは、ビジネスに対して既に関心を示しているような人々に効率的にアプローチできるということを意味しており、特に新規顧客の獲得において非常に有効な手段と言えるでしょう。
「類似オーディエンス」を作成する際には、「ソースオーディエンス」という要素がキーとなります。このソースオーディエンスは、たとえばFacebookページのファンや既に作成されているカスタムオーディエンスなど、既存の顧客データを基に構築されます。このソースオーディエンスを利用して、Facebook広告システムは類似の特性を持つ新しいユーザー群を特定し、その人々に対して効果的に広告を配信することができるのです。
類似オーディエンスの利点
Facebookの「類似オーディエンス」という機能は、特にまだターゲットにしていないFacebookユーザーへのアプローチにおいて非常に効果的です。この機能は、既存顧客やFacebookページのファンと共通の特性を持ち、広告主のビジネスに興味を示す可能性が高いユーザーに焦点を当てています。つまり、新しい潜在顧客層に対して、より狙いを定めて広告を配信することができるのです。
このシステムの大きな利点の一つは、指定されたソースオーディエンスに基づき、Facebookが自動的に類似すると判断したユーザーをターゲットにすることができる点にあります。このプロセスは、効率的でありながらも管理の手間がほとんどかからないため、非常に便利です。
さらに、類似オーディエンスは一度作成されると、ソースオーディエンスを参照して3日から7日ごとに自動的にリストが更新されます。例えばソースオーディエンスの年代層のバランスが変化した場合でも、その傾向を加味して類似オーディエンスが適宜調整されるのです。
また、Facebook広告のターゲティングは非常に精度が高いとされています。これは、Facebookがユーザーの性別、年齢、登録情報、趣味や関心などのパーソナルな情報をもとにターゲティングを行っているためです。これにより、広告主は自分のビジネスに最も関心を示すであろうユーザー群に対して、より正確にアプローチすることが可能になります。
類似オーディエンスの作成方法
類似オーディエンスの作成方法を解説します。
STEP ①:
Facebook広告マネージャを開き、画面左側にあるメニューバーから「すべてのツール」上部に位置する「ツール」から「オーディエンス」をクリックします。
Facebook広告マネージャのインターフェースはユーザーによって異なる場合があります。例えば、「ショートカット」部分に表示されるメニューは、使用頻度や設定によって変わる可能性があります。
STEP ②:
遷移後の画面で「オーディエンスを作成」をクリックし、「類似オーディエンス」をクリックします。
また、広告セット作成画面からも「新規作成」をクリックし、「類似オーディエンス」をクリックする方法もあります。
STEP ③:
クリック後、画面にポップアップが表示されます。「元となるデータ」、「国」、「サイズ」の3条件をそれぞれ選択した後、「オーディエンスを作成」というボタンをクリックします。これにより、類似オーディエンスの作成が完了し、広告キャンペーンに活用する準備が整います。
また、広告マネージャを使用して広告を作成する際にも、類似オーディエンスを作成することが可能です。
類似オーディエンスの作成に指定する3つの条件について
類似オーディエンスの作成に指定する3つの条件は、広告の成功を左右する鍵となります。これらの条件を適切に設定することで、ビジネスの目的に合った正確なオーディエンスをターゲットにすることが可能になります。
どのような条件が指定可能なのか、詳しく見ていきましょう。
1.元となるデータ(ソースオーディエンス)
類似オーディエンスの基盤となる重要な要素です。以下のようなオーディエンス種から選択することができます。
- 既存のオーディエンスまたはデータソース: コンバージョンページURL指定のオーディエンスリストや、既存顧客の電話番号・メールアドレス指定のカスタムオーディエンスリストなどが含まれます。
- Facebookページを指定した場合: そのページのファン(いいね!をしているユーザー)に基づいて、類似オーディエンスが作成されます。
新しいソースを作成:を選択し、類似オーディエンス作成画面から直接カスタムオーディエンスを作成し、それをソースオーディエンスとして利用することも可能です。
類似オーディエンスのソースオーディエンス(カスタムオーディエンス)候補には、例えば以下のようなものが考えられます。
- サービス申し込み完了者やサービス利用者
- メールアドレス登録者
- 無料診断を実行したユーザー
- 動画を95%以上再生したユーザー
- Instagramアカウント
- 顧客のメールアドレスや電話番号リスト(カスタマーリスト)
2. 国
類似オーディエンスの作成時には、特定の国をターゲットとすることができます。これは、広告が表示される対象地域を絞り込むための重要なステップです。指定した国に居住している、または位置情報に基づいてそこに滞在していると判断されるオーディエンスが、類似オーディエンスの作成の基礎となります。
指定した国のオーディエンスが少なくとも100人以上いないと、類似オーディエンスを作成することはできません。この条件は、類似オーディエンスが実際にターゲット国の市場特性に合致するようにするためのものです。
日本国内での広告配信を考えている場合、多くの広告主は「日本(JP)」をターゲット地域として指定します。これにより、日本に居住している、または滞在していると判断されるオーディエンスが類似オーディエンスの作成の基盤となります。ただし、海外にいる人々への広告配信を検討している場合は、その国や地域を対象として選択することも可能です。
3. サイズ
指定されたソースオーディエンスと国を基に、類似度が高いと判断されるオーディエンスの上位1%から10%までを範囲指定し、リストを作成することが可能です。この手順により、ビジネスに最も関連性が高く反応が期待できるオーディエンスに焦点を当てることができます。
重要な点の一つは、ここで抽出される類似オーディエンスの人数が、あらかじめ指定された範囲内で固定されるということです。つまり、オーディエンスの人数を自由に指定することはできません。この人数は、先に指定した国のFacebookユーザー数やその他の指標によって異なります。
例えば、日本では1%サイズで約48万人、2%サイズで約96万人といった具合に、選択可能なサイズは約48万人から477万人の範囲となります。他の国の場合、たとえばタイでは、人口に対してFacebookユーザーの割合が高いため、選択できるサイズは日本より大きく、約69万人から690万人になります。※2022年10月時点での管理画面上での数値
最も類似度が高く、信憑性のあるオーディエンスを求める場合には、1%サイズの類似オーディエンスの作成が推奨されます。成果が良好でさらにリーチを広げたい場合には、2%や3%のサイズに拡大していくことが効果的です。
ただし、ソースオーディエンスによっては、2%以上のサイズになると精度が低下する可能性もあるため、この点には注意が必要です。
類似オーディエンスをターゲット設定に利用する
類似オーディエンスをターゲット設定に利用する際のステップは簡単で、設定画面の初めの部分にある「カスタムオーディエンス」欄にて、作成した類似オーディエンスを指定します。これを選択するだけで、後は通常の広告セット設定を確定することにより、プロセスは完了します。
便利な点の一つは、1つの広告セット内で複数の類似オーディエンスを同時に設定することが可能であることです。この方法を用いると、選択したいくつかの類似オーディエンスに属するユーザーが、広告のターゲットとなります。この柔軟性により、広告主は異なる特性を持つオーディエンスに同時にアプローチすることが可能になり、広告のリーチを最大化することができます。
上図のように類似オーディエンスを指定した上で、年齢や性別などの追加のターゲティングオプションを設定することもできます。これにより、より特定のオーディエンスに焦点を絞り込むことが可能になります。ただし、ターゲットリーチを狭めすぎることは避けることが推奨されます。あまりにも特定のグループに絞り込むと、広告の効果を損なう可能性があるからです。
以上で、Facebook広告の類似オーディエンスの作成からターゲティングへの設定が完了です。
類似オーディエンスを活用するための注意点
類似オーディエンス機能は、ビジネスに興味を持つ可能性が高いユーザーへのターゲティングを自動化する非常に有用なツールです。しかし、この機能を最大限に活用するためには、いくつかの重要な注意点を理解しておく必要があります。
・類似オーディエンスを作成するためには、ソースオーディエンスが最低でも100人以上いる必要がある
類似オーディエンスを構築するためには十分なデータが必要であり、共通の特性や傾向を把握するための基準となるからです。ソースオーディエンスが小さすぎると、効果的な類似オーディエンスを作成することが困難になります。
さらに、ソースオーディエンスの規模については、一定数までは多ければ多いほど、作成される類似オーディエンスの精度が高まります。このため、多くの専門家や媒体は、1000人から5000人のソースオーディエンスを推奨しています。これにより、より細かく特定された属性や行動パターンを持つユーザー群を見つけ出すことが可能になり、ターゲティングの効果を高めることができます。
しかし、必ずしもソースオーディエンスが大きいほうが良いとは限りません。目標や戦略によっては、顧客全体を含むオーディエンスよりも、特に反応が良い優良顧客だけで構成されたオーディエンスを使用するほうが、より良い結果を得られることがあります。
・自動的には生成されず、広告主自身による積極的な操作と意思決定を必要とする
まず、類似オーディエンスは、特定のユーザーリスト(オーディエンス)を作成した後に自動的に生成されるわけではありません。広告主は、自らソースオーディエンスを選択し、これを基に類似オーディエンスの作成を行う必要があります。この選択には慎重な検討が求められ、ビジネスの目標や戦略に合致する最適なソースオーディエンスを見極めることが重要です。
・コンバージョンピクセルを使用して作成された類似オーディエンスには、一般的にソースオーディエンスに含まれる人々が除外されることがある
作成済みのコンバージョンピクセルから類似オーディエンスを作成した場合、このルールは適用されません。その結果、ソースオーディエンスに含まれる人々が類似オーディエンスにも含まれてしまいます。広告を配信したくない場合は、配信対象からソースオーディエンスを手動で除外する必要があります。
・一つのソースオーディエンスから最大500種類までの類似オーディエンスを作成することが可能
・新しい類似オーディエンスの作成には、6時間から24時間程度かかることがある
・類似オーディエンスの作成には、広告セットの地域設定が使用され、その地域に居住するユーザーのみが含まれる
ソースオーディエンスの属性が似ているほど、広告の成果が高まる可能性がありますが、逆にソースが極端に少ない場合は類似性が見いだせず、効果的なリストを作成することすら困難になることもあります。
最後に
Facebook広告の類似オーディエンス機能は、他の広告媒体に比べて特定の強みを持っています。この機能の最大の特徴は、Facebookユーザーの詳細かつ正確な登録情報に基づいているため、ターゲティングの精度が非常に高いことです。この高いターゲティング精度により、Facebook広告は他の広告媒体と比較して、より多くの利点を提供します。
特に、既存の顧客に類似するユーザーへのリーチは、Facebook広告の類似オーディエンス機能を使用する上で特に推奨される戦略です。商品を購入済みの方や、すでにビジネスとの関係がある顧客に似た特性を持つ人々をターゲットにすることで、広告の効果を大きく高めることができます。これは、既存顧客がビジネスの製品やサービスに興味を持っていることが証明されているため、類似特性を持つ新たな潜在顧客も同様の関心を示す可能性が高いからです。
また、既存顧客のオーディエンスデータが十分にある場合、この情報を利用して類似オーディエンスを作成し、新しい顧客層に効果的にアプローチすることが可能です。この方法を用いることで、既存顧客と似た属性や興味を持つ人々に広告を表示することができ、より関連性の高いコンテンツを提供することができます。
Facebook広告の類似オーディエンスを使用することで、広告主は自社の製品やサービスに最も興味を持つ可能性が高いユーザーに対して、直接的かつ効果的にアプローチすることができます。これにより、広告キャンペーンの成果を最大化し、ビジネスの成長を促進することができるでしょう。