Facebookブランドアンケート完全ガイド:セルフで測るブランドリフト効果の秘訣

監修者

佐藤 祐介
佐藤 祐介

株式会社LIFRELL代表取締役。大手代理店、株式会社オプト、電通デジタルの2社でアカウントプランナーを経験。その後、株式会社すららネットでインハウスマーケターとして事業の立ち上げからマザーズ上場水準まで事業を伸長させる。マーケティング戦略の立案からSEO/WEB広告/SNS/アフィリエイト等の施策で売上にコミット。

専門家

深瀬 正貴
深瀬 正貴

Yahoo株式会社 法人マーケソリューション出身。 鎌倉の海のそばでオフィスFHを運営。 リスティングやSEOをはじめとしたデジタルマーケティングで100社以上の売り上げ課題を解決。
最近の趣味はブームに乗っかったように見えてしまう「焚き火ごはん」。

目次

A-B comparison. Split testing isometric concept. Vector illustration.

ブランドアンケートの提供は2024年1月にて終了いたしました

皆様がFacebook広告を駆使して商品やサービスの知名度を高めようとされた際、その取り組みの成果が実際にどれほどのものだったかを把握するのが難しいと感じたことはありませんか?直接的な売り上げを目指すキャンペーンと違い、知名度向上を目的としたキャンペーンの場合、成果を明確に示すことが一層困難になります。評価のための具体的な指標をどのように設定すれば良いのか、迷われる方も多いのではないでしょうか。

このような状況の中で、非常に役立つのが「ブランドアンケート」というツールです。これは、Facebook上で実施可能なブランドリフトテスト調査(以下、ブランドリフトテスト)の一形態で、ご自身の広告を目にしたユーザーの態度がどのように変わったかを具体的に把握することができます。このようにして、ブランドアンケートを行うことにより、知名度向上の施策がどれだけ効果的であったかの検証が可能になります。

一般的には、ブランドリフトテストを行うにはMeta社への依頼が必要だと考えられがちですが、実はそうではありません。実は、Facebookの管理画面から通常の広告メニューを使って、簡単にブランドリフトテストを実施することができるのです。

そこで、この度は認知度を重要なマーケティング指標としている広告主の方々に向けて、「ブランドアンケート」の利便性や具体的な設定方法、さらには実施時の注意点などを詳しくご紹介いたします。これまでにないほど詳細な情報をご提供することで、皆様のマーケティング活動をより一層充実させることを目指しています。

ブランドアンケートとは

ブランドアンケートは、認知度向上を主目的とするキャンペーンを展開している広告主にとって、非常に有益なツールです。最大の利点は、広告キャンペーンのターゲット層に対して実施されるアンケートからのフィードバックを通じて、キャンペーンがブランド認知度や広告の記憶にどの程度影響を与えたかを詳細に理解できる点にあります。つまり、広告主はブランドアンケートを利用することにより、自らの広告施策がターゲットとする顧客層にどのような印象を与え、どれほど効果的にブランドを想起させることができたのかを具体的なデータとして得ることが可能になります。

ブランドアンケートの実施基準

2023年7月時点で、ブランドアンケートを実施するためにはいくつかの重要な基準をクリアしている必要があります。これらの基準はブランドアンケートの質と効果を保証するために設けられており、一つでも満たさない場合、アンケートの実施が不可能になりますので、計画段階での確認が非常に重要です。

  • テスト期間中はアカウントの合計予算が$15,000を上回る
    アンケートで得られるデータの信頼性と質を保証するために必要な最低限の予算
  • テスト期間は最低14日以上
    アンケートの結果が偶発的なものでなく、一定の時間をかけて得られた信頼できるデータであることを確実にする
  • ブランド名かロゴを目立つ場所に入れるなど、ブランドを目立たせたクリエイティブを用意する
    アンケート対象者がどのブランドのアンケートに回答しているのかを明確にし、ブランド認知度の正確な測定を可能とする
  • 18歳未満の人はアンケートの対象外になるため、キャンペーンのオーディエンスに18歳以上の人を含める
    成年者を対象としたより精密なデータ収集を目指す

リフトテストのしくみ

ブランドアンケートの実施においては、「リフトテスト」という方法が採用されています。リフトテストは、広告の影響を測定するために、広告を見たユーザーと見ていないユーザーの二つのグループに分け、それぞれのグループの反応の違いを分析する手法です。

リフトテストの具体的なプロセスについて、さらに詳細にご説明しましょう。

初めに、広告の対象となるユーザー群からランダムに選ばれた一部がテストグループに割り当てられ、このグループに対して広告が表示されます。このプロセスは自動的に行われ、広告の影響をテストするための準備が整えられます。

続いて、広告が表示されたテストグループと、同じくランダムに選ばれたが広告が表示されなかったコントロールグループに対して、アンケート調査を実施します。商品の購入意向や広告の記憶度など、広告に対する肯定的な反応をどれだけ引き出せたかを測定します。そして、テストグループとコントロールグループの結果の違いから、Facebook広告がユーザーの態度や行動にどのような変化をもたらしたかを評価します。

さらに、リフトテストには、「コンバージョンリフトテスト」、「ブランドリフトテスト」、そして「テスト」という三つの異なるタイプが存在します。これらは、広告キャンペーンの目的に応じて選択され、ブランドアンケートではこの中の「ブランドリフトテスト」が用いられます。ブランドリフトテストには二つのアプローチがあり、その一つとしてブランドアンケートが活用されるのです。

ブランドアンケートで得られる重要な指標

ブランドアンケートを通じて得られる重要な指標には、以下の3つがあります。キャンペーンの成果を測定し、ブランドの認知度向上にどれだけ貢献したかを把握するために不可欠です。

ブランドリフトブランドアンケートでポジティブな反応を示した人の推定増加数
例)テストグループでポジティブな反応を示した人-コントロールグループでポジティブな反応を示した人
ブランドリフト率テストグループとコントロールグループの各々でポジティブな反応を示した人の割合を計算・比較して、ブランド認知度が向上したかどうかを確認するための指標
ブランドリフト単価ブランドリフトを、テストグループにリーチするためにかかった費用で割った推定獲得単価
例)ブランドリフト÷テストグループの広告費
ブランドアンケートで確認できる主な指標

ポジティブな反応とは、例えば「過去2日間にこの商品の広告を目にしましたか?」という質問に対して「はい」と回答したユーザーを指します。このような質問により、広告の記憶率やブランドへの露出がどれだけユーザーの記憶に留まっているかを測定することができます。

ブランドアンケートで設定可能な質問

ブランドアンケートでは、選択できる質問タイプには6つのカテゴリがあり、これらの中から最大で3つの質問をピックアップして設定することができます。これらの質問は、ブランドや製品に対する受け手の認識や感情を測定するためにデザインされています。

具体的な質問カテゴリと、それぞれの例を以下に示します。

標準広告想起
※設定必須
過去2日間にオンライン上・モバイルデバイスで[ページ名]の広告を見た覚えはありますか?
標準ブランド認知度[ページ名]をご存じですか?
抽象的好感度[ページ名]を総合的にどう思いますか?
熟知度[ページ名]についてどの程度知っていますか?
おすすめ[ページ名]を友達にすすめますか?
アクションの意向[ページ名]を購入する可能性はどの程度ありますか?

※上記質問は、実際の管理画面の設定内容を参考にしています。

これらの質問の中で、「標準広告想起」は必須で設定しなければならず、残りの質問群からは、最大2つまで選択して追加することが可能です。

さらに、各質問の文言は一定の範囲内でカスタマイズすることが許されています。例えば、「おすすめ」カテゴリーの質問では、[ページ名]を「友達」に推薦するかどうかと尋ねる標準の文言を、「上司」や「親戚」に推薦するかどうかに変更することが可能です。

質問内容は基本的にFacebookページ名に関するものとなるため、商品固有のアンケートを設計する際には、Facebookページが製品名ではなく会社名で登録されている場合、質問が製品ではなく会社名に関するものになってしまうことに注意が必要です。これは、アンケートの目的とする対象を明確にするために重要な配慮点です。

ブランドリフトレポートの見かた

ブランドアンケートを通じて得られるレポートの種類と、それをどこで確認できるのかについてご紹介します。ブランドアンケートの結果は、広告管理画面内のテストメニューからアクセス可能です。具体的には、レポートは二つの主要なカテゴリー、「結果」と「アンケートの質問」に分類され、それぞれ異なる情報を提供します。

「結果」

ブランドアンケートにおける各質問に対する「ブランドリフト率」と「ブランドリフト単価」が表示されます。

下記は、ブランドリフト率のレポートです。

ブランドリフト率を示す部分では、コントロールグループ(水色)とテストグループ(青色)のデータが並列に配置され、これにより両グループ間の比較が容易になります。ブランドリフト率がテストグループでコントロールグループに比べて高い場合、その広告がFacebookユーザーに対してポジティブな影響を与え、ブランド認知度を向上させたと見なすことができます。

次に、ブランドリフト単価のレポートでは、単価が低いほどFacebookユーザーに対するブランド認知度向上効果が高いと評価されます。

ただし、ブランドアンケートで選択された言語が日本語であっても、表示される通貨はドルであるため、金額の見間違いには注意が必要です。

「アンケートの質問」

各質問に対して年齢や性別別のブランドリフト率を確認することができます。  

特定のターゲット属性を持つ製品やサービス、例えば女性向け商品や50代以上をターゲットとするサービスなどでは、年齢や性別によって反応が大きく異なることがあります。この情報は、ターゲット属性に基づいたマーケティング戦略を練る上で貴重な洞察を提供し、より効果的な広告展開へと繋がります。

ブランドアンケートの信頼性と精度を確保するために注意するポイント

ブランドアンケートの効果を最大限に引き出し、その結果の信頼性と精度を確保するために心掛けるべきポイントには、以下のような要素が含まれます。これらのポイントは、ブランドアンケートのデータが実際にブランドや商品の市場における立ち位置や認知度を正確に反映するために欠かせません。

  • ブランドや商品を表す(または関連する)内容を広告クリエイティブに取り入れる
    広告を見たユーザーが、どのブランドや商品の広告であるかを明確に理解可能
  • ブランドアンケートは18歳以上のFacebookユーザーのみが対象となるため、広告の主なオーディエンスを18歳未満に設定しない
    アンケートの対象となるオーディエンスの適切性を保証
  • ブランドアンケートキャンペーン実施中は、配信する広告クリエイティブや予算を変更しない
    変更を加えると、キャンペーンの結果に影響を及ぼし、データの一貫性が損なわれる可能性あり
  • 1つのブランドや商品に対するブランドアンケートキャンペーン(その他の調査系広告メニューも含む)は、同一期間中に1つのみ実施する
    キャンペーン間での干渉を避け、結果の精度を保つ
  • ブランドアンケートで調査対象とする商品やサービスを、ブランドアンケートの対象外のキャンペーンで広告配信することを避ける
    アンケートの結果に影響を与える可能性あり

ブランドリフトテストでは、広告が表示されたテストグループと表示されていないコントロールグループを比較することで、広告の効果を測定します。因果推論技術(※)を使用して、広告の影響を統計的に評価します。しかし、同時期に実施される複数のキャンペーンによってコントロールグループのユーザーが他の広告を見てしまうと、アンケート結果に混乱を招く可能性があります。

ブランドアンケートキャンペーンはInstagramでも配信可能ですが、アンケート自体はFacebook上でのみ実施されます。したがって、対象となるキャンペーンを可能な限りFacebookに絞ることを推奨します。Instagramでブランドリフト調査を実施したい場合は、Meta社の担当者に相談することが良いでしょう。

※因果推論は、特定の原因(この場合は広告)が特定の結果(例えばブランド認知度の向上)にどのように影響を及ぼすかを明確にし、その関係性を統計的に解析する方法論です。これにより、広告の効果をより正確に評価することが可能になります。

ブランドアンケートの設定方法

ブランドアンケートを効果的に実施するためのプロセスをステップバイステップで解説します。この手順は、ブランドの認知度向上を目指している企業にとって、非常に有益な情報を提供することが期待されます。

ブランドアンケートの設定を開始するには、テストページにアクセスし、「スタート」オプションを選択することから始めます。ここで、あなたはキャンペーンの核心に触れ、その影響力を深く探求する準備をします。

テストの詳細設定

テストの具体的な詳細を設定していきます。これには、アカウント全体を対象にするのか、または特定のキャンペーンに限定するのか、そしてどのFacebookページでテストを行うのか、さらにはテスト期間の長さなど、重要な要素を選択するステップが含まれます。

テストしたいものは何ですか?

ブランド指標への影響を正確に把握したい場合は、特定のキャンペーンを単位として選択するか、あるいはMeta広告全体の効果を見極めたい場合はアカウント全体を選択すると良いでしょう。対象キャンペーンが決定したら、それに関連するFacebookページが自動的に選択されます。

地域と業界の選択

広告を表示させたいユーザーの主な所在地を示す地域を選択します。

バーティカル

自社の商品やサービスが属する業界を[バーティカル]から選びます。

このステップでは、ターゲットオーディエンスと業界の適切なマッチングに注意を払いましょう。

スケジュールの設定

テストスケジュールは、最低でも14日以上を選択する必要があり、Metaからは4週間以上の期間が推奨されています。これは、有意義なデータを収集し、テスト結果の信頼性を確保するためです。テスト期間を適切に設定することで、必要な回答数を確実に集めることができます。

アンケート質問の設定

アンケートで使用する言語を選択し、標準広告想起など、必要な質問を設定します。

質問の内容はキャンペーンや調査目的に合わせてカスタマイズ可能です。

標準広告想起は必須項目のため必ず設定しましょう。質問を追加する場合は、下部の[質問を追加]から追加できます。

質問の設定が完了したら、設定内容を再確認し、問題がなければテストを作成します。

テストの開始とレポートの確認

テストが作成されると、通常60分以内に開始されます。テスト期間中、アンケートの回答が250件集まった時点で、レポートが利用可能になります。このレポートを通じて、ブランドアンケートの影響を詳細に分析し、ブランド認知度向上の戦略を練り上げることができます。

まとめ

Facebookは、ユーザーの年齢や性別などの正確なデータを保有しており、そのためブランドアンケートを通じて得られる結果は高い信頼性を誇り、意義深いものとなり得ます。通常、認知度を高めることを目的とした広告活動は、その成果を定量化しにくいという課題を抱えがちです。しかしながら、Facebookが提供するブランドリフトの計測ツール、特にブランドアンケートを駆使することで、広告施策の効果を明らかにし、それに基づいてブランド認知度を高めるためのアプローチをさらに精緻化していくことが可能です。

このプロセスにより、広告主は自社のブランド認知度向上に向けた施策が実際にどのような影響を及ぼしているのかを把握できるようになり、より戦略的な広告計画の立案が行えるようになります。Facebookのブランドアンケートは、マーケティング戦略を次のレベルへと導くための強力なツールと言えるでしょう。広告キャンペーンの効果測定における困難を克服し、ブランドの価値を高めるための明確な指針を提供することが期待されます。