Yahoo Japanがディスプレイ広告の世界で一つの大きなステップを踏み出しました。それは、広告主がより効果的にオーディエンスにリーチできるよう、オーディエンスデータの活用方法を見直し、その使い勝手を格段に向上させるというものです。この改革の一環として、Yahoo Japanはオーディエンスターゲティング機能の全面的な刷新に乗り出しました。
特に注目すべき変更点は、2023年の2月20日に実施された「オーディエンスカテゴリーターゲティング」と「オーディエンスリストターゲティング」の統合です。この統合により、広告主は過去に例を見ないほど精密なターゲティングを行うことが可能になりました。
この記事では、Yahoo Japanによるオーディエンスターゲティング機能の革新について、その目的から具体的な変更内容、そしてなぜ「オーディエンスカテゴリーターゲティング」を「オーディエンスリストターゲティング」に一本化する決定がなされたのかについて、わかりやすく深掘りしていきたいと思います。
Yahoo Japanのこの取り組みは、デジタルマーケティングの領域において、広告のパーソナライゼーションと効率化を追求する全ての広告主にとって、大いに参考になるものです。オーディエンスデータをより効果的に活用することで、広告のリーチと影響力を最大化し、結果的にはより高いROIを実現する道が開かれるのです。
オーディエンスターゲティング刷新の概要
現在刷新が図られているオーディエンスターゲティングには以下の3つのターゲティングを指しています。
ターゲティング手法 | 概要 |
---|---|
オーディエンスカテゴリーターゲティング | 特定のカテゴリーに興味・関心や特定の属性を持つユーザー、ライフイベントを迎えるユーザー層に広告を配信するターゲティング機能 |
サーチキーワードターゲティング | Yahoo! JAPANの各種検索機能でユーザーが検索したキーワードを利用し、ターゲティングを行う機能 |
オーディエンスリストターゲティング | 広告主あるいはヤフー社が提供するデータを元にターゲティングを行う機能 |
今回の変更では、このうち「オーディエンスカテゴリーターゲティング」が「オーディエンスリストターゲティング」へ集約されます。
なお今後、「サーチキーワードターゲティング」も同様に「オーディエンスリストターゲティング」に集約される予定です。
オーディエンスリストターゲティングについて
「オーディエンスカテゴリターゲティング」が集約される先の「オーディエンスリストターゲティング」とはどんなものか、まずは確認しておきましょう。
オーディエンスリストターゲティングには上図のように2種類のリストがあります。
- オーディエンス:広告主が作成したオーディエンスリスト
- 共通オーディエンス:ヤフーが提供するオーディエンスリスト
データの提供元によってその種類が分類されています。
「共通オーディエンス」に統合
具体的には、「興味関心」「購買意向」「属性・ライフイベント」という3つのカテゴリータイプを核とするオーディエンスカテゴリーターゲティングを、「共通ターゲティング」という統一された形に再編成しました。この再編は、広告配信のプロセスをシンプルにし、より幅広いオーディエンスにリーチするためのものです。
統合による変更点
今回の統合により、複数のリストを組み合わせて配信する場合の挙動に変更点があるため注意が必要です。
組み合わせての配信がAND条件からOR条件へ
この変更の背景には、広告主が複数のターゲティングリストを組み合わせて広告を配信する際の挙動を改善するという目的があります。従来は、異なるオーディエンスカテゴリーとオーディエンスリストを組み合わせて配信する場合、AND条件が適用され、2つのリストに共通するユーザーにのみ広告が配信される設定でした。
これは、広告主にとっては限定的なリーチしか提供しないという制約を意味していました。しかし、今回の変更により、統合された「共通オーディエンス」を使用することで、広告はOR条件に基づき配信されるようになりました。
つまり、広告主は1つの広告グループ内で複数のオーディエンスカテゴリーをターゲットに設定しても、それらのいずれかに該当するユーザー全員に対して広告を配信できるようになったのです。これにより、キャンペーンの構成や設定が大幅に簡素化され、広告グループの不必要な分割や同じ設定の繰り返しといった以前の課題が解消されました。
今回の変更によりの今回集約された「共通オーディエンス(興味関心)(購買意向)(属性・ライフイベント)」と従来の「オーディエンスリスト」とは1つの広告グループに設定してもOR条件となるため、キャンペーン構成や設定がシンプルになりました。
AND条件は「オーディエンスリスト(組み合わせ)」で設定可能
一方でAND条件で絞り込みたい場合もありますよね。その際には「オーディエンスリスト(組み合わせ)」を利用することで設定ができます。
「ライブラリー」> 「オーディエンスリスト」> 「オーディエンスリストを作成」より「組み合わせ」を選択。
「それぞれのオーディエンスに一致(AND)」を選択して対象としたいリストを選択して作成します。現在の仕様通り、10個のリストの組み合わせが可能です。
予約型も複数の「オーディエンスリスト」が設定可能に
また、運用型と同様に予約型でも複数の「オーディエンスリスト」が設定できるようになりました。
なお、予約型は4月以降の提供予定となっています。
「共通オーディエンス(興味関心)(購買意向)(属性・ライフイベント)」の設定方法
「共通オーディエンス(興味関心)(購買意向)(属性・ライフイベント)」の設定方法は以下の通りです。
「全てのユーザーに配信」と「オーディエンスリストを指定して配信」の選択肢から「オーディエンスリストを指定して配信」を設定。
共通オーディエンスだけでなく、オーディエンスと併せて設定することでリーチとコンバージョン数の増加を図れます。
オーディエンスターゲティングの方法が進化
Yahoo Japanが提供するディスプレイ広告の世界では、オーディエンスターゲティングの方法が進化しています。
この変化の一環として、「オーディエンスカテゴリーターゲティング」は新たな形に統合されましたが、ターゲティングを行う基本的な仕様、つまりカテゴリーを選択する方法自体に変更はありません。しかし、この新しいシステムを最大限に活用するためには、いくつかの重要な点に注意を払う必要があります。
「共通オーディエンス」のターゲティング設定における上限数
新システムでは、最大で50リストまでをターゲティングに設定することができます。これまでの「オーディエンスカテゴリー」にはこのような制限がなかったため、複数のカテゴリーリストを組み合わせる際には、この新しい上限数を意識する必要があります。
レポート出力における単位の違いも理解
レポート出力における単位の違いも理解しておくべきです。
オーディエンスカテゴリーレポートは、ターゲティング対象のカテゴリーの階層に関わらず、最も詳細な単位でのレポートが提供されていました。しかし、オーディエンスリストレポートでは、設定されているターゲティング単位に基づいたレポートが出力されます。そのため、より詳細なカテゴリーごとのパフォーマンスを把握したい場合は、対応する詳細レベルでのターゲティング設定が求められます。
Yahoo Japanはオーディエンスカテゴリーターゲティングの提供を終了予定
Yahoo Japanは2023年秋ごろにオーディエンスカテゴリーターゲティングの提供を終了する予定
この変更に向けては、自動移行が予定されているとのことですが、スムーズな移行のためにも、可能であれば事前に準備をしておくことが推奨されます。
これらの変更は、広告主がより効率的にオーディエンスにリーチし、その結果を詳細に分析できるようにすることを目的としています。Yahoo Japanのディスプレイ広告を活用するすべてのマーケターにとって、これらの進化は広告戦略をさらに洗練させ、目的のオーディエンスに効果的にアプローチするための大きなチャンスを提供します。
まとめ
Yahoo Japanの最新のアップデートにより、デジタル広告の世界において、広告主にとって大きな前進が見られます。この変更の核心は、広告キャンペーンの運用において、オーディエンスの組み合わせをより柔軟に行えるようになった点にあります。具体的には、一つの広告グループ内で複数のオーディエンスをOR条件で組み合わせることが可能になりました。これは、従来よりも広告のターゲティングを精密に行えるようになったことを意味しており、広告グループを跨いで分散していたコンバージョンデータを一箇所に集めることができるようになります。その結果、データの解析や広告の最適化が行いやすくなり、学習期間の短縮も見込めるようになるのです。
この変革により、広告の運用効率が飛躍的に向上することが期待されますが、変更への適応には初めは少し戸惑うかもしれません。しかし、オーディエンスリストを一元管理することで、キャンペーンの管理が従来よりも格段にシンプルになり、使い勝手が向上することは間違いありません。オーディエンスリストへの集約は、広告キャンペーンの運用をより直感的にし、時間を節約しながらも成果を最大化することを可能にします。
もしまだこの新しいシステムの変更内容を完全に理解していない方がいれば、オーディエンスリストの設定を再確認することを強くお勧めします。この一歩を踏み出すことで、広告キャンペーンのパフォーマンスを向上させるための新たな機能やツールを最大限に活用できるようになります。この変更は、広告のターゲティングとパーソナライゼーションをさらに進化させ、デジタルマーケティングの効果を高めるための大きなステップと言えるでしょう。