マーケティングの世界では日々新しい技術や機能が登場し、その中で特に注目すべきなのが、2022年8月30日にYahoo! ディスプレイ広告で導入された「最適化スコア」とその関連機能「最適化提案」です。これらは広告の運用をより効果的にするための重要なツールとして位置づけられています。
この記事では、Yahoo! ディスプレイ広告における「最適化スコア」と「最適化提案」の詳細と、それらをどのように活用すれば良いのかを紹介していきます。この新機能の導入により、広告運用の効率化はもちろん、マーケティング戦略の精度を高めるための大きな一歩となることでしょう。広告運用者の皆様にとって、これらの機能がどのように貢献できるか、ぜひ注目していただければと思います。
「最適化スコア」という指標の重要性
このスコアは、特にYahoo!の自動入札を利用したキャンペーンの効率性を評価するために用いられるものです。具体的には、目標コンバージョン単価の最適化やクリック数の最大化など、広告キャンペーンの運用目標に対してどれだけ効果的に達成しているかを数値化して示します。
この「最適化スコア」は0%から100%の範囲で表示され、その数値はキャンペーンがYahoo!が推奨する最適な設定にどれだけ近づいているかを表します。例えば、スコアが低い場合、それは広告キャンペーンに大きな改善の余地があることを示唆しています。このスコアは、前日の実績や設定内容を基に算出され、日々更新されます。つまり、広告運用者は毎日このスコアをチェックすることで、キャンペーンの現状をリアルタイムで把握し、必要に応じて迅速に対応することができるのです。
この最適化スコアを活用することで、広告運用者は自分のキャンペーンがどのような状況にあるかを具体的に理解し、Yahoo!が提供するベストプラクティスに基づいた改善策を講じることが可能になります。このようにして、キャンペーンの効果を最大化し、マーケティング戦略全体の成功に寄与することができるのです。最適化スコアは、広告の世界における一つのバロメータとして、その価値を日増しに高めています。
広告運用のプロセスに欠かせない「最適化提案」の機能
この機能は、広告の配信機会を最大化し、広告運用の効率を高めるための具体的な提案を行ってくれるものです。特にYahoo! ディスプレイ広告において、この機能の重要性は非常に高いと言えます。
「最適化提案」は、広告運用者にとって非常に有益なガイダンスを提供します。この機能は、最適化スコアの下部に一覧で表示されるため、運用者は簡単にアクセスして提案内容を確認することができます。それぞれの提案は、広告の効果を高めるための具体的な行動指針を示しており、これにより広告運用の精度を向上させることが可能になります。
最適化提案の種類
2022年9月現在、提案の種類は16個です。提案内容を見るだけでは具体的なg効果が見込めるかが分かりにくいので、最適化提案ごとに見込まれる広告効果と、主なアクションを表にまとめてみました。
最適化提案 | 内容 | 見込まれる広告効果 | 主な対応アクション |
1日の予算上限に達したキャンペーン | 過去3日間、1日の予算上限に達したキャンペーンに対して予算の引き上げを提案 | ・広告の配信機会の増加 | 「1日の予算」の引き上げ ※他には、入札単価の調整やターゲティングの見直しも |
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インプレッションシェア損失率(予算)が大きいキャンペーン | 過去7日間の「インプレッションシェア損失率(予算)」が25%以上のキャンペーンに対して推奨予算を提案 | ・「インプレッションシェア損失率(予算)」が下がる ・広告の配信機会の増加 | 推奨予算額を確認して「1日の予算」を引き上げる |
1日の予算が5,000円未満のキャンペーン | 「1日の予算」が5,000円未満だと自動入札の最適化が上手く機能しないため、予算の引き上げを提案 | ・自動入札の最適化 ・広告の配信機会の増加 | 「1日の予算」を5,000円以上に引き上げる |
自動入札(コンバージョン単価の目標値)ご利用のすすめ | 手動入札を設定、かつ十分なコンバージョンが発生している場合に自動入札(コンバージョン単価の目標値)への設定変更を提案 | ・運用工数の削減や効果的な広告運用 ・コンバージョン単価の目標値を維持しながらより多くのコンバージョンを獲得 | 自動入札(コンバージョン単価の目標値)に設定変更する |
キャンペーン目的最大化の自動入札ご利用のすすめ | 手動入札を設定していて、キャンペーンの目的最大化の自動入札に切り替えることで広告効果が見込める場合に提案 | ・運用工数の削減や効果的な広告運用 ・キャンペーンの目的の最大化 | 次のいずれかの自動入札に設定変更する ・コンバージョン数の最大化 ・クリック数の最大化 ・動画再生数の最大化 |
ターゲティング設定が重複している広告グループ | ターゲティング設定が重複している広告グループに対して設定の見直しを提案 | ・広告運用の最適化 | ターゲットの重複を見直す |
ターゲットを絞り込みすぎているキャンペーン | ターゲットの絞り込みにより、直近1週間の配信実績が低くなっている場合に広告の配信対象を広げることを提案 | ・広告が表示される ・入札価格が下がる | ターゲティング範囲を広げる |
追加を推奨するサーチキーワード | 設定済みのサーチキーワードリストと関連性が高い広告効果が見込まれるサーチキーワードを提案 | ・広告効果の改善 | サーチキーワードの追加 |
配信可能時間が6時間未満の曜日があるキャンペーン | 配信可能な時間が6時間未満の曜日があるキ場合に広告配信の時間帯を拡げることを提案 | ・予算配分が正常に行われる | 配信可能な時間帯を拡げる |
入稿を推奨する画像サイズがある広告グループ | 広告配信の機会が多い画像サイズや広告タイプが設定されていない場合に推奨の画像サイズと広告タイプの広告作成を提案 | ・広告の配信機会の増加 ・広告運用の最適化 | 推奨の画像サイズ、または広告タイプを追加する |
画像・動画の更新を推奨する広告 | 画像や動画の更新が過去2カ月以上ない、かつ「ビューアブルクリック率」が減少しているクリエイティブの見直しを提案 | ・広告効果の改善 | クリエイティブの画像や動画を更新する |
特定の広告タイプと画像サイズを組み合わせた広告が3~5つ以外の広告グループ | 特定の広告タイプと画像サイズを組み合わせた広告が不足している場合は追加、超過している場合は配信設定をオフにすることを提案 | ・広告運用の最適化 | 不足の場合:推奨の広告タイプと画像サイズを組み合わせた広告を追加する 超過の場合:広告の配信設定をオフに変更する |
コンバージョン数が少ないキャンペーン | コンバージョン数が増加するように設定の見直しを提案 | ・コンバージョン数の増加 ・広告運用の最適化 | 自動入札の利用や入札価格の変更など、設定を変更する |
クリック数が少ないキャンペーン | クリック数が増加するように設定の見直しを提案 | ・クリック数の増加 ・広告運用の最適化 | 自動入札の利用や広告の画像や広告文の変更などの設定変更を行う |
動画再生数が少ないキャンペーン | 動画再生数が増加するように設定の見直しを提案 | ・動画再生数の増加 ・広告運用の最適化 | 告の配信対象の見直しや広告の画像や広告文などの設定を変更する |
最終リンク先URL形式への変換が必要な配信中のキャンペーン | 配信設定がオンで、リンク先URL形式を使用した広告が設定されているキャンペーンに対して最終リンク先URL形式への変換を提案 | ・リンク先URL形式から最終リンク先URL形式への広告の変換漏れを防ぐ | 広告を最終リンク先URL形式に変換する 参考:Yahoo!ディスプレイ広告、最終リンク先URL形式への変換機能を提供開始 |
「最適化スコア」と「最適化提案」の表示方法の重要性
これらの機能は、アカウント全体の視点と、個々のキャンペーンの視点の両方で利用でき、広告運用の効率化に大いに貢献します。
アカウント単位で表示する方法
アカウント単位で表示すると、「最適化スコア」と「最適化提案」が確認できます。
広告管理画面を開き、すべてのキャンペーンが選択されている状態でメニューより「最適化提案」をクリックで表示できます。
「最適化スコア」でアカウントの状況を確認した後、すぐに「最適化提案」から運用改善が可能です。
キャンペーン単位での表示方法
次に、キャンペーン一覧画面に「最適化スコア」を表示する方法を紹介します。
コンバージョン数などの指標(表示項目)と「最適化スコア」を照らし合わせて確認ができるため、アカウント分析をする際に活用できます。
手順 ①:
キャンペーンタブをクリックします。
手順 ②:
「表示項目」をクリックして開いたプルダウン内「表示項目を編集」を選択します。
手順 ③:
「最適化スコア」のチェックボックスにチェックを入れて「適用」をクリックします。
キャンペーン一覧画面に「最適化スコア」が追加されました。
「最適化提案」の活用方法
最適化スコアにもとづく運用改善のための提案機能「最適化提案」の活用方法をご紹介します。
各最適化提案の右側に表示される「スコア上昇推測値」は、提案の適用後にスコアがどの程度上昇するのかを数値化したものです。改善幅が大きい場合に表示されます。
スコア上昇推測値はあくまでも目安の数値ではありますが、優先的な対応が必要な最適化提案の見極めに活用できそうですね。
提案の詳細は、各最適化提案をクリックすると表示できます。今回は例として、「入稿を推奨する画像サイズがある広告グループ」を使って解説します。
デジタル広告の世界では、効果的な広告素材の作成が成功への鍵となります。特に「入稿を推奨する画像サイズがある広告グループ」においては、レスポンシブ広告の推奨画像サイズや広告タイプに特に注意を払う必要があります。この機能を利用することで、各広告グループに最適な、まだ使用されていない画像サイズや広告タイプの提案を受けることができます。
レスポンシブ広告の最大の利点は、掲載されるウェブページやデバイスのサイズに合わせて、自動で広告のサイズやレイアウトを調整してくれることです。しかし、推奨される画像サイズや特定の広告タイプが不足している場合、広告が適切に表示されない可能性が高まります。これは、その画像サイズ用に予定されていたページに広告が表示されないことを意味し、結果として重要な広告配信の機会を逃すことになります。
例えば、「01_サイトリターゲティング」という広告グループでは、300×300ピクセル(1:1比率)の画像が不足している場合があります。このような状況を適切に対応するためには、提供された提案に基づいて必要な画像サイズや広告タイプを追加することが推奨されます。
幸いなことに、「広告を作成」のオプションを利用すれば、広告設定画面に直接アクセスし、必要な設定変更を素早く行うことができます。このシンプルで直感的なプロセスにより、広告運用者は提案された内容を確認し、迅速に実践的なアクションに移行することが可能です。このように、レスポンシブ広告の推奨画像サイズや広告タイプに適切に対応することで、広告キャンペーンの効果を最大限に高めることができます。
「最適化スコア」と「最適化提案」の注意点
これらを適切に活用する際にはいくつか留意すべき点があります。「最適化スコア」に関してですが、このスコアが100%に達することを目標とする必要はありません。このスコアは、Yahoo!広告が推奨する運用方法にどれだけ適合しているかを数値化したものであり、広告の効果を保証するものではないためです。高いスコアは運用の一定の適合性を示しますが、必ずしも広告効果の改善に直結するわけではありません。広告運用者は、このスコアを参考にしながらも、自身の広告戦略に合わせた運用を心がけることが重要です。
次に、「最適化提案」についても同様の注意が必要です。提供される最適化提案が必ずしもすべての広告主に適しているとは限らず、場合によっては広告主の運用方針に合わないことがあります。このため、提案された内容は、効率的な運用のための参考として捉え、最終的に設定を変更するかどうかは、広告運用者が慎重に判断する必要があります。
さらに、広告アカウントの運用状況によっては、「最適化スコア」や「最適化提案」が表示されないこともあります。これらの機能は日々更新されるため、特定の状況では利用できない場合も考慮する必要があります。したがって、広告運用者はこれらのツールを利用する際には、常に現状の広告アカウントの状況を把握し、適切に対応することが求められます。
これらのポイントを理解し、Yahoo!広告の「最適化スコア」と「最適化提案」を適切に活用することで、広告運用の効率化と効果の最大化を目指すことができます。
まとめ
デジタル広告の運用において、Yahoo!広告の「最適化スコア」と「最適化提案」という機能の活用は、非常に有益ですが、それらを適用する際には慎重なアプローチが必要です。
提供されるすべての最適化提案を無条件に受け入れる必要はありません。これらの提案は、広告アカウントの問題点を迅速に特定し、運用の最適化に役立つヒントを提供するものです。しかし、自分の広告運用の目的や戦略に沿っていない提案もあるため、それらを鵜呑みにするのではなく、適切な判断を下すことが重要です。最適化スコアと提案を上手く活用することで、広告運用の効率化と効果の向上につながる可能性があります。
また、最適化提案を適用した後は、その結果を継続的にモニタリングし、必要に応じて調整を行うことが重要です。提案を実施した後に、期待通りの効果が得られているかを検証し、必要に応じて運用戦略を見直すことで、より成果につながる広告運用を目指すべきです。このプロセスを通じて、広告のパフォーマンスを最適化し、最終的なマーケティング目標の達成に貢献することができます。
Yahoo!広告の最適化スコアと最適化提案は、広告運用者にとって有益なツールですが、それらを活用する際には、自己の判断と継続的な評価が重要になります。これらの機能をうまく活用することで、広告運用の効率化と効果の最大化を実現しましょう。