インターネットを中心に様々なコンテンツが溢れる現代で、新たなコンテンツとして面白いインタビュー記事を作りたいと考えている方も多いでしょう。
インタビュー記事を作成するためには、取材や執筆といった専門的なスキルが必要で、ハードルが高いと感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、インタビュー記事の目的や役割、形式、作り方を解説します。
インタビュー記事について
まずはインタビュー記事について解説します。
インタビュー記事とは対象とする人物や組織に取材やインタビューを行い、そこで得た情報をもとに作成された記事のことです。
インタビューの対象となる人物・組織のことを「インタビュイー」、インタビューする側のことを「インタビュアー」といいます。
インタビュー記事には大きく2つの特徴があります。
1つ目は、読者に信憑性の高い記事という印象を与えやすい点です。取材をもとにした記事であるため、取材対象者の言葉や思いを入れ込みやすくなります。
2つ目は、独自性を生みやすいという点です。誰に何についての取材を行うかで、同じようなテーマを取り扱う競合メディアと比較しても、自分らが打ち出す記事の内容に違いが生まれます。取材をもとにした文章は真似がしづらく、唯一した記事になりやすいのです。
インタビュー記事の目的やその役割について
インタビュー記事の主な目的・役割は次の3つです。
・顧客の声や事例を紹介する
・人材採用やブランディングへ活用できる
・新たな製品やサービスの広報
どういった目的なのか、どういった役割を期待するのかによって、取材の内容や対象が異なってきます。それぞれについて詳しく解説していきます。
顧客の声や事例を紹介する
自社の商品やサービスを利用している顧客から、実際に利用した感想や導入事例について取材し、記事化するというケースです。
自社サイトやメディアに掲載することで、自社の商品やサービスに興味を持っている人の目に触れやすくなります。また、記事になることで、これまで商品やサービスを認知していなかった層への訴求効果も期待できるでしょう。
顧客の声は、第三者からの率直な意見として受け取られやすいコンテンツになります。読者が商品やサービスについて具体的なイメージが持ちやすくなり、見込み顧客の不安を解消することが可能です。
新規顧客の獲得につなげることができるかどうかが重要なので、見込み顧客である読者を惹き込むような要素を取材に盛り込むと効果的です。
例えば「認知度の高い有名企業を取材対象にする」、取材内容に「自社商品・サービスを選んだ決め手」など前向きな要素を入れるなどが挙げられます。
注意点としては、取材対象となる顧客の意図や状況を十分に加味することです。
ただし、その内容を全て自社の都合で調整できるとは限りません。顧客のプライバシーや信用に悪影響を与えないよう配慮が必要です。また、顧客側の社内の事情で、ここまで掲載できる・できないということもあるので、双方の広報や法務部門などを通すことも重要になります。
既存顧客からの信頼を守る誠実な記事を作成し、発信することで、自社に対しての信用を高めることができるでしょう。
人材採用やブランディングへ活用できる
従業員や経営陣などを取材し、会社の方針や社内環境を記事化することで、人材採用やブランディングにもつながります。
企業のWebサイトにあるような会社概要や企業理念だけでは、雰囲気が伝わりづらい可能性があります。雰囲気や実際の職場環境、社風といったポイントを伝えることは、採用活動において重要です。自社の魅力をインタビュー記事でアピールできれば、自社に興味を持っている応募者に情報を伝える効果や、自社を視野に入れていなかった人材にアプローチする効果が期待できます。
インタビュイー、一人ひとりがどのように働いているのか、会社に対する思いや具体的な業務内容、1日のスケジュールなど、その記事ならではの掘り下げを行うと良いでしょう。読者が雰囲気をイメージしやすくなり、自社への理解や安心感を得られる効果が期待できます。また、インタビュイーや社内の写真などもあわせて掲載することで、読者はよりイメージしやすくなります。
社内の人間へのインタビュー記事は採用以外にも有効です。自社と取引を検討している見込み顧客も、こういった記事を見ている場合があります。どういった会社なのか、信頼できる環境か、そういった見極めの材料にもなるのです。
新たな製品やサービスの広報
新たな製品やサービスをリリースする際、開発担当者やプロジェクトメンバーへの取材を行い記事化することで広報の役割を果たします。
製品・サービス開発にあたっての苦労や込めた想い、裏話といったエピソードから、読者はストーリーを想像します。機能や性能とは異なる価値を見出しやすくなり、使ってみたいと手を伸ばしてくれる可能性があるのです。また、すでにその製品・サービスを利用している顧客も、開発の背景を知ることでより愛着を持ってくれる可能性があります。
新製品・サービスを発信する記事にプレスリリースがありますが、こちらは外部の専門メディアや報道機関に向けた報告の意味合いが強いです。もちろん、プレスリリースから購買につながるケースもありますが、基本的にプレスリリースでは広告的な文言を使用できません。インタビュー記事とは、製品・サービスの訴求力が異なります。
効果的なインタビュー記事にするためには、「ストーリーを意識した流れにする」「担当者から臨場感ある話を聞けるようにする」「開発時の写真や資料など素材を組み込む」といったことを意識すると良いでしょう。
自社メディアで掲載する他、SNSなどで発信することも効果的です。また掲載先を、記事に興味を持ってくれる外部メディア、業界紙への掲載などに広げることもできます。
インタビュー記事にはどういった形式があるのか
インタビュー記事の形式は、次の3つに分けることができます。
・Q&A
・一人称のモノローグ
・三人称のルポ
形式ごとにメリットとデメリットがあるので、どのようなインタビュー記事を作成したいかによって使い分ける必要があります。それぞれについて詳しく解説します。
Q&A
Q&A形式は、インタビュアーが質問を投げかけインタビュイーが回答していく対談型のものです。インタビュー記事の中で最も使われることが多いスタイルといえます。
Q&A形式のメリットは、インタビュアーとインタビュイーが一対一で会話できるため、自然な受け答えになりやすい点です。自然な会話の中で取材が進むと、発言者の口調を活かしやすくなります。そのため、臨場感のある言葉が引き出しやすい形式といえます。
また、一問一答のシンプルなやりとりが成立しやすく、聞きたいこと・伝えたいことがぶれにくいという長所もあります。取材の中で要点がはっきりしていると、記事を執筆する際の作業も比較的楽です。
Q&A形式のデメリットとしては、会話がスムーズに進んでしまうため、一つひとつの話が深掘りされず軽い印象になってしまうことがあります。しかし、逆に一つの話が必要以上に掘り下げられてしまい、文章が多くなってしまうこともあるため、インタビュアーが要点を押さえ、上手くコントロールできるかが鍵になるのです。インタビュアーばかりが話してしまうと、インタビューとして成立しないため、インタビュイーから自然に取材内容を引き出す技術が問われる手法といえます。
一人称のモノローグ
一人称形式やモノローグ形式と呼ばれる手法では、インタビュアーの存在を消し、インタビュイーが一人で話しているようにまとめます。一人語り形式とも呼ばれ、基本的に「です・ます」調でまとめられることが多いです。
例えば、新製品リリースについて社長にインタビューした記事の場合について考えてみましょう。一人称形式とQ&A形式では、同じ内容でも次のように異なります。
【一人称形式(モノローグ形式)】私を含め我が社の人間は、この度リリースした製品に自信を持っています。弊社はこれまでも同製品の開発に力を入れてきました。当初は初めての取り組みで困難にも思えました。試作品一つ作るにも、本当に長い時間がかかったのです。そして、試作品ができては新しい課題にぶつかりました。そうして約10年という長い月日が経ちました。10年間、誰も納得できなかったのです。メンバーの誰も、妥協をしなかったのです。そんな頑固なメンバーがやっと納得できるものが、この度できたのです。 |
【Q&A形式】インタビュアー:新製品の手応えはいかがでしょうか?インタビュイー:強い自信を持っています。長い時間がかかりましたが、それだけのものができたと従業員全員が手応えを感じています。インタビュアー:開発にはどのくらいの時間がかかったのでしょうか?インタビュイー:10年近くかかりました。とても長い年月でした。インタビュアー:この10年間、社内ではどのような取り組みが行われていたのですか。インタビュイー:初めてのことでしたので、とにかく試作品を作ってみて、課題を挙げて、また作って、その繰り返しでしたね。インタビュアー:ストップさせることなく取り組みを続けられたのはすごいことですね。インタビュイー:はい。私も開発メンバーも皆頑固でした。納得するものでないとだめだと、誰も妥協しませんでした。結果的に、本当に納得できる製品が生まれたんです。 |
一人称形式のメリットは、本人から語りかけられているような、メッセージ性の高い印象を与えることです。また、語りの中に人柄を表現しやすく、親近感を持たせる効果もあります。Q&A形式と異なり、インタビュアーの発言がないため文章量を少なくまとめることもできます。
一人称形式のデメリットは、一人語りで文章が続いていくため、要点がわかりづらくなることです。Q&A形式の場合は、この質問についての回答というのがわかりやすいですが、一人称形式の場合はぼやけてしまう可能性があります。
三人称のルポ
三人称のルポ形式ではインタビュアーのみが登場し、取材内容について話をまとめます。話の中心となる文章は取材内容からとり、それを論評するような形でインタビュアーの視点を入れ込んでいきます。この比率は執筆者によって異なり、「だ・である」調で執筆されることが多いです。新聞やニュースメディアに掲載される記事の多くがこれにあたります。
ルポ形式のメリットは、読者に論理的な印象を与え、説得力のある記事にできることです。第三者としてインタビュイーを観察した視点を織り交ぜることで、客観的な雰囲気をリアルに伝えることもできます。例えば、その話題の時どういった表情をしていたか、どういったジェスチャーをとっていたかなどを、うまく織り交ぜることで、読み手に臨場感を与えることができます。
ルポ形式のデメリットは、堅い印象を与えてしまうことです。ただ、話し言葉や取材時の口調をそのまま使用しすぎると、軽すぎる印象になってしまいます。どうバランスをとるのか、そもそもルポ形式が合っているのか、判断が必要です。また、ルポ形式で記事を作成する場合は取材内容を再構築し、論理的にまとめる必要があります。そのため、構成力や文章力が問われる手法といえます。
インタビュー記事の作り方:①準備
ここまでインタビュー記事の概要について説明してきました。
続いては、実際にインタビュー記事を作成するにあたっての準備について解説していきます。
事前準備は、良質なインタビュー記事に欠かせないものなので入念に行いましょう。
記事作成の狙いを明確に
まずはじめに「どのような記事を作成して、何を伝えたいのか」という記事の狙いを明確にする必要があります。テーマやコンセプトと置き換えて考えても良いです。
想定する読者は誰なのか、読んでもらった後に何を期待するのかといったことまで掘り下げて考えましょう。
場合によっては、始めから詳細まで検討できないこともあるでしょう。ある程度余白を残しておき、取材を開始してから埋めていくような手法が有効なケースもあります。その場合、記事の目的と方向性だけでもしっかりと定めておくことをおすすめします。これがないと、取材のポイントが曖昧になってしまうことが多いからです。
記事の狙い、テーマやコンセプトをどの程度明確に定めておくかは、インタビュー記事の内容によって切り替えることもできます。例えば、人材採用のための従業員インタビューであれば、取材対象は社内なので最初から明確に定めやすいです。反対に取材対象が社外の場合は先方の都合や不確定な要素も入ってくるため、想定通り進むとは限らないでしょう。
インタビューの種類や取材対象によって度合いは異なりますが、記事の狙いを定めておくことは記事作成の重要な工程です。これらは後の取材対象やインタビュイーの選定、質問事項の検討にも関係してくるので、しっかり行いましょう。
インタビュー対象の事前調査
記事の狙いが定まったらインタビュー対象を決めましょう。インタビュー対象を探す際は、知見のある部署などに相談することも有効です。例えば、顧客の中から選定するのであれば営業部門などに相談するなど、社内のリソースを活用することで記事の趣旨に合ったインタビュー対象を見つけることができます。
インタビュー対象が決まり、アポイントが取れた後は事前調査を行いましょう。インタビュー対象がどういった活動をしている人もしくは組織なのか、といった最低限の知識はもちろん、インタビューの中で話題になりそうなトピックや、過去のインタビュー記事なども確認しておくと良いでしょう。
また、インタビューが専門的な話になる場合は、専門知識や用語についても確認しておくことをおすすめします。これらができていないと、インタビューの中での会話がうまく成立しない場合があるからです。
インタビュー対象の調査を行う際も、営業担当者など社内に詳しい人がいれば相談してみてください。その他、インターネット、書籍や雑誌など広い角度からも情報収集を行いましょう。
インタビュー対象の事前調査がしっかり行えていればインタビューのクオリティは高まり、インタビュイーも信頼して答えてくれます。
記事構成や質問の内容を考える
記事の狙い、インタビュー対象の情報をもとに、記事の構成とインタビューでの質問内容を考えていきます。
記事の構成を決めることで、聞きたいこと、記事としてまとめたいことの全体像を把握することができます。先に質問内容を考え始めてしまうと、トピックごとの質問の量が偏ったり、内容が重複したような質問事項になってしまうことがあります。記事の構成から始めると、何をどの程度掘り下げるべきか考えることができるため、質問事項をまとめることがスムーズになりやすいです。
大まかな記事の構成、さらに詳細、具体的な質問内容と、順を追って作成していきましょう。
記事の構成と質問の内容がまとまったら、事前にインタビュー対象と共有しておくと良いでしょう。共有しておくことでインタビュー対象も、事前に話や考えを整理することができます。また、当日の流れも想像できるので安心してインタビューに臨むことができます。
また、事情によっては答えられない質問などもあるかもしれません。事前に把握できていれば、他の質問に替える、その質問・話題はなしにするといった対応も可能になります。
インタビュアーとインタビュイー双方が事前に情報共有していることで、当日のインタビューもスムーズに進みやすくなるでしょう。
インタビュー記事の作り方:②取材
次は、取材・インタビューの実施方法について解説していきます。
先に解説したようにしっかりと事前準備を行っていれば、クオリティの高いインタビュー記事を作成することができます。実際の取材・インタビューも自信を持って臨みたいところですが、不安という方も多いのではないでしょうか。取材を成功させるポイントをまとめましたので参考にしてみてください。
取材実施の際に必要なものを揃える
まずは、取材に必要なものを準備しましょう。以下は、取材の際の必需品といわれる道具です。必要に応じて、しっかりと揃えておきましょう。
①ボイスレコーダー | 取材音源を残す上では必須のアイテムです。スマートフォンやパソコンで録音できるアプリやソフトもありますが、オンライン環境が整っていない場合は、音を明瞭に捉えることに特化したボイスレコーダーの方が取材には向いています。 |
②取材・インタビューの内容のメモ | スムーズに運ぶよう、台本代わりに用意しておくことをおすすめします。 |
③メモをとる道具 | すぐにメモを取れるようにメモ用紙やパソコンなどを準備しておきましょう。取材の内容を整理したり、ポイントとなることを書き留めたりしておくと、記事作成の際に役立ちます。 |
④カメラ(カメラマン) | 記事に掲載する写真を撮影する際はカメラを用意しましょう。また取材に立ち会う人が複数の場合は、動画を回しておくことで誰が話したのか確認しやすくなります。カメラマンに撮影をお願いする場合は、取材の実施が決まり次第早めに確保しましょう。 |
録音や撮影は、取材対象に確認をとった上で行ってください。必要に応じて先方ともデータを確認する、外部ライターなどにデータ共有する場合は了承を得るなどの配慮が必要です。
【秘訣①】冒頭の雑談で空気をほぐす
上手くいく取材にはいくつかの秘訣があります。
1つは、雑談で空気をほぐすことです。取材・インタビューは必ずしも見知った間柄で行われるわけではありません。また、社内で行われるインタビューなど、見知った間柄で行われる場合も緊張してしまって普段の会話のようにはいかないケースもあります。特に、取材・インタビュー開始直後は空気が固くなりがちです。
まずは、冒頭で記事には直接関係ないような雑談をし、空気をほぐすことで、お互いの緊張を取ることができます。反対に、早々に本題に入ってしまうと固い空気のままの取材となってしまい、思うように話を引き出せないケースもあるでしょう。
取材・インタビューに限らず、商談などでも同じようなことがいえます。上手く雑談などを取り入れアイスブレイクの時間をつくることで、話しやすい関係が生まれ、本題が盛り上がりやすくなるのです。
また、雑談を取り入れる上で注意するべきこともあります。あくまで雑談は、インタビュアー・インタビュイー双方で行い、話やすい関係をつくることが目的です。一方的に雑談をすればいいというわけではないということを意識し、コミュニケーションのきっかけの一つとして取り入れましょう。
【秘訣②】適度に質問やうなずきを入れてトークを促す
うまくいく取材の秘訣、2つ目は適度に質問やうなずきを入れることです。
取材・インタビューでは、相手の話したい気持ちを盛り上げ、話を引き出すことが重要になります。インタビュイーは、「自分の話に興味を持ってくれている」「楽しそうに話を聞いてくれている」と感じると、自分も上手く話しができているという気持ちになります。インタビュアーからの質問にインタビュイーが答え、次の質問に移るといったように、淡々と進めてしまうと、インタビュイーは「期待通りの話をできているだろうか」と不安になってしまうこともあるでしょう。
インタビュイーの気持ちを高めるには、良いリアクションを取ることが重要なのです。うなずいて耳を傾けている姿勢を出したり、回答に対して「なるほど」「すごいですね」「そうだったんですか! もっと教えてください」などリアクションを取ると良いでしょう。
インタビュアーとしても興味ある姿勢で臨むと、事前に用意してきた質問以外にも聞きたいことが出てくることもあります。記事のテーマから大きく逸れない範囲でぶつけてみることで、テーマについて深掘りすることができ、奥行きのある記事になります。
噛み合ったコミュニケーションが行われているという感覚が、インタビュアー・インタビュイー双方の距離感を近くしてくれるはずです。
【秘訣③】メモはあくまでほどほどに
上手くいく取材の秘訣、3つ目はメモを取りすぎないことです。
たくさんメモを取った方が、インタビュイーの話を聞き漏らすことがないので良いと思う方もいるかもしれません。しかし、メモを取ることに集中しすぎてしまうと、インタビュアーとしての仕事から離れてしまうことがあります。例えば、質問や話題をふるテンポが悪くなってしまう、しっかりとインタビュイーに対峙して話を聞けなくなっているなどです。人の話すスピードは文字を書き起こすよりも速いため、一字一句書き留めようとすると話に追いつけなくなってしまいます。
インタビュアーがメモばかり取っていると、インタビュイーが話しづらく感じることもあります。取材・インタビューではコミュニケーションが欠かせないので、メモにかける時間はほどほどに留めましょう。
取材・インタビューの内容や、ボイスレコーダーなどの録音音源やカメラにも残ります。全てをメモに残さなくても大丈夫です。
メモは話の整理に使ったり、要点や気になった言葉、使えそうなフレーズなどを書き留めるために使うなど、工夫してみてください。上手くメモを取れるようになると、後々の記事作成の段階で作業がしやすくなります。
インタビュー記事の作り方:③執筆
最後は、記事の執筆について解説します。
念入りな取材準備、そして取材・インタビューの実施まで終われば、記事掲載も目前です。記事執筆にはいくつかの工程があるため、それぞれ押さえるべきポイントについて詳しく説明していきます。
取材内容のテキスト化
取材の後にまず行うのが、取材内容のテキスト化です。取材・インタビュー時の音源をテキストに起こしていきます。この作業は、文字起こし、またはテープ起こしとも呼ばれます。
文字起こしには、次の3つの種類があります。
・素起こし
・ケバ取り
・整文
素起こし:音源の内容を一字一句そのまま正確に文字に起こす方法です。「えー」「あのー」といった特に意味のない言葉や、言い淀みなどの音も全て文字に起こします。意味のない音も書き起こすため、素起こしされた文章を読んでも内容がつかめない可能性があります。しかし一言一句文字になるため、実際にインタビューに参加した人にとっては当時の臨場感や流れを思い出しやすいです。 |
ケバ取り:「えー」「あのー」といった特に意味のない言葉や、言い淀みを取り除いて文字起こしする方法です。素起こしと比べると無意味な文字が少なくなるため内容が把握しやすい仕上がりになります。しかし、話した通りの順序のままであるため、そのまま読んでも十分な文章とはいえません。 |
整文:無駄な音や言葉を取り除いたケバ取りを、さらに整えてわかりやすくする手法です。言葉の順序の入れ替えや、語尾・文中の表現の統一なども行います。内容を正しく理解する必要があり、適時修正しながら行うため、素起こしやケバ取りよりも時間がかかります。 |
文字起こしには、種類や音源の状態にもよりますが録音時間の4~10倍以上の時間がかかるといわれています。時間がかけられない場合は、素起こしに文字起こしツールを使うなど工夫したり、外部に依頼することを検討してみてください。
原稿の起筆
文字起こしした文章をもとに原稿を執筆していきます。準備していた記事の構成や取材・インタビュー時のメモなどと合わせて、内容を確認していきましょう。活かしたいフレーズや、記事の見せ場にしたい部分などが見えてきても、すぐ執筆を進めるのではなく構想を練る時間を確保することが重要です。
記事に入れ込みたいことが整理できたら、文字起こし文章をわかりやすい表現や順序に変えながら執筆していきましょう。
どのような表現に揃えるか、どういうリズムに整えるかで文章の印象は変わります。当初の記事の狙いや、掲載媒体に合わせて使い分けてみてください。また、読者の読みやすさは必ず気をつけたいポイントです。伝えたいことがわかりやすくなっているか、確認しながら進める必要があります。
記事の執筆に際しては、取材・インタビュー時と言葉や表現を変える必要が出てくることもありますが、過剰な修正はNGです。インタビュイーが話していないこと、意図していないことを盛り込んでしまわないよう注意してください。
原稿執筆は、インタビュイーの考えや思いをわかりやすく読者に伝えるための作業です。良い記事にしたいという思いから本筋から逸れてしまっては意味がありません。
校正作業
原稿が完成したら校正作業に移ります。誤字・脱字のチェックを行う校正に加え、原稿にあることが事実かどうかを確認する校閲も、必要に応じてかけましょう。専門性の高い分野や時事などに絡む記事の場合は、校正・校閲を合わせて行うのがベストです。誤りが多い場合は、2回、3回と、回数を分けて作業する必要もあります。
基本的には、校正・校閲の作業は原稿執筆者と別の人が行うようにしましょう。第三者の客観的な目線から文章を確認したり、校正・校閲を専門にしている人・業者に依頼したりすることで、原稿の品質向上につながります。
原稿執筆者が校正まで行わなくてはいけないという場合は、客観的な目線でチェックができるような工夫が必要です。例えば、原稿を作成してすぐに校正せず、時間を置いてから校正すると、執筆時には気が付かなかった間違いを見つけやすくなります。校正のツールやソフトなどで一次チェックをしてから、目視で校正するという方法もあります。
いずれも、執筆時に気が付かなった文章のおかしな点を把握し、修正することが重要です。読者は、文中に誤字・脱字を発見したり、事実と異なると感じる内容があると、記事の価値が低いと感じてしまいます。校正にかける時間はしっかり取ることをおすすめします。
インタビュー対象に最後の確認をお願いする
原稿の校正と修正が終わったら、インタビュー対象に記事の確認を依頼します。インタビュイーの真意と合っているか、表現や言い回しなどはどうか、記事の雰囲気はどうかなど、全体的にチェックしてもらいます。部分的な修正や作り直しの依頼がくることもあるでしょう。また、取材・インタビュー時は問題なかったけれど、確認したら外に出せないオフレコ情報だったということもあります。本当に掲載して問題ない記事かどうか、最後にすり合わせを行うことは重要です。
取材対象によっては、「最終チェックなしで進めて問題ない」というスタンスの場合もあります。最終チェックがなければその分早く進めることができますが、記事を掲載した後にトラブルになる可能性もゼロではないため、できるだけ掲載前にチェックしてもらうことをおすすめします。
記事化するということは、情報として広く発信するということですので、不特定多数の人からどのような反応が来るかは掲載してみないとわかりません。後から問題になってしまわないよう、最終チェックの協力をお願いするのがベストです。
必要があれば修正を加え、お互いに納得できる記事になって初めて原稿の完成といえます。
まとめ
この記事では、インタビュー記事の目的や役割、形式、作り方を説明してきました。インタビュー記事を作成するためには取材のスキルや記事執筆の知識が必要です。ハードルが高いと感じる方も多いかもしれませんが、自社だけの魅力的な記事を生むチャンスになります。原稿完成までの流れを順番に整理してみると「できるかも」と感じた方もいるのではないでしょうか。
初めてインタビュー記事を作る方、インタビュー記事作成に課題を感じている方は、ぜひこの記事を参考に挑戦してみてください。