ECサイトで商品を販売するのが当たり前になった近年、DtoCというビジネスモデルが話題になっています。
DtoCを取り入れた販売方法をアメリカのスタートアップ企業が成功を収めたことで、日本でも注目を集めました。本記事では、DtoCとは何か分かりやすく解説します。DtoCのメリットや成功事例を知ることで、自社のマーケティング戦略に活用してみてください。
DtoCとは?ECにおける位置付けについて
DtoCとは「Direct to Consumer」の頭文字をとったマーケティング用語です。自社で開発・製造した商品を、卸売業者や小売店などの中間業者を介さず、直接消費者へ販売するビジネスモデルのことを指します。例えば、アパレルブランドがインターネットを通じて直接消費者に商品を販売することもDtoCに該当します。
DtoCは食品やコスメ関連、アパレルなど店頭販売がメインの業界で採用されることが多く、実店舗を用いてDtoC事業を行う場合がほとんどでした。
しかし、近年ではSNSやインターネットの普及により、消費者との接点が多くなったことからECサイトを用いたDtoC事業を展開する企業が増えています。
しかし、ECサイトを構築すれば売上が拡大できるとは限らないという点が、DtoCの難しいところです。システム構築のスキームや販売戦略など、自社でマーケティングのノウハウがなければ利益率を伸ばすことができません。
昨今ではコロナウイルスの影響で店舗ビジネスの売上が減少した背景から、ECサイトの重要性が高まっています。多くの日本企業は、DtoCといったビジネスモデルを取り入れるべきフェーズに差し掛かっているといえるでしょう。
ECでのDtoCとBtoCとの違いは何か
BtoCとは「Business to Consumer」の頭文字をとったマーケティング用語です。自社で企画・製造した商品やサービスを、卸売業者や小売店などの中間業者を通して販売するビジネスモデルのことを指します。
DtoCとBtoCの大きな違いは、メーカーと消費者の中間に業者を通しているかどうかです。DtoC、BtoCともに消費者へ商品やサービスを届ける点においては同じですが、届け方に大きな違いがあります。
また、DtoCは製造から販売まで一貫して自社で責任を負うため、中間マージンがなく利益率が高いという特徴があります。一方BtoCは中間マージンが発生する代わりに販売や接客業務は卸売業者や小売店といった販売のプロが行うため、販売促進に繋がるといった特徴があります。
DtoCとBtoCどちらが優れているということはなく、それぞれの特徴を理解したうえで事業戦略を立案することが重要です。
DtoCへの注目が高まる要因とは
インターネットの普及やWithコロナ政策において、DtoCへの注目度は勢いを増しています。ここでは、DtoCへの注目が高まる要因について解説します。注目が高まる要因を理解して、今後の事業展開に活用しましょう。
SNSによる影響の大きさ
企業のブランドコンセプトや商品の特徴を直接消費者に伝えることができる点において、SNSは企業のマーケティング戦略に大きな影響を与えました。なぜなら、SNSによって広告費や人件費を削減できたからです。
従来、自社商品の認知度拡大には広告費や営業マンの人件費など多くのコストが必要になります。具体的にはテレビCMや新聞、大規模なプロモーションにかかる広告費、卸売業者や小売店へ卸すために営業をかける営業マンの人件費などです。
しかし、SNSは広告費をかけずに企業や商品を紹介することができます。また、小売店へ卸す必要がないため、無駄な人件費を削減できます。企業のマーケティング戦略への影響は大きく、SNSによってDtoCへの注目度を高めているといえるでしょう。
巨大なECが複数存在していること
Amazonや楽天市場など、日本には巨大なECモールが存在しています。昨今ではインターネットの普及により、巨大なECモールの利用者が急増しました。結果的に百貨店や小売店への販路拡大が難しくなり、独自の販売経路を拡大するためにDtoCを取り入れる企業が増加しました。
また、Amazonや楽天市場といった巨大なECモールは、掲載方法が競合他社と比較されやすいため、価格競争が激しいといったデメリットがあります。
しかし、DtoCなら自社独自の販売経路から消費者を囲い込むことができるため、価格競争する必要がないというメリットがあります。
巨大ECモールのデメリットを逆手に取った施策が可能な点において、DtoCへの注目が高まっているといえます。
サブスクモデルの登場
サブスクリプションモデル(サブスク)とは、消費者へ一定期間サービスを提供するかわりに、利用期間中のみ定額の費用が発生するビジネスモデルのことを指します。企業の代表的な商品を世間に広めるフェーズで採用されることが多いです。
サブスクを採用すると、一定期間ファンを囲い込むことができます。代表的な例でいうとNetflixといった動画配信のサブスクは、1社契約すればさまざまなコンテンツが視聴できます。そのため、他のサブスクを契約する必要がなくなり、継続的に消費者を囲い込むことが可能になるのです。
動画配信以外では子供の玩具や自動販売機、チョコレートといった様々なサブスクが増えており、今後も注目されるサービスです。
ECでのDtoCによるメリット
DtoCは企業を成長させるうえで、さまざまなメリットがあります。ECにおいてのメリットを把握して、自社の事業戦略に活用しましょう。
顧客データを集められる
DtoCは消費者が企業からサービスや商品を直接購入するため、顧客データをダイレクトに集められるというメリットがあります。
卸売業者や小売店が仕入れて販売するBtoCでは、中間業者を介するため消費者の声を直接聞くことが難しいです。また、声を聞けたとしても間に第三者(卸売業者や小売店)を介するため、透明性のあるフィードバックを得られない可能性があります。
一方DtoCは消費者が企業から直接購入するため、消費者から直接情報を収集することができます。例えば会員登録時の個人情報は、どんな性別や年代の消費者にニーズがあるのかといった定量データの収集が可能です。また、購入者向けのアンケートを実施することで、商品やサービスの評価や改善点などの訂正データを収集できます。
その情報をもとに商品のクオリティやサービス改善に反映させれば、より消費者のニーズに応えられます。顧客データが収集できるところは、企業の成長に大きく影響するメリットといえるでしょう。
コストカットができる
DtoCは卸売業者や小売店などの仲介業者を通す必要がないため、中間コストを削減できるというメリットがあります。
従来のBtoCでは、商品を販売してもらう仲介業者に手数料やマージンを支払う必要がありました。しかし、DtoCは直接消費者へ販売するビジネスモデルであるため、仲介業者に支払っていた手数料やマージンがすべて削減できます。
また、店舗を持たない「EC販売」が主なビジネスモデルであるため、維持費を最小限にすることも可能です。接客をする必要もないため人件費の削減にも繋がります。もちろん、ECサイト構築のコストやサイト運営のランニングコストは発生しますが、トータルで考えた際には大幅なコストカットが見込めるでしょう。
削減できたコストは、商品の品質改善やサービス向上のための施策に投資することが可能です。また、他社よりも比較的リーズナブルな価格で商品やサービスを提供できます。
ブランド発信が簡単に行える
DtoCは、企業が直接消費者へ情報を提供できるため、ブランド発信が簡単に行えるというメリットがあります。
従来のBtoCでは、卸先でさまざまな商品と一緒に陳列されるため、ブランドコンセプトやベネフィットを伝えることが難しいというデメリットがありました。
しかし、DtoCであれば企業独自のECサイトで販売するため、ECサイトのクオリティ次第でブランドの世界観を伝えることが可能です。
また、定期的なメールマガジンなどでブランド情報を発信すれば、より効果的にブランドの理解を深めることができるでしょう。
ものが溢れている昨今の市場では、ブランディングと認知度の拡大はとても重要です。競合他社にはない強みや魅力を発信するなら、自社ECサイトは必要不可欠といえるでしょう。
DtoCによるデメリットも把握しておこう
DtoCには多くのメリットがある反面、高度なビジネスモデルであるためデメリットもあります。デメリットを把握して事前に対策を立てましょう。
システム構築に大きなコストが発生する
DtoCには、システム構築に大きなコストが発生するというデメリットがあります。
もっともかかるのはECサイトの開発コストです。小規模なサイトであれば100万円以下、大規模なサイトであれば数千万円かかる場合もあります。
また自社で物流を担うため、物流システムの構築が必須です。それ以外にもECサイトの編集者や物流担当者の人件費などさまざまなコストが発生するため、事前にどんなコストが発生するか把握しておきましょう。
ECサイトを運営することが初めてで不安な方は、クラウド型ネットショップ作成サービスを活用するといいでしょう。クラウド型ネットショップ作成サービスは、初期費用0円で簡単にネットショップが作成できるサービスです。
商品が売れた際に発生する決済手数料とサービス利用料さえ支払えば、誰でも簡単にネットショップが作成できます。ECサイトを開発するのは、クラウドサービスで商品の売れ行きや消費者の反応を確認してからでもいいでしょう。
ブランドの認知度を上げることが難しい
DtoCは、認知度を上げることが難しいというデメリットもあります。
楽天市場やAmazonといった大型のECモールはすでに認知度が高いため、消費者へ露出する確率が高くなり、合わせて認知度も高められるというメリットがあります。
しかし、DtoCは自社のECサイトで商品を販売するため、ECサイト自体の認知度を高めるところからスタートしなくてはなりません。ECサイト自体の露出が増えない限り商品が認知されることはないため、ブランド自体の認知度を上げるのも容易ではないでしょう。
認知度を上げる戦略として、SNSやメールマガジンを活用しブランドの露出を増やす必要があります。特にSNSは広告費も無料かつ共感したユーザーが拡散してくれる可能性もあるため、認知度を高めたい企業にとっては必須なプラットフォームです。
ECサイトのみではなく、さまざまなプラットフォームを駆使してブランドの認知度を高めましょう。
実際に手を取って商品を見てもらえない
DtoCに限りませんが、消費者が実際に商品を手に取って見てもらえないというデメリットもあります。
DtoCはオンラインでの販売が主流であるため、消費者はECサイトの情報をもとに商品を購入するかを検討します。アパレルやコスメなど、実際に商品を試すことでもっとも良さが伝わる業界にとって、大きなデメリットといえるでしょう。
そのため、商品の良さを消費者へ最大限伝えられるよう工夫する必要があります。例えば、画像や動画で商品を使用したときのイメージが湧きやすくするなどが挙げられます。
また、デジタルを駆使してスマートフォンで試着できるようなアプリを開発したり、無料サンプルを提供して購入前に体験できるようにすることも効果的です。
その他にもSNSから口コミを拡散することも可能です。実際に手に取ってもらえなくても購入に繋がる工夫で、デメリットを補うことができるでしょう。
DtoCを実施している日本国内ECの成功例
国内ではDtoCをビジネスモデルに取り入れたことで成功した企業はたくさんあります。ここでは、代表的な企業を3社紹介します。それぞれの特徴や事業戦略を把握して、自社の事業戦略の参考にしてみてください。
ミニマル
Minimai(ミニマル)は、クラフトチョコレートの製造から販売まで一貫して行っているチョコレートメーカーです。独自のECサイトは充実したコンテンツとなっており、チョコレート好きなユーザーから人気を集めています。
ミニマルの成功した理由のひとつとして、DtoCのデメリットをうまく補っている点が挙げられます。例えば、各SNSのポジショニングを理解して、それぞれが役割を果たすことで「認知の拡大が難しい」というDtoCのデメリットを補っています。
また、毎月新しいチョコレートを発送してくれる「CHOCOLATE ADDICT CLUB」というサブスクリプションを提供することで、チョコレートが好きなコアユーザーのファン化を促進させています。
その後も様々な販売戦略により、コロナ禍でも販売実績が前年比400%を達成するなど着実に事業拡大をしているミニマルは、DtoCを実施している日本国内ECの成功例といえるでしょう。
ボタニスト
BOTANIST(ボタニスト)は、株式会社I-neが展開するボタニカルライフスタイルブランドです。2015年のネット販売開始からわずか数年で人気ブランドとなりました。
ボタニストの成功した理由のひとつとして、戦略的な認知の拡大が挙げられます。得意分野であったEC分野にて、まずは店頭以外で販売実績をつくることに注力しました。
楽天市場への出店で実績をつくり認知度を拡大したのちに、Instagramで広告費をかけずにさらなる認知の拡大に成功。
結果的に2021年の累計売上高は139.9億円で前年比115.5%を達成しており、現在もなお事業を拡大しています。ただ良いものを作るのではなく、どのような方法で消費者へ情報を提供するのが効果的なのかを考えた結果、成果に結びついた成功例です。
バルクオム
BULK HOMME(バルクオム)は、株式会社バルクオムが展開している男性向けスキンケアブランドです。品質と使用感の良さを両立させ、20代〜30代の男性から人気を集めています。
バルクオムが成功した理由は、客観的にブランドの特徴を捉えた施策です。これまでにありそうでなかったメンズスキンケアブランドという特徴を活かし、美容と相性のいいInstagram広告を打ち出すことで認知の拡大に成功しました。
結果的にメンズスキンケアブランドというブルーオーシャンを自ら開拓し、市場拡大に大きく貢献しています。
2020年には、年間売上高が前年比の150%増、年間出荷本数も290万本を超えており、さらなる躍進が期待されています。
海外ECの成功例も押さえておこう
日本国内だけでなく、海外でもDtoCを用いて成功した企業がたくさん存在しています。その中でも、特に大きな成功を掴んだ3社を紹介します。海外ならではの独自性の強い施策を参考に、自社の事業展開に反映させてみましょう。
Glossier
Glossier(グロッシアー)は、ニューヨーク初のコスメブランドです。ユーザーの意見を徹底的に取り入れた商品開発が人気を集めています。成功した理由のひとつに、ブログやSNSを最大限活かしたWebマーケティング力が挙げられます。
該当記事は、未完成の記事ですので、こちらの箇所はご放念ください。
集客ツールとして活用したのは、CEOのエミリーワイズ氏がグロッシアー創業前に運営していたファッションブログです。月間140万人以上が訪れるブログとコスメブランドサイトを繋ぐことで、コスメ好きの熱狂的なファンの集客に成功しました。
また、SNSのハッシュタグキャンペーンなどでブランドの認知度も拡大していき、Web集客を成功へと結びつけました。
ただし、集客だけで成功したのではなくファンとのコミュニケーションを通じて商品開発を行った点が相乗効果を発揮したといえます。
WarbyParker
WarbyParker(ワービーパーカー)は、アメリカ発祥のアイウェアブランドです。製造と販売の間で中間業者を通さないことや、店舗の家賃や人件費といった「固定費」を削減できるオンライン販売のみでスタートしたことにより、低価格でのメガネ販売を実現しました。
試着が必須なメガネをオンラインストアのみで成功させるのはとても困難です。しかし、ワービーパーカーは、バーチャル試着やトライアル期間を設けるなどの画期的な施策を行ったことで、メガネのオンライン販売を見事に成功させました。
今となっては日本国内でもJINSなどのアイウェアブランドがバーチャル試着を取り入れていますが、試着が必須なメガネをあえてオンラインで販売するという挑戦が、競合相手の少ない市場で活路を見出し、企業の成功へと導いたといえるでしょう。
ROCKETS OF AWESOME
ROCKETS OF AWESOME(ロケッツ・オブ・オーサム)は、子供服を扱うアパレルブランドです。子供服が定期的に届くサブスクリプション型サービスを展開し、ブランドを成功へと導きました。
成功した理由のひとつとして、ユーザーに寄り添ったサブスクリプションモデルを展開したことが挙げられます。
ユーザーへのアンケート結果を元に、子供の好みやサイズ、季節に合わせた洋服が届くという仕組みは、自宅にいながらショッピングをしている感覚になると話題になりました。また、気に入らない洋服は着払いで返送することできるため、より子供の好みに合わせた服をチョイスできると人気を集めました。
よりユーザーに寄り添ったサブスクリプションを展開したことが、ロケッツ・オブ・オーサムの成功に繋がったといえるでしょう。
まとめ
DtoCの特徴やメリットデメリット、成功事例などを紹介しました。これから事業を成長させるうえでかかせないDtoCですが、DtoCのビジネスモデルのみで成功するのは容易ではありません。
また、ECサイトを運営するうえで、ユーザーに寄り添った商品やサービスを提供することが大前提です。そして、SNSなどのチャネルを駆使してユーザーから情報を収集し、品質やサービスを向上させることが重要です。本記事を参考に、ぜひDtoC事業に挑戦してみてください。