全面解説:ROASの真の意味とは?計算方法から目標設定、効果的な改善策まで

監修者

佐藤 祐介
佐藤 祐介

株式会社LIFRELL代表取締役。大手代理店、株式会社オプト、電通デジタルの2社でアカウントプランナーを経験。その後、株式会社すららネットでインハウスマーケターとして事業の立ち上げからマザーズ上場水準まで事業を伸長させる。マーケティング戦略の立案からSEO/WEB広告/SNS/アフィリエイト等の施策で売上にコミット。

専門家

深瀬 正貴
深瀬 正貴

Yahoo株式会社 法人マーケソリューション出身。 鎌倉の海のそばでオフィスFHを運営。 リスティングやSEOをはじめとしたデジタルマーケティングで100社以上の売り上げ課題を解決。
最近の趣味はブームに乗っかったように見えてしまう「焚き火ごはん」。

目次

Corporate Management Strategy Solution Branding Concept

このテキストを通じて、読者は広告支出の効果を評価する指標であるROAS(広告費用対効果)について深く理解できるようになります。特に、CPA(コストパーアクション)やROI(投資収益率)といった他の指標とどう異なるのか、そしてROASがどのようにこれらと連携してビジネスの成果を測定するのに役立つのかを明確にします。

また、どのような企業がROASを重要なKPI(重要業績評価指標)として設定すべきか、またそうでない企業はどのような特徴を持っているのかについても触れます。これにより、各企業が自身のビジネスモデルや目標に合わせて、最適な評価基準を選択するためのガイドラインを提供します。

さらに、目標ROASを設定する際の考慮すべき点と、達成に向けた改善策についても詳細に説明します。これには、広告キャンペーンの効果を最大化するための戦略的なアプローチや、成果を測定し続けることの重要性が含まれます。読者は、これらの情報をもとに、自社の広告戦略をより効果的に計画し、実行するための知見を得ることができるでしょう。

このように、優しく丁寧な説明を通して、ROASの分析が企業にとってどのような価値を持ち、どのように活用すべきかについての理解を深めることができます。読者は、この知識を活用して、自社のマーケティング戦略をさらに洗練させ、ビジネスの成長を加速させることが期待されます。

マーケティング活動において重視される指標の一つが「ROAS(Return On Ad Spend)」、つまり「広告費用対効果」です。これは、投じた広告費用がどれだけの売上を生み出したかを示す重要な尺度です。高いROASを記録するとは、投資した広告が高い収益をもたらしたことを意味し、マーケティング戦略の見直しや次の施策への参考になり得ます。

それでも、ROASを全ての企業がKPI(重要業績評価指標)として採用すべきかどうかは一概には言えません。事業の性質や戦略によって最適な指標は異なり、ROASを活用する場合でも、目標とすべきパーセンテージに関して固定的な基準は存在しません。各企業は自らのビジネスモデルや市場環境に即した目標設定が求められます。

このガイドでは、特に「広告運用の効果を最大限に高めたい」「広告の成果を精密に分析し、さらなる改善点を見つけ出したい」という願いを持つ広告運用のプロフェッショナルの方々に向けて、ROASの基本概念、目標設定の方法、そして成果を向上させるためのアプローチについて、より深く、わかりやすく解説します。

この情報を手に、読者の皆様が自社の広告戦略をより一層洗練させ、競争の激しい市場での成功を実現するための一助となれば幸いです。理論だけでなく、実践的な知見を提供することで、広告運用における課題解決と成果の最大化に向けた明確な方向性を示したいと思います。

概念指標

ROAS、広告支出に対するリターンを示す指標、はデジタルマーケティングの世界で極めて重要な概念です。この指標の正式名称は「Return On Advertising Spend」であり、簡単に言えば、投じた広告予算からどれだけの収益を得られたかを評価するための尺度です。

計算方法は以下のように非常にシンプルですが、その背後にある意味は深いものがあります。

ROAS=(広告にかけた費用広告経由で得られた売上​)×100%

この計算式により、ROASの数値が大きければ大きいほど、広告投資から得られるリターンが大きいということを意味します。これにより、マーケティング担当者は、広告キャンペーンの効率性を正確に測定し、資源の配分を最適化することができます。

具体例を挙げてみましょう。

仮にある広告キャンペーンに10,000円を投じ、それが15,000円の売上を生み出した場合、ROASは150%となります。

これは、150%=(15,000円10,000円)×100%150%=(10,000円15,000円​)×100% という計算によって導き出されます。

同様に、5,000円の広告費で6,000円の売上が得られた場合、ROASは120%となります。

これらの例から、広告キャンペーンがどの程度の効果をもたらしたかを明確に示すことができます。

ROASを用いることで、特に以下のような状況で広告のパフォーマンスを評価するのに役立ちます

  • 異なる価格帯の製品やサービスを扱っている場合
  • 購入者が複数の商品を一度に購入することがある場合
  • 定期的にキャンペーンやセールを行っている場合

以上のように、ROASをKPI(主要業績評価指標)として設定することで、マーケティング戦略の有効性を定量的に評価し、より効率的な広告運用を実現することが可能になります。後ほど、ROASのさらに詳細な活用方法や、その数値を改善するための戦略についても掘り下げて説明していきます。この知識を活用し、広告の成果を最大化させることが、ビジネス成長の鍵となるでしょう。

目標設定

ROASが100%を超えるという数値だけを見た場合、広告の効果が良好であると感じるかもしれません。しかし、実際には、この指標では利益が出ているかどうかを正確には把握できない状況があります。なぜなら、ROASの計算には「広告を通じて得られた売上」のみが含まれており、売上原価などのコストは考慮されていないからです。このため、ROASが高いにもかかわらず、実際には利益が得られていない場合があるのです。

ここで、具体的な例を挙げてみましょう

ある商品が広告を通じて1個販売され、その単価が10,000円だったとします。

この商品の広告には8,000円が投じられ、さらに商品の売上原価が2,000円であった場合、計算上のROASは125%となります。

これは、ROAS=10,000円8,000円×100%=125%ROAS=8,000円10,000円​×100%=125% という式で導出されます。

初見ではこの広告キャンペーンが利益をもたらしているように見えますが、売上原価を含めた総コストが商品の売上と同じ10,000円であるため、実際には利益はゼロという結果になります。

このように、ROASを用いて広告の効果を評価する際には、単純な売上高だけでなく、売上原価を含めた全体のコストを考慮に入れることが不可欠です。目標とするROASを設定するにあたっても、これらのコストを踏まえた上で、実際に利益が生まれる数値を目指す必要があります。後半部分では、このような状況を考慮した目標ROASの設定方法について詳しく説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。

最後に、売上原価や販管費などのコスト項目は業種や企業によって異なるため、各自のビジネスモデルに即した適切な計算方法を選択することが重要です。この記事では、便宜上これらのコストを「売上原価」として扱っていますが、実際にはそれぞれの企業で具体的な計上方法を確認し、適切に管理することが求められます。

広告キャンペーンの多様な指標

デジタルマーケティングの世界では、広告キャンペーンの効果を測定するために多様な指標が用いられます。

その中でも特に注目されるのがROAS(Return On Advertising Spend)CPA(Cost PerAction)、そしてROI(Return On Investment)です。

これらの指標はそれぞれ異なる側面から広告効果を捉えるため、適切に活用することがマーケティング戦略の成功につながります。

以下、これらの指標の違いと、それぞれがどのような状況で用いられるかについて解説します。

まず、ROASは「広告の費用対効果」を測定する指標で、投じた広告費用に対してどれだけの売上が得られたかを示します。ROASは主に広告キャンペーン自体の直接的な収益性を測定する際に用いられ、高い数値を示すほど、効果的な広告であると考えられます。

次に、CPAは「アクションごとのコスト」を指し、特定のアクション(例えば、購入やリード獲得)を達成するためにどれだけの費用がかかったかを測定します。CPAは特に、目標とするアクションを明確に設定しているキャンペーンや、具体的な成果を重視する戦略において重要視されます。

最後に、ROIは「投資に対するリターン」を測定する指標で、広告に限らずあらゆる投資活動の収益性を評価するために用いられます。ROIは広告費用だけでなく、その他すべての関連コストも考慮に入れるため、企業全体のマーケティング予算の効率性を評価する際に役立ちます。

これらの指標は、それぞれが異なる視点から広告とマーケティング活動の成果を評価するため、状況に応じて適切に選択し、組み合わせて使用することが望まれます。例えば、直接的な販売増加を目指すキャンペーンではROASを、特定の顧客行動を促進することを目的とする場合はCPAを、そして全体的なビジネスの成長と収益性を見る際にはROIを重視することで、より戦略的かつ効果的なマーケティング活動が可能となります。


意味計算方法こんな場合に使う
ROAS広告費に対する売上の割合広告経由の売上÷広告費×100(%)複数の商材を取り扱うECサイトなど、売上が毎回異なる場合
CPAコンバージョン1件あたりの獲得単価広告費用÷コンバージョン数コンバージョンの価値が毎回同じ場合(金額が毎回同じ・資料請求をコンバージョンにしているなど)
ROI投資に対する利益の割合(売上-売上原価-投資額)÷投資額×100(%)商品ごと利益を算出できる場合

ROASについては、これまで触れてきた通り、広告の投資に対する売上の比率、すなわち広告の費用対効果を示す指標です。この指標は、広告キャンペーンがどれだけ効率的に売上を生み出しているかを測定するために広く用いられます。

ここで、他にも重要な2つの指標について軽く触れておきましょう。これらはROASと並んで、マーケティング効果を評価する際によく参照されるものです。

まず、「CPA(Cost Per Action)」は、特定の行動や成果(例えば、新規顧客の獲得や商品購入)を達成するためにかかったコストを示します。この指標は、特定のマーケティング目標に対するコスト効率を評価するのに適しており、効果的な広告戦略を立てる上で欠かせないデータとなります。

次に、「ROI(Return On Investment)」は、広告投資によって得られた収益を、その投資額で割ったものです。ROIは、広告だけでなく、ビジネス全体の投資効果を測定するために使用され、投資による収益性の高さを示す指標です。これにより、企業は投資の優先順位を決定し、資源をより効率的に配分することができます。

これらの指標は、それぞれ異なる側面からマーケティング活動の成果を測るため、適切に理解し活用することで、より戦略的な広告運用が可能になります。マーケティング担当者は、これらの指標をバランス良く組み合わせることで、キャンペーンの効果を最大化し、企業の成長に寄与することが期待されます。

CPA

CPA、またはCost Per Action、はマーケティング分野で一つのコンバージョンを得るのに必要な広告費の平均額を示します

この値は、「総広告費用を獲得したコンバージョンの総数で割る」という単純な計算式によって導き出されます。

たとえば、広告に30,000円を投じて2回のコンバージョンが得られた場合、CPAは15,000円となります。

これは、各コンバージョンの獲得に15,000円の広告費がかかったことを意味します。

CPAを低減させることは、より効率的にコンバージョンを獲得していることを示し、マーケティング活動の効率性を高めることに直結します。

CPAは特に、売上の額が一貫している場合や、コンバージョンが貨幣価値で直接測定できない場合に有用です。これには「資料請求」「無料トライアルの登録」「店舗への予約」など、具体的な金額ではなく行動や参加意志の表明を促す場合が含まれます。これらのシナリオでは、CPAを用いることで、キャンペーンの効果を定量的に評価し、それぞれのアクションの獲得コストを最適化するための具体的な洞察を得ることが可能となります。

したがって、CPAを効果的に管理し最適化することは、広告予算の有効利用とマーケティング戦略の全体的な成功において重要な役割を果たします。マーケティング担当者は、CPAを定期的に監視し、その数値を改善することで、より低いコストで高い価値を提供するコンバージョンを増やすことができるのです。

ROI

ROI、またはReturn On Investment、は広告投資の成果を示す重要な指標であり、投資した広告費用に対してどれだけの利益を得られたかの割合を表します

この指標は、一般的に投資利益率としても知られ、次の式により計算されます:

ROI=(総売上−売上原価−投資額(広告費)投資額(広告費))×100%ROI=(投資額(広告費)総売上−売上原価−投資額(広告費)​)×100%

例を挙げると、

3,000円の広告費を使用して、単価10,000円で売上原価が1,000円の商品を1つ販売した場合、利益は6,000円(10,000円 – 1,000円 – 3,000円)となり、その結果、ROIは200%(6,000円 ÷ 3,000円 × 100%)となります。

ROIは特に、商品ごとの利益率を明確に計算できる場合に重宝され、その商品のマーケティング活動の効率を評価するKPIとして設定されます。一方で、商品ごとの利益率が明確でない場合、ROASがより適した指標となることがあります。

ROASが広告費用に対する売上高の割合を重視するのに対し、ROIは広告費用に対する実際の利益の割合を強調します。この違いは、広告キャンペーンやマーケティング戦略を評価し調整する際に、どの指標を主軸に置くかを決める上で重要です。ROIの計算により、企業は広告活動が実際にどれだけの利益を生み出しているかを具体的に把握し、より収益性の高いマーケティング戦略の策定が可能になります。

広告キャンペーンの成果

広告キャンペーンの成果を測定する際、ROAS(広告費用対効果)を重要なKPI(主要業績評価指標)として考える企業は少なくありません。「広告活動の成果をROASを用いて評価したい」「すでに実施中の広告キャンペーンの成果をROASを通じて検証してみたい」と思っている担当者は多いでしょう。

しかし、すべての企業や状況でROASを効果検証の手段として採用するのが適切とは限りません。ROASを活用するのに最適なシナリオとそうではないシナリオを見極めることが重要です。この点について、具体的なケースを挙げながら解説していきましょう。

ROASの有効な指標

ROASは、コンバージョンの価値がシナリオに応じて変動する場合に特に有効な指標となります。その理由は、異なる価値を持つコンバージョンに対して、その成果を正確に測定し、評価する能力があるからです。例えば、以下のような状況ではROASを主要なパフォーマンス指標として採用することが推奨されます。

  • 複数の商品やサービスを扱っており、それぞれの単価が異なる場合
  • 顧客が複数の商品を一度に購入することが頻繁にある場合
  • 定期的にキャンペーンやセールを実施している場合

これらのシナリオでは、CPA(Cost Per Action)を主要な指標として用いると、広告キャンペーンの真の効果を正しく把握できない可能性があります。なぜなら、CPAは1回のコンバージョンにかかるコストのみを考慮し、コンバージョンごとに異なる価値を反映しないからです。

例として、以下の状況を想像してみてください。

  • 10,000円の商品AがCPA 5,000円で販売されている。
  • 30,000円の商品BがCPA 10,000円で販売されている。

この場合、CPAが低い商品Aの方が効率的な広告と見做されがちです。しかし、商品AとBの単価が異なるため、コンバージョンごとの真の価値を考慮に入れると、商品Bの方が高い価値を提供していることになります。したがって、単純にCPAのみを基準にして広告キャンペーンを評価すると、商品Bの販売機会を見逃すリスクが生じます。

このような場合、各商品の売上とそれにかかる広告費からROASを計算し、これをKPIとして採用することが望ましいです。ROASを用いることで、異なる価値を持つコンバージョンを公平に評価し、より効果的な広告戦略を策定することが可能になります

特に、商品の種類が多岐にわたるECサイト運営などでは、このような価値の変動が頻繁に起こるため、ROASを重視する傾向があります。

さらに、商品ごとの利益を明確に算出できる場合は、ROASではなくROI(Return On Investment)をKPIとして用いることも一つの選択肢です。ROIを用いることで、単に売上だけではなく利益をもとにしたさらに精緻な広告効果の評価が行えるようになります。

CPA(Cost Per Action)

コンバージョンが一定の価値を持つ状況においては、CPA(Cost Per Action)を利用することが一般的に推奨されます。これは、特定の行動や成果を達成するためにかかった平均コストを示す指標であり、コンバージョンの価値が変動しない場合に特に有用です。

以下は、CPAが特に適していると考えられる典型的な例です

  • 事業が単一の商品やサービスのみを提供している場合、またはセールやプロモーションを通じて価格が変動することが少ない場合。この状況では、コンバージョンごとに生み出される収益が一貫しているため、各コンバージョンを獲得するのに要したコストを評価するCPAの使用が理にかなっています。
  • コンバージョンが直接的な収益を生み出さないアクション、例えば「資料請求」や「来店予約」などに関連している場合。これらのシナリオでは、コンバージョン時に即座に売上が発生しないため、ROASを用いた効果測定は適用できません。代わりに、CPAを主要な評価基準として設定することが、効率的な広告運用に繋がります。

ただし、資料請求や来店が後に受注に繋がり、それによってある程度予測可能な売上が見込まれる場合には、ROASを用いても効果的な評価が可能です。このアプローチでは、仮定される売上を基にして、広告キャンペーンの費用対効果を計算し、より精密なマーケティング戦略を立案できるようになります。

結論として、コンバージョンの価値が一定している場合、CPAを活用することで、広告支出の効率性を直接的に測定し、広告戦略を最適化するための明確な指標を得ることができます。これにより、マーケティングの目標を達成するための具体的かつ効果的なアプローチを策定することが可能になります。

ROASの目標設定

ROAS(Return On Advertising Spend)を重要なKPI(Key Performance Indicator)として活用し、広告キャンペーンを効果的に管理したい場合、適切な目標ROASの設定が必要です

目標ROASを設定する過程では、利益率や広告費用に関する具体的な目標を定めることが重要となります。ここでは、その設定プロセスについて詳しく説明します。

まず、目標ROASを決定するには以下の手順を踏みます

手順①

商品ごとの売価や製造コストなど、関連する財務情報を詳細に分析します。

手順②

総利益のうち、どれだけを広告費用に割り当てるかを決定します。これは、希望する利益率を基に算出します。

手順③

上記の情報を基に、ROASの公式に当てはめ、目標値を算出します。

具体例を挙げてみましょう:

  • 製品の販売価格が10,000円、製造コストが3,000円で、純利益が7,000円の場合。
  • この純利益の40%(2,800円)を広告費用として活用することを目指す(つまり、利益の60%まで、すなわち4,200円を広告に投資可能)。
  • この条件下での目標ROASを計算すると、10,000円の売上から4,200円を広告費用に充てた場合、目標ROASは約238%となります。

また、異なる利益確保目標での計算も重要です。

例えば、純利益の70%(4,900円)を保持し、広告費用に30%(2,100円)を充てる場合、目標ROASは約476%になります。

損益分岐点の計算も重要です。

純利益7,000円を広告費に全額投入した場合のROASは約142%となり、これが最低限達成すべきROASの基準となります。

このようにして、各製品に対する目標ROASを精密に計算し、広告キャンペーンの効果測定と最適化を行います。注意点として、製造コストや販売管理費用は業種や事業内容によって異なるため、これらの値を正確に把握することが成功の鍵となります

ROAS(広告費用対効果)の理解

ROAS(広告費用対効果)の数値を向上させることが広告運用の最終目標ではないことを理解することが重要です。ROASは、投資した広告費用に対してどれだけの収益が得られたかを示す指標ですが、これだけに焦点を当てることは推奨されません。

考えてみましょう。以下の2つの広告実績を比べた場合、どちらが企業にとって有益かを判断するのは一見簡単ではありません。

  • 例A:広告費100,000円から300,000円の売上を達成(ROASは300%)
  • 例B:広告費300,000円から600,000円の売上を達成(ROASは200%)

単純にROASのみを比較すると、例Aの方が効率的に見えます。しかし、全体の売上高や利益を鑑みると、例Bの方がより大きな事業への貢献をしている可能性があります。

このように、ROASを単一の指標としてのみ追求することは、総売上の最大化や事業成長の機会を見失う原因となり得ます。広告キャンペーンの成功を評価する際には、ROASの他にも、総売上、利益額、コンバージョン数など、複数の指標を総合的に考慮することが重要です

広告戦略を計画する際には、ROASの最適化に加えて、これらの他の重要なビジネス指標にも目を向け、バランスの取れたアプローチをとることが求められます。これにより、広告運用の真の目的である、事業全体の成長と収益性の向上に貢献することが可能になります。

ROASのプロセス解説

このセクションでは、Googleリスティング広告を用いたROAS(広告費用対効果)の確認と効果測定のプロセスについて説明します。Google広告でのROASの効果測定を行うためには、各商品やコンバージョンが生成する売上を正確に追跡し、これを広告管理画面で可視化できるように設定することが前提条件となります。

売上の追跡設定が未完了の場合は、主に以下のステップに従って設定を行います:

ステップ①

Google広告アカウントにて、コンバージョントラッキングを設定します。この際、「コンバージョンごとに異なる価値を割り当てる」というオプションを選択することが重要です。

ステップ②

次に、サイトに追跡タグを設置します。これは、顧客が購入やその他のコンバージョンを完了した直後に表示されるページに対して行います。このタグにより、各コンバージョンの発生とそれに伴う売上が追跡されます。

ステップ③

詳細な設定方法については、Googleの公式サポートページ「注文や購入ごとに変動するコンバージョン値をトラッキングする – Google Ads Help」で確認することができます。

これらの設定が完了すれば、広告管理画面の「コンバージョン値/費用」セクションからROASを直接確認することが可能になります。ただし、この情報はデフォルトで表示されないため、「表示項目」のカスタマイズが必要となります。

設定後、管理画面では広告キャンペーンや広告グループ、キーワードレベルでのROASの推移を視覚的に追跡することができます。これにより、効果的な広告運用のためにどのエリアに改善が必要かを具体的に分析し、適切な最適化策を講じることが可能となります。

「目標ROAS」入札設定

Google広告を活用している際に、ROAS(広告費用対効果)を基準に運用を行う場合、Googleが提供する「目標ROAS」入札戦略を用いることが非常に効果的です。この機能を使用すると、自動的に入札額が調整され、設定したROASを達成するように広告の配信が最適化されます。

この戦略により、以下のようなアクションが自動で行われます:

  • 高い売上貢献をもたらすキーワードの入札額を上げることで、より多くの露出を確保
  • 効果が低いと判断されるキーワードの入札額を下げることで、無駄な広告費用の支出を抑制

たとえば、あなたが広告予算として100,000円を用意し、「目標ROAS250%」を目指す場合、この機能は250,000円の売上を生み出すことを目標に、各キーワードの入札額を自動調整します。

「目標ROAS」入札戦略を設定する方法は以下の通りです:

手順①

Google広告のキャンペーン管理画面で、対象となるキャンペーンを選択。

手順②

「設定」タブを開き、「入札戦略」セクションに進みます。

手順③

「入札戦略の変更」オプションを選択し、「コンバージョン値」に基づいた入札オプションを選択します。

手順④

さらに、「目標ROASを設定する(オプション)」にチェックを入れ、希望するROAS値を入力します。

また、複数のキャンペーンにわたって一貫した目標ROASを適用したい場合は、ポートフォリオ入札戦略を利用する方法もあります

これには以下の手順を踏みます:

手順①

「ツールと設定」メニューから、「共有ライブラリ」の下にある「入札戦略」を選択。

手順②

新しいポートフォリオ戦略を作成し、「目標ROAS」オプションを選択。

手順③

必要な情報(戦略名、目標ROAS値など)を入力し、設定を完了します。

詳細設定やより深い理解のためには、Google広告ヘルプセンターの「目標広告費用対効果に基づく入札について」のセクションを参照してください。この機能を利用することで、広告の効率性を高め、目標とするROASの達成を目指すことができます

ROAS、または広告費用対効果の向上は、リスティング広告を利用する多くの企業にとって重要な課題です。この指標を改善するには主に三つのアプローチがあります

以下では、これらの方法を具体的に掘り下げていきます。

  1. 広告費の削減:
    • ROASの式「売上 ÷ 広告費 × 100(%)」から分かる通り、売上高を保持しつつ広告費を削減することで、ROASは自然と向上します。広告費の効率化は、不要なキーワードの削除や低パフォーマンスの広告グループの調整によって達成可能です。
  2. コンバージョン率(CVR)の向上:
    • コンバージョン率を高めることで、同じ広告費でもより多くの売上を生み出すことができます。これは、ランディングページの最適化、ターゲットオーディエンスの精緻化、または広告文の改善を通じて実現可能です。
  3. 客単価の向上:
    • 同じ数のコンバージョンからより多くの売上を得るためには、購入単価、つまり一人の顧客が購入する平均金額を増やすことが有効です。これは、アップセルやクロスセルの戦略、または高価格商品への誘導によって達成されます。

これらの改善策は、ROASを単独で考慮するのではなく、広告キャンペーン全体のパフォーマンスと収益性を総合的に見直すことで、より効果的に実施されるべきです。また、市場の動向や顧客の行動変化にも注意を払いながら、継続的なテストと最適化を行うことが、長期的なROAS向上の鍵となります

広告費が高騰する原因考えられる対策
広告やLPの品質が低い
広告とLPを見直し、推定クリック率や関連性など(品質)を高める
競合性が高い
ポートフォリオ入札戦略の上限CPCを設定する

さらに、コンバージョン率(CVR)の向上は、ROAS向上の重要な鍵となります。広告支出が変わらない状況で、広告からの訪問者のうちより多くが購入や申し込みなどのコンバージョンに至る場合、それに比例して売上も増加します。つまり、広告を見てサイトに訪れるユーザーのうち、より高い割合で製品やサービスを購入する人が増えれば増えるほど、同じ広告費で得られる収益は上昇し、結果としてROASも向上することになります。

CVRが低い原因考えられる対策

CVに繋がらないキーワードで出稿されている

・効果が出ているキーワードに入札を寄せる
・CVに繋がらないキーワードを停止・除外する

広告文がCVに繋がりやすいユーザーにクリックされていない

・広告文を改善する
・「地域」「時間帯」などのターゲティングを見直す

LPでの離脱率が高い

・「キーワード」「広告文」「LP」の関連性を高める
・LPOを行う
・効果が出ていないLPの配信を停止する

カートやフォームでの離脱率が高い

カゴ落ち対策やEFOを行う

ROAS向上のためには、顧客一人当たりの購入額、すなわち客単価を増加させる戦略も非常に効果的です。各顧客からの平均収益が増えれば、自然とROASも上昇します。これを実現するためには、顧客が一度の購入でより多くの商品をカートに入れるよう促す施策が重要です。以下のようなアプローチが考えられます。

  • 「3品購入で10%割引」といったプロモーションを通じて、顧客に複数の商品を一度に購入するインセンティブを提供する。
  • 一定金額以上の購入で送料を無料にする、または同様に一定額以上で追加割引を適用するなど、購入額の増加に連動した特典を設定する。
  • 顧客の過去の購入履歴や閲覧履歴に基づいて、パーソナライズされた商品推薦を行うレコメンドシステムの導入。

加えて、顧客データを深掘りすることで、より効率的に客単価を上げる戦略を立てることが可能です。具体的には、「バスケット分析」を用いて顧客が一緒に購入しがちな商品の組み合わせを把握したり、「RFM分析」で顧客の購買頻度や最近の購入履歴を分析することで、購入単価を高めるためのアクションプランを練ることができます。これらの分析を通じて得られたインサイトは、マーケティング施策の最適化に直結し、結果としてROASの向上に寄与します。

成功事例

ここでは、私たちのクライアントの成功事例を共有し、ROAS改善の可能性について具体的なイメージを持っていただきたいと思います。

私たちがサポートしたのは、季節に左右される特定商品を扱うECサイト運営会社です。この会社は、売上を伸ばすためにリスティング広告、リターゲティングを中心としたディスプレイ広告、そしてSNS広告を積極的に活用していました。

プロジェクト開始時、ROASはわずか25%という低水準でした。これを改善するために、私たちは広告からランディングページ(LP)、さらにはカートページ、そして購入完了フォームへと進むユーザーの流れを詳細に追跡し分析することから始めました。

分析の結果、特にカートページでの離脱率が高いことが判明しました。本来ならば、購入プロセスの最適化が必要な場面ですが、システムの制約により直接的なカートページの改善が難しい状況でした。そこで、我々はLPのデザインとコンテンツの見直しに焦点を当てました。

具体的には、LPにおいて、利用可能な決済方法の明確化や、クーポン利用の詳細についてよりわかりやすく情報を提供する等の改善を施しました。

これらの取り組みにより、顧客の購入体験が大きく改善され、CVRの向上に成功しました。結果として、ROASは初期の25%から200%へと大幅に向上し、クライアントの事業成長に大きく貢献することができました。

この事例から、広告運用における改善策は多岐にわたること、また、一見直接的ではない改善でも大きな効果をもたらす可能性があることがわかります。

まとめ

この記事を通じて、ROAS(Return On Advertising Spend)の重要性と基本概念についてご紹介しました。ROASは、広告投資に対する収益性を測定するための重要な指標であり、特に異なる価値を持つコンバージョンが存在する場合、その効果の検証に非常に役立ちます。

具体的には、異なる商品やサービスが引き起こす売上の変動を考慮した際、ROASを活用することで、広告キャンペーンの成果をより正確に評価することが可能になります。

しかし、ROASを広告運用の唯一の指標として採用すべきではないケースもあります。すべてのビジネスモデルやマーケティング戦略がROASに適しているわけではなく、時には他のKPI(Key Performance Indicators)を検討することが適切な場合もあります。

ROASでの運用が適している
・単価が異なる商品やプランを複数扱っている
・複数商品をまとめて購入されることがある
・キャンペーンやセールなどを定期的に行っている

ROASでの運用が適さない

・単一商品を取り扱っており、セールやキャンペーンなどの金額増減もほとんどない
・「資料請求」「来店予約」など、コンバージョン時に売上が発生しない

EC事業をはじめとする、コンバージョンの価値が取引ごとに変動するビジネスモデルでは、ROAS(Return On Advertising Spend)を重要な業績指標(KPI)として設定することが一般的です。これは、広告投資に対する直接的な収益効果を測定し、効率的な広告運用を目指すためです。

目標ROASの設定にあたっては、事業ごとの特性を考慮することが必須です。これには、売上原価や目指す利益率など、様々な財務要素が関わってきます。この記事が提供する知識を基に、自社の財務状況を精査し、実現可能でありながらも挑戦的なROASの目標値を定めることをお勧めします。

頻繁に寄せられる質問とそれに対する解答

Q: Web広告を使って効果的な成果を得るには、どのような方法がありますか?

A: Web広告での成功を目指すには、まずターゲットを正確に定義し、達成したい目標とそれに応じたKPI(重要業績評価指標)を設定することが重要です。また、広告キャンペーンの運用とその成果の定期的な分析・改善を行い、これを持続的に実施する体制を整えることが必要になります。

このプロセスを通じて、Web広告のパフォーマンスを徐々に向上させることができます。効果的なWeb広告運用には、目標に基づいた計画的なアプローチと、データに基づく改善策の迅速な実施が求められます。

Q: 広告運用において、ROASを主要なKPIとして採用することは適切ですか?

A: ROASをKPIとして選定するかどうかは、ビジネスモデルや広告の目的によって異なります。ROASは、特にコンバージョンごとに発生する収益が一定でない場合に、広告の成果を測定するのに有効な指標となります。以下のような場合にROASは特に有用です

  • 異なる価格帯の商品やサービスを提供している場合
  • 顧客が複数の商品を一度に購入するケースが頻繁にある場合
  • 定期的にプロモーションやセールを行っている場合

これらの状況では、ROASを用いることで、広告のパフォーマンスを正確に評価し、適切な広告戦略を立てることが可能になります。しかしながら、すべてのビジネスや広告キャンペーンでROASが最適なKPIであるわけではないため、自社のビジネス目標や広告目的を踏まえた上で、最も適切なKPIを選択することが重要です