2021年最新: Google広告アトリビューションモデル変更の全影響

Google広告アトリビューションモデル変更の全影響

監修者

佐藤 祐介
佐藤 祐介

株式会社LIFRELL代表取締役。大手代理店、株式会社オプト、電通デジタルの2社でアカウントプランナーを経験。その後、株式会社すららネットでインハウスマーケターとして事業の立ち上げからマザーズ上場水準まで事業を伸長させる。マーケティング戦略の立案からSEO/WEB広告/SNS/アフィリエイト等の施策で売上にコミット。

専門家

深瀬 正貴
深瀬 正貴

Yahoo株式会社 法人マーケソリューション出身。 鎌倉の海のそばでオフィスFHを運営。 リスティングやSEOをはじめとしたデジタルマーケティングで100社以上の売り上げ課題を解決。
最近の趣味はブームに乗っかったように見えてしまう「焚き火ごはん」。

目次

2021年最新 Google広告アトリビューションモデル変更の全影響
Krynica-Zdroj, Poland – July 11, 2017: Businessman using Google Analytics in the office on the touch screen of his tablet. Google Analytics is the most famous application for advanced web traffic analysis in the world

※2023年6月~9月にラストクリック、データドリブン以外のアトリビューションモデルの廃止が発表されました

2021年10月以来、Google広告のアトリビューションモデルにおいて、データドリブンアトリビューション(DDA)が標準設定として採用されています。

DDAの仕組みについてはこちら。

Google 広告のデータドリブン アトリビューション(DDA)について理解してみる

これは、広告効果の評価に関して、より洗練されたアプローチを提供するものです。しかし以前のように、他のアトリビューションモデルを選択する自由も依然として保持されています。

多くの方々が、従来の「ラストクリック」モデルを変更することなく運用してきた背景には、購買行動の多様化に対する認識のもと、新しいアトリビューションモデルへの切り替えが必要かどうかの判断が難しいことがあります。また、どのモデルを選べば良いのか、設定の変更が運用上の効率を下げるのではないかという懸念から、変更を躊躇している方も少なくないでしょう。

その感覚、非常によく理解できます。実際、私自身もアトリビューションモデルの変更を前にしては、一抹の不安を感じていました。このような不安を抱える主な理由は、”不明瞭な部分が多いから”に他なりません。そこで、アトリビューションモデルをより深く理解し、ご自身のビジネスモデルに最適なものを選択できるように、確認方法について詳細をお伝えします。

この変更は単に新しい選択肢が増えただけでなく、マーケティング戦略をより洗練させるための機会とも言えます。適切なアトリビューションモデルを選ぶことで、広告の効果を正確に測定し、その結果をもとにより効果的な戦略を立てることが可能になります。しかし、その第一歩として、さまざまなアトリビューションモデルの特徴や適用方法についての理解を深めることが必要です。

今回の記事では、アトリビューションモデルの基本から、それぞれのモデルがビジネスに与える影響、選択時の考慮点に至るまで、具体的な例を交えながら解説していきます。

6つのアトリビューションモデルとは

Google広告において、コンバージョンを達成する道のりは、一つの広告によって成し遂げられるわけではありません。顧客は、購入やサインアップなどの意思決定プロセスを通じて、同一の広告主からの複数の広告に触れることがよくあります。これらの広告がコンバージョンに至るまでの顧客の旅にどのように貢献しているかを評価し、その貢献度に応じて価値を割り当てる仕組みをアトリビューションモデルと称します。Google広告では、このようなアトリビューションモデルを選択し、適用することが可能です。ラストクリックモデルを含む6つの異なるアトリビューションモデルが用意されており、それぞれのモデルはコンバージョンへの道のりにおける広告の影響を異なる視点から評価します。

顧客の購買プロセスや情報収集の行動は複雑で、複数の広告がそれぞれ異なる形で影響を及ぼしています。アトリビューションモデルを適切に選択し、活用することで、各広告のパフォーマンスをより正確に評価し、マーケティング戦略の最適化に役立てることができます。例えば、あるユーザーが最終的にコンバージョンを達成した場合、そのプロセスにおいて接触した複数の広告のうち、どれが最も影響力があったのか、または全体の旅の中で均等に貢献したのかを理解することが、より効果的な広告配信戦略を立てる上で非常に重要になります。

Google 広告で利用可能なアトリビューションモデルは下記のとおりです。

アトリビューションについて、基本的なことを知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。

変更によって起こることとは?

アトリビューションモデルの変更は、デジタルマーケティングの運用において、一見すると小さなステップかもしれませんが、実際には広告キャンペーンの成果に大きな影響を及ぼします。特に、Google 広告では、コンバージョンに至るまでの顧客の旅路をより正確に捉え、各広告の貢献度を適切に評価するために、6つの異なるアトリビューションモデルを提供しており、2021年10月からはデータドリブンアトリビューション(DDA)がデフォルトに設定されました。

アトリビューションモデルを変更すると、コンバージョンを測定する方法に変更が生じるため、自動入札戦略を使用しているキャンペーンの運用にも影響が出てきます。変更後に確認すべき点や、変更の手順について、より詳しく解説していきましょう。

・参照期間によってコンバージョン数が少なく見える

広告から商品購入までの時間が長引くケースでは、一定期間内だけを見た場合にコンバージョン数が少なく見えることがあります。しかし、アトリビューションモデルを変更しても、コンバージョンの総数に変化はないことを理解しておくことが重要です。各接点の評価が変わるだけで、実際のコンバージョン数に影響はありません。

・コンバージョン数が小数点で表示される

線形モデルなどの場合、一つのコンバージョンに対して複数の広告が関与していると、各広告の貢献度が小数点で割り振られるため、管理画面上でコンバージョン数が小数点で表示されることがあります。しかし、これはあくまで運用上の仕様であり、実際の顧客の購入件数が小数点になるわけではないので、運用時に混乱しないようにしましょう。

コンバージョン反映までにタイムラグが生じる可能性あり

アトリビューションモデルの変更直後は、コンバージョン反映にタイムラグが生じることがあり、一時的にコンバージョン数が低下する可能性があります。これは、異なる時点で発生したキャンペーンやキーワード間でコンバージョンに対する貢献度が再分配されるためですが、実際のコンバージョン数が減少しているわけではないので心配はいりません。

コンバージョンは、クリック直後から発生することもあれば、商材によってはクリックから90日後に初めて確認できるようになる場合もあります。アトリビューションレポートの[コンバージョン達成までの平均日数]を参照して、コンバージョンまでの時間を理解し、管理画面への反映を焦らずに待つことが大切です。

・入札単価調整の変更が必要

「目標コンバージョン単価」や「目標広告費用対効果」などの入札戦略を使用している場合、目標の変更が必要になります。例えば、ラストクリック時のコンバージョン単価を基準に入札していた場合、データドリブンアトリビューションへの変更に伴い、コンバージョン数の変化によって入札単価が影響を受けるため、目標コンバージョン単価の調整が求められます。具体的な調整方法についても、実例を交えて詳しく説明します。

キャンペーンコンバージョン数(ラストクリック)コンバージョン数(データドリブン)CPA(ラストクリック)CPA(データドリブン)
ブランド200150¥500¥667
一般キーワード50100¥2,000¥1,000

ラストクリック時のCPA 500 円と 2,000 円のまま目標コンバージョン単価で入札をかけているとします。この状態でデータドリブンアトリビューションに変更する場合、コンバージョン数の変化により入札単価が影響を受けるため、「ブランド」キャンペーンでは安く入札され、「一般」キャンペーンでは高く入札される可能性があります。

そのため、設定している目標コンバージョン単価を調整する必要があります。下記キャンペーンの例で、調整方法を確認しましょう。

キャンペーンコンバージョン数(ラストクリック)コンバージョン数(データドリブン)CPA(ラストクリック)CPA(データドリブン)目標コンバージョン単価調整率
ブランド200150¥500¥667-33%
一般キーワード50100¥2,000¥1,00050%

「ブランドキャンペーン」では、コンバージョン単価が 167円上がっています。この増加分を調整するには、目標コンバージョン単価を33%(167÷500=0.33)下げます。

「一般 キャンペーン」では、コンバージョン単価が1,000円下がっています。この低下分を調整するには、目標コンバージョン単価を50%(1,000÷2,000=0.5)上げます。

変更前にモデル比較レポートでの影響を確認

アトリビューションモデルを新しいものに切り替える際は、変更がキャンペーンにどのような影響を及ぼすかを予め把握し、その後で設定を行うことが賢明です。Google 広告の管理画面を利用して、現在のアトリビューション設定から新しいモデルへの変更がもたらす効果を詳細に検証することが可能です。このプロセスは、モデル比較レポートを通じて行うことができ、このレポートは管理画面にて容易にアクセスできます。

具体的には、管理画面の右上に位置する「ツールと設定」メニューから「アトリビューション」オプションを選択し、続いて「モデル比較」というセクションを開きます。ページの左上部にある「ディメンション」タブを利用して、分析したい特定の項目にチェックマークを入れることで、比較対象をカスタマイズできます。

特に、ディスプレイ広告やYouTube広告を含めたデータを表示させたい場合は、2021年8月9日以降のデータ期間を選択することが必要になります。この点は、分析の精度を高めるために特に注意が必要です。

また、比較項目のデフォルト設定にはコンバージョン数とコンバージョン単価が含まれていますが、広告費用対効果を重視してアカウントを運用している場合は、管理画面の右端にある「列」からさらに比較項目を追加したり、既存の項目を変更したりすることもできます。これにより、新しいアトリビューションモデルへの変更が、広告のパフォーマンスやROIにどのような影響を与えるかをより詳細に分析することが可能となります。

まとめ

新しい試みを始める際に、不安や恐怖を感じることは自然な反応です。変化には常に未知の要素が伴うため、心配事が頭をもたげることもあります。しかし、新しい道を歩む際にこれらの感情に圧倒されてしまうのではなく、不安や恐怖の具体的な原因を探求してみることが、前向きな一歩を踏み出すための鍵となります。不安の原因を深堀りすることで、実は根拠のない恐れに基づいていたり、解消可能な問題であることが明らかになるケースも多くあります。

特にアトリビューションモデルの変更に関して不安を感じている方がいらっしゃる場合、その懸念が実際には必要のないものであることをこの記事を通じてお伝えできればと思います。アトリビューションモデルの変更によって、広告運用がどのように変わるのか、どのような影響があるのかを理解することが、不安を和らげ、新しいアプローチに対する自信を持つ第一歩になります。

この記事では、アトリビューションモデルの変更における一般的な懸念点を取り上げ、それらが実際にはどれほどの影響をもたらすのか、また、どのように対処すれば良いのかを具体的に解説しています。新しいモデルへの切り替えを考えている方々が、不安の正体を理解し、それを乗り越えるための具体的なアクションプランを持てるように、役立つ情報を提供します。

新しい挑戦には不安がつきものですが、その不安を理解し、適切な準備と対策を行うことで、大きな成長と成功への道が開かれます。この記事が、アトリビューションモデルの変更を検討している皆さんにとって、その一歩を踏み出すための助けとなれば幸いです。