デジタル広告の世界は手動入札のみに頼っていました。その時代では、広告主は一つ一つのキーワードに対して上限クリック単価を設定したり、ユーザーの性別や年齢などの属性ごとに、入札価格を細かく調整するという煩雑な作業を行う必要がありました。このようなプロセスは、時間も労力も大量に消費するものでした。
しかし、この風景は自動入札機能の登場によって大きく変わりました。この革新的な機能は、各オークションごとにこれらの調整作業を自動的に行ってくれるのです。この入札調整の自動化は、多くのアカウントで作業の効率化を実現し、貴重な時間とリソースを節約することに貢献しました。
ですが、この自動化の恩恵にあずかる一方で、注意すべき点も存在します。自動入札に全てを任せきりにすると、予期せぬユーザーや地域、配信面への広告配信が行われる可能性があるのです。このような状況は、意図しない結果を招くことがあり、また、望む成果を得るまでに予想以上の費用や時間が必要になることもあります。
この問題への対処法として特に重要なのが、除外設定の見直しです。自動化が広告運用の主流となっている今日、この設定は以前よりもさらに大きな価値を持ちます。除外設定を適切に使用することで、広告の配信をもっとも効果的なユーザーや場所に限定し、無駄な出費を減らし、より良い結果を目指すことができます。本稿では、広告運用の効率化と最適化を図るために、特に注目すべき除外設定に焦点を当て、その重要性、活用方法、そして実践的なアプローチについて、より詳細に解説していきたいと思います。
早々に成果を上げる場合は除外設定も大切
自動入札機能がターゲティングの調整も自動で行ってくれるため、「除外設定は不要では?」と考える方もいるかもしれません。しかし、目標とする成果を早期に達成するためには、関連しないユーザーや不適切な配信面を迅速に除外することが非常に重要です。実際、初期段階でのターゲティングを狭め、費用対効果が確認できた後に広げていく戦略は、効率的な広告運用においてしばしば推奨されます。
なぜなら、一度配信を開始したものの期待する成果が得られずにターゲットを除外した場合、その後、再び広告配信を再開しターゲットを拡大することは一層難しくなるでしょう。早期に成果を出すことができれば、さらなる展開へと進むための土台を築くことができます。そのため、効果のない対象を事前に除外しておくことは、長期的な成功に繋がる戦略の一環と言えるでしょう。
ここで、リスティング広告における除外可能な項目について、検索広告とディスプレイ広告の観点から見てみましょう。これらの除外設定を理解し、適切に活用することで、広告のパフォーマンスを最大化し、無駄な広告費の支出を抑えることが可能になります。それでは、各広告タイプにおける除外項目を具体的に確認していきましょう。
広告のターゲティングと除外設定の重要性
デジタル広告の世界では、広告のターゲティングと除外設定はその成功において重要な要素です。
特に、GoogleやYahoo!のようなプラットフォームや、検索広告とディスプレイ広告のような異なる広告の種類によって、利用できる除外設定のオプションは様々です。では、まず検索広告に焦点を当て、どのような項目を除外できるのか見ていきましょう。
除外できる項目 | Yahoo! | ||
---|---|---|---|
キーワード | 〇 | 〇 | |
地域 | 〇 | 〇 | |
曜日と時間 | 〇 | 〇 | |
ユーザー属性 | 年齢 | 〇 | × |
性別 | 〇 | × | |
世帯収入 | 〇 | × | |
デバイス | 〇 | 〇 | |
アフィニティ・購買意向 | 〇 | × | |
ウェブサイトを訪れたユーザー | 〇 | 〇 |
キーワード
ビジネスの成果に直接貢献しない、または望まない検索語句への広告掲載を避けるため除外キーワードの設定が非常に役立ちます。このプロセスでは、キーワードのマッチタイプを細心の注意を払って選ぶ必要があり、この選択がターゲティングの精度を大きく左右します。除外キーワードのマッチタイプの選び方や設定方法については、多くのリソースが存在しますので、詳細な情報を得たい場合は専門の記事を参照すると良いでしょう。
地域
地域に基づいた除外設定も可能です。例えば、特定の地域にしか店舗を構えていないビジネスの場合、その商圏外での広告配信は効果が低く、結果的に予算の無駄遣いにつながる可能性があります。このような状況を避けるためには、非商圏の地域での広告配信を除外する設定を施すことが賢明です。
Google 広告での設定方法
①地域>②除外>③ペンマークまたは「地域を編集」をクリックし、キャンペーンを選択。除外したい地域を入力して「保存」をクリック。
Yahoo!広告での設定方法
①キャンペーン管理>②ターゲティング>③地域>④「地域を編集」をクリックし、キャンペーンを選択>⑤除外したい地域の「除外」を選択して「適用」をクリック。
時間と曜日
さらに、広告を配信する曜日や時間帯を指定し、それ以外の時間帯の配信を除外することもできます。この機能は、例えば店舗の営業時間帯のみ広告を配信したい場合などに非常に便利です。
Google 広告での設定方法
①「もっと見る」より広告のスケジュールをクリックして「広告のスケジュール」を選択>②ペンマークまたは「広告のスケジュールを編集」をクリック。
③キャンペーンを選択>④広告配信したい曜日と時間を設定>⑤「保存」で設定した曜日と時間以外は除外できます。
曜日は、すべての曜日・月曜日~金曜日・土曜日~日曜日・曜日ごとに、時間は15分単位で設定可能です。
※広告のスケジュールは、スマート ショッピング キャンペーンでは使用できません。
Yahoo!広告での設定方法
①キャンペーン管理>②ターゲティング>③曜日・時間帯>④曜日・時間帯を編集>⑤キャンペーンを選択>⑥「設定追加」をクリック
⑦広告配信したい曜日と時間帯を設定>⑧設定追加>⑨「適用」で設定した曜日と時間以外を除外
曜日は曜日ごとに、時間は15分単位または終日を設定できます。
ユーザー属性(性別、年齢、世帯収入)
Googleでは、性別、年齢、世帯収入といったユーザー属性を基にした除外も行うことができます。特定のターゲット市場に合わせた商品やサービスを提供している場合、該当しないユーザー属性を事前に除外することで、広告の精度を高めることが可能です。ただし、これらの属性は推定に基づくため、完全には正確ではないことを留意する必要があります。
設定方法は以下のとおりです。
Google 広告での設定方法
①ユーザー属性>②除外設定>③ペンマークまたは「年齢や性別の除外」をクリック
④キャンペーンを選択>⑤除外したい性別、年齢、世帯収入の項目を選択>⑥保存
※広告グループ単位で入札単価調整を行いたい場合は、先に左メニューで広告グループを選択します。
デバイス
デバイスに基づく除外設定も重要です。ユーザーが使用するデバイス(パソコン、モバイル、タブレット、テレビ画面)に応じて、特定のデバイスからのアクセスを除外することが可能です。BtoB関連の案件では、パソコンからのアクセスが多い傾向にあるため、その他のデバイスを除外することで、より効果的な広告キャンペーンを実施できるかもしれません。
オーディエンスの属性に基づいて、関連性が低いと考えられるターゲット群を除外することもできます。ただし、想定外のアフィニティや購買意向を持つユーザーがいる可能性があるときです。
Google 広告での設定方法
①デバイス(※メニュー内に見当たらない場合は「もっと見る」をクリック)>②除外設定したいキャンペーンのデバイスの入札単価調整比にカーソルをあてると出てくる鉛筆マークをクリック
※広告グループ単位で入札単価調整を行いたい場合は、先に左メニューで広告グループを選択します。
③デフォルト値の「引き上げ」から「引き下げ」に変更>④「100」を入力>⑤保存
Yahoo!広告での設定方法
①キャンペーン管理>②ターゲティング>③デバイス>④除外設定したいキャンペーンのデバイスの入札価格調整率をクリック>⑤デフォルト値の「引き上げ率」から「引き下げ率」に変更>⑥入札価格調整率に「100」を入力>⑦変更
アフィニティ、購買意向
デジタルマーケティング戦略において、ユーザー属性に基づく精密なターゲティングは不可欠です。このアプローチにより、特定のオーディエンス群がビジネスの収益向上に貢献しそうにない場合、それらを広告のターゲットリストから事前に除外することが可能になります。
しかし、このプロセスには柔軟性が必要です。なぜなら、当初の予想とは異なり、特定のユーザーグループが予期せぬ好意や購入意欲を示すことがあるからです。そのため、一見してターゲットから外れているように見えるオーディエンスであっても、彼らが示す可能性のあるアフィニティ(関心や好み)や購買行動を見逃さないようにすることが重要です。明確にターゲットとして不適切であると判断される場合は、早期にこれらのグループを除外することが賢明です。しかし、その関連性が完全には明らかでない場合は、実際の広告パフォーマンスやユーザーの反応を詳しく分析し、そのデータに基づいて判断を下すことが望ましいです。
このようにして、マーケティングキャンペーンを最適化し、潜在的な顧客に対してより効果的にアプローチするためには、継続的な分析と調整が不可欠です。ターゲティング戦略を柔軟に運用し、様々なオーディエンスの潜在的な価値を見極めることで、マーケティングの成果を最大化することができます。
Google 広告での設定方法
①オーディエンス>②除外設定>ペンマークまたは「オーディエンスの除外」をクリック
④設定対象のキャンペーンまたは広告グループを選択>⑤閲覧>⑥「ユーザーが積極的に調べている情報や立てている計画(購買意向強)」からオーディエンスを選択>⑦保存
ウェブサイトを訪れたユーザー
デジタル広告戦略の中で、一度あなたのウェブサイトを訪れたり、既に特定のアクション(例えば、製品購入や会員登録)を完了したユーザーをターゲティングから外すオプションは、非常に有効です。特に、目標とするアクションを既に達成したユーザーへの広告を続けて配信することは、資源の無駄遣いにつながりかねません。
例えば、あるキャンペーンが新規会員の獲得を目的としている場合、既にそのプロセスを終えているユーザーに再び同様の広告を表示するのは理想的ではありません。このような場合、ユーザーリストの活用により、これらのコンバージョンを既に達成したユーザーを広告配信の対象から除外することができるのです。これにより、広告予算をより効率的に使用し、まだアクションを起こしていない潜在的な顧客にリーチすることが可能になります。
このアプローチは、広告のリーチと効率性を最大化する上で極めて重要であり、マーケティングのリソースをより価値ある活動に集中させることを可能にします。さらに、ユーザー体験を考慮した広告戦略の一環として、ユーザーに対して関連性の高い情報のみを提供することで、ブランドの好感度を高めることにも寄与します。
Google 広告での設定方法
アフィニティ、購買意向の設定方法①~③と同じ手順を踏みます。
④除外設定したいキャンペーンまたは広告グループを選択>⑤閲覧>⑥「ユーザーがお客様のビジネスを利用した方法(リマーケティングと類似ユーザー)」からオーディエンスを選択>⑦保存
Yahoo!広告での設定方法
①「ツール」から「ターゲットリスト管理」を選択>②除外したいターゲットリストにチェック>③「関連付けの設定 」から「 広告グループに設定(除外)」または「キャンペーンに設定(除外)」を選択
④設定したい広告グループまたはキャンペーンをクリックして選択>⑤選択したキャンペーンが表示されているのを確認>⑥保存
ディスプレイ広告で除外できる項目
ディスプレイ広告では、検索広告で記載した内容に加えて下記項目が除外できます。Yahoo!広告では一部、除外できない項目もあります。
- ユーザー属性>子供の有無
- プレースメント
- トピック
- コンテンツ
除外できる項目 | Yahoo! | ||
---|---|---|---|
地域 | 〇 | 〇 | |
曜日と時間 | 〇 | 〇 | |
ユーザー属性 | 年齢 | 〇 | 〇 |
性別 | 〇 | 〇 | |
世帯収入 | 〇 | × | |
子供の有無 | 〇 | × | |
デバイス | 〇 | 〇 | |
アフィニティ・購買意向 | 〇 | 〇 | |
ウェブサイトを訪れたユーザー | 〇 | 〇 | |
プレースメント | 〇 | 〇 | |
トピック | 〇 | × | |
コンテンツ | 〇 | × |
ディスプレイ広告の運用では、検索広告における基本的な除外設定を踏襲しつつ、それに加えてさらに細分化されたオプションが提供されています。
それでは各項目について確認していきましょう。
ユーザー属性>子供の有無
Googleディスプレイ広告では、検索広告での除外オプションに加え、ユーザー属性の「子供の有無」などの更なる細かいカテゴリーに対する設定が可能です。Yahoo!広告では、このような詳細な設定に一部制限がある場合もありますので、プラットフォームごとの仕様を確認することが重要です。
「子供の有無」というユーザー属性を考慮することで、ターゲティングの精度を向上させることができます。ただし、このような属性情報は推測に基づくものであるため、過度に依存することなく、適切な時点での検証と調整が推奨されます。
Google 広告での設定方法
①ユーザー属性>②除外設定>③ペンマークまたは「年齢や性別の除外」をクリック
④キャンペーンを選択>⑤子供の有無を選択>⑥保存
※広告グループ単位で入札単価調整を行いたい場合は、先に左メニューで広告グループを選択します。
プレースメント
ディスプレイ広告では、特定のプレースメントやトピック、さらには特定のコンテンツタイプに対しても除外設定を施すことが可能です。例えば、費用対効果が低いと判断される特定のウェブサイトやアプリ、またはブランドイメージに合わないトピックやコンテンツを含む配信枠を避けるために、これらの設定を活用することができます。ここで注意すべき点は、除外を行うプレースメントが多すぎると、広告のリーチが制限される可能性があるため、プレースメントレポートを参考にしながら慎重に選定することが望ましいです。
Google 広告で特定のURLを除外する方法
①プレースメント>②除外設定>③ペンマークをクリックで表示されたプルダウンから「プレースメントを除外」を選択
④プレースメントの除外リストを追加する>⑤除外設定したいアカウントまたはキャンペーン、広告グループを選択>⑥「複数のプレースメントを入力」から個々のURLを入力して、「プレースメントを追加」をクリックして選択>⑦保存
Google 広告でアプリ面を除外する方法
Google 広告で特定のURLを除外する方法の①~③の手順を踏みます。
④プレースメントの除外リストを追加する>⑤除外設定したいアカウントまたはキャンペーン、広告グループを選択>⑥「アプリのカテゴリ」より、Apple App Store、Google Play、Windows Phone Appsを全て選択>⑦保存
個別にカテゴリを選択して除外することや、[アプリ]から特定のアプリを除外することも可能です。
Yahoo!広告で特定のURLを除外する方法
①プレースメント>②「編集」をクリック
③設定対象の広告グループを選択>④プレイスメントリスト(※事前に作成が必要)を指定して配信>⑤除外したいリストを選択>⑥「除外」を選択>⑦設定
Yahoo!広告でアプリ面を除外する方法
管理画面の左メニューより広告グループを選択後、「広告グループ設定」をクリックします。次に「編集」をクリックして、以下の画面を開きます。
①デバイスを指定して配信>②「アプリ」のチェックを外す>③「保存」をクリック
トピック
Googleディスプレイ広告の機能には、広告主が自分の広告を表示したくない特定のトピックを持つウェブページを選択的に除外するオプションが含まれています。この柔軟性は、自動車や音楽といった具体的なカテゴリーに関連するコンテンツを対象とすることができるため、マーケティング戦略を細かく調整することを可能にします。更に、広告キャンペーンが広範囲にわたるトピックをカバーしている場合でも、特定のサブトピックを除外指定することで、より関連性の高いオーディエンスへのアプローチを実現できます。
このように、Googleディスプレイ広告は、広告主に対して広告の表示場所を精密にコントロールする能力を提供します。この制御機能により、特定の業界や関心事に関連しないページでの広告表示を防ぎながら、希望するターゲットオーディエンスに対する広告の効果を最大化することが可能となります。結果として、広告支出の効率化とROIの向上が期待できるのです。
①トピック>②除外設定>③ペンマークまたは「トピックの除外」をクリック
④除外設定したいキャンペーンまたは広告グループを選択>⑤トピックを任意で選択>⑥保存
上記の例では、同じ「おもちゃ」でも商品の種類によっては関心をもってもらえなさそうな配信先となるトピックの除外が考えられます。
コンテンツ
Googleディスプレイ広告の高度な設定には、広告主が自身の広告が表示されるべきではないと判断したコンテンツやウェブサイトを避けるための除外オプションが備わっています。この機能を利用することで、不快感を与える可能性のある「冒とく的な言葉遣いや乱暴な行為」を特徴とするコンテンツ、または所有者によっては放置されているが、実際には活用されていないドメインパーキングサイトから広告を遠ざけることが可能になります。このようなサイトは、しばしばブランドイメージを損なう可能性があり、また広告キャンペーンの目的を達成するのに適していない場合があります。
広告主にとって、自社の広告がどのような環境で表示されるかは極めて重要です。不適切なコンテンツや関連性の低いウェブサイトでの広告表示は、ブランドの評判に悪影響を及ぼす可能性があります。Googleディスプレイ広告の除外機能を活用することで、ブランド価値を守りながら、広告投資のリターンを最大化するための環境を整えることができます。事前にこれらの不適切な配信枠を除外設定によってフィルタリングすることは、広告戦略の成功にとって重要なステップとなります。
なお、ファインドキャンペーンと動画キャンペーンは除外の対象外です。
①除外設定したいキャンペーンを選択のうえ「設定」をクリック>②「その他の設定」をクリック
③「コンテンツの除外」をクリックして開いた画面で除外するコンテンツを選択>保存
※「アカウント設定」 でも設定可能ですが、キャンペーン設定とは除外できる項目が異なります。
まとめ
デジタル広告の世界では、自動入札のような自動化技術が運用の基盤を形成しています。これらの技術は、マーケティング活動を効率化し、作業の自動化を通じて貴重な時間とリソースを節約することを可能にします。しかし、効率的な運用だけではなく、限られた予算と時間内で目に見える成果を急速に達成するためには、ビジネスとの相性が悪い要素を識別し、適切な除外設定を施すことが同様に重要です。
この自動化技術が一般的となった現在、マーケティング担当者は、目指すべき顧客層をより正確に定義し、不要な要素を排除することで、広告のパフォーマンスをさらに向上させるチャンスを持っています。除外機能の効果的な使用は、広告のリーチを最適化し、投資の回収率を高めるために不可欠です。つまり、自動化技術の恩恵を受けつつも、その精度を高め、広告戦略の成果を最大限に引き出すためには、ターゲットとなるオーディエンスを精緻に選定し、不適切なターゲットを事前に除外することが肝心です。