近年、EC(電子商取引)がビジネスの世界で目覚ましい成長を遂げているという話はよく耳にします。このEC市場をどのように活用し、オンライン上で消費者にリーチし、最終的には購買行動を促すかについて、日々、頭を使い手を動かしていることが多いかと思います。
しかし、興味深いことに、日本におけるBtoC(企業から消費者へ)製品のEC売上の割合についてご存じでしょうか?驚くべきことに、一部の調査ではわずか6.22%と報告されています。これは、依然として90%以上の売上がオフラインで発生していることを意味しています。
この事実は、EC市場の成長が目覚ましい一方で、依然としてオフライン店舗が主役であるビジネスが多いという現実を示しています。中には、実店舗への誘導に資金を投じることで、さらなる成長が期待できるビジネスもあるかもしれません。
では、実店舗へのフットトラフィックを増やすためには、伝統的な折込チラシも一つの手段ですが、実は私たちマーケティング専門家が得意とするオンライン広告も、店舗への誘導に非常に効果的な手段となり得るのです。
この記事では、オンライン広告を利用して店舗への誘導を図る際に重要な来店コンバージョンの計測方法と、特に来店促進に有効な広告手法を提供しているGoogle広告の機能について深く掘り下げていきます。
来店コンバージョンという用語は重要な概念となっています。
来店コンバージョン”という用語は、デジタルマーケティングの世界で非常に重要な概念となっています。
「来店コンバージョン」とは、オンライン広告、例えばクリックや閲覧、小売店、飲食店、自動車販売店などの実店舗への来店に影響を与えているかを測定する手段です。この測定方法の最大の利点は、オンライン上でユーザーの購買行動が完結しないビジネスモデルにおいても、広告の効果を具体的に捉え、より正確にキャッシュポイントへの影響を評価できる点にあります。
特に、オンライン広告の効果を実店舗の来店率に結び付けることで、広告費の投資対効果(ROI)をより明確に把握することが可能になります。これにより、広告キャンペーンの戦略策定や運用において、よりデータに基づいた意思決定が行えるようになるのです。このような分析は、オンラインとオフラインの販売チャンネルを統合的に考える現代のビジネス環境において、ますます重要性を増しています。来店コンバージョンの分析によって、マーケターは消費者の行動パターンをより深く理解し、最適化された広告戦略を展開することが可能となるのです。
来店コンバージョン追跡機能は画期的な進歩を表しています。
Google広告の来店コンバージョン追跡機能は、デジタル広告の分野で画期的な進歩を表しています。
このシステムは、匿名で収集されたデータを基にして、来店コンバージョンを「推定」しています。この「推定」のプロセスには、主に二つの重要な理由があります。
- 個人のプライバシー保護のため
- 取得できないデータを補うため
さらに、このシステムは、GPSシグナルに加えてWi-Fiからのシグナルも利用する三角測量によって位置情報を計測しています。これにより、例えば「渋谷パルコ6Fのポケモンセンター」のような特定の場所にユーザーが滞在したかどうかを、非常に高い精度で判断することが可能になります。
この技術により、広告主は自分の広告が実際にどの程度の来店を促しているかをより正確に把握することができ、その結果をもとに広告戦略を洗練させることが可能になります。これは、特に実店舗の売上を大きく依存しているビジネスにとって、非常に価値のある洞察と言えるでしょう。
来店コンバージョン計測機能は重要なツールの一つです。
Google 広告の来店コンバージョン計測機能は、デジタルマーケティングにおいて重要なツールの一つです。
この機能を活用するためにはいくつかの要件を満たす必要があります。ここで、その要件について詳しく見ていきましょう。
GoogleマイビジネスとGoogle広告アカウントの連携
実店舗の集客を考える上で、Googleマイビジネスの設定は非常に重要です。これは、来店コンバージョン計測を行うかどうかにかかわらず、基本となるステップです。そして、これをさらにGoogle広告アカウントと連携させることが必須となります。
来店コンバージョン計測のためにGoogleマイビジネスでクリアすべき条件は下記になります。
- 対象国内に複数の実店舗がある。(利用できるかはGoogleの窓口へ確認が必要)
- Google マイビジネス アカウントに各店舗のビジネス情報を作成している。
- リンクされたビジネス情報の 90% 以上について Google マイビジネスでオーナー確認が済んでいる
十分量のクリックやインプレッション
来店コンバージョン計測を行うためには、ロケーション履歴をオンにしているデバイスのデータを基に計算されるため、統計的に信頼できるデータ量が必要です。これは、実際の来店数ではなく、統計処理による推計値となります。プライバシー保護の観点からも、個々の来店に紐づく個人を特定できないようなデータ処理が行われていることに注意が必要です。
住所表示オプションの有効化
広告に会社や店舗の住所、地図、または距離を表示するための住所表示オプションを設定することも重要です。これにより、広告がより具体的で役立つ情報を提供できるようになります。
これらの要件を満たすことで、Google広告の来店コンバージョン計測機能を最大限に活用し、効果的なマーケティング戦略を実行することが可能になります。これらのツールを適切に活用することで、実店舗への集客を大幅に向上させることが可能です。
来店コンバージョン計測機能は様々な形式にわたって計測可能
Google広告の来店コンバージョン計測機能は様々な広告形式にわたって計測可能
これには検索広告、ショッピング広告、ディスプレイ広告、そして動画広告が含まれます。
検索広告:
広告をクリックしたユーザーが来店コンバージョンの計測対象となります。ユーザーが広告をクリックし、その後実店舗を訪れた場合、これが来店コンバージョンとして計上されます。
ディスプレイ広告:
クリックに加えて、ビュースルーコンバージョンも考慮されます。これは、広告が画面内に50%以上1秒以上表示された場合のインプレッション(視認)が対象となります。このビュースルーコンバージョンは、ユーザーが広告を直接クリックしなくても、広告の表示を通じて後に店舗を訪れた場合に計上されます。
動画広告:
対象動画広告を「視聴」したユーザーが計測の対象となり、下記のいずれか満たすことで「視聴」したと定義されます。
- 30秒以上動画を再生(30秒以上の動画)
- 動画を再生完了(30秒以下の動画)
- 動画をクリック
これらの様々な広告形式を通じて、来店コンバージョンを計測することにより、広告主はより多角的に自社のマーケティング戦略の影響を評価することができます。広告の種類ごとに異なるユーザーの行動パターンを理解することで、より効果的な広告キャンペーンを計画し、実施することが可能になるのです。
来店コンバージョンを利用できるGoogle 広告の配信手法
Google 広告には来店コンバージョンへの最適化に適した広告配信手法が豊富にあります。各手法を実施する際の要件と特徴についてまとめてみましょう。
ローカル検索広告
画像引用元:ローカル検索広告について – Google 広告 ヘルプ
広告掲載先 | Google検索ネットワークGoogleマップ |
配信アセット | 通常の検索連動型広告+住所表示オプション |
入札 | 手動入札・自動入札 |
ポイント | 来店意欲の高いユーザーのマイクロモーメントを捉えることが可能来店数だけでなく、問い合わせ電話数も最適化対象に含められる |
ローカル検索広告は、現代のデジタルマーケティング戦略において非常に効果的なツールです。この広告手法の最大の特徴は、Googleマップが掲載面に組み込まれている点にあります。この統合により、特定の地域や場所に関連する検索を行っているユーザーに対して、まさに最適なタイミングでダイレクトにアプローチすることが可能となります。
例えば、あなたが新宿でラーメン店を経営しているとしましょう。目標とするお客さんがGoogleマップで「新宿 ラーメン」というキーワードで検索している際に、検索結果の最上部にあなたのラーメン店が表示されたら、どれほどの価値があるでしょうか。このような戦略的な広告配置により、来店意欲の高いユーザーを効果的に捉え、店舗へ導くことができるのです。
さらに、ローカル検索広告を最大限に活用するための具体的な設定方法や注意点については、アナグラムブログなどの専門的なリソースが大いに役立ちます。これらの情報源を参考にすることで、ビジネスオーナーやマーケターは、地域密着型の広告戦略をより効率的かつ効果的に展開することが可能です。地元の顧客に直接アプローチし、自店舗への関心を高めるために、ローカル検索広告は非常に有効な手段となるでしょう。
ディスプレイロケーション広告
広告掲載先 | Google ディスプレイネットワーク |
配信アセット | 通常のバナー広告orレスポンシブディスプレイ広告+住所表示オプション |
入札 | 手動入札・自動入札 |
ポイント | セール情報などとセットでビジュアルによる訴求することで潜在層への来店促進が可能 |
ディスプレイロケーション広告は、デジタルマーケティングの領域において革新的なアプローチを提供します。この広告形式は、基本的にはローカル検索広告のディスプレイ広告版と考えることができます。ディスプレイ広告の強みは、その視覚的魅力と広範囲な配信能力にあり、これに住所表示オプションを組み合わせることで、潜在的な顧客層へのリーチが大きく向上します。
ディスプレイロケーション広告の効果を最大化するには、配信面の選択、訴求の仕方、ターゲティング、プレースメントの工夫などが鍵となります。これらの要素を適切に組み合わせることで、ビジネスオーナーやマーケターは、自店舗への関心を高め、訪問を促すことが可能になります。
ただし、この広告形式にはいくつか注意すべき点があります。一つは、目標なしのキャンペーンでしか作成できないという制限があることです。これは、広告戦略を計画する際に特に留意する必要があります。もう一つの重要な点は、2020年3月の時点で、限定されたアカウントでのみこの広告形式の作成が可能であるということです。この制限は、ディスプレイロケーション広告を活用する際に考慮すべき重要な要因です。
これらの特徴と制限を理解し、戦略的に活用することで、ディスプレイロケーション広告は地域密着型のビジネス戦略において大きな効果をもたらす可能性を秘めています。ビジュアルと地域情報の組み合わせにより、ターゲットとなる顧客に対して直接的かつ効果的なアプローチが可能となるのです。
ローカルキャンペーン
▼Google 検索ネットワーク
画像引用元:ローカル キャンペーンについて – Google 広告 ヘルプ
▼Google マップ
画像引用元:ローカル キャンペーンについて – Google 広告 ヘルプ
▼YouTube
画像引用元:ローカル キャンペーンについて – Google 広告 ヘルプ
▼Google ディスプレイ ネットワーク
画像引用元:ローカル キャンペーンについて – Google 広告 ヘルプ
広告掲載先 | GoogleマップGoogle検索ネットワークYouTubeGoogleディスプレイネットワーク |
配信アセット | 広告見出し(必須)説明文(必須)行動を促すフレーズ(必須)最終ページURL(必須)1:1の画像・1.91:1の画像・1:1のロゴ(各1枚以上・計20枚以下)動画(必須・10秒以上。要YouTubeにアップロード) |
入札 | 自動入札のみ |
ローカル在庫との連携 | 可能(別途マーチャントセンターと連携の必要あり) |
ポイント | 多店舗展開をするチェーンや多くのリテールに卸しているメーカー向けのメニュー |
ローカルキャンペーンは、Google広告の最先端を行くマーケティングツールです。このキャンペーンは、ローカル検索広告とディスプレイロケーション広告を組み合わせ、さらにYouTube動画広告も加えたもので、入札は自動入札に限定されています。2020年3月の時点では、特定の広告主に限られたメニューとなっています。
「Think with Google」に掲載されているサイクルベースあさひの事例を見ると、ローカルキャンペーンによる来店CPA(コストパーアクション)は106.6円、来店コンバージョン率(クリック数に対する来店数の割合)は21.2%という驚くべき結果が示されています。
上記実績は率直に言って衝撃的に良い数値です。確かに、ローカルキャンペーンを実施するためには複数の広告素材の準備が必要であり、多店舗展開しているビジネスに適しているなど、導入のハードルは高いものの、店舗への来店を促進することが目的であれば、最適な選択肢と言えるでしょう。
このように、ローカルキャンペーンは、特に実店舗のトラフィックを増加させたいビジネスオーナーやマーケターにとって、強力なマーケティングツールです。自動入札のシステムを活用することで、広告の効率性と効果を最大化し、限られた予算内で最大限の成果を目指すことができます。さらに、複数のプラットフォームを組み合わせることで、様々な顧客層にアプローチし、異なるタイプの広告を通じて多角的に来店を促すことが可能になります。
特に、YouTube動画広告を組み込むことで、視覚的魅力を活かした訴求が可能となり、ブランドの認知度向上や顧客の興味を引くことができます。これにより、ローカルキャンペーンは、店舗へのフットトラフィックを増加させるだけでなく、ブランドの価値を高める効果も期待できます。
ただし、導入のハードルが高いという点も理解し、戦略的な計画と十分な準備を行うことが成功の鍵です。多店舗展開しているビジネスにとっては、ローカルキャンペーンは有効な戦略の一つとなるでしょう。来店を促進したいと考える際に、ローカルキャンペーンは有力なオプションとして検討する価値があると言えます。
ローカル在庫広告
画像引用元:ローカル キャンペーンについて – Google 広告 ヘルプ
広告掲載先 | Googleショッピング広告枠 |
配信アセット | データフィード(Googleマーチャントセンターとの連携) |
入札 | 手動入札・自動入札 |
ポイント | 特定の商品に関する検索行動を起こしているユーザーに対して近隣の実店舗の在庫状況を知らせることができる |
Googleのショッピング広告を活用することで、ユーザーの現在地や検索語句に応じて、実店舗の在庫状況を直接広告枠に表示することが可能です。この機能は、オンラインでの検索から実店舗での購入というユーザーの行動パターンを促進する上で、非常に有効な戦略となります。
「検索→実店舗への来店→実店舗での購入」という顧客の旅路をサポートするためには、来店を検討しているユーザーに対して、彼らが探している商品が店舗に在庫として存在するかどうかを事前に知らせることが重要です。これにより、顧客は自分が求める商品が店舗にあるという確信を持って訪れることができ、結果として購入へとつながる可能性が高まります。
ただし、このような広告を実施するためには、実店舗の在庫情報をGoogleマーチャントセンターと連携させる必要があります。これは、導入のハードルが高いと言えるでしょう。特に家具や家電など、消費者が商品を直接手に取ってみたいと思うような商品を扱うビジネスにとっては、この機能を導入する価値が特に高いと言えます。
消費者が実店舗で商品を体験し、それが購入の決め手となるようなビジネスモデルでは、実店舗在庫情報の表示は顧客の信頼を得るための重要な要素となります。顧客は、実際に店舗を訪れる前に、オンラインで必要な商品が利用可能かどうかを知ることができます。これにより、無駄な来店を防ぎ、顧客満足度を向上させることが可能になります。
このように、ショッピング広告での実店舗在庫の表示は、オンラインとオフラインのショッピング体験をスムーズに統合することを可能にし、最終的には店舗へのフットトラフィックと売上の向上に寄与します。しかし、このシステムの導入には、在庫情報の正確性とリアルタイム性の保持、そしてGoogleマーチャントセンターとの連携という技術的な要件が伴います。そのため、この機能の導入と運用には、ある程度のリソースと専門知識が必要です。
ローカルカタログ広告
画像引用元:ローカル カタログ広告について – Google 広告 ヘルプ
広告掲載先 | Googleディスプレイネットワーク |
配信アセット | データフィード(Googleマーチャントセンターとの連携) |
入札 | 手動入札・自動入札 |
ポイント | 店舗在庫のカタログをディスプレイ広告面で配信できる |
ローカル在庫広告を利用することで、ディスプレイ広告の配信面を商品カタログのように活用することが可能です。この手法では、データフィードを駆使して、リアルタイムで店舗の在庫状況を表示し、消費者に最新の情報を提供します。このような広告は、オンラインチラシとしての役割を果たし、消費者がいつでも現在の在庫状況を確認できるようになります。
このアプローチは、従来の紙の新聞折込チラシをデジタル化し、進化させたものと考えることができます。オンライン上で提供されるこのチラシは、常に最新の情報を反映し、広告の対象となる商品の詳細を直感的に伝えることができます。消費者は、自宅に届く紙のチラシをめくる代わりに、オンラインで簡単に最新の商品情報を得ることが可能になります。
賢明な投資判断を下すことが重要
広告キャンペーンを開始する際に賢明な投資判断を下すことが重要
来店を促進するタイプの広告がうまく機能しそうなビジネスを運営している場合、このアプローチは魅力的に思えるかもしれません。しかし、広告に予算を投じる際は、ただ単に始めるだけではなく、その施策の潜在的な成果を事前に分析し、賢明な投資判断を下すことが重要です。
投資判断の一環として、来店コンバージョンあたりの単価の上限(上限来店CPA)の計算を行うことが推奨されます。この上限来店CPAを算出するには、以下のような式を用います。
上限来店CPA=平均購入単価×購入率×売上総利益率
※購入率=購入者数÷来店者数
もちろん、平均購入単価や購入率は時期により大きく変動するパラメータです。たとえばセール期間中などは購入率が上がりそう、などは容易に想像できます。そのため「来店促進施策を打つタイミングでの予測値」をクライアントと入念にすり合わせることが重要になってきます。
まとめ
Google広告の来店コンバージョン計測機能は、実はかなりの歴史を持っており、日本では2015年10月から利用可能になっています。
この機能はまだ十分に活用されていないという印象です。この背景には、一つの考え方が影響している可能性があります。
それは、「Web広告はオンラインで完結するもの」という思い込みです。Web広告を使ってオフラインの行動を促し、さらにその効果を測定するというアプローチは、多くのマーケターにとってはまだ新しい発想だと言えるでしょう。
この記事で紹介した来店コンバージョンの最適化配信メニューを、皆さんのマーケティングツールボックスに加えることをお勧めします。そして、適切なクライアントと適切なタイミングでこの機能を活用することで、広告のポテンシャルを最大限に引き出していただければと思います。
特に、オフラインの店舗を持つビジネスにおいて、来店コンバージョン計測機能は大きな価値を提供します。この機能を活用することで、Web広告から実店舗への来店を促進し、オンラインとオフラインのマーケティング戦略を統合することが可能になります。その結果、広告のROIを明確にし、より戦略的な広告運用が行えるようになるでしょう。