多くの人々は検索広告(リスティング広告)を利用し、ユーザーに最適なタイトルや詳細文を選ぶことに苦労しています。
このような場合、役立つのが「レスポンシブ検索広告(RSA:Responsive Search Ads)」です。レスポンシブ検索広告は複数の広告ヘッダーや詳細文を提供し、機械学習が最適な組み合わせを自動的に選択して広告を表示します。
これにより、広告のユーザーへの適合性が向上し、キャンペーンの成果も向上するでしょう。
レスポンシブ検索広告のメリットはテストが簡単で、広告露出が増えることですが、注意が必要です。この記事では、レスポンシブ検索広告の概要、利点と欠点、適切な使用方法について詳しく説明します。
レスポンシブ検索広告の詳細
レスポンシブ検索広告(RSA:Responsive Search Ads)は、リスティング広告の一種です。
広告の見出しや説明を複数入力し、AIが最適な組み合わせを自動テストし、成果を最大化します。
レスポンシブ検索広告ではユーザーに対して関連性の高いメッセージを多彩なテキストで表示可能です。広告作成時に複数の見出しと説明を入力し、Google広告が自動的にテストして最適な組み合わせを選択します。
これにより、広告の内容が検索クエリと関連性を持ち、キャンペーンの成果向上が期待できます。
レスポンシブ検索広告と拡張テキスト広告
項目 | 拡張テキスト広告 | レスポンシブ検索広告 |
---|---|---|
広告のタイプ | テキスト広告 | テキスト広告 |
タイトル | 固定のタイトル(最大3行) | タイトルのバリエーションを設定 |
説明文 | 固定の説明文(最大2行) | 複数の説明文のバリエーションを設定 |
パス1 / パス2 | ドメインの一部を設定 | ドメインの一部を設定 |
カスタムパラメータ | URL パラメータのカスタマイズ | URL パラメータのカスタマイズ |
キーワード選択 | キーワードの手動設定が必要 | キーワードの自動選択 |
デバイス指定 | デバイス別の広告作成が必要 | デバイスに合わせた自動調整 |
トラッキング対応 | カスタムトラッキング対応が必要 | 自動的にトラッキング情報生成 |
テストと最適化 | A/B テストでの最適化が一般的 | 自動的に最適化 |
「拡張テキスト広告」と「レスポンシブ検索広告」はしばしば比較される2つの広告配信タイプです。
拡張テキスト広告とは、広告の見出しや説明文を動的に組み合わせるレスポンシブ検索広告と対照的に、事前に設定された固定の見出しや説明文をそのまま配信するスタイルの広告方法となります。
※2022年6月30日をもって、拡張テキスト広告の新規作成や修正は終了しています。
レスポンシブ検索広告、3つのメリット
1. 各デバイスに適した視覚体験が提供される
レスポンシブ検索広告は、さまざまなデバイス(スマートフォン、タブレット、デスクトップ)に適した広告の表示を自動的に最適化します。
ユーザーがどのデバイスを使用しているかに関係なく、最適な広告体験を提供し、ユーザーエンゲージメントを向上させます。
2. 関連性のある見出しと説明文が自動的にコンビネーションされる
レスポンシブ検索広告を使用すると、最大で15個の広告見出しと、最大4個の広告文が設定可能です。
これらの設定済みの広告見出しと広告文から、検索クエリと最もマッチする組み合わせが自動的にシステムによって選定され、広告が配信されます。
従来の拡張テキスト広告(テキスト広告)を用いる場合、各広告の「見出し」と「説明文」を個別に設計し、複数の広告の効果を検証する作業が必要でした。
しかしレスポンシブ検索広告の導入により、このプロセスを効率的に自動化できるため、運用担当者の作業負担が軽減され、より効果的な結果を期待できます。
3. オークションへの参加回数が増加する
広告のランキングを向上させ、競り合いに参加する機会を増やすには、関連性の高い見出しと説明文を選びましょう。
広告のランキングは、次の要素から成り立っています。
- 上限クリック単価
- 広告の品質
- 広告表示オプション
- 広告フォーマット
このランキングは、広告が検索結果ページでどの位置に表示されるかに影響します。
特に、広告の関連性は重要な評価基準で、ユーザーの求める情報と広告内容の一致度を示します。レスポンシブ検索広告を使用することで、広告の関連性が向上し、広告のランキングが向上します。
その結果、広告の表示頻度が増加し、これまでの拡張テキスト広告では得られなかったクリックやコンバージョンの機会が増えます。
レスポンシブ検索広告の欠点と注意事項
1. 予期せぬ広告文が現れる可能性
レスポンシブ検索広告は、自動的に広告の組み合わせを生成するため、思いがけないメッセージがユーザーに届く可能性があります。Googleのオフィシャルページでの注意点は以下の通りです。
アセット(広告見出しや説明文)は、順序がランダムに表示されるため、それぞれのアセットが単独でも組み合わせても意味を持つようにし、Google広告のポリシーや地域の法律に違反しないように注意してください。
自動的なテストが行われるため、どの組み合わせが生成されるかを予測し、適切なメッセージが伝わる設計が重要です。同じ意味のコピーや言葉を重複して設定しないようにし、似たような広告文が続けて表示されることを避けましょう。
特定のコピーを確実に表示したい場合は、「ピン留め(固定表示)」のオプションがあります。ただし、ピン留めを使用すると、テスト可能なアセットのバリエーションが制限され、レスポンシブ検索広告の強みを活かしきれない場合があります。固定された広告見出しや説明文は特定の位置にのみ表示され、他のアセットは表示されなくなります。このため、通常は固定表示は推奨されません。
2. 表示回数以外のパフォーマンス指標の取得制限
レスポンシブ検索広告を使用する場合、確認可能な成果指標は表示回数(imp数)のみで、アセット単位やその組み合わせのクリック率やCVRのデータを収集することはできません。
このため、どの組み合わせが最も効果的だったのかを明確に判断するのは難しいという欠点があります。
この問題を解決するために、高い表示回数を記録した組み合わせが検索クエリと関連性が高い可能性があると仮定し、テキスト広告に同じ内容の文言を設定してその効果を検証するアプローチが考えられます。
レスポンシブ検索広告の投稿手順
レスポンシブ検索広告の投稿手順は以下の通りです。
1.ダッシュボードで「広告と広告表示オプション」をクリックします。
2.その中から「レスポンシブ検索広告」を選択します。
3.広告をカスタマイズするため、最終ページのURLと表示URLのパスのテキストを入力します。
4.広告を効果的に表示するため、最低でも3つの異なる広告見出しを入力します(最大で15個まで追加できます)。
5.ユーザーにアピールするため、最低でも2つの異なる説明文を入力します(最大で4つまで追加できます)。
6.入力が完了したら、「保存」ボタンをクリックして広告を投稿します。
最大限の効果を引き出すレスポンシブ検索広告の運用のコツ4点
レスポンシブ検索広告を設定する際に、明確な意図がないと、期待する成果が得られない場合が頻繁にあります。このセクションでは、レスポンシブ検索広告を効果的に活用するための重要な4つのポイントをご紹介します。
1.見出し・説明文のバリエーションを豊富に設ける
同じ意味の見出しや説明文は極力少なくし、アセットは多様なものにしましょう。
商品やサービスの特長、訴求ポイント、価格、キャンペーン、地域、年齢といった多角的な視点から、ユーザーに響くアセットを作ることが重要です。
さらに、レスポンシブ検索広告はユーザーのデバイスに応じて配信を最適化します。
各デバイスに適した広告表示を実現するため、見出し・タイトルのテキスト量にも多様性を持たせることが推奨されます。
2.独特な広告見出しを5つ以上指定する
似たような言葉を繰り返さず、5つ以上の異なる広告見出しを使いましょう。
独自かつ多様な広告見出しを設定することが大切です。広告見出しを多く持つことで、Google 広告は関連性の高い広告メッセージを提供する際に選択肢が増え、広告のパフォーマンス向上に寄与します。
3.広告グループごとに1つのレスポンシブ検索広告を設定する
一つの広告グループに多くのレスポンシブ検索広告を設定すると、効果分析に時間がかかるというデメリットが生じます。
これが原因で、最適化が遅れる、予算が分散してしまうなど、レスポンシブ検索広告の利点が弱まることがあります。
Google広告では、一つの広告グループに設定できるレスポンシブ検索広告は最大3個までと規定されています。これは、検索クエリと広告の関連性を保ち、効果的な運用を支援するための措置です。
4.評価を見誤らない
広告文の効果測定と言えば、「広告文ごとのCTRを比較する」ABテストが一般的です。
しかし、レスポンシブ広告の場合、キーワードの配置やマッチタイプにより、オークションの機会が増え、同じグループ内でさえも異なる検索語句で表示される確率が高くなります。
そこで、比較を行う際は広告単位ではなく、レスポンシブ広告を導入後のグループ全体のパフォーマンス変化に焦点を当てて評価することが重要です。
具体的には以下のようなポイントに注目してください
- レスポンシブ広告の導入後、インプレッションが増加したか?
- レスポンシブ広告の導入後、検索語句の数は増加したか?
- レスポンシブ広告の導入後、検索語句ごとのCTRの変動はどうだったか?
【現場で起こったメモ】タイトルのピン留めは危険
広告の効果を上げる考え方は上記でお伝えした通りですが、ではここで現場の具体例をお伝えします。
実際に広告を運用していると「広告のタイトルを順番に並べたい」という要望があります。
例えば
「期間限定」
「50%オフキャンペーン」
「申込受付中」
という広告タイトルを「ピン留め」という機能で順番に並べることができます。
「期間限定」 →ピン1
「50%オフキャンペーン」→ピン2
「申込受付中」 →ピン3
と設定することによって、検索結果には
期間限定 | 50%オフキャンペーン | 申込受付中
という表示で固定することができます。
ユーザー視点で見ると、期間限定であることがまずわかり、割引率がわかり、申込を受け付けていることがわかるので、情報の順番としては正しいことがわかります。
ところが!
このピン留めという機能が、Google広告の表示回数に影響を及ぼすことに注意しましょう。
Googleが自由に設定することができなくなるため、広告の表示回数と広告スコアに影響が出てしまいます。
ピン留めがよろしくないGoogle側の理由としては以下の内容が挙げられます。
1.ユーザーエクスペリエンス
ピン留めされた広告は、コンテンツと統合されず、ユーザーエクスペリエンスを妨げることがあります。
特に、ユーザーが情報を探している場合、ピン留めされた広告によって有用な情報にアクセスしにくくなることがあります。
2.広告効果の向上
ピン留めされた広告は、一部のユーザーには目立つかもしれませんが、他のユーザーには無視されることがあります。
3.広告の信頼性
ピン留めされた広告は、広告主によって自分の都合で表示されることが多いため、ユーザーによっては広告を信頼しづらいと感じることがあります。
4.Ad Blockerの回避
ピン留めされた広告は、Ad Blockerを使用するユーザーによって非表示にされることがあります。
一方、自然な形で表示される広告は、Ad Blockerを回避しやすいため、より多くのユーザーに広告が届く可能性が高まります。
以上がGoogle側でピン留めを推奨しない理由です。
もちろん広告のピン留めが良い場合もあります。
どうしても強調しなければならない内容がある場合は、1番目にピン留めすることで効果が上がるケースもあります。
ただし上記の理由から「基本的には」ピン留め機能は使わないものと認識しておくと良いかと思います。
ここは順番を決めたい衝動をこらえて、百戦錬磨のGoogle任せにしてみましょう。
学習機能がうまく働き、結果としてコンバージョンの増加につながることになります。
成果が伸び悩んだ際の再点検ポイント
ここまでで、レスポンシブ検索広告の実践的な利用方法を詳しくご紹介しました。
個別性を打ち出した広告見出しを設計することは、レスポンシブ検索広告を効果的に運用し、実績を上げるうえで、極めて重要な要素です。
とはいえ基本の部分である、ターゲットの深い理解や市場ニーズの把握なしに、持続的な成功を実現するのは一筋縄ではいきません。
広告の真の目的は、自社の商品・サービスを積極的に、あるいは潜在的に求めているユーザーへと適切な形で訴求し、彼らの興味・関心を引き上げ、最終的に購入・応募に至らせることなのです。
運用の微調整を施すことで、成果を一層高めることはもちろん大事です。しかし、それより先に「誰へ(Whom)」「何を(What)」「どう伝える(How)」のか、明確にしておくことが不可欠です。
この時点で念頭に置いておくべきなのが、「5W3H」と称される広告プランニングの根本的なフレームワークです。
【5W3Hの思考】
- When(いつ配信するか)
- Where(どこで配信するか)
- Whom(誰に広告を届けるのか)
- What(何を提示し、どへ誘導するのか)
- Why(何の目的で広告を流すのか)
- How much(どれだけの予算で広告を実施するか)
- How many(一人のユーザーに、何度配信するか)
- How(最適化と検証は適切に行われているか)
現在の広告が「誰のためのものであるのか」「いつ配信すべきなのか」「何を強調すべきなのか」といった基本が明瞭に設計されているでしょうか?
特に、社内で広告運用を担当する場合、運用の最適化にばかり焦るあまり、ターゲット設定や配信タイミングといった戦略の核心を見失ってしまうことがしばしばあります。
行き詰まったときは、すぐさまの運用の改良という視点を一度解放し、5W3Hを再考し、それを具体的な行動計画に変換するビジョンを形成することが重要です。また、運用の専門家が社内に不在の場合、サポート型のコンサルティングも視野に入れて進めるべきでしょう。
効果を最大化する広告運用の枠組み作り
近年、運用型広告の組織をインハウス化する動きが企業間で増えています。
インハウス化によるコスト削減や、自社の広告運用能力と施策のスピードの向上は期待できますが、インハウス化だけが唯一の解決策であるわけではないと弊社は考えます。
そこで、各企業にフィットした運用方法を選択するための、代理店利用とインハウス化それぞれの長所と要点を解説します。
代理店とのパートナーシップの形成 メリットと成功のポイント
広告を外部委託する場合、代理店が引き受ける作業範囲は、契約によって異なります。
一般的に、広告アカウントの設立から入札調整(入札価格・広告文・キーワード・リンク先の選定等)までが代理店の役割であり、定期的に成果報告が行われます。
代理店を利用する際のメリットは以下の2点です。
- 社内リソースの確保が不要
- 広告運用に関する最新情報が手に入る
代理店選定の重要な判断基準は、「ビジネスの将来を共に見据えるパートナーであるか」という視点です。更に、代理店が自社の業界とビジネスにどれだけ精通しているかも評価するべきです。
ただ指示を実行するだけの代理店ではなく、より効果的な施策の提案から、広告の基本的な目的や戦略までを共に検討できる代理店を選ぶことが推奨されます。
インハウス運用の魅力と成功へのステップ
【インハウス化のメリット】
- ビジネスと業界への深い理解の元での運用が可能
- 運用の専門知識が社内に蓄積
- 迅速な広告運用の実施
- 代理店への手数料が不要
インハウス運用を開始する場合、初めから全てを自社で手がけるのではなく、伴走型コンサルティングの活用も選択肢となります。
未経験からの運用開始では、成果を出すまでの時間が長引くことが多く、また、明確なKPI・KGIの設定がなければ、適切な成果評価も難しくなります。
運用は自社で担当しつつ、伴走型のコンサルティングを利用することで、チームの育成、組織の構築、目標設定の支援を受けるということも可能です。
まとめ
レスポンシブ検索広告は、機械学習を利用して最適な広告見出しや広告文を組み合わせて表示する方法です。これにより、手動での広告テストを減らし、入札オークションで有利なポジションを獲得できます。
しかし、この自動化された広告でも成功には注意が必要です。独自性のあるテキストを設定することや、効果的な配信量を確保することが重要です。短期的な結果に固執せず、通常のリスティング広告と組み合わせながら、見出しや広告文を最適化する必要があります。
また、レスポンシブ検索広告の運用に課題を抱える企業も多いでしょう。そのような場合、専門家のアドバイスを受けることが賢明です。これは、広告運用を完全に外部に委託するのではなく、現在のビジネス課題を共有し、最適な解決策を見つけるプロセスの一環です。
アドテク業界のプレイヤーについてについては、こちらの記事でも詳しく解説されています。 あわせてご確認ください。
参考(外部サイト):アドテク(アドテクノロジー)業界のプレイヤーについて|株式会社パラダイムシフト