「口コミ」と言う言葉は昔からマーケティング業界で使用されてきました。
そして、マーケティングがデジタル化した現在でも、口コミマーケティングはビジネス戦略の中で注目を集めている手法の一つです。
消費者同士の自然な会話や共有を通じて、ブランドや商品の魅力を伝えることを目的としています。
この方法は、従来の広告や宣伝とは異なり、信頼性や説得力が高いとされています。
しかし、成功するためには特定のコツや戦略が必要です。
本記事では、口コミマーケティングのメリットやその成功のコツ、さらには成功・失敗事例を紹介し、その実践的なアプローチを探ることとします。
口コミマーケティングとは?意味や種類を解説
口コミマーケティングとは具体的に何を指すのでしょうか。
口コミマーケティングとは
口コミマーケティングは、消費者が商品やサービスに関する自らの経験や意見を他の消費者に伝えることを通じて、商品やサービスの認知度や購買意欲を高めるマーケティング手法の一つです。
これは、人々が友人や家族からの推薦を高く評価するという心理に基づいています。
従って、良い口コミが広がることで、商品やサービスの信頼性が向上し、新しい顧客を獲得する可能性が高まります。
口コミマーケティングの種類
種類①:SNSキャンペーン
SNSキャンペーンは、ソーシャルメディア上でのプロモーション活動を指します。
例えば、特定のハッシュタグを使って商品やサービスに関する投稿を促すキャンペーンや、フォロワーとのインタラクションを活用したキャンペーンなどがあります。
種類②:インフルエンサー施策
インフルエンサー施策は、影響力のある人物や団体に商品やサービスを紹介してもらう手法です。
インフルエンサーのフォロワーやファンとの信頼関係を活用して、広告とは異なる自然な形でのプロモーションが可能となります。
種類③:カスタマーレビュー
カスタマーレビューは、商品やサービスを利用した消費者がその評価や感想を共有するものです。
新しい消費者が購入を検討する際の参考情報として活用できます。
種類④:アフィリエイトマーケティング
アフィリエイトマーケティングは、特定の商品やサービスを他のウェブサイトやブロガーに紹介してもらい、その紹介からの売上に対して報酬を支払う手法です。
紹介する側は、商品が売れた場合のみ報酬が発生するので費用対効果が高いのが特徴です。
種類⑤:モニター施策
モニター施策は、特定の商品やサービスを無料や割引価格で提供し、そのフィードバックや評価を得るための手法です。
実際の消費者の声を取り入れた商品改善や、良い口コミを広めるための活動が行えます。
種類⑥:自社のLP(ランディングページ)やECサイトに二次転載
消費者からの口コミや評価を、自社のランディングページやECサイト、広告クリエイティブ、メールマガジンなどに掲載することで、他の消費者にもその声を届ける手法です。
様々な媒体に掲載することにより、口コミが多くの人の目に留まります。
口コミマーケティングが注目されている背景は購買行動の変化
近年、口コミマーケティングが注目される背景には、消費者の購買行動の変化が大きく影響しています。
以下に、その背景となる購買行動の変化について詳しく解説します。
①情報収集の多様化
インターネットのジャンルが広がったことにより、消費者は商品やサービスに関する情報を多岐にわたるチャンネルから収集するようになりました。
特にSNSやレビューサイト、ブログなど、他の消費者の意見や経験を共有するプラットフォームが増えたことで、口コミ情報の重要性が高まっています。
今の10代や20代は、自分が欲しいものをまずインスタグラムで探すという結果も出ており割合は検索エンジンとSNSがほぼ同じくらいというデータも出ています。
②広告への信頼性の低下
従来の広告手法に対する消費者の信頼性が低下してきた背景もあります。
一方で、実際に商品やサービスを利用した他の消費者の意見や評価は、より信頼性が高いと感じる消費者が増えています。
③個別対応のニーズの高まり
一般的な広告やプロモーションよりも、個人のニーズや興味に合わせた情報提供が求められるようになってきました。
口コミマーケティングは、個々の消費者の経験や意見を活用するため、このニーズに応える形でのプロモーションが可能です。
④デジタル技術の進化
デジタル技術の進化により、口コミ情報の収集や分析、活用が容易になりました。
企業は口コミを効果的にマーケティング活動に取り入れることができるようになっています。
口コミマーケティングを行う3つのメリット
口コミマーケティングは、消費者同士のコミュニケーションを通じて商品やサービスの情報を共有し、それをマーケティングの手法として活用するものです。
メリット①: 消費者にとって口コミは信頼しやすい
深い信頼関係が構築できる
口コミは、家族や友人などの身近な人からの情報が多いため、その情報源との深い信頼関係が背景にあります。このため、口コミ情報は他の情報よりも高い信頼性を持って受け取られます。
実体験に基づく情報が提供できる
口コミは実際の使用経験に基づく情報であるため、具体的で信頼性が高いと感じられます。特に、ネガティブな情報も含まれることがあるため、客観的な情報として受け取られやすくなっています。
感情の共有ができる
口コミは単なる情報提供だけでなく、使用者の感情や体験を共有することができるため、受け手に強い共感を呼び起こすことができます。
メリット②: 広告費や宣伝費を削減できる
低コストでの情報拡散ができる
SNSやレビューサイトを活用することで、少ない費用で大きなリーチを持つ情報拡散が可能です。
長期的な効果を見込むことができる
一度の良い口コミは、長期間にわたって情報として残るため、一度の投資で長期的な効果を得ることができます。
ターゲットへのダイレクトアプローチができる
口コミは、特定のターゲット層に直接アプローチすることができるため、無駄な広告費を削減することができます。
メリット③: 情報を広める手段を増やせる
多様なチャンネルを活用できる
口コミマーケティングは、SNS、ブログ、レビューサイト、フォーラムなど、多岐にわたるチャネルを活用することができます。
ユーザー主導の情報拡散ができる
口コミはユーザーが自発的に情報を共有するため、企業側のプッシュ型の情報提供とは異なり、より自然な形での情報拡散が期待できます。
新しいターゲット層の獲得ができる
既存の顧客からの口コミを通じて、新しいターゲット層や市場にアプローチすることができます。
口コミマーケティングにはデメリットもある?
口コミマーケティングは多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。以下に、その主要なデメリットについて詳しく解説します。
デメリット①: 発信内容に完全には把握・管理できない
情報を管理できない
口コミは消費者やユーザーが自由に発信するものであるため、企業側がその内容を完全に把握・管理することは難しいです。
誤情報が拡散される可能性がある
SNSなどのデジタルプラットフォーム上での口コミは、瞬時に多くの人々に意図的でない誤解や誤情報が口コミとして拡散されることがあります。
その不適切な情報や誤情報への迅速な訂正や対応が必要となる場合があります。
デメリット②: 企業やブランドのイメージダウンにつながる恐れがある
ネガティブな口コミの影響により悪影響を及ぼす可能性がある
製品の欠陥やサービスの不満など、ネガティブな口コミが拡散されると、企業やブランドのイメージが大きく損なわれる可能性があります。
企業側の対応が遅れると、そのネガティブな口コミがさらに拡散され、イメージダウンを招く恐れがあります。
競合他社と比較される
口コミの中には、競合他社の製品やサービスとの比較が含まれることがあり、その結果として企業やブランドの評価が低くなる可能性があります。
口コミマーケティングを成功させるためのコツ・ポイント
ご紹介するコツを実行して口コミマーケティングを成功させましょう。
コツ①: 企業や商品のコンセプトを事前に明確化しておく
企業や商品のコンセプトを明確にすることは、ブランドのアイデンティティを形成する基盤となります。これにより、消費者がそのブランドや商品に対する認識や期待を持ちやすくなります。
明確化すべき事項 | 詳細 |
①ブランドストーリーの作成 | 企業の起源やミッション、ビジョンを共有することで、消費者とのつながりを深めることができます。 |
②ターゲット層の特定 | どのような消費者層にアプローチするのかを明確にすることで、効果的なマーケティング戦略を立てることができます。 |
コツ②: 口コミを書きたいと思わせる仕組みを作る
消費者が自ら口コミを書きたいと思う環境を整えることが重要です。
良い仕組み作りのポイント | 詳細 |
①インセンティブの提供 | 割引クーポンやポイントなどの特典を提供することで、口コミの投稿を奨励することができます。 |
②簡単なフィードバックシステム | 口コミを投稿するプロセスを簡単にすることで、消費者の参加意欲を高めることができます。 |
コツ③: 口コミの拡散を重視しすぎない
口コミの量だけを追求するのではなく、質を重視することが大切です。
質を保つためのアクション | 詳細 |
ネガティブな口コミの対応 | 悪い口コミには、感謝の意を示しつつ、具体的な改善策を伝えることで、他の消費者への信頼を築くことができます。 |
定期的なフィードバックの収集 | 定期的に顧客からのフィードバックを収集し、サービスや商品の改善に役立てることが重要です。 |
コツ④: 商品やサービスと相性の良いインフルエンサーを起用する
インフルエンサーマーケティングは、特定のターゲット層に効果的にアプローチする手段として注目されています。
インフルエンサーマーケのポイント | 詳細 |
インフルエンサーの選定 | ブランドや商品のイメージに合ったインフルエンサーを選定することで、自然なプロモーションを実現することができます。 |
長期的な関係の構築 | 一度きりのコラボレーションではなく、長期的な関係を築くことで、信頼性のあるプロモーションを行うことができます。 |
口コミマーケティングに失敗しないための注意点
もちろんメリットだけでなくデメリットもあります。
注意点①:ステマ(ステレスマーケティング)を避ける
ステマは、企業が自分の製品やサービスを推進するために、一般のユーザーのふりをして情報を流すことを言います。
このような行動は、顧客に混乱をもたらすリスクがあり、企業の評価を低下させる可能性があります。
過去に大手グルメサイトが口コミを社内の人間に書かせて評価を操作していたという時間がありました。
この事件が発覚して企業は信頼を失ってしまったといった事例も存在します。
そのようなことにならないよう、ステマを回避するための主なポイントは以下の通りです。
ステマ回避ポイント | 詳細 |
①明確な情報の提供 | 企業が自分の製品やサービスについて情報を共有するとき、それが企業由来であることをはっきりさせることが求められます。 |
②情報の正確性 | 不正確な情報や過度な情報を流すことは、顧客の信頼を損なう要因となります。情報の真実性を維持することが大切です。 |
③顧客との対話 | 企業は顧客との関係を価値あるものとし、そのフィードバックを通じてサービスの向上や新しい情報の共有を目指すべきです。 |
注意点②:悪い口コミにも適切に対処する
ネガティブな評価は避けることができないこともありますが、その取り扱い方が企業の評価に影響を及ぼすことがあります。
適切な手段を講じることで、ネガティブな評価の影響を最小限にすることが可能です。
具体的には、迅速で誠実な対応をし、問題の解消を目指すことがキーとなります。
むしろ「欠点を指摘いただいてありがとうございます。」という正直な反応が、企業の評価を上げるというケースもあります。
注意点③:著作権や薬事法などの法律に違反しない
口コミマーケティングを展開する際、関連する法的規定やガイドラインの遵守は不可欠です。
特に、著作権や医薬品法などの法的規定に違反すると、罰金や法的制裁のリスクが伴います。
さらに、企業の評価やブランドのイメージにも影響を及ぼす可能性があります。
従って、関連する法的規定やガイドラインをしっかりと把握し、それに従うことが求められます。
【成功事例】口コミマーケティングに成功した企業
成功事例からアイディアを学ぶことができます。
事例①:江崎グリコ
江崎グリコは、日本を代表する食品メーカーとして知られています。
特に「ポッキーの日」キャンペーンは、口コミマーケティングの成功例として広く知られています。
このキャンペーンは、11月11日を「ポッキーの日」として、消費者にポッキーを購入・シェアする楽しさを伝えるものでした。
SNSやテレビCMを活用し、多くの人々がこのキャンペーンに参加。
結果として、ポッキーの売上は大幅に伸び、ブランドの認知度も向上しました。
事例②:Airbnb
Airbnbは、個人が自宅や空き部屋を短期間貸し出すことができるプラットフォームを提供しています。
このサービスの成功の背景には、ユーザー同士の信頼関係の構築と、口コミによる情報共有があります。
宿泊者は宿泊先の評価やレビューを共有することができ、これにより他のユーザーは信頼性の高い宿泊先を選ぶことができます。
また、ホストとしての評価も重要で、良い評価を受けることでより多くの宿泊者を迎え入れることができます。
事例③:スターバックスコーヒー
スターバックスコーヒーは、1971年にアメリカのシアトルで設立され、現在では世界中に店舗を展開している国際的なカフェチェーンです。
スターバックスの成功の背景には、高品質なコーヒーの提供、独自の店舗デザイン、そして口コミマーケティングの活用があります。
特に、顧客とのコミュニケーションを大切にし、顧客の声を取り入れたサービス改善を行っています。
限定メニューや新商品の発売など、話題性のある取り組みを行うことで、顧客からの口コミを促進しています。
【失敗事例】口コミマーケティングに失敗した企業
口コミマーケティングは、顧客のフィードバックを活用して商品やサービスの価値を伝えるアプローチです。
しかし、適切な戦略がなければ、意図しない結果を招くこともあります。
ここでは、口コミマーケティングでの挑戦に直面した企業の事例をいくつか挙げます。
マクドナルド
2015年、マクドナルドは「SNSでの共有キャンペーン」を展開しました。
このプロモーションは、顧客がマクドナルドの食品に関する感想をSNSで共有するというものでした。
しかしながら、この取り組みは思わしくない結果となりました。
多くの顧客から商品に対するクレームや批判的なコメントが寄せられ、商品の質やサービスに関する不満がSNSで話題となってしまいました。
この影響で、マクドナルドのブランド評価に打撃を受けました。
このケースからの教訓は、口コミマーケティングを実施する際、顧客の意見をきちんとモニタリングし、批判的なフィードバックの拡散を防ぐための対策が必要であるということです。
大手企業であっても、適切な戦略がなければ、ブランドの評価を下げるリスクがあることを認識することが大切です。
ドミノピザ
ドミノピザは、以前「Domino’s free pizza」キャンペーンを立ち上げました。
このプロモーションは、アプリをダウンロードし、特定の条件を満たすことで無料のピザを提供するというものでした。
しかし、このキャンペーンは一連の問題を生じさせました。
キャンペーンの内容が非常に魅力的だったため、多くの人がアプリをダウンロードし、無料のピザを求めて店舗に押し寄せました。
その結果、店舗は過度な混雑を経験し、通常の業務に影響が出ました。
さらに、キャンペーンの条件が不明確だったため、多くの顧客が期待外れと感じました。
このケースからの教訓は、キャンペーンを展開する際、内容や条件を明確にし、適切な対応策を考えることが必要であるということです。
キャンペーンの成功を追求するあまり、実際の運営上の問題を見過ごすと、ブランドの評価や顧客満足度に影響が出る可能性があることを理解することが大切です。
まとめ
口コミマーケティングは、消費者の信頼を基盤としたマーケティング手法であり、その効果は非常に大きいと言われています。
メリットを最大限に活用し、成功のためのコツを掴むことで、ブランドの認知度や信頼性を高めることができます。しかし、その実施には注意が必要であり、事前の計画や戦略が欠かせません。
今回紹介した成功・失敗事例を参考に、自社のマーケティング戦略に取り入れる際のヒントやアイディアを得ることができるでしょう。
口コミマーケティングの力を最大限に引き出し、ビジネスの成功に繋げるためのステップを踏み出しましょう。